2023年9月29日金曜日

コミュ力の涵養を

コミュカ(こみゅか)ではない,コミュ力(こみゅりょく)である.コミュニケーション能力のことだ.コミュニケーションのスキルを磨くと,人生楽しくなるよ?というお話.

なぜ突然そんな話をするかというと,昨夜,深夜に赤坂のバーで某氏(日本人)と静かに飲んでいたら,隣にシンガポール人の若者が来て,なんとなく親しくなり,シンガポールの食文化についていろいろと楽しい話ができたからである.

そしてそのような言語を共通に持たない人でも楽しく話ができるのは,多少の語学力に加えて,コミュニケーション能力がものをいう.極論すれば語学力なんて多少で構わない.コミュニケーションしようという意欲をいかに持つかが重要である.

高校生や大学生を他国の生徒,学生と異文化間交流をさせるプロジェクトも今年で4年目に入り,そこでも同様の状況が見られる.基本は英会話だが,英語が得意でなくても楽しく会話をしようという生徒や学生と,英語が得意なくせに会話に苦労する生徒や学生がいる.その差は何から来るかというと,コミュニケーションしようという意欲の差である.

おじさんも頑張っている

やや古い事例になるがお許しいただきたい.以下の写真は,2017年に渋谷の居酒屋で撮影されたものである.私もまだ若い.

奥の二人は日本人,手前の二人はフランス人である.ことの発端は,奥のオジサン(私の向かいに座っている人)が飲んでいたホッピーであった.店は混んでいてたまたま相席のようになっていた手前のフランス人二人が,珍しそうに,そのホッピーに注目していたところから,日仏交流が始まった.

右のフランス人は,奥さんが日本人で,日本で生活しているという.左の方はご親族で,日本に遊びにきて,二人で渋谷のこの店に来たとのこと.

会話は,日本語,英語,フランス語のちゃんぽんで進んだ.語学力はというと,奥のオジサンから時計回りに,「日本語(できる),英語(少し),フランス語(できない)」,「日本語(できる),英語(できる),フランス語(少し)」,「日本語(できる),英語(できる),フランス語(できる)」,「日本語(できない),英語(できる),フランス語(できる)」という状況だった.日本語も英語もフランス語も,どれで話してもだれかが分からないという状況で,4人に共通する言語は,ない.

しかし,コミュニケーションの真髄はハートである.アルコールの力も強い.語学の壁を乗り越えて,結局,この日,意気投合した4人は,このあと,なんとカラオケ屋になだれ込んで日仏英語で歌いまくるという(このオッサンたち何やってんだ)状態が展開された.

シンガポール人もすごい

それにしても,昨夜のシンガポールから来た彼も,行動力のある若者だった.昨夜,我々は最初,市ヶ谷ではっちゃけていて,そこでかなり飲んだ後に赤坂のバーへ移動した.そのバーは,連れて行ってくださった某氏が馴染みにしている店で,路地に入ったところにあり,窓のない重いドアを開けて入るような,いかにも隠れ家といったバーである.

いちおう,「誰ぞに紹介されて来た」とは言っていたが,外国のそんな店(といっても,怪しい店ではないが)に,よくまあ単身で乗り込んでいくもんだなと,その行動力にも関心する.

それで思い出したが,昨年の夏にWCCEという国際会議が広島で行われたときも,フランスから来ていた委員のナントカ氏が,やはり隠れ家的なバーに「我々を」連れてってくれたことがあった.聞けば,前日だか前々日だかに,初対面の地元の兄さんに紹介してもらったとか.その行動力というか情報網というか,まあ,恐れ入る.

そんなわけで,我々も,コミュニケーション能力や行動力を磨いていかないと,いろいろ負けちゃうんじゃないかな,と思った次第である.とくに若い人たち,がんばれー.

2023年9月20日水曜日

草たっぷりのフォーを求めて

東南アジアの仕事に携わるようになって初めて訪問した場所はハノイ,2003年のことである.それ以来,ベトナムには何度,訪問したことだろうか.気付けば最初の訪問から20年が過ぎた.今年も夏に学生を連れてホーチミン市を訪れ,1週間ほど滞在した.

ベトナムといって,皆さん何を思い浮かべるだろうか.親日国であること?民族衣装のアオザイ?あるいは,美味しいベトナム料理とか?そう,ベトナム料理は美味しい.

なかでもとくべつ美味しいベトナム料理といえば,なんだろう.ゴイ・クォン(Gỏi cuốn, 生春巻き)やバイン・ミー(bánh mì, ベトナム版サンドウィッチ)かな …… バインセオ(Bánh xèo, ベトナム風お好み焼き)を挙げた人はかなりのホーチミン市通なのではなかろうか,これは美味しい.ホーチミン市の名物である.333(ベトナムのビール)を飲みながらのバインセオはもう至福のひとときである.

日本人にもよく知られている料理といえば,やっぱり,フォー,だろうな.米粉で作られた平打ち麺で,やさしい味のスープヌードルである.鶏のフォー(フォー・ガー,phở gà)や,牛肉のフォー(フォー・ボー,phở bò)が一般的で,だいたいどこでも食べられる.

ところが日本にある多くのベトナム料理店では,やはり日本人の口に合わせた味付けのベトナム料理を提供する.市場原理に基づくものなので,これは致し方ない.しかし,現地の味を日本で食べたいという願望も(自分のなかでは)無視できない.

で,現地のフォーといえば,なんだか得体のしれない草をたっぷり入れて食べるスタイルが一般的.しかし,これが,どうして,なかなか出会えないのである.一つには,日本人の口に合わせているからという理由があろう.加えて,食材が手に入りにくいから,という理由もあるかもしれない.そのため,パクチーで代用という手段が取られていることが,ままある.

さて,ごたくはこのくらいにして,最近,東京で立て続けに訪問して「わりと現地の味に近いかな」と感じたフォーを,いくつか紹介しよう.

まずは「フォーティントーキョー」.池袋,新宿,吉祥寺に1軒ずつあるらしい.メニューは潔く「牛肉のフォー(フォー・ボー)」だけ.写真は,プラスアルファのトッピングでパクチーを増量したものである.

続いて,池袋の「フォー・チュン」という店.これもフォー・ボー.ランチセットで900円.この店はすごい.雑居ビルの地下1階で,知らないとなかなか入りにくい佇まいのなか,ドアを開けるとそこはもうベトナム!店の匂いは完全に異国のそれであって,日本とはかけ離れた雰囲気.しかも店員,客ともにほぼベトナム人なので,話されている言葉はほぼベトナム語(……日本語で注文はできるよ),先日訪れたときは,隣のテーブルのお姉さんたちが延々と「Một Hai Ba Vô!」ってやってた.3, 2, 1, ヨー!という掛け声で,乾杯の合図である.

最後は,フォー・チュンの近くにある「フォー・ベト」.写真は,鶏とコリアンダーのフォー(フォー・ガーにパクチー多めに入れたもの).実は草の具合はこの店が一番,現地のテイストに近かった.怪しい草も乗っているし,もやしが乗っているのも現地風.レモンの代わりにライムであってほしかったとか,青唐辛子のスライスがほしかったとか,欲をいえばキリがないけれど.この店も,パクチーと香草は330円で増量できる.最適解はこれかな?

そして,実は,本当に美味しいフォーの食べ方は,途中でクァイ(Quẩy,油条という中華揚げパン)を千切って入れ千切って入れして食べるやり方なのだ.ずっとそう信じている.しかし,残念ながら,まだ東京のどの店でもそのスタイルには出会えていない.

東京のフォーは麺の量が多過ぎて,それだけでお腹いっぱいになっちゃうってのもある.現地のフォーっていかにも軽食で,クァイ入れてちょうどいい感じなのよね.

2023年9月16日土曜日

名前って大事

外国にいくとたいがいLioに間違えられ(※1),日系の航空会社からはItoと呼ばれ(※2),名前なんて飾りです偉い人にはそれが云々……と開き直っている私(Iio)だが,物事にはやはり名前を付けることが大切である.

我々が2020年から進めている活動には「にこP」という名前が付けられている.「日(に)本語を話さない人とコ(こ)ミュニケーション&コラボレーション・プ(P)ロジェクト」で,にこP(にこぴー)である.英語ではThe Students Meet Internationally through Language Education Project,略してThe SMILE Projectという.

いま,大学内にこのにこPを展開しようと画策している.既にゼミ単位で何度か実施してはいるのだが,それを他の学部にも広く普及させようという野望を抱いた.幸いにして我々の思いに共感してくださっている先生方が何人も手を挙げてくださった.あとは「僅かばかりの予算をつけてくだせぇ……」と,いろいろ手を尽くしている段階である.うまくいけば,再来年のにこPシンポジウムには中大セッションを用意して情報共有できるようになるだろう.

さてその大学版にこPを,今回「The Chuo University SMILE project」と命名した.略して CU-SMILE である.See You SMILE!いいじゃない(駄洒落だけど).

もうひとつ.にこPは lingua franca としての英語を活用して異文化間コミュニケーション教育を推進しようという試みだが,それを「日本語を学ぶ人々」を対象として「日本語で」実施しようという活動が,にこPのアクティビティから派生して,今年度から始まった.当初は日本語にこPと呼んでいたが,「日(に)本語でコ(こ)ミュニケーションしたい人々の『にこP』」というわけで「にこにこP」と呼ぶのはどうかな?

※1:そもそも母音だけ3文字なんていう名前は彼らの頭のなかにないらしく,I(大文字のアイ)をみて l(小文字のエル)と勝手に信じ込んでしまうらしい

※2:彼らはローマ字で顧客情報を扱うので,たくさんのItoさんと接している一方で,Iioは珍しいから

2023年9月2日土曜日

地図あそび

地理情報システム(Geographical Information System),GISと呼ばれるシステムがある.GISは地理に関するデータを処理する情報システムで,場所に紐づいたデータを可視化して分析するなどの用途で使われる.

GIS事例

次の図は,八王子市図書館の利用状況を示す図である.地図上に示された9箇所のマーカーは,図書館の位置を示す.また,各町丁目は,来館者密度比の値で塗り分けられている.

来館者密度比とは何か.町丁目ごとに,利用者数を住民数で割った値を来館者密度と定義する.なお,ここで利用者数は2022年度に図書館を1度でも利用した人の数である.9箇所の図書館でそれぞれ利用者数がカウントされており,今回,利用者はその合計とした.一人の利用者が複数の図書館を利用したとすると重複してカウントされてしまうので,正確には「のべ利用者」である.また,住民数は2022年12月時のものを,八王子市のオープンデータから拝借した.

来館者密度比は,来館者密度の最大値で割って正規化したものである.すなわち,最も利用者が多かった地区を基準として,それに対して各地区の来館者密度がどのくらいの割合になっているかを示す指標である.

0〜10%をグレーとし,それ以上は10%ごとに,紺,緑,黄,橙で塗り分けている.50%以上は赤とした.

多くの図書館で,図書館の近くになるほど来館者密度は高くなっていることがお分かりだろう.また,八王子の北部エリア,東端,高尾山の裏(地図では左下)は,利用率が低い.これは地理的な理由によるものである.

このように,地図上にデータを示すことで状況がとてもよくわかる.まさに,一目瞭然,GISの面目躍如というところである.

どうやって作ったか

この地図は,PythonのGISライブラリであるGeoPandasとFoliumを用いて作成した.df_users という変数に,町丁目のデータ(境界を示すポリゴンデータや来館者密度比のデータ)が格納され(次図),df_libs には図書館の位置情報が記されている.

地図を表示するコードは次のようなものである.Google Colablratory ノートから,地図表示に関する部分を抜粋する.

m = folium.Map(location=[35.66, 139.30], zoom_start=12, tiles='stamenterrain',
zoom_control=False, scrollWheelZoom=False, dragging=False)
# to disable zoom, scroll, and dragging functions

for _, r in df_users.iterrows():
sim_geo = gpd.GeoSeries(r['geometry'])
geo_j = sim_geo.to_json()
data = json.loads(geo_j)
data['features'][0]['properties'] = {'color': rcolor(r['Ratio'])}
geo_j = json.dumps(data)
geo_j = folium.GeoJson(data=geo_j, style_function=lambda x: styles(x))
geo_j.add_to(m)

for _, row in df_libs.iterrows():
folium.Marker(location=[row['geometry'].y, row['geometry'].x], popup=row['Name']).add_to(m)

m

ここで,folium.Map() の引数 tiles で指定しているタイルとは,地図の絵柄を示すものである.冒頭で示した4つの地図は,タイルがそれぞれ異なる.左上から時計回りに,stamenterrain, openstreetmap, stamentoner, cartodbpositron を指定して描画した地図である.

ビルトインで指定できるタイルは他にもあり,その他にも外部から取り込むよう指定すれば,別の地図タイルを用いることができるらしい.

このように,タイルで遊んでみるのも一興.皆さんはどのタイルがお好みかな?