2023年11月29日水曜日

2023冬季HCD研究発表会振り返り

2023年度冬季HCD研究発表会が11月25日,鹿児島女子短期大学にて開催された.かなり昔に札幌でHCD研究発表会が開催されたことがあるとは聞くものの,少なくとも私が関与するようになってからは,初めての地方開催である.今回の開催にあたり,ローカルのマネジメントに尽力くださった近藤先生とサポートくださった皆様方には感謝を申し上げたい.

今回のHCD研究発表会は,鹿児島での地方開催というだけでなく,東京の芝浦工科大学豊洲キャンパスをサテライト会場とした二会場開催という点でもきわめて挑戦的な開催であった.コロナ禍以降,現地参加とオンライン参加を許容するハイブリッド開催で実施していた本研究発表会ではあるが,今回は地方開催ということもあり,東京は豊洲にサテライト会場を設置して二元中継を行う新しい試みに挑戦した.

しかも,サテライト会場からの口頭発表だけでなく,ポスターセッションを鹿児島会場と豊洲会場の二ヶ所で行うという,あまり聞いたことのない斬新な試みにも挑んだ.ポスター発表を2会場で行う点に関しては,HCD研究発表会名物?の「ポスター発表中継隊」が大活躍してくれた.これもICT進化の恩恵であろう.

さらには「実践発表」カテゴリを設けたことにより,発表数が例年になく増えた(口頭発表とポスター発表を合わせて28件というのは例年の1.5倍相当である).実践発表の是非については本稿では省略するが,気軽に発表できる機会を提供できた点は,自画自賛ながら,評価に値するのではないかと考える.そのため,口頭発表の件数も20件となり,1日に実施するにはギリギリのスケジュールとなった.

シングルトラックで実施するにはほぼ限界の発表件数のため,今後は,マルチトラックにして対応せざるを得ないかもしれない.自作の研究会マネジメントシステムには,その含みを持たせてある.研究会規模の拡大がいよいよ現実味を帯びてきた.今回の開催がHCD研究発表会をさらに発展させるための試金石となっている状況をひしひしと感じる.これからの発展が楽しみである.

なお,HCD研究発表会のウリの一つに,発表に対するコメントを発表者にフィードバックするという特典がある.研究会に参加しているHCD-Netの理事と評議委員には,発表の評価と(できるだけ前向きな)コメントの記載をお願いしている.

そして,これも自画自賛になるものの,自作のシステムにより発表の評価とコメントをリアルタイムで集計するしくみが出来上がっている.集計されたコメントは,翌日にメールで発表者にフィードバックされる(この作業はいまのところ私が手作業で実施しているが,これもシステム化して自動でメールを送れるようにしたいところである).これは参加者におおむね好評で,これも発表者を増やすための一つのアイデアとして効果があるだろう.

いずれにしても,今後のHCD研究発表会のあり方として,春季冬季のいずれかは東京開催,そして他方は地方開催というルーチンを確立できればと画策している.そのためには,地方の拠点を確固たるものとせねばならない.

2023年11月23日木曜日

オンライン学習状況を可視化すると何が分かるか

IT系の某オンライン学習サイトの模擬試験受験状況データをいただいて,その分析を進めている.なかなか興味深い結果がみえてきているので,その一部を紹介したい.なお,このオンライン学習サイトは,無料で模擬試験を受けられるもの.その模擬試験は40問ひとセットで,40問の問題はランダムに出題される.

まず,どれだけのユーザがどのくらい模擬試験にチャレンジしているか?というデータを集計してみた.1回の試験にIDが振られているので,それらの数をユーザごとに集計する.その結果,最大で593回も受験しているユーザがいた(なお,次点が403回,その次が121回で,それ以下は100回以下である).

ほとんどが数回から十数回のチャレンジであるため,25回以下に限定してヒストグラムを描いてみた.その結果が次の図である.

1回しか挑戦していないユーザが多いのは予想通りで,指数関数的な分布を描くであろうという状況もほぼ予想したとおりである.特異的な値がみられず,比較的きれいなカーブを描いているのは,回数に注意するユーザはほぼいないことを示唆していると考えられる.

ところで,40個の問題が出される模擬試験だが,途中で諦めてしまうユーザも多いはずだと考えた.そこで,何問まで解答したか?について集計してみた.

ところがこれが意外なことに,ほとんどのユーザが40問,最後まで解答している.皆さん真面目だなあ.

しかし,それでも途中で諦めてしまうユーザも少なからずいる.そこで,何問まで解答して,そのあと諦めてしまったのかを,39問の解答までに限って集計し,ヒストグラムを描いてみた.次の図をみていただきたい.

こちらも,ところどころ特異点があることと,35問以降を除くと,指数関数で近似できるかできないか微妙な感じではあるが緩やかに減少するカーブを描いている.

しかし,先のグラフと異なるのは,5, 10, 20といった,明らかに特異点と考えられる点が観察できることである.これは,5問やってもういいや,10問やったからやめよう,20問まで頑張った……というように,キリの良い数でリタイアしている状況を表している.

35問から徐々に増えていることについては次のように考えられよう.すなわち,そこで諦めたというよりは,それ以降,答えがわからないのでスキップした,という状況が一定数あるとの示唆である.とくに39問が極端に多くなっている理由は,39問は解答したが40問目がわからなかった,という状況であろう.

(追記)学生から,タイムアップの影響じゃないですか?との指摘を受けた.たしかに,制限時間があるため,最後のほうは制限時間以内に解けなかったためにスキップされていると考えるほうが自然かもしれない.

2023年11月18日土曜日

すっぽんパワー

西麻布から六本木にかけて散歩した.たまの散歩はいろいろと面白いものを発見するので楽しい.

いきなりのスッポンスープ,高額自販機,ひと缶1,000円なりィの缶スープである.(缶飲料としては)破格のお値段.

遠目にみたら,自販機の横に「日々是好日 だしのある風景」とあった.

(ああ,最近よく見るだしの自動販売機だなあ)と思いつつ近づいていくと,まさかのスッポンスープである.スッポンスープにもノーマルとプレミアム版,2種類あるのが面白い.廉価版はひと缶760円と,プレミアム版に比べるとリーズナブル.いうて滅多に見られない価格設定ではあるが.

このスッポンスープ缶,いったいどんな人が買うんだろう?

場所柄,「これからいっちょ決めてやんべ!」とハッスルハッスルなオッサンが,1,000円札をズバッと投入,ガコンッと出てきたスッポン缶を腰に手を当ててグイッと飲み干すとか.そんでもって「オレ様の波動砲,エネルギー充填120パーセントッ!」なんて下品な冗談飛ばしながらガハハと笑いつつ,夜の六本木に消えていく…… なんて光景が目に浮かんだが,さすがに昭和な風景すぎますか?

2023年11月10日金曜日

横浜ぶらり旅

横浜にオフィスを構える某社を訪れて打合せする約束があった.午後イチの訪問予定だったので,少し早めに行って中華街で腹ごしらえを目論んだ.目指すは横浜中華街,香港路は安記のお粥である.

久しく訪れていなかった中華街,前回はいつ来たろうか.何年も前なことは間違いがない.みなとみらい線の元町中華街駅から歩き,東門から入る.道路がきれいになっていて,ずいぶんと垢抜けた印象を受けた.昼食にはいささか早い時間帯だったものの,焼き小籠包や大ぶりの肉まんなど,今でもあちこちで行列ができている.

香港路……,香港路……,中華街のメインストリートを西に向かって歩いていけば,左側に隠れるような入り口があるはず.少し歩くと……,見ぃつけた.

お粥の名店,安記は香港路に入ってすぐのところにある.なお,この路地には他にも海員閣という老舗の名店があるが,最近はお店の事情で営業をだいぶ縮小しているらしい.営業しているうちに,また行っておいたほうがよいかも.

さて,今日は安記である.もうすっかりお粥の口になっている.扉を開けて,店に入るなり,おばちゃんが「今の時間はお粥だけだけど」と告げてくる.ばっち来いやー!こちらはそのつもりで来ているのだよ.

メニューを見ずに,一言,「とりのお粥」と注文.880円.昔はもっと安かったような気がするが,このご時世だもの,仕方ないか.

待つことしばし,あっつあっつのお粥が運ばれてきた.これこれ.シンプルながら,抜群に旨い中華粥である.

レンゲで掬いながら,ふうふうして食べる.美味しいからといって,慌てて口に入れてはいけない.ヤケドする.

もう,一口一口が幸せを感じる旨さ.食べ進むと下のほうから鶏肉片たちがひょっこり顔を出す.これも旨い.トッピングの油条スライスもいい感じにふやけて旨い.途中で薬味を投入,それも旨い.気付けばあっという間に食べ終わっていた.

修学旅行のシーズンなのか,中華街は中高生で溢れていた.あいにくの雨模様だったが,久しぶりの中華街,安記のお粥で大満足である.

2023年11月7日火曜日

貴重な経験をした

エレベータの中に閉じ込められるという経験をした.人生で初めての経験である.ちょっとドキドキした.

それは,お昼休みに会議が予定されていて,早めの昼食に出た帰りのこと.自室に戻ろうと,エレベータに乗り13Fのボタンを押した.カゴに乗っていたのは自分ひとり.いつもどおり順調に階の表示が上がっていき,13になったところで,ガコンッと大きく揺れて停止した.

(ん?地震?)

最初に考えたのは,地震が来たかな?というものである.地震を検知して止まったのかな,と考えた.しかし,揺れは来ない.地震ではないらしい.

非常停止を検知したらしいエレベータから,「非常通話ボタンを押して,オペレータとお話ください」と音声案内が流れた.非常ボタンを押すなんて,これも初めての経験である.

ボタンを押す.すると,かなり大きな音でプーとブザー音が鳴り響く……ちょっと躊躇するレベル.まあでも,どうせ自分ひとりしかいないし,押し続けないとなあ.

頑張ってずっと押し続けていると,オペレータ氏と話が通じた.

オペレータ(以下「オ」):「聞こえますかー」「聞こえますかー」

私:「聞こえてますけど,こっちの声,聞こえますかー?」

向こうの声は聞こえるが,こちらの声が届きづらいらしい.非常ボタンをプッププップと押してみたり,あれやこれや試してみたりしてなんとか意思疎通を試みたところ,大きな声で喋れば会話も通じることが分かった.

オ:「いまどうなってますかー」

私:「13Fに向かってたんですけど,13Fになったところで,ガコンッって大きな音がして,止まっちゃいました」

オ:「開くボタン押してみてください」

私:「押しましたー.開きませーん」

オ:「そちら,どういう状況ですかー」

私:「わたしひとりです」

オ:「現場に連絡しますので,落ち着いて,お待ちくださいー」

落ち着いてと言われても,(このまま落っこちたりしないだろうな?)って,やっぱり心配になる.けっこう大きな音で,ガッコンッっていってたし.

そして,やはり気になったのはこの後の会議のことだ.ワーカホリックな私.幸にして電波が届くようだったので,事務室に電話する.「あ,飯尾ですけど……,エレベータに閉じ込められちゃいまして」間抜けなメッセージに,電話の向こうもびっくりしたのではなかろうか.

ひと通り経緯と状況を電話で説明し,はてさてどうしたもんかなと考えあぐねていたら,再びインターホンからオペレータ氏の声が.

オ:「いまから15分くらいで係員が向かいますのでー」

え?15分も待たされるの?さっきからもう10分は経ってるよ?

しばらくしたら,外から声がする.「おーい」ダメもとで声をかけてみると「大丈夫ですかー?」と呑気な呼びかけが扉越しに響いてきた.

「閉じ込められちゃいましたー」

こちらも負けずに間抜けな声で応答する.「もう少し待っててくださいねー」「待ちまーす」みたいな牧歌的なやり取り.しかし客観的にみたら,閉じ込められてる私,これってけっこうピンチでは?

閉じ込められてから20分くらい経っただろうか.「いま開けますね!」と,ようやく明るい希望の声が聞こえた.そして開けられるエレベータの扉から,パァアアア…… と広がる明るい光.いや,冗談じゃなくて.助けに来てくださった作業員の方には,たしかに後光が差していた.

次の写真を見ていただきたい.扉が開いたときの状況である.惜しい.あと1メートル.

助けに来てくれた方が「よじ登れますか?」と私に問う.何を仰いますやら,よじ登ってみますとも.まあ,1メートルくらいの段差,造作もない.よじ登ったときの衝撃でガコンとカゴが落ちて,胴体から真っ二つ……なんてことになったらヤダなあ,みたいな縁起でもないことは,考えないようにして,とにかく脱出成功.助かった.

以上が本日の顛末である.振り返ってみれば貴重な経験をしたといえるが,も一度体験したい?と問われればそれはもちろんNoだ.

2023年11月4日土曜日

ハーブの想い出

ハーブが好きだ.東南アジア諸国,とくにベトナムで食べられる,あの得体の知れない謎の薬草に魅せられている.しかし,日本で生活しているとあの謎の草を食べる機会にほとんど恵まれないのが残念でならない.

タイの中南部,ナコーンシンタンマラートという地方都市に出張した.いろいろ案内してくれた現地の担当者が「ここまで来てカノムジーンを食べないでは帰させない」と,カノムジーンの名店に連れてきてくれた.

カノムジーンとは,米を原料とする素麺のような麺に,ピクルスや豆などの付け合わせや鶏の揚げたものを添えて食べる料理である.単なる素麺ではなく,その上から何種類ものカレーソースから好みのものを選んでかける.辛いものからマイルドなものまでたくさんの種類を選べる.シーフードあり,チキンあり,どれも美味しい.お好みでミックスしても構わない.さらに,写真のようなたくさんの種類の葉っぱを好きなだけちぎり,最後に全部を混ぜて食べる.

雰囲気としてはベトナムのブンボーフエに似ている.ただし,こちらのほうがバラエティに富んでいて楽しい.

食べ方としてはこんな感じ.ただしこれは混ぜ混ぜする前の写真である.

ドライハーブとフレッシュハーブ

以前,ASEANの仕事に関わったことがあり,その際に,タイとベトナムから来ていた方々と話をした.曰く,「タイ料理はドライハーブを使い,ベトナム料理はフレッシュハーブを使うのだ」という.私はタイ料理もベトナム料理もどちらも好きだが,どちらがより好きか?と問われれば,草(ハーブ)だいすきという意味ではベトナム料理が優っているし,料理のバラエティからすればタイ料理も捨てがたいと感じていた.

さらに,タイの東北部,イサーン地方の料理に好きなものが多く,フレッシュなハーブを多用するラープはタイ料理のなかでも大好きなもののひとつである.イサーン地方はラオスを挟んでベトナムにも近い.さもありなん……と,これまでは思っていた.

ところが今回のカノムジーンである.ベトナムからは遠く離れたタイ中南部.ここでもこんなにフレッシュなハーブ使うんじゃん?

葉っぱはどこから?

ところでこの草たち,いったいどこから持ってきているのだろう,という疑惑がむくむくと湧き上がる.

今回連れて行ってもらったカノムジーンの店は郊外にあり,ど田舎の一軒家という風情の店だった.食卓はテラス席,といえば聞こえはよいが,庭に無造作に建てられた日除けの下,アウトドア席である.天気もよいので,これはこれで,なかなか気持ちのよい食事ができる.

さて,草である.

裏手に大きな鉢がいくつか転がっていたのだが,その鉢でいろいろな植物を育てている様子が窺えた.どうも,そこでこれらのハーブを栽培しているらしい.そこから収穫して持ってきているようにみえる.まあ,それはそれで全く構わないし,美味しいのだから問題ない.

夏に学生たちをベトナムに連れて行ったときに,この草の由来が問題になった.連れて行った学生のひとりが,「そもそもどこから持ってきた草なのか怪しすぎて食べたくありません」と言うのだ.

ホーチミン市の近代的な食堂である.タイの片田舎(といっては失礼だが)の郊外にある大自然に囲まれた店とは違う.それらの草はマーケットで買ってきた,「ちゃんとした」ものだろう.当該学生と一緒に市内のスーパーマーケットに行く機会があり,野菜売り場を覗いてみた.そこには多様なハーブがたくさん並んでいた.

「どう?これで大丈夫と思った?」と聞いてみたが,やはり抵抗があるとか.まあ,人それぞれか.

薬草だから大丈夫

話はいまから20年前,2003年に遡る.私が東南アジア関係の仕事に関わりはじめたころで,初めて東南アジアに出張したときのことだ.行き先はベトナム,よくある話で「水には気をつけろ.不衛生な水で洗っているから,生野菜は食べないほうがいい」などと脅かされていた.

いまでは「そんなことなかろう」と笑って済ませる話だが,なにしろ右も左も分からなかった当時のこと,忠実に言いつけを守っていた.しかし,1週間ほど滞在した最終日に,案の定,腹を下してしまう.

そのときに,現地駐在の長かった某社現地法人の支社長から「ハーブを食べなさい.これは薬草だから大丈夫」と,諭されたことを今でもはっきりと覚えている.

おそらく冗談半分だったろうが,強く印象に残っている.その後,生野菜なんかよりもっと危ない食べ物を口にして腹を思いっきり下したこともあり,いろいろな体験をした結果,私も成長した.東南アジア各国のどこに行っても生野菜は平気で食べるし,ビールも氷を入れて飲む東南アジアのスタイルじゃないと飲んだ気がしない.