2020年5月15日金曜日

オンライン講義のスタイルその1(ラジオ方式)

オンライン講義がだいぶ軌道にのってきて,なんとなくリズムも出てきた.現在は,講義の内容や対象によって,いろいろと使い分けてみているところ.せっかくなので,そのメリットとデメリットとともに,整理してみたい.

ラジオ番組方式

以前,ラジオ番組方式のオンライン講義として紹介したもののその後である.手順を再掲する(多少,アップデートしている).
  1. 事前に翌週の資料をLMSで提示し「教科書の対応箇所を読みながら紐解け」と指示する
  2. それに対して,わからないところ,深く理解したいところなどを簡単なテキスト形式のレポートとして提出させる
  3. 講義実施の前日に,それらに対して簡単な返答を書く
  4. 実際のオンライン講義では「質問が多かったところを重点的に」説明する
事前の資料提示は,有りものの資料があるので,それをそのままアップする.もちろん,その資料には要点しか書かれていないので,学習の理解を深めるには,教科書を読み込めるかどうかがカギとなる.

学生が出してくる質問の粒度は様々だが,ときどき,かなり突っ込んだ質問をしてくる学生がいる.それに対してひとつひとつ答えるのは大変だが,こちらにとっても楽しい作業でもある.

受講者は100人ほどいるので,3の返答書きは,力の入れ具合が難しい.念入りにやると相当に時間をとられてしまうので,肩の力を抜いて,「それについてはオンライン講義で説明するから」でよい.同じような質問が重なるところもある.それは定型文をコピペで許してもらおう.

オンライン講義実施時の注意事項

オンライン講義の実施時に注意することは,資料は画面共有で共有するものの,基本的に「それを見ていなくても理解できる」ように喋ること.コレとかソレとか資料のココ,というような指示は使わないように注意する.図の説明をするときも,できるだけ日本語で説明しながら,聴いているだけで分かるように喋る.

ときとして脱線してくだらない話題を入れたり,チャットなどを利用して学生に意見を書かせたりという変化を入れることも必要かも.なにしろラジオのDJは「それではここでリクエスト曲を……」と休憩できるが,こちらは曲を入れて休憩するわけにいかないので.

以前の計画では,前半説明,休憩を挟んで,後半は質問に答える時間としようとしたが,それはやめた.理由は2つ.まず質問をアレンジする手間がけっこうたいへんなこと.それと,説明のなかに質問に対する返答を入れてしまうほうが,円滑に時間が流れるから.

なお,4のオンライン講義は諸事情によりZoomを使ったリアルタイム配信をしているが,大学によってはそれが不可能なこともあるかもしれない.その点は,非同期の動画配信方法や,場合によっては映像を使わない方法でも代替できるだろう.

メリットとデメリット

メリットは,学生の理解が深まる作用が期待できること.これが一番大きい.事前に質問に目を通すので,だいたいどのあたりを難しいと感じているのかが分かる.したがって,事前の独学だと理解できてないだろうなーという点にアタリをつけることができる.そのあたりを重点的に説明すれば,学習効果は高まるはず,ということは誰でも思いつくだろう.

そして対面よりも学生との絆が深まりそうだということ.なにしろ学生との接点が,オンラインの通話と質問のやりとりくらいしかない.しかも前者は,こっちは顔出ししてるのに,学生の顔は基本的には見えてないので,一方向でしかない.しかし,質問やコメントのフィードバックを読む限りは,学生の満足度も悪くなさそうな感触を得られている.お世辞でも「丁寧な説明で理解できました」とか「面白かった」とかのコメントが書かれてくると,教員冥利に尽きる.

デメリットは,やはりどうしても手間がかかってしまうことかなあ.今までの対面講義に,反転学習のいいところを取り入れたスタイルになっているので,これは対面講義が再開したとしても使える手法で,高い学習効果は期待できそうな反面,教員の負担はこれまでより高くなる.もうへとへとで,今回限りと割り切って頑張っているけれど,毎回このスタイルを続けるのはかなり覚悟がいりそうだ.


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