2023年1月30日月曜日

Web3って何だ?って人工知能に訊いてみた

 ある人からWeb3に関する中立的な解説をしてくれと頼まれて,ほとほと困ってしまった.そもそも私はその界隈にさほど詳しくないし,どうにも胡散臭い話しか聞こえてこない.

分散型の新しいインターネットだ!GAFAのくびきから自由になるのだ!などと高い気炎は聞こえてくるものの,をいをいそもそもインターネットの成り立ちをご存知ないか?世界中のLANがTCP/IPで接続された世界,それがインターネットであって,当初から分散型以外の何物でもなかったぞ?

そこで識者(おじさんたち)が集まるSNSの某グループに問うてみたところ,やはりよくわからない,胡散臭いというメッセージをたくさんいただいた.

なんとなく,分散システムで信頼性を担保するシステムの上に成り立つアプリを中心とした新しいインターネットカルチャーのことを言いたいのか?という,答えらしきものが見つかりはしたものの,その実体は未だに漠とした感じで朧げである.

ChatGPTに訊いてみた

というわけで,そういうときこそいま流行りのアイツの出番だ!

訊いてみました.

うーん,うーん…….よくわからない.それっぽいことを言うのは得意だが,本質的なことは決して教えてくれない憎いヤツ!

1.〜3.まではこれまでの,とくにクラウド以前の状況と何が違うの?かろうじて4.がヒントになるかなあ.やはり,分散システムでブロックチェーンを使ってデータの信頼性を担保する,ってあたりがキモ,っていうか,ようするにそれだけの話?

とりあえずその某グループで「この本を読むといいよ」と教えてもらった本を買って読んでみることにするかなあ.

2023年1月29日日曜日

詐欺メール vs 人工知能

Rocketnews24の「【詐欺師vs人工知能】迷惑LINEと対話型AI『ChatGPT』を戦わせてみた」という記事が,なんとも安易な記事だなぁと思いつつも,面白かった.迷惑メッセージとChatGPTを対話させてみようという試みである.「私というイタコを介したChatGPT vs 迷惑LINEの一戦をお届けしようという寸法である」(同記事より)だそうだ.

ChatGPTが正論をぶちかまし,あっという間に決着がついてしまったというオチはたいして面白いものでもないが,とにかく詐欺野郎とChatGPTを対話させてみようという発想がいい.それは思いつかなかったなー.

そこで私も,たまたま届いていた迷惑メールをChatGPTに投げ入れてみた.元の文章は引用しないが,ようするに「ウィルスを仕掛けてあんたがエッチなサイトみてセルフプレジャーしてるところをカメラで撮影したからそればら撒かれたくなかったら云々かんぬん」というアレである.

というわけで,そのメッセージをそのまま投げ入れて返ってきたChatGPTの御信託がこちら.

This message is a scam known as "sextortion". The person who sent this message is attempting to extort money from you by threatening to share a fabricated video of you. It is important to note that the message is not true and that the sender does not have access to your device or any compromising videos of you. Do not send any money or personal information to the person who sent this message. If you feel uncomfortable or concerned, it may be a good idea to run a scan on your device with a reputable antivirus program and to change any passwords that you may have used recently. It is also important to be cautious when browsing the internet and to avoid visiting suspicious or unsafe websites.

まあそうですね.仰るとおりですわ.DeepLで翻訳してみた.

このメッセージは「セクストーション」と呼ばれる詐欺です。このメッセージを送った人物は、あなたの捏造したビデオを共有すると脅すことで、あなたからお金を強奪しようとしています。このメッセージは真実ではなく、送信者はあなたのデバイスやあなたの危険なビデオにアクセスすることはできないことに注意してください。このメッセージを送ってきた相手には、金銭や個人情報を送らないようにしてください。不安や心配を感じたら、信頼できるアンチウイルスプログラムでデバイスのスキャンを実行し、最近使ったかもしれないパスワードを変更するのがよいかもしれません。また、インターネットを閲覧する際には、怪しいサイトや安全でないサイトにはアクセスしないよう、慎重になることが大切です。

まさに,ど正論.人工知能ごいすー.



2023年1月23日月曜日

なぜ情報を惜しげもなく公開するのか

2000年前半から10年ほど,私はフリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアにガッツリ関わる生活をしていた.自らが作成したプロダクトをOSSとして公開もしていたし,経済産業省がOSSを担いで日本のIT市場振興をしようとしていた手伝いもした.後者はなんだかんだいって大小取り混ぜて100件近い数のプロジェクトに関わり,いろいろ得難い体験もさせてもらった.

そんなわけで,OSSの考え方は今でも思考の根幹を支える重要な概念になっているし,チェスブロー教授が提唱するオープンイノベーションなどの考えにもとても共感する.そういえばFLOSS(Free, Libre, and Open-Source Software)関連の書籍も出していたっけ(残念ながら,あまり売れなかったけれど).

世の中そうでもないのか

とくにインフラ周りを中心として,重要なソフトウェアがOSSとして流通しているので,IT業界にいるとこの考え方は「当たり前」に感じる人も多いことだろう.しかし,業界が変わるとそうでもないのかなということを,先日,目の当たりにした.

世の中そうでもない?〜その経緯

それは,「卒論テンプレート」を頒布しようとしたことに対する反応である.この卒論テンプレート,これまでも秘伝のタレのように継ぎ足し継ぎ足しで作って学生に使わせていたが,いろいろ不具合が出てきたので真っさらから作り直したという代物で,なんとなく形になったから,他の先生方にも使ってみてもらおうとSNSで頒布のアナウンスをしたという経緯である.

まあ,OSSの概念からすると自由にダウンロードしてもらって,という態度が王道ではあるが,今回は,誰に渡したか,どんな人が欲しがるかということも知りたかったので,欲しい方は連絡ちょうだいね,ということにした.その結果,7〜8名の先生方から「欲しい」との連絡を受けた.

世の中そうでもない?〜とある反応

卒論テンプレートをお渡しした先生のなかのお一人から,今回,このファイルを公表し配布した狙いを教えていただきたいという質問をいただいた.彼の周囲にいる教員の方々は教材等の成果物は非公開にして手元に留める方が多い印象とのこと.それゆえに,私の行動に対して「感謝する一方でカルチャーショックを受けた」とぶっちゃけトークで教えてくださった.

その質問に対して,私は次のように答えた.

それは「私が Free Software / Open-Source Software というカルチャーに関連した仕事を長らくしてきたからである」と簡潔に説明できるでしょう.成果物を公開・共有することが自己の利益になる,ということを身をもって体験してきたからです.今回も,さっそく「Windows版でうまくいかん!」というフィードバックをいただき,助かりました.(こうすれば直ったよ)という報告があれば,もっと嬉しいのですが……

もちろん,私が成果物を積極的に公開するのは,他の理由もある.単純に感謝されて嬉しいということもあるし,このようなノウハウを持っていることの宣伝にもなる.情報系研究者の端くれとして,興味の対象のひとつでもある.さらには,これが縁で人的ネットワークが拡大するであろうという野心もあるし,出版社から声がかからないかななどという下心だってある(本件に関する企画提案,受けてくださる出版社があれば,ぜひご連絡を!w)

まだまだ啓発が必要なのか

FLOSSの概念は既に十分に浸透したと私は勝手に思っており,最近は,OSS関連の活動に積極的に関わることも少なくなっていた.しかし,まだまだ啓発活動が必要なのだろうか.オープンイノベーションはIT業界に限らない.学術の世界でも似たようなアイデアは有効だ.

奇しくも論文はオープンアクセスの方向に向かっている.オープンアクセス化するためには多額の費用を払わねばならぬという課題はさておき,知の公開と情報流通のさらなる円滑化に対して,我々は,今後ますます気を配っていくべきであろう.

2023年1月22日日曜日

行間がビヨーンと延びる問題

MS Wordのスタイル機能を駆使して新たに作成した卒論テンプレートを公開したところ,「Windows版のWordだと行間が間延びする」との報告をいただいた.私はMac版のWordでテンプレートを作っており,Windows版の挙動はよくわからない.しかし「あれえ?今年まで使っていたテンプレートはそんな問題は報告されてなかったゾ」ということで,原因究明に乗り出した.

いろいろ調べた結果,フォントの取り扱いと,行数を指定したときに行グリッドに合わせるという設定がいろいろと悪さをしているようで,Windows版では,どうもその計算に問題があるらしいということが分かった.以下,その状況と解決策を報告する.

問題の再現

以下は,まっさらの文書を「新規作成」で用意して作業を進めたものである.

まず,新規作成で白紙の文書を用意する.「=rand()」と入力し,エンターキー(リターンキー)を押すと,ダラダラっと例文が現れる(次図).なお,この機能は,オートコンプリートをオフにしていると無効なので注意.普段は,余計なお世話で邪魔でしかないオートコンプリート機能を叩っ切っておくことをオススメする.

次に,Ctrl+a(コントロールキーを押しながら,aキーを押す)で全文を選択する.このとき,デフォルトではフォントが「游明朝」でフォントサイズが10.5ポイントになっている点に注目していただきたい(図中の丸).


ここで,丸の左下あたりにある「フォントの拡大」ボタンを押す.これを押すと,選択した部分のフォントサイズが10.5ポイントから11ポイントになる.すると,あら不思議!行間のビヨーン,いとも簡単に再現できた.

これ,Mac版だと同じことをやってもビヨーンとならない.結果として非互換の問題が発生する.やれやれ,いったいどうしたものだろうか.

問題への対処方法

いろいろと対策方法は考えられる.まず,フォントを変えるという対応が手っ取り早い.旧来のMS明朝(MSゴシック)だとこの問題が起こらないようである.別のフォント,たとえばメイリオ等でも同様の問題が発生するとも聞いている.

しかし,最近のMSは,游明朝(游ゴシック)の利用を推奨しているようだし,せっかく新しく用意してくれているものを使わないのももったいない.

行数指定を外す,という対応もある.現在のMS Wordは,デフォルトで「行数だけを指定する」という設定になっている.これを「標準の文字数」に変更すれば(図),フォントサイズを大きくしても行間がビヨーンと延びることはなくなる.

だが,これもMac版だと行間が詰まりすぎてしまい,いささか問題がある.このあたりの計算がWindows版とMac版で差があるのも困ったものである.

蛇足ながら,昔からWindowsのMS Officeはフォントメトリクスの計算が怪しく,その結果生じていると思しき困った問題が放置されている.代表的なものとしてExcelのセルに文字いっぱいいっぱい入れると印刷時にはみ出る問題とか,PowerPointに貼り付けたテキストボックスの最後の文字が表示されない問題とか.いい加減ちゃんとしろよ!と指摘したいところだが,まあ,致し方ない(OSの問題なのではないかと推測している).

卒論テンプレートにおける解決策

結局のところ,卒論テンプレートにおいては「本文10.5ポイントでそれより大きくしてはならない」と指示し,運用でカバーするしかないか.見出し等はどうしても10.5ポイント以上になっているため,そこで,若干,よけいな行間が空いているようにみえる.ここでちょっとした非互換が残ってしまうが,気にならない範囲ではある.

見出しの問題は,そのような役物のスタイルにおいて「1ページの行数を指定時に文字をグリッド線に合わせる」というチェックを外しておけばよさそうだが,それも面倒だなあ.

「見出し等」というスタイルを新しく作り,そこで上記のチェックを外した指定にする.そのうえで,基準とするスタイルをそれにすればよいだろうか.親クラスを作っておけばよいということだな.まあ,ぼちぼち考えていくことにしよう.

2023年1月20日金曜日

FY2023卒論テンプレート

先日,Facebookの某グループで,「WYSIWYGの幻想を捨てよ」という記事を紹介した.そのなかで,スタイルガイド機能を活用するとよいと案内した.さらに一歩進めて,卒論用テンプレートを作成したので,紹介したい.今年度はすでに卒業論文が学生から提出済みなので,少し気の早い話ではあるが,来年度の4年生向けである.

実はこの卒論テンプレート,毎年,用意して渡していたのだが,もともとLibreOffice.org用に作っていたものなので,設定の不具合も多数混じっていた.今回は,スクラッチから作成したので,フォントの設定等も含めて最新版の状況になっているはずである.

今後はこれをベースにじっくりと育てていきたいので,皆さんからのフィードバックは歓迎である.ご希望の方は私に連絡をくだされば差し上げます.ぜひとも活用していただければというところである.

2023年1月17日火曜日

WYSIWYGの幻想を捨てよ

WYSIWYGという言葉をご存知だろうか.What You See Is What You Get の略であり,かつて,ワープロ製品の宣伝文句としてしばしば使われたものである.

WYSIWYGって便利?

What you see is what you get, 直訳すれば「あなたの見ているものが,あなたの得られるもの」,すなわち,画面で見たとおりに印刷されて出てくる,とするのは少し意訳が過ぎるだろうか.編集している画面と最終的に得られる結果が同じものである,見たとおりに,最終成果を意識しながら編集できる,とまあ,そんな謳い文句であった.

しかし,世の中そんなに甘くない.フォントグリフの計算誤差でいろいろズレる,粗い解像度の画面では明朝体とゴシック体との区別がつかない,など,ハードウェアやソフトウェアの実装が伴わず,そのような細かな不備が多発,ホントにWYSIWYG?という状況がひきもきらなかった.

ようするに,なんちゃってWYSIWYGでしかなかったわけである.

低品質なアウトプットでいいや,っていう人はそれでよし.しかし,高い品質を求める向きにはまったくもって不十分であり,WYSIWYG?おととい来やがれ,な状況が続いていたのは不幸な歴史としかいいようがない.

そんなわけでちょっとでも気の利いた皆さんは,昔ながらのLaTeXを使ったり,最近ではMarkdownなどのマークアップ言語に活路を見出したりしていた.ただしかし,それはそれでよいのだが,意識の低い皆さんに対して,たとえ一時的にであったとしても,そこまで意識改革を求めるのも,また,難しいところである.

私のオススメ

そこで,私のお勧めする方法は,既存のワープロでスタイルや特殊文字を「可視化」することである.以下の2点を気にするだけで,文書の体裁はだいぶマトモになる(中身はともかくとして……).

  • スタイルを活用,スタイルガイド機能を有効にする
  • タブや改行,スペースなどを表示する設定に変更する

次の図は,スタイルガイドと特殊文字を表示させた状況である.もはやWYSIWYGでもなんでもないが,これだけで「きちんとした体裁が整えられているかどうか」がはっきりとわかる.

皆さんもぜひ試してみてください.

2023年1月8日日曜日

台湾にて古き日本を偲ぶ

正月早々,1月3日から6日まで,台湾に出張した.前回の訪台は2019年のCOSCUP参加のときだったはずだから,実に3年半ぶりである.羽田から松山空港に飛び,持参したEasyCardがMRTの駅でちゃんと使えたのは(当たり前の話ではあるが)なんとなく嬉しかった.

今回訪台した目的は,我々が進めている SMILE project に参加している台湾の学校訪問,および,高雄師範大学関係者とのミーティングである.師範大学の先生方とは,2024年に高雄で実施予定のシンポジウムに関する事実上のキックオフミーティングを行った.

台湾に来ると,いつも「ホッとする」感じを味わうのは何故だろうか.古き良き昭和の日本を感じるのである.もちろん,それは台湾が遅れているなどということではない.久しぶりの台北は,地下鉄の整備もさらに進み,確実に進化していた.日本以上に経済の発展も進んでいる.

しかしながら,人々が温かいのである.我々が券売機でEasyCardにチャージしようとして,なぜか機械がうまく動作せずマゴついていたら,ひとりの青年がスッと寄ってきて手助けしてくれたので,ことなきを得た.

こんなこともあった.台湾人と日本人はその容姿が似ており区別がつきにくい.地下鉄のホームで電車を待っていたら,中国語で何かを尋ねられた.もちろん我々には何を尋ねられているのか皆目わからない.困惑していたら,「あなたがた日本のかたですよね」と上手な日本語を操るオバさんが現れて,我々を助けてくださった.

このようなインタラクションが日本で皆無であるとまでは言わない.しかし,令和の日本で着実に失われつつある光景なのではないかとの印象もある.人々を思いやる心は大切にすべきものだと改めて気付かされた.

台湾は食事も美味しいし,人々も温かい.美しい観光地にも恵まれている.東北での震災で早々に援助の手を差し伸べてくださったのも台湾であった.もちろん,外交はまた別の問題なので,だから台湾とは手を組むべきで敵対する国はどうこうなどと簡単に論じるものではないことも確かではある.しかし,それ以前に,民間人の交流として台湾の皆さんとは仲良くしておきたいと思うのだ(もちろん,民間レベルでは,韓国や中国とも同様であることは異論を待たないことには注意されたい,ていうかこんな補足が必要なのがちょっと情けない話ではある).

写真は高雄灯台からの眺めである.旗津区の街並みと湾を挟んだ対岸がみえる.高雄は今回はじめての訪問だったが,なかなかに素敵な街であった.

2023年1月1日日曜日

今年こそ猫年(ただしインドシナ半島にて)

SNSにおいて,毎年毎年「今年こそネコ年!」と我が家の招太郎に年初の挨拶をさせてきた.上の写真は,左上が今年のそれである.上段が左から2023, 2022, 2021, 下段も左から2020, 2019, 2018, 2017である.年によって大晦日の夜だったり,明けてすぐだったりと微妙な差はあるが,毎年,よくもまあ飽きもせず同じことを繰り返してきたものだ.

ところで,日本では,今年は卯年ということになっているらしい.ところがどっこい,タイやベトナムでは,卯年の代わりに猫年があるということだそうだ.ということは,とうとう念願かなって,今年こそ猫年がやってきたということだ.ヒャッホウ!嘘から出たマコトとはこのことか.

皆様,今年もどうぞよろしくお願い申し上げます.