2023年6月27日火曜日

よく出来たCTIシステムと対照的なオペレータ氏の話

海外の某サービスからちょっとしたお買い物をした.DHLで日本に向けて配送してくれるわけだが,配送状況が逐一わかるのが楽しい.「いまどこまで来てるかなー」というワクワク感も,海外通販の楽しみの一つである.

ところで,途中までは何の問題もなかったのだが,今回,東京までブツが届いたところでスタックしてしまった(上図・左).原因は,大学に荷物を直送したのだが,その際,大学の住所だけ入れて建物名を入れておかなかったこと.ヤマト運輸など日本の業者ならそのあたり融通を効かせてくれるはずだが,残念ながら,DHLの対応は素っ気なかった.システムで変更せよとの案内があったが,そのリンク先をクリックして配送番号を入れてみても,何故だか「その番号は登録されていない」というエラーになるばかり.

どうしたものかと考えあぐねていたら,今朝,DHLからメールで,配送先住所に問題あり,との通知が届いた.助かったとばかりに,連絡をくれたメールへの返信で適切な住所を送った.さらに,念には念をと,カスタマーセンターに電話をかけてみた.

いざ電話を掛けてみると,その電話応答システムがとてもよく出来ていて,感心した.オペレータに繋がるまでに配送番号を入力させる仕組みになっている.10桁の数字なので間違いもあろう.きちんとシステムが復唱して確認するという丁寧さ,なかなかよく出来ている.

ところが,出てきたオペレータのおじさんが,少々,こちらが不安になるような対応を見せてやや困惑した.よく出来た電話応答システムとのギャップを感じて,苦笑を禁じ得ない.本当に大丈夫なんだろうか?と一抹の不安は覚えたが,その後,メールへの丁寧な返事が届いたので,とりあえずは安心したという次第.

再度,配送状況をチェックしてみたら,エラーは消えていた(図・右).ちゃんと届くかな……

【追記】

さっき見たら「Delivered」というステータスになっていた.が,私のところにはまだ届いていない.事務室のバックエンドで控えてるんだろうな(そこまで確認しにいくほどのものではないので,明日を楽しみに待つことにする)

2023年6月23日金曜日

アンケート回答からみる人々の傾向

次の図をみていただきたい.このグラフは,あるアンケートの設問から2つ取り出して,それらをクロス集計したものである.2次元の100%積み上げ横棒グラフとして表現されている.

縦軸に並ぶ項目と,個々に並べられた項目がどちらも同じなのでわかりにくいが,両方とも「あなた自身のことについてお聞きします.次のそれぞれの項目について『全くあてはまらない』から『よくあてはまる』までの5段階の中から1つだけ選んでください」という質問の回答(単一回答)で,それぞれ次の項目に関する回答である.

  • SNS,ソーシャルメディア上での自分の評判が気になる
  • 私は自信家である

縦軸の項目は前者の回答で集計したものである.そのなかで,後者の設問の回答がどのくらいあったかを集計したものだ.すなわち,グラフの一番上の横棒は「SNS,ソーシャルメディア上での自分の評判が気になる」に「よく当てはまる」と回答した人たちのうち「私は自信家である」という設問でそれぞれの回答を選んだ人がどれだけいるか,という状況を示している.

アンケート回答者の総数は2,800人(世代が7セグメント x 男女それぞれ100人)であり,「SNS,ソーシャルメディア上での自分の評判が気になる」に「よく当てはまる」と回答した人はそのなかで90人しかいなかった,という点は多少割り引いて考える必要があるかもしれないが,それでも,このグラフから次のような状況が認められるだろう.

  • SNSの評判を気にする人は自信家である傾向が高い(自己肯定感が高い)
  • どちらでもないを選んだ人は,別の設問でもどちらでもないを選ぶ傾向にある
  • SNSの評判を気にしない人は自分を自信家であると思っていない人が多い

クラメールの連関係数を計算したところ,0.335 という値が得られた.この指標は,0.0から1.0までの値をとり,おおむね0.25以上であれば関連性があるとされる.よって,この2つの傾向は,それなりに関連性がありそうだと判断できる.すなわち,自己肯定感の高いひとはSNSの評判を気にしがち,ということである.

私もどちらかというと自信過剰の傾向があるが(若い頃は「根拠のない自信の持ち主」とよく揶揄われたものだ),やはりSNSでの評判は気になる.私がこれらの設問に回答したとしたら,どちらも「よく当てはまる」を選んだだろう.2,800人中,45人しか選ばなかった組み合わせではあるが……(ただし,SNSの評判をよく気にする人で,自信家じゃないと思っている人はもっと少ない).

2023年6月22日木曜日

迷UX探検隊#01・某コンビニにて

某コンビニで税金を払おうとしたときのことである.このコンビニ,支払いのセミレジ化が進んでいて,現金の投入は客の責任で行うことになっている.

そのコンビニで,固定資産税の支払いをした.ちょっとした金額の支払いだったので,1万円札を十数枚,投入する必要があった.

そこで気になったのが,下記の指示である.このコンビニ,佐藤可士和によるコーヒーマシンのデザインがわかりにくくてテプラでベタベタと追加のインストラクションを貼り,デザインの敗北と揶揄われたチェーンである.ここにもデザインの敗北か?とも思ったが,今回指摘したい問題は,それではない.

気になったのは左右にある「一度のご入金は10枚まで」という指示である.ここで私が思った疑問は「10万円以上,払わねばならないのに,10万円超えたらどうなるんだろう?」というものであった.私は,ここに1万円札を,1枚,1枚,入れていっていたのだ.1枚ずつ丁寧に,数えながら入れていった.さすがに福沢諭吉の向きを揃えて入れる,なんてことはしなかったが,1枚,1枚,数えていった.

私が勘違いをしていたことに気付いたのは,10枚目を入れ終え,次に(どうなるんだろう?)と11枚目を入れたときである.なんの問題もなく,11枚目のお札は吸い込まれていった.そりゃそうだろう.10枚しか入れられないのであれば,10万円以上の支払いができないのだから.

賢明なる皆様は,この指示の意図と私の勘違いの齟齬がどうだったのか,もうお分かりだろう.そう,「一度のご入金は10枚まで」は,一度に「重ねて」入金できるのは10枚まで,という意味だったのである.

私は自分の不明を詫び,時間をかけてしまったことについて店員に謝罪した.店員は「確かめながら入れられる皆様もおおぜいいらっしゃいますよ」と慰めてくれたが,心が痛い.

2023年6月15日木曜日

図書館の利用状況を可視化する

長いこと八王子市図書館との共同研究を進めている.以前,図書館の利用状況を地図上にマップするというテーマで作業を行い,それで卒論を書いて卒業していった学生もいた(Hくん,元気でやってますか?)

ところで,当時から5年ちかく経ち,いろいろと状況が変化した.八王子図書館側の変化も大きい.そもそも当時は6箇所しかなかった図書館も,規模の大小はあれども現在は9箇所に増えている.

こちらの作業環境も大きく変化した.当時はGoogle fusion tablesという便利なツールがあった.ところがこれ,最後まで(Experimental)という但し書きが取れずにサービスは終了した.一時期,Tableauに作業環境を変更してみたこともあった.こちらも便利ではあったが,いかんせんライセンス料が高すぎる.

一方で,Google Colaboratoryの利用が日常化した.こちらのプラットフォームでfoliumというライブラリを入れれば地図上の可視化が(比較的)簡単にできる.講義や演習でも取り入れて,便利に使うようになった.

そんなわけで,Colab + folium の環境を使用し,最新のデータで再度やってみよう!ということになった.ちょっと試してみて,わりといい感じにできたので,サワリの部分を紹介しよう.

ここで紹介するのは図書館の登録状況である.色は,登録者数の多寡を表しており,赤いほど多いという一種のヒートマップである.なお,地図上の丸は図書館を示し,赤丸はデータ集計の対象とした図書館を表している.

まずは生涯学習センター図書館のそれ.ここはHくんがその卒論のなかで「広域型」と定義したように,八王子市全域に利用登録者が広がる大型の図書館である.生涯学習センターは八王子駅近く,駅前の商業地区ど真ん中にあり,市民は通勤,通学の途中で立ち寄ることも多いのだろう.八王子市の多くの地区にお住まいの皆さんがこの図書館で利用者登録をした状況が現れている.

続いて南大沢図書館.これも規模は比較的大きい図書館だが,八王子市の経済圏に関する特徴がよく現れている.すなわち,八王子市の東南部分,南大沢エリアを中心とする,いわゆる多摩ニュータウン隣接の地域は,八王子駅周辺とのつながりが薄い.それらを直接結ぶ鉄道路線がないことの影響が如実に現れているといえよう.

次の2つは,みなみ野および石川図書館である.これらは地域密着型,小規模図書館の代表例であり,図書館周辺に登録者が集中している様子がわかる.

いかがだろうか.なお最後に示した石川図書館は,かつて我々が示した利用状況地図の空白地帯に設置されたものだ.研究結果が地方行政に活かされ,市民のQoL向上に多少なりとも貢献できたとすれば,それなりに誇らしく感じてやりがいもあろうというものである.

2023年6月14日水曜日

演習用のソースコード

データをダウンロードする

!wget https://www.iiojun.com/iDS/2023/hachimap.kml
!wget https://www.iiojun.com/iDS/2023/libraries.kml

GeoPandasをインストールする

!pip install geopandas

モジュールを読み込む

import geopandas as gpd
import fiona
import folium
import matplotlib.pyplot as plt
from fiona.drvsupport import supported_drivers

データを読み込む

supported_drivers['KML'] = 'rw'
df = gpd.read_file('hachimap.kml', driver='KML')
df.head()

試しにプロットしてみる

df.plot(figsize=(12,12))
plt.show()

地図を表示する

m = folium.Map(location=[35.66, 139.28], zoom_start=12, tiles='openstreetmap')
m

町丁目区画を重ねて表示する

for _, r in df.iterrows():
sim_geo = gpd.GeoSeries(r['geometry'])
geo_j = sim_geo.to_json()
geo_j = folium.GeoJson(data=geo_j,
style_function=lambda x: {'fillColor': 'grey', 'color': 'grey',
'weight': 0.5, 'fill_opacity': 0.3, 'line_opacity': 0.1 })
folium.Popup(r['Name']).add_to(geo_j)
geo_j.add_to(m)

m

図書館の位置を読み込む

import pandas as pd
df_libs = gpd.read_file('libraries.kml', driver='KML')
df_libs

地図上に表示する

for _, row in df_libs.iterrows():
folium.Marker(location=[row['geometry'].y, row['geometry'].x], popup=row['Name']).add_to(m)
m

アイコンが大きすぎるので,地図を作り直してサークルマーカーで図書館を表示する

m = folium.Map(location=[35.66, 139.30], zoom_start=12, tiles='openstreetmap')

for _, r in df.iterrows():
sim_geo = gpd.GeoSeries(r['geometry'])
geo_j = sim_geo.to_json()
geo_j = folium.GeoJson(data=geo_j,
style_function=lambda x: {'fillColor': 'grey', 'color': 'grey',
'weight': 0.5, 'fill_opacity': 0.3, 'line_opacity': 0.1 })
folium.Popup(r['Name']).add_to(geo_j)
geo_j.add_to(m)

for _, row in df_libs.iterrows():
folium.CircleMarker(
location=[row['geometry'].y, row['geometry'].x],
radius=4, color='red', fill_color='red', weight=3
).add_to(m)

m

2023年6月10日土曜日

HCD研究発表会名物「ポスターセッション中継隊」

HCD-Netが主催するHCD研究発表会は春と秋……というか,夏と冬?に年2回開催されている.なぜか6月頭に実施する研究発表会が春季HCD研究発表会,11月末に実施する研究発表会が冬季HCD研究発表会と題されているので,そのまま言えば春と冬である.まあ,そんなことはどうでもよくて,2023年6月10日の今日は,2023年度春季HCD研究発表会が,東京は市ヶ谷,武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスで実施された.

COVID-19パンデミックに伴い,しばらくの間はオンラインで開催されていたこの研究会ではあったが,昨年からは対面での実施が復活し,今年は例年にない盛況である.やはり,2類から5類への変更が,人間の行動変化に大きな影響を与えたといえそうだ.いやはや,ウイルス自体が消えたわけでもないのに,社会とはいかにもテキトーだということがよくわかる事例である.

3年前,パンデミックが始まったころ,この騒ぎはどうなったら終わるんだろう?と,100年前のスペイン風邪に思いを馳せつつ,頭を悩ましていたものだが「なかったことにする」という形で終息するとは予想だにしなかった.スペイン風邪のときも似たようなものだったのだろうか?

まあ,そんな話もどうでもよくて,今日紹介したいのはHCD研究発表会名物「ポスターセッション中継隊」である.

ポスターセッション中継隊

昨年度の研究会から対面が復活した,とはいえ,オンラインの実施により「わざわざ東京まで出張することなくオンラインで参加できてすばらしい」との声が,主に地方在住の会員から聞こえてきたことを無視できないと議論されていた.このあたりの経緯は(飯尾・辛島, 2022)で論じているので参考にされたい.

したがって,HCD研究発表会は2022年より対面・オンラインのハイブリッド形式で実行されている.そのための数多な工夫は本稿でもいろいろとレポートしてきた.

そのようななかで,問題になったのは「ポスターセッションをいかにしてハイブリッド化するか」である.(飯尾・辛島, 2022)でも指摘されている.

そこで導入されたのが「ポスターセッション中継隊」である!

ZoomやWebexなどのオンラインツールを動かしているスマホを片手に,ポスターセッション会場を中継しまくるリポーターを導入したのだ.

中継隊の効果

正直,なんかガヤガヤしていてポスター発表の正確な内容が伝わっているかどうかは,若干,微妙ではある.しかし,雰囲気が伝わるのは大正解.次の写真を見ていただきたい.なんか楽しそうな雰囲気は伝わってるでしょ?

この写真は,ポスターセッション会場の隣,口頭発表会場に設置されていたモニターに,ネット配信状況が中継されていたところを撮影したものである.画面の反射で撮影者が映り込んでしまうので,斜めからの撮影になっている点はご容赦を.

もちろん,ポスターセッションは,気になった発表を対話的にじっくり聞いて,議論できるという利点がある.しかし,中継隊をぼーっと眺めているだけでは,その利点は享受されない.発表を選んでじっくり議論したいのであれば,会場に来てくださいということだろう.あるいは,オンラインでも,図々しく「この発表を中継してください」とリクエストすればよい.

いずれにしても,ポスターセッション中継隊は前回,2022年冬季HCD研究発表会で導入されて,オンライン聴講者からはそれなりに好評だった.ポスターセッションのハイブリッド化にお悩みの方は,参考にしてみてはいかがだろうか.

参考文献

飯尾, 辛島 (2022) 研究会のオンライン化とその対策, 人間中心設計, Vol. 18, No. 1, pp. 5-13.