2020年10月30日金曜日

オンライン大学祭(iTL Fest. 2020)

大学の構内に入構規制がかかっているというこの状況でも,学生たちは活動を止めないぞ!と頑張っている.例年この時期は白門祭という名の大学祭が実施されているが,今年はリアルの学祭を開催することができない.しかし,中央大学国際情報学部(iTL)では,オンラインで大学祭を実施すべく,学生たちが準備を進めてきた.

この「Chuo Univ iTL Fest. 2020(中央大学 国際情報学部 オンライン学園祭 2020)」はそんな彼ら彼女らなりの表現である.昨年度発足した新しい学部のため,まだ2年生と1年生しかいないが,少数精鋭?で張り切って活動しているので,ぜひ応援してあげてください.



2020年10月29日木曜日

「にこP」スタート!

やれオンラインがよい対面じゃなければダメだなど二項対立的な議論が世間を賑やかしているが,今回は,オンライン「だからこそ」実現できた教育の取組みを紹介したい.その名も「にこP」……「に」日本語が通じない「こ」高校生と話そう「P」プロジェクト,である.

このプロジェクトは日本と海外の高校をZoomやWebexなどのオンラインミーティングシステムで繋ぎ,高校生同士,英会話で異文化交流しようというものだ.春から準備を進めてきて,この秋に日本と台湾の高校それぞれ2校ずつ,2組の交流が予定されている.今日はその記念すべき第1回,オンラインでの第1回のコミュニケーションが行われた.

この図は実際に交流を行っている様子のスクリーンショットである.オブザーバとして参加している2名(上の二人)はともかくとして,左下と右下に,日本の高校,台湾の高校の,それぞれの教室での様子が写し出されている.それぞれ少数のグループに分かれ,英会話によるコミュニケーションが行われた.まずは初回なので,それぞれの学校の紹介や,日本,台湾での生活の様子などが語り合われたはず.

このような取組みは,まさに,オンラインならではといえよう.実際に高校生を現地に連れて行って交流させるに越したことはないが,それには期間と費用がかかってしまうし,長期間の交流は難しい.オンラインであれば手軽に交流できるし,長期に渡って実施できる.今回も,期間中,3回のオンライン交流を予定している.

2020年10月28日水曜日

学生同士の学び合いを促すには

「課題に対するフィードバックをしっかりせよ」とのお達し(「課題を出してきちんと面倒を見よ」だったかな,まあ,ようは「ちゃんと目をかけよ」ということ)を真面目に守ろうとすると,教員の負担は相当に高まってしまう.教員が疲労困憊して潰れてしまっては,元も子もない.本末転倒であろう.

後期は対面の講義も再開しつつあるが,前期のオンライン講義での経験を踏まえて,対面講義でも課題に対するフィードバックは丁寧にできればそれに越したことはないと心がけている.そのうえで,教員の負荷を軽減するにはどうするか.そのための手段のひとつとして,学生同士の学び合いを鼓舞して相互学習を支援することを考えた.

課題の提出とともに質問をしてくる学生は多い.しかし,それに直接答えて片付けると,いつまでも1対nの関係が続く.1である教員は時間もとられるし献身的な対応を迫られる.そのため,質問は掲示板に誘導することで,n対nの対応によって相互解決を図るように,少しでも移ってくれればよいと考えた.

もともとオンライン・対面併用を余儀なくされたために考えた掲示板の活用ではあるが,オンラインであろうが対面であろうが,掲示板を活用して学生の疑問を解決するというアイデアは悪くはない.対面の教室では1-2-4-allメソッドで似たような解決が図られているので,非同期型のオンライン講義(オンデマンド講義)であっても類似の議論はあってしかるべきだろうし,それ以外のスタイルでも「使えるものは何でも使う」という貪欲な姿勢が重要であろう.

図は現在の掲示板活用の様子である.そこそこ,うまくいき始めているようにみえる.毎日,朝起きたらチェックして,新しい質問が出ていたら,少し,議論を促すような投稿をするだけでよい.その程度であれば習慣付けてしまえばなんということはない.



2020年10月26日月曜日

1-2-4-allメソッドをやってみた

 日本人はシャイな性格なのか,教室で議論をするような演習科目であってもなかなか質問をしないという問題がある.これはオンラインでも似たような傾向を観測することができ,「個別の対応だと質問をするけれど掲示板に書き込むのは躊躇するという行動がみられる」と報告したところ同じような状況は他でもあるとのコメントをいただいた.

そのスレで「質問やコメントを促す1-2-4-allというメソッドがあるよ」と教えていただき,さっそく,1年生の基礎演習でやってみた.もっとも,現場に合わせて少し手順を変更し,実際にやったのは「1-3-all」メソッドである.いまちょうど輪読という形でグループ発表させているところだったので,あるグループの発表が終わったところで,そのメソッドを実施してみた.

ステップ1:「最初に1分間で,自分の質問なり意見なりをまとめよう」と指示.ただし,これは,「発表中に分からないところやオヤ?と思うところ,共感したところなんかがあったら必ずメモをするように」と既に指示してあるので,そのメモをきちんと文章にするだけである.それでも「頭んなかで考えるだけじゃだめだかんね?文章にしないと人に伝えられないからね?」と,強調した.文章化するところに意味がある.

ステップ2:その次は,3人ひと組のグループで「次に,グループで何を質問するか(コメントするか),考えてください.5分間あげます」と指示.3人ひと組になっている理由は,教室の密を避けるためにちょうど1島3人の配分になっていたからである.ただし早々と意見がまとまってしまったグループが現れたため,意見がまとまったところから次のステップに移ってよし,とした.ここは,改善の余地が残るところかもしれない.

ステップ3:そして最後のステップとして,responの匿名アンケート機能を使い,グループごとに匿名の質問やコメントを投稿することとした.これはグループごとなので記名式の掲示板を使い代表者が投稿するようにしてもよかったが,自由な意見の提出を見込んで匿名アンケート機能を使ってみた.匿名で提出された意見は,スクリーンに映し出された私のPC画面に次々と表示されるので,質問者・回答者・他のグループの全てに関して,その場で共有される.

全ての意見・質問が出揃う間,発表者のグループには「回答を考えること」と指示し,その他の参加者にも,「提出してしまったからといってボーッとしていないで,他のグループが投稿した質問の答えを,自分たちでも考えてみよう」と水を向けたところ,教室のあちこちで議論が起こっていたのでこれはなかなかよい反応だと感じた.

最後に,出揃った質問をテーマにして教室内でディスカッション.まあ,発表者が回答を提示して不足なところを教員が補い,さらには教室内からの意見を求めるというような感じで,意外とイイゾ?という印象である.もっとも,匿名ベースにしておきながら「このコメントの意味がわからないので補足してください」と発表者からリクエストがあり,(匿名の意味ないじゃーん)と笑いが起きたなどというアクシデントもあったが.

見様見真似でやってみたが,なかなかいい感じだった.もう少し改善の余地はありそうだが,当面はこの方式でやってみることにしようかな.

2020年10月24日土曜日

脊髄反射する皆さん

自説をブログの記事にまとめて短めのコメントとともにSNSに投げ,「皆さんはどうお考えですか?」と議論のネタにすることがある.しかし,記事をきちんと読んでから反応してくださる誠実な方々は,残念ながら少数派なのかもしれない.

The Science Post の Study: 70% of Facebook users only read the headline of science stories before commenting という記事があるが,まさにこれ.たぶんそのくらいの人々はちゃんと読んでくれてないなという印象を受ける.なお,この記事自体に仕掛けがあって,きちんと読むとクスッとする巧妙な記事になっている.ぜひ,一読をオススメしたい.

というのも,先日Facebookのグループに「インデントの大切さを効果的に教える方法って何がいいでしょうか?」というコメントとともに,「初学者に説くインデントの重要性」という記事へのリンクを投稿した.記事をきちんと読んでくだされば分かるが,Pythonについても記事のなかで次のとおりちゃんと言及している.

最初はPythonで学べばよいという指摘を頂いたこともある.たしかにPythonであれば,インデントでスコープを表現するので,スコープが崩れていると,そもそも意図したとおりに動作しない.しかし,これは主義主張の面もあるが,そもそもスコープをインデントのみで表すことに疑問があるので,素直に受け入れがたいところがある

にも関わらず,「Pythonで学習すれば解決」というコメントをくださった方の多かったこと!読んだうえで異論があるというならいくらでも議論の余地はあろうというものだが,そのひと言もないのでどうしようもない(ここまで読んでくださった方,どうもありがとうございます).

2020年10月23日金曜日

句読点問題

 〇〇先生,

……から始めた電子メールを国文学を専攻する某先生に送ったら,「失礼である」と叱られたことがある.こちらは英文流でそう書いていただけなのだったが.つまりまだ電子メールが海の向こうのものだった時代からの習慣で,宛名の最後には自然とカンマを付けていた.

しかし,その「〇〇先生,」の最後に付けられた「,」が問題だったのだ.ご丁寧にも,

私はいまでも私信には句読点は使いません

と指導いただいた.

漢文のレ点や一二点と同じくオマエこれどこで切って読むか分からんやろうからおしえたろうっていう意味が句読点にはあるので相手を尊重する文書に使ったらあかんのやましてや宛名に付けるたあどういう了見かって教えていただいたたしかにそう言われるとよく会社の社長が交代しましたとかうやうやしく届く挨拶文て句読点ついてないよねついでにいえば紙のカドが丸くなっているところにも意味があるんだそうだけどそんなわけで文学部にいたときはいろいろと知的刺激を受けてひとつオトナになった気がしたものであるこの文とても読みにくいでしょうどうもすみません

あ,あと(句読点使わないとわけわからん文章になっちゃうので,元に戻すよ),〇〇先生と相手を呼ぶときは名字だけにして,自分はフルネームにするとかなんとか.ということも.

えっとこれ理由なんだったっけかなあ.相手は偉い(とする)方だから名が通っていて名字だけでよくて,自分は未熟で有名でもない小人物だからフルネームで書かないといけない,とかそんな理由だったかなあ.まあ,それを教えてもらってそれまで「飯尾」だけのシグネチャだったのを「飯尾淳」とフルネームで書くようにした.まあ,お辞儀ハンコと一緒で「くだらない!」と一蹴してもいいような話な気もするが,お辞儀ハンコなんかと違っていちおうは歴史のある文化の話なので無下にはできない(かもしれない)



2020年10月22日木曜日

初学者に説くインデントの重要性

プログラミングの初学者に指導をしていると,インデントが雑なコードによく当たる.いちばん酷い例は,まったくインデントをしていないケースもある.いちおう,「ブロックの単位で行を下げて,インデントというものをするんだよ」と指導はするものの,ボーッと聞いていて聞き逃していたり,なんとなく忘れてしまったりという状況で,インデントに気を配らないようだ.

しかし,ブロックの対応がどこからどこまでなのかを明記するために,インデントはきちんとしないとバグの温床になる.したがって,インデントの概念はきちんと理解させておきたいところ.はて,どうしたものだろうか.

さあどうしよう

まず,最新のツールを使えばよいだろうという解が考えられる.最新のエディタを使えば,そんなんよしなにやってくれるじゃん,というものである.しかし,これ,さきの「ボーッと聞いていて聞き逃す」と同じ懸念がある.すなわち,ツールがよしなにやってくれるからほとんど意識に残らないという懸念である.

最初はPythonで学べばよいという指摘を頂いたこともある.たしかにPythonであれば,インデントでスコープを表現するので,スコープが崩れていると,そもそも意図したとおりに動作しない.しかし,これは主義主張の面もあるが,そもそもスコープをインデントのみで表すことに疑問があるので,素直に受け入れがたいところがある(複数人で開発を行っているとインデントがすぐに崩れてしまい,週に1度のペースで「今日はコード整備の日」とlintを掛けた経験があり,トラウマになっている.そんなんでロジックが変わったらたまらん,という懸念である).

手でインデントを設定させて,昔ながらのlintやindentで修正させるというやり方は,手間はかかるが意識させるという点では有効なのではないかとも考えているが,いささかオールドファッションドな感覚は否めない.

自分のときはどうだったっけかな…… というのはもうはるか昔の話で忘れてしまった.まだまだ試行錯誤は続きそうだなあ.



引用してもらえるのはありがたい,が

 2016年にWSSMで話したAttendance Management System Using a Mobile Device and a Web Applicationという予稿がボチボチと引用されていて,まあ,ありがたいことではある(本当はこれ,その後extendedなやつがjournal paperになってるので,そっち引用してほしいんだけど).しかし,うーん,なんかなあ,ちゃんと読んでほしいよなあ,と思うような引用が多くて……

なんでしょう,素直に喜べない.

まずはコレ.

A similar situation is compared with the study by J. Iio [18], which requires a card reader, ... おいおいちょっと待ってくれ,私の提案したシステムはカードリーダーなんて使わないぞう?

次,コレ.

A study in [23] captures the attendees' photos and therefore asks them to sign the photos. 違う!違うよママン!自撮り画像「または」手描きサインのどちらかで出席を取るんだってば!自撮り画像「に」サインするんじゃないよう……オヨヨヨ.

ほんでもってコレ.

by Nippon Systems Development [16] て.確かにそんなん紹介したかもしれないけどさあ.私,Nippon System Developmentとは何の関係もないですぜ?これは,いわゆる孫引きというやつですな.こういうのはダメです.やっちゃダメ.ありがたくない.

次はコレ.

うちのシステムはRFIDなんて使ってないんだけど?なんでRFIDを使うソリューションの説明で唐突に引用してるのさ.テキトーすぎるやろ,いくらなんでも.

どんどんいきますよ.コレです.

なんて書いてあるんでしょう.何語?マレー語かインドネシア語あたりでしょうか.カメレオンコードについて述べているようです.将来展望のところでカメレオンコードの利用について述べました.まあ,間違ってはいないけれど.

最後です,コレ.

Another research paper published by Iio, introduced an attendance system based on a standalone mobile appliication on the instructor's smart phone [4]. The instructor passes his mobile with the application to students one by one. そうそう!そうですよ.これは正しく読んでくださっている.ありがたい.こういうのは嬉しいなあ.

てなわけで,皆さん,テキトーに読んだふりして引用しちゃダメですよ(自戒を込めて)

「楽しそうな動画」観ちゃう症候群

いまはだいぶLMS側のインフラが整ってきたのか,私が使っているLMSではアップロードできる動画が50MBまでとそれなりに大きなファイルを登録することができるようになっている.しかし,今年度の始め,オンライン講義が強いられた当初は混乱が生じており,アップロードできる動画のサイズは10MBまでに制限されていた.このサイズだと数分の短い動画しか登録することはできず,畢竟,外部のストレージに動画を置いて,そちらを参照せよという解決策が提示された.

以上のようなこともあり,私はオンライン講義(オンデマンド講義)用にYouTubeを活用することに決め,もはや大学教員かYouTuberかという勢いでYouTubeに動画を登録している(関連記事「大学教員もYouTuber化の時代?」も参照されたい).

YouTube利用の問題点

ところで,YouTube動画の作業をしていると,つい,オモシロ動画を観てしまい,気付いたら「おっと作業しなきゃならなかったんだ」と時間を無駄に潰してしまうことがある(私だけ?すみません).まさにGoogleにしてやられているというところでお恥ずかしい限りだが,これは,学生も同じではなかろうか.

そんな話をしていたら,ある先生から「学生から『おすすめ動画見ちゃうから動画へのリンクに?rel=0をつけてください』と言われました」と報告を受けた.これは,現在YouTube画面で観るときは無効になっているらしいのだが,埋め込み動画にしたときには有効とのこと.私の使っているLMSではそもそも視聴が終わると画面はそこで止まるので,あまり意識していなかった.

しかし,そもそもYouTubeの画面で観てしまったら,右側に面白そうな動画が並んで出てしまう.したがって,ページに埋め込んだとしても,図のように画面右下に出る「YouTubeで視聴する」リンクをクリックしてしまえば元の木阿弥である.せめて教員がとり得る対応としては「ココはクリックしないように」ということくらいだろうか.



2020年10月20日火曜日

学生相談室からのメッセージ

この非常事態において少しでも学生の精神的不安感を払拭するために,大学では教職員一丸となって様々な施策を講じている.そのひとつが,学生相談室の活動である.今年は学生相談室も学生に向けて積極的にメッセージを発信しており,例年以上に学生のケアに関して気を配っている.

一例として,「学生の皆さんへ/Dear Students of Chuo University」という学生相談室からの情報発信がある.本当に必要な学生に届いているのか,そもそもこのようなネットでの発信が適しているのかなどいろいろな不安要素はあるが,少なくとも親身になって考えている教職員がいるということを示すことだけでも意味はあるだろう.

私も学生相談員を拝命しており,先日,微力ながらメッセージをしたためた.バックナンバーとともに,紹介しておきたい.英語版が遅れて公開されている点は改善の余地はあるかもしれない.東大などでは日英同時にメッセージを出していて流石だなと思うが,リソースの問題もあるのでご容赦いただきたい.




2020年10月18日日曜日

オンライン化と帰属意識

2020年10月17日に行われた箱根駅伝予選会で,中央大学チームは2位となった.おめでとうございます.今年こそは,シード権を獲得して名門チームとして復活してほしいなというところ.応援したい.ところで,ときどき,白門会と呼ばれるOB組織に呼ばれて講演をすることがある(今年は中止)のだが,ある年にちょうどこの予選会当日がその講演会の日だったことがある.そのときは講演会後の懇親会でも箱根予選会の話題でもちきりであった.今年はそのような光景がみられないんだなあと思うと,せっかく2位になったのに素直に喜べないような気もする.

さて,のっけから日記のような話で恐縮ではあるが,この話は本稿で主張したいことと強い関係がある.すなわち,大学のオンライン化が進むと〇〇大生である誇りや帰属意識は失われるのではないかという危惧である.これは大学に限った話ではなく,企業でも,新人が入社してテレワークばかりでは,会社に対するロイヤルティは醸成されないだろう(その結果として社会の流動性が増すのであれば,悪い話ではないとも考えられるかな?).

帰属意識と人的ネットワークの醸成

また,私の個人的な話で恐縮ではあるが,最終学歴を問われたときに,東京大学と書くべきか大阪大学と書くべきか,悩むことがある.もちろん,形式的には大学院の社会人博士課程として在籍していた大阪大学が最終学歴になるはずではあるが,それこそ東京で生活しつつ,遠隔で参加していた大阪大学の想い出は少なく,心情としては東大の修士課程での学びが最終学歴なんじゃないかと悩んでしまう.

学生時代の出来事を想い出すのは学部・修士の頃がほとんどであって,阪大時代の想い出は,研究室内での出来事くらいしかない.研究室外での想い出といえば年に一度の講演発表会くらいしかない.今になって様々なシーンで役に立っている人間関係の多くは,学部・修士時代に築いたものだ.阪大で築いた人間関係は,残念ながら研究室関係のみに留まっている(もちろんそのネットワークも濃密かつ大切なものではあるが).

あらゆるものがオンライン化し組織がバーチャルになると,このような副次的な効果は確実に薄れていくだろう.それでよいのかダメなのか,そのような観点からの議論も必要になるのではなかろうか.

通信制大学の苦悩?

通信制の大学ではどうしているのか,2例と数少ないながら,関係者が情報を教えてくださった.まず,早稲田大学人間科学部eスクールをご卒業されたS先生によれば,年に二回,懇親会があるとのこと.そこでは毎回,応援団とチアガールが現れて,校歌や応援歌を指導しつつ,早稲田魂を注入されるのだとか.その結果,「ロイヤルティは通学生以上かもしれません。大隈重信公の墓参りにまで行く卒業生もいますし」とS先生は仰る.

BBT大学では,「コロナ以前だけれど……」との断り書き付きで,入学式の後に懇親会があり,新入生が,大前先生や先生方と直接お話できるようになっている,つまり,遠隔で講義を受ける前に会って話をする機会を設けている,と別のS先生が教えてくださった.

他の通信制大学ではどうなのか,気になるところだが,やはり,このように対面でのコミュニケーション機会を補うことが必要と感じているのであろう.BBT大学関係者のS先生によれば「以前,早稲田も合格したけど,早稲田をけって新卒現役でBBTにきたという学生がいましたが,懇親会では実務系の有名どころの先生方に,名刺を配って挨拶してまわっていました.最初から,卒業したら起業するつもりのようでした」ということがあったそうで,独立独歩・唯我独尊な人には向いているのではなかろうか.社会全体がそんな人ばかりになったらちょっとどうなのか?とは思うが.

2020年10月15日木曜日

課題のフィードバックとCSCW

SNSでの議論をみていたら,ある先生から,英語教育において,英作文の添削の有無が学生の英語力伸長に寄与するかという著名な研究があること,そして,その研究では添削の有無は英語力の強化には関係ないと結論付けているということを教えていただいた.さらに,議論が進むなかで別の先生から,そもそもフィードバック研究という研究領域があることも教えていただいた.世の中,なんでも研究対象になるのだなあという小並感のみならず,学生の課題提出にどう答えていくかに悩んでいる身としては,いろいろ考えさせられる話題ではある.

学生の声にどう応えるか

2020年度のこのオンライン講義化が加速した状況において,「オンラインで講義を行うことはよいが,課題を与えてきちんと対応すること」という文科省の指導に右往左往した先生方は多いことであろう.私もその一人である.根がマジメなものだから(?),100人の履修生がいる講義で学生に課した課題に逐一フィードバックを返していたので,もう,疲労困憊といった状況になってしまった.来年も同様の状況になるとしたら,少し,やり方を考えねばならないなと思った次第.

そもそもその論文を読んでいないので,冒頭の,フィードバックは関係ない,という指摘がどういう状況なのか,分からない.おそらく「英作文の添削」と「英語力」という文脈にかなり依存するのではないか?と推測するしかないが,あらゆる状況においてフィードバックが無駄,というわけではなかろう.その他の先生方の指摘から考えても,それぞれ状況や学生のレベル,あるいは,積極性や講義内容への興味度合いなど,全てを十把一絡げにして論じるのはいささか乱暴である.文脈を踏まえて論ずるべきだ.

とはいえ,いずれにしても,課題をどう与えるか,それに対してどう応えるか,現状,我々大学教員に突きつけられている問題の1つである.

CSCWという見方

ところで,今回のオンライン化で疲労困憊した原因のひとつに,丁寧に課題提出にフィードバックしていたら何度も何度もやり取りが続いてキリがなかったという学生が何名かいた点も含まれる.もちろん,これは学生にとっては意義があるはずだろうし(だって問題解決まで丁寧に付き合っているのだから,フィードバックの効果が無いはずがない),教員側のリソースとして対応可能なレベルであれば,丁寧な対応を心がけるのは吝かではない.

一方で,オンライン化の問題点として「学生同士の交流が少ない」という点も指摘されている.私の反省点もそこにある.学生←→教員というチャネルは履修学生の数ぶん存在したが,学生間のチャネルがなかったために,結節点である教員に負担が集中したという図式である.

その反省を活かして,後期は,LMSの使い方として掲示板の活用を積極的に行うこととした.課題のフィードバックも,あえて掲示板に向けることで,学生同士の解決を促したわけだ.

CSCWという概念がある.Computer Supported Collaborative Work(コンピュータ支援協調作業)である.この分野も歴史は古く,これまでさまざまなアイデアが提案されてきた.オンラインでの学修はこのCSCWの多様な成果を応用できないだろうか.個々の学生と教員という構図だけでなく,学生同士のインタラクションも巻き込んだCSCWの環境を上手に作ることができれば,教員の負担を軽減しつつ,学修効果を挙げるということも可能なのではないかと期待するところである.




2020年10月14日水曜日

オンライン講義のメリット

 今期,私のゼミ活動ではWebアプリケーションを作成してそれを使って何らかのデータを取得,分析するという活動を行おうとしている.ところが,一部のゼミ生のプログラミングに関する知識が極めてあやふやであることが露呈し,「不安のある人は1年生用に作っている『プログラミング基礎』の動画を視聴して勉強しなおすこと!」と指示した.これはオンライン講義の副次的効果というか,オンライン講義ならではの副産物といえよう.

必修で「プログラミング基礎」の単位は取得しているはずのゼミ生ではあるが,学生の受講態度も様々だったために,習得している知識に差があるのは致し方ないところ.しかし,まさか1年生に混じって再履修させるわけにもいかないし,あらためて補講するのはかなり大変だ.どうしたものかと頭を抱えたのだが,そうかせっかく作っている授業の動画コンテンツを視聴させればよいではないかと考えた.

動画を視聴したうえでの質問はゼミ活動のなかで受け付けるようにした.LMSの掲示板等を用いていつでも質問してきなさいと指示.このくらいの手間であれば,少人数のゼミであれば十分に対応可能である.

オンライン講義も使いようだと感じた一件であった.

なお,「プログラミング基礎」は複数の教員が分担して国際情報学部の全学生を対象として必修として実施している科目であるが,私の動画は他のクラスの学生からも視聴できるように情報共有している.このようにすれば,より積極的に学びたい学生は複数の教員からの指導を受けられるというメリットも得られる.基礎的科目であり教員間の連携も取りながら実施している科目なので,教えている内容に齟齬が生じるリスクは少ない.このようなことが可能になるのも,オンライン教材ならではのメリットといえるだろう.

学生に示したLMSの画面(一部)


2020年10月12日月曜日

オンライン講義と反転授業

2020年はオンライン講義に揺れた大学だったが後期は部分的に対面型の講義も行うようになっている.私が担当する1年生向けの「プログラミング基礎」という授業は演習含みの授業のため対面で実施することとなった.新入生は,本講義に参加するために週に1度は登校することになり,学習環境は若干改善されたかな?

ところが,オンラインを希望しない,あるいは,事情があって教室での講義に参加できないという学生もいる.社会的情勢に鑑みて,対面の講義にもオンライン参加を許可すること,そしてそのような学生に不利にならないように配慮することが求められた.教員の負担は大きいが,致し方ないところではある.

そこで,今回,オンライン参加と教室での参加の両方に対応するために,反転授業の方式をとることにした.事前に講義動画を収録し,オンライン参加でも対面参加でも,いずれもそれを視聴することを前提とするという方式である(図).


基本的には動画で完結するため,オンライン参加でも問題はない.しかし,せっかくの対面授業なので,反転授業に挑戦することにした.幸にして「プログラミング基礎」という科目のため,講義時間を丁寧な演習に当てることにしたのである.

さらに,前期一度も登校できなかった新入生ということもあり,毎回,ランダムに席替えを実施,ペアプログラミングの方法で,お互いが教え合うようにすることで学生同士の交流にも配慮した.プログラミング自体に強い興味をもち,かなり積極的に受講している学生が数人いるので,これは全体に対してもたいへんよい刺激になっているようである.また,お互いに教え合うことで教員の負担も軽くなっている.これはオンラインでも同様で,LMSの掲示板を用いて相互に情報をやりとりし合うように水を向けた.教員としてはファシリテーションに注力し,たまに,付加的な情報を伝える,あるいは間違っている点があれば訂正してあげればよい.

今日までに3回の講義が終わり,いまのところ,順調に推移しているようにみえる.課題の提出状況をみると,昨年よりも学習の効果は高くなっている印象を受ける.もっとも,これは「応用クラス」のせいかもしれないが……(「プログラミング基礎」は1年次必修の科目だが,学生の興味の度合いにより「基本クラス」と「応用クラス」に分けてクラス編成を実施した).

2020年10月9日金曜日

ある奇妙なプログラムのふるまいについて

 まずはこの,Cのプログラムを見ていただきたい.

#include <stdio.h>


int main() {

  int a = 0;

  printf("Please type an integer number: ");

  scanf("%d", &a);

  a = a * 100;

  printf("Your number * 100 = %d\n", a);

}

このプログラムが,hogehoge.cというファイル名で保存されているとする.

コンパイルして実行してみよう.入力した整数を100倍した計算結果が出力される.

$ gcc hogehoge.c 

$ ./a.out

Please type an integer number: 123

Your number * 100 = 12300

ところで,次のようなプログラムを書いた人がいた.

#include <stdio.h>

  

int main() {

  int a = a * 100;

  printf("Please type an integer number: ");

  scanf("%d", &a);

  printf("Your number * 100 = %d\n", a);

}

変数宣言と,代入演算子「=」を用いた自己代入を混同してしまったらしい.珍しいミスだなと思いつつも,コンパイルしてみた.ところがどっこい,これ,なんと,エラーにならないじゃない?

$ gcc hogehoge.c 

$ ./a.out

Please type an integer number: 123

Your number * 100 = 123

もちろん計算結果は100倍にはならない.scanfprintfの間に100倍する操作が抜けているので,まあ,そりゃ,そうなるだろう.しかし,プログラムとしてはエラーにならず動作する.

次に,-Wallを付けてコンパイルしてみた.

$ gcc -Wall hogehoge.c 

hogehoge.c:4:11: warning: variable 'a' is uninitialized when used within its own initialization

      [-Wuninitialized]

  int a = a * 100;

      ~   ^

1 warning generated.

変数aが初期化されずに使われているという警告が出た.なぜこのような解釈になるのか.まず,変数宣言されて(int a),次に,初期化せず使われた(a * 100)ということになるらしい.なるほど,面白い.

手続き型のプログラミングを前提としているので,「構造化プログラミングが教える連結・分岐・反復のうち,連結(つまり上から順番に実行するということ)はわざわざ教えんでもええやろう,hello worldから始まって,少しずつプログラムを習ってきているうちに,みな自然と理解してるよな?」と思っていた.しかし,順番をあまり意識することのない関数型や宣言型的な発想に素で至ることもあるんだなあと,その自由な発想力に少し驚いた次第である.

ん?なんかおかしいぞ?

  

2020年10月8日木曜日

変数のスコープ問題

 次のプログラムを実行すると,どうなるでしょう?

#include <stdio.h>

int main() {

  int a = 100;

  printf("a = %d\n", a);

  {

    int a = 200;

    printf("a = %d\n", a);

  }

  printf("a = %d\n", a);

  return 0;

}


次のプログラムは少しだけ上のプログラムと違います.このプログラムを実行すると,どうなるでしょう?

#include <stdio.h>

int main() {

  int a = 100;

  printf("a = %d\n", a);

  {

    a = 200;

    printf("a = %d\n", a);

  }

  printf("a = %d\n", a);

  return 0;

}



ビミョーな違いなんだけど


渋谷で落ち着いた相談をしたければ

渋谷駅周辺はまさに雑踏の見本というべき状況でいつもガヤガヤしていてなかなか落ち着く場所もない.そして駅近の喫茶店はいつも混んでいる.スクランブル交差点対面にあるTSUTAYA上のスタバなんてもう入れた試しがないくらい混んでるし,井の頭線連絡通路側,マークシティのスタバも同じ(こっちのほうがまだマシ?).落ち着いた相談事をしたいなら,どこに行けばいい?

もちろん駅からちょっと離れれば,良い場所はいくらでもある.渋谷に何軒かあるカフェ・ミヤマなんてeduroamも飛んでるし,静かで長居もできる(すんなよ!).ただちょっと場所が分かりにくくて人に説明しづらいのが難点なんだよな.

新南口駅前のカヘベロチも場所は分かりやすい(なにしろ駅出てすぐ目の前にある)し落ち着けるしでとてもよい.学生指導にときどき使っているけれど,そちらは連絡通路をかなり歩いていただくことになるのでかなり遠い(駅近なのに遠いというのはこれいかにw)のが残念だ.

で,分かりやすくて駅からさほど離れていなくて,そして人はあまり居なくて落ち着いたところといえば,渋谷ストリームのスタバが最適!本当は教えたくないくらい.

というわけでスタバの渋谷ストリーム店への行き方:

  1. JR,3Fの改札を出て,ヒカリエ方面(東側)に向かう.銀座線だったらJR側の改札を出ればよろしい(3Fなので).井の頭線で来たら,JRを越えてくること.地下鉄の人はなんとかしてスクランブルスクエアの2Fまで上がってこよう
  2. 2Fに降りるエスカレータで2Fにおりる(そのまままっすぐ行くとヒカリエなので,そちらには進まないこと
  3. 右に曲がり,スクランブルスクエア内の通路を南へ進む
  4. 東口歩道橋に出るので,メインの歩道橋に進まず,右側のストリームに渡る歩道橋を進んで246を渡る
  5. さあもうゴールは目前,ストリーム内通路の右手にスタバを発見するはずだ!



 

2020年10月3日土曜日

ACHI2020で研究成果を発表します

11月に開催される国際会議ACHI2020に投稿していた論文が採択されました.“Development and Promotion of Educational Materials on Human-Centered Design”と題した本論文は,産技大の大崎先生,JVCケンウッドデザインの和井田さんとの共著で,HCDに関する入門教育プログラムを開発して実践したことを報告するものです.

実際にはHCD-Netのワーキンググループで実施した作業をまとめたもので,参加してくださった皆様を共著者としたかったところですが,皆さんを並べるとたいへんな長さになってしまうため,論文化に協力してくださった方のみを共著者としました.WGで活躍した皆さんには謝辞にて御礼を述べることといたします.重ねまして感謝申し上げます.


2020年10月1日木曜日

RWC2020で講演します

 IJWIS論文採択に続き,RWC2020講演の採択結果も届きました.こういうのは何件いただいてもありがたいですね(ミルクボーイかよ)「RubyおよびRuby on Railsを用いたデータサイエンス教育」というお話を30分いたします.オンライン開催なので,松江にお邪魔できないのは残念ですけどね.



IJWIS誌に論文が掲載されます

この春から文学部の若林先生と共同研究を進めている国際的異文化交流教育支援の研究成果がぼちぼち出はじめてきました. 

Dialogbook: A Proposal for Simple e-Portfolio System for International Communication Learning がInternational Journal of Web Information System に掲載予定(accepted at 30-Sep-2020)となりました.なお,上記のリンクでアクセスできるファイルは,出版社により公開が許可されているAAM(Author Accepted Manuscript)です.正式には DOI (10.1108/IJWIS-09-2020-0059)  で出版される記事をご参照ください(以下,structured abstractおよびlicence statementです)

要約

Purpose – Many learning management systems (LMS) and e-portfolio services that are useful for recording learners’ activities and facilitating communication among students and teachers have been proposed. However, current implementations have several problems. One major issue is that the users of the services provided by these applications are restricted to licensed users only. Another problem is that it is usually impossible for third parties to retrieve the recorded data for research purposes. Therefore, we implemented a simple e-portfolio system to keep records of outputs from the students for our classes.

Design/methodology/approach – The authors developed a system called Dialogbook to help students participating in international communication courses, which provides a simple e-portfolio service and can be used from plural schools.

Findings – Before using the system in our plan of the international communication courses, we checked its values by using it in a mathematics course, which was provided in the university by one of the authors. This paper describes brief reports of the efficiency of the system. This system disclosed the tendencies of self-scoring by participants in the courses.

Originality/value – The paper describes the efficiency of the proposed system for international communication courses that will be held between two or more than two schools. It can be easily used with an inter-organizational education project.

 ライセンス

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