2026年5月10日日曜日

高床式コンビニ(お気楽クルンテープ通信 No. 70)

5月も中旬に差し掛かり,暑季も終わりが見えてきた.一年で最も暑い季節が終わると,タイは雨季に入る.このところ,毎日ではないものの,ときどきスコールが降るようになった.今年は少し雨季が早いのかもしれない.

昨年,10月中旬に日本からこちらにやってきた頃は,まだ,雨季が完全に終わってはいなかった.ときおり,激しい雨が降り,道路も水浸しになることがあった.とくに昨年は洪水がひどく,南部のハジャイ周辺や,あるいは中北部のアユタヤとスコータイの間あたりが,だいぶ浸水していた.

昨年の11月にチェンライに出張したときに,飛行機の窓から地上を見下ろしていたら,ふだんはたぶん水田なんだろうなあというあたりが一面水浸しになっていた.本来であれば綺麗に区画された地形が機窓から見下ろせるはずのところが,一面ボヤァっとぼやけた感じになっていたのは,水が溢れていてほとんど湖のようになっていたからだろう.

11月末にロッブリーに遊びに行ったときも,列車の窓から周囲の風景を眺めていたら,ずいぶんと湖っぽいところを通るなあと思ったものだ.しかし,それは湖ではなくて,川の水が田んぼに氾濫して大々的に湖のようになっていただけだった.

もとより,タイのチャオプラヤ川流域は,洪水が多いところである.昔は,ときおり水浸しになるがゆえに,肥沃な土地として集落が栄えたという逆説的な歴史でもある.面白いのは,そのような自然現象に対する対策の考え方が,日本とは根本的に異なるところだろう.

日本では,治水にしゃかりきになり,なんとか洪水を防ごうと考える.堤防を築き,川の流れをコントロールし,住宅地に水が溢れてこないように治水しようとする.

しかし,タイでは,雨季に水が溢れ出すのを素直に受け入れようと考えるようなのだ.自然の力に対して人のできることは限られている.そう謙虚に考えるきらいがある.

ロッブリーの行き帰りに車窓から風景を眺めていたら,多くの住居が高床式になっていることに気付いた.その後にこちらの先生と雑談をしていたときにその件について話すと,伝統的な住居はそうなっているとのこと.洪水で水が溢れても,住居部分が水没しないようにという工夫だそうである.

バンコクの都心で生活していると,そのようなことにはなかなか気付けない.せいぜい,地下鉄の入り口が,数段,迫り上がっていて,ああ,これは雨で道路が水浸しになったときでも地下駅の構内まで水が入り込まないようにする工夫なんだろうなあと考える程度だ.

なお,この地下鉄の駅入り口が階段上になっているのは,東南アジアの他の都市でも見られる構造である.スコールがよく降るような都市では必須の工夫なのだろう.最近は東京でもゲリラ豪雨がしょっちゅう降るので,このような工夫が必要なのではなかろうか.

一方,ラカバンまで来ると,高床式の工夫が随所でみられる.なにしろコンビニの入り口がかなり高い(写真).ここのソイに面した店は,コンビニに限らずどの店もこのようになっている.

いま住んでいるドミトリーの入り口も同様に,階段を上がって入る高さにある.階段の下に立つと,入り口の床はちょうど私の目線程度の高さになっているので,およそ1メートル半といったところだろうか.

このように,タイの人々は,しばしば起こる洪水に対して,床を上げるという対策をしている.大規模な治水工事をするよりは,はるかに安上がりだろう.マイペンライな考え方だなあ.

ただし,先の先生によれば,最近では西洋式の建築が流行っていて,その結果,洪水の被害がひどくなることも起こっているのだとか.流行を追うのもよいけれど,温故知新という言葉の意味を考えることも大切だなあと,しみじみ考えた.

2026年5月9日土曜日

数字の数え方

数字の数え方で面白い話がある.まず,1から10まで,「いち,にー,さん……」と声を出して読んでみよう.続いて,今度は10から1まで,同様にして数えてみよう.行きと帰りで,4と7を,それぞれどう読んだかな?

多くのひとは,前者は「いち,にー,さん,しー,ごー,ろく,しち,はち,きゅう,じゅう」と読んだことだろう(「きゅう」を「くー」と読んだ人もいるかもしれない).対して後者は,「じゅう,きゅう,はち,なな,ろく,ごー,よん,さん,にー,いち」と読んだはずだ.4と7,それらは,し/よん,しち/なな,というように,複数の読み方がある代表的な数字なのである.

では,なぜ,昇順だと「し,しち」になり,降順だと「なな,よん」になるのだろうか?1, 2, 3……と順に数えるとき は「し」「しち」が出やすく,10, 9, 8……とカウントダウンするときは「よん」「なな」が出やすいという傾向がある.これはなぜなのか.

理由は主として,聞き間違いを避けるためと,数唱のリズムの違いによる.数唱というのは,数を昇順に唱えることを指す.

まず,なぜ複数の読みがあるのか?だが,日本語の数字には中国由来の音読み(漢音・呉音など)と日本語化した慣用読みが混在している.代表的な数字が4と7である.歴史的には「し」「しち」も正統な読みだが,現在は,とくに日常会話において「よん」「なな」がかなり強く定着した.

そして,昇順で「し」「しち」が出やすい理由は,昔ながらの「数唱」のリズムの影響が大きいとされている.いち,に,さん,し,ご,ろく,しち,はち……という並びは,拍の長さや音の流れがそろいやすい.とくに,学校教育や暗唱では,この読みが長く使われてきた.

つまり,「数列を唱える」あるいは「九九のように暗誦する」場面では,歴史的な読みが残りやすいのである.

一方で,カウントダウンで「よん」「なな」が好まれる理由は,実用上の理由が強いとされている.まず,「し」は「死」と紛らわしいという事実がある.「し」は音だけ聞くと「死」を連想する.したがって,緊張感のある場面や業務連絡では避けられがちになる.

また,「しち」は聞き取りにくいという特徴もある.「しち」は,いち,し,はちなどと音が近く,とくに早口や騒音下では誤認しやすいとの問題を抱えている.

現代の日本語においては,単独の数字や実務では,よん,あるいは,ななが優勢である.たとえば,電話番号,部屋番号,年齢,カウントダウン,スポーツの点数,航空・鉄道・医療の業務用音声などでは,誤認防止のため「よん」「なな」がよく使われている.

しかしながら,四月(しがつ),七時(しちじ),四季,七福神,のような熟語では,昔からの音読みが固定されており,「し」「しち」が使われる.いち,に,さん,し……といった数唱においても,昔ながらの読み方が慣習的に残っているというわけだ.

つまり,昇順の数唱では「歴史的・韻律的な読み」が主流であり,カウントダウンでは「聞き間違い防止の実用的な読み」が優勢になった.これが,行きと帰りで4や7の読み方が違うという現象の主たる理由なのである.

またもや謎の文字が現れた(お気楽クルンテープ通信 No. 69)

タイ語の子音44文字を覚え,母音も32パターンをなんとなく理解し,4個の声調記号も識別できるようになった.さらには繰り返し記号や省略記号など,特殊なタイ文字も把握した.ヨシ,これで,タイ語で書かれた文章は,意味はまだよくわからぬとも,なんとなく読み上げることはできるぞ?正しく発音できているかどうかは別として.

というわけで電車に乗れば駅の名前を一つ一つタイ語で読んでみようとし,街に出ればそこかしこにある看板をできるだけ読もうとしながら,半年に及んだタイ生活の成果に満足しつつ過ごしていたところに,新たな刺客が現れた.タイ数字である.

タイ語での数字の数え方を覚えるのは,さほど難しくない.1から10までは,ヌン(หนึ่ง),ソン(สอง),サーム(สาม),シー(สี่),ハー(ห้า),ホック(หก),ジェット(เจ็ด),ペート(แปด),ガオ(เก้า),シップ(สิบ)である.3(サーム),4(シー)とか6(ホック)なんて日本語の「さん」「し」や「ろく」に似ているし,このへんの類似性は中国語や韓国語にも見られる現象なので,馴染みがある.

二桁の場合も,基本的には日本語の数え方と大差ない.52だったら「ハーシップソン」75だったら「ジェットシップハー」という具合.例外として,20台は「ソンシップなんとか」ではなくて「イーシップなんとか」になるとか,末尾が1のときは「なんとかヌン」じゃなくて「なんとかエット」となるという微妙な違いがある.しかし,こないだ,Sukhumvit 41を「スクンビット,シーシップヌン(正しくはシーシップエット)」と言って通じたので,慣れない外国人は許してもらえるのかも.

百,千,万も,それぞれローイ(ร้อย),パン(พัน),ムーン(หมื่น)で,1970なら,「ヌンローイ,ガオパン,ジェットシップ」だ.簡単でしょう?

問題は,桁が大きくなると思考が追いつかないという点で,タイ語に限らず,大きな数字を外国語で表現したり聞き取ったりというのはなかなか難しい.これは,脳のリソースの問題で,数字の解釈と言語の解釈の両方,同時に脳が使われるからということなんだそうだ.こればかりは,慣れるしかない.

市場で「タオライ?(เท่าไร)」……いくらですか?と聞くと,ペラペラペラッとタイ語で数字が返ってくる.二桁まではまだなんとか理解できるが,三桁以上になるとどうしても聞き返してしまう.まだまだ,私も,修行が足りない.

話が逸れたが,タイ数字である.タイ数字というのはタイ語を丸くしたような形をしており,タイの文字とミャンマーの文字の中間のような印象を受ける.0から9まで並べると,「๐๑๒๓๔๕๖๗๘๙」となる.どれもこれも似たような形をしているので,ややこしい.

先日,ムスメたち3人を引き連れてバンコク市内観光に出かけたときのことである.ターティヤン桟橋の手前にある土産屋が並んでいるあたり,そこは集合住宅のようになっていて,それぞれの店に番号が付いていることに気がついた(写真).

出た!タイ数字である.彼女らが買い物に興じている間,手持ち無沙汰にしていた私は,解読を試みることにした.

前提として,3桁の数字の並べ方はアラビア数字と同じ,欠番はなく,隣に並ぶ店の番号は1ずつ増えていっている,もしくは1ずつ減っている,という仮定を置いた.それは不自然なものでもあるまい.

出発点は,最も右がゼロ(0)になっている店だ.タイ数字のゼロは「๐」なので,これはわかりやすい.その店を堺にして,左側は,上二桁が同じ記号,右側は,真ん中の桁の記号が異なっている.ということは,右から左に向かって,順番に店の番号が増えていると考えるのが妥当だろう.下の桁がゼロになっているところで,繰り上がりが発生していると考えられる.

とすると,繰り上がりが発生している右隣の店の番号の,下一桁に書かれている数字は9だな?その右は8だろう.というように考えていくと,全ての数字を解読できただろう.

時間切れで途中までしか推理できなかったが,ちょっとした謎解きゲームのようで,楽しかった(ちなみに写真の番号は「248」.お分かりかな?)

2026年5月7日木曜日

Grabとタクシー(お気楽クルンテープ通信 No. 68)

東京で生活していたときの私は,タクシーをほとんど使わなかった.東京は公共交通機関が過分に発達しているので,電車とバスで,ほぼ,どこへでも行けてしまうからだ.

しかし,こちらでは若干,状況が異なる.バンコクの都心部はBTSやMRTといった電車の路線網がそれなりに主要なエリアをカバーしているので,電車だけでもそこそこ移動できる.ところが,KMITLのキャンパスがあるラカバン地区では,そうもいかない.

KMITLのキャンパスの中央をタイ国鉄,SRTが東西に突き抜けており,中心部にプラーチョムクラオ,東の端にフアタケーという二つの駅がある.それは便利だろうと思いきや,このSRT,一時間に一本ないという頻度でしか走っておらず,しかも,時間通りに来ない.

畢竟,それ以外の公共交通機関に頼ることになるが,外国人にとってバスが使いにくいのは世界中どこに行っても同様で,何度か乗ろうと試みたことはあるものの,まだ,足として使いこなすには至っていない.

タイにはバスの他にもソンテウという小型バス,というか,トラックの荷台を乗客用に改造した,フィリピンでいうジプニーのような乗り物もある.これも,路線がどうなっているのか,乗降のタイミングはどうなっているのかなど,地元民に教えてもらわないと使いにくい.KMITLの学生に教えてもらえばよいのだが,今はちょうど期の変わりの休暇期間に入っており,それも叶わない.

ところでソンテウには安全性にかなり問題があるような気がするのだが(写真),落ちたら落ちたで,そのときはそのときだ,とでも思って乗っているのだろうか.マイペンライ?

そんな状況なので,とくにラカバンに引っ越してからはタクシーを利用する機会がグンと増えた.こちらのタクシーはかなり安く,ARLのラカバン駅からKMITLまで,5km程度乗車して,70バーツ前後,およそ350円である.したがって,経済的にはそれほど贅沢という感じはしない.ただし,タクシーに乗るとき,コミュニケーションが必要なのが若干のハードルとなる.運転手に行き先を告げなければならないからだ.

バンコク市内であれば,タクシーの運転手も慣れたもので,英語が通じる場合が多い.英語を話す観光客が多いからだろう.しかし,ラカバンでは英語が通じない確率のほうがはるかに高い.一度だけ,全く意思疎通ができず,乗車を諦めたことがあった.大学を訪れる外国人は多いだろうに,皆さんいったいどうしているんだろう.

この問題を一気に解決して快適な移動を提供してくれるサービスがGrabである.米国でUberが先行したITを駆使した配車サービス,東南アジアではGrabが席巻している.なにしろ目的地はスマホの地図で設定すれば運転手と共有されるので,会話を一切しなくても,どんな目的地でも連れていってくれるという素晴らしさ.

もっとも,最初にワッディカップ,あるいは,降りるときにはコップンカップと,最低限の挨拶くらいはしている.このくらいのタイ語ならもう自然に出てくるようになったしね.

それにしても,Grabの運転手も千差万別で,先日,からワット・パークナムまでGrabを利用した際に,行きの運転手は堪能な英語で饒舌に喋りまくってきた.曰く,「なんでタイ語を話すんだ?こっちに住んでいるのか,大学の先生か?うちの娘もITを学んでいるんだ,教えてやってくれないか」といった具合である.かと思うと,帰りの運転手は寡黙で全く喋らず,最後の降車時に「Thank you」とひと言喋っただけだった.

ところで,タクシーに乗り込んで行き先を言う際,運転手さんに「KMITL」とか「キングモンクットうんちゃらかんちゃら」と説明しても,まったく伝わらない.しかし「てくのーらかばん」と言えば一発OK.そういうローカルルールは教えてもらわないとわからないが,はてさて,私はどうしてそれを覚えたんだっけ?何度か苦労してやりとりしているうちに「おー,てくのーらかばん!」って運転手さんが応えたことがあって,それで認知したんだっけかな.

Grabは,お会計もクレジットカードでネット決済の明朗会計,タクシー利用にありがちな金銭トラブルは一切ない点もよい.メータータクシーよりは,若干,割高ではあるが,観光地や深夜のスワンナプーム空港に跋扈しているメーターを使わない雲助タクシーよりは安全で,安心できる.

2026年5月6日水曜日

大学の寮は快適?(お気楽クルンテープ通信 No. 67)

 早いものでタイ滞在も残り1ヶ月を切ってしまった.最後の1ヶ月はKMITLのドミトリーでの生活である.キャンパスの隣にあり,通勤時間は極端に短くなる.なにしろ寮の部屋から研究室まで歩いて3分だ.

当初,ホストの先生が「ドミトリーはあまりおすすめしないけど」と言っていたのが気になってはいた.いざ引っ越してみたら,築年数こそ嵩んでいそうではあったものの,それなりに綺麗だし,そこそこ広く,快適である.少し足を延ばして学食まで行けば,安くて美味しい食事にもありつける.

生活道具もひと通り揃っている.いまは暑季でとても暑いがエアコンの効きは抜群で,スイッチを入れればすぐに涼しくなる.1Fにコインランドリーもあるし,入り口には,いちおう,セキュリティのおじさんがいる.しばしば席を外していることが多く,セキュリティになってる?という心配がないこともないけれど.

ただし,難点が二つあった.

一つは,飛行機の騒音である.KMITLはスワンナプーム空港のすぐ近くに位置している.したがって,飛行機がひっきりなしに飛んでくる.風向きによって北からのアプローチで飛行機が着陸する場合は,KMITLの上空を降下してくることになる.

研究室のある建物は作りがしっかりしているせいか,これまであまり気になったことはなかった.しかし,寮の部屋は飛行機の音がよく響く.しかも,5分おきくらいの頻度で,昼夜を問わず,飛んでくる.夜中もお構いなしに轟音を響かせてやってくるので,気になる人はなかなか眠れないかもしれない.

日本の空港だと,住宅地に隣接している伊丹空港や福岡空港などでは夜の離発着には門限があるはずだが,こちらではそんなことは気にしないのだろうか?マイペンライ?まあ,数日,夜を過ごしていたら,もう慣れた.人間の慣れというものは恐ろしい.私の神経が図太いだけかもしれないけれど.

もう一つの問題は,ビールの調達である.これまで半年間,バンコクの都心で住んでいたコンドミニアムは,隣のブロックにセブンイレブンがあり,さらにその先にはトップスというバンコクではどこにでもあるスーパーマーケットがあった.いずれもアルコールは販売しており,トップスなどビールのラインナップは目を見張るものがあった.いろいろ試した結果,シンハービール(ビアシン)に落ち着き,それで命を繋いでいた.

寮の近くにも,中規模のトップスとコンビニ店舗型の小さなトップス,そしてセブンイレブンと,3軒の店がある.しかし,いずれもビールを売っていないのだ.調べてみたところ,タイでは,大学の300m圏内でアルコールを販売したり,料理店でも提供したりしてはいけないという決まりがあるらしい.なんてこった.

これは困った.どこに行けば買えるだろうか.しかし,大学の南側,運河を超えたところのタイ料理屋でビールを飲んだ経験がある.あそこ,300m以内のはずだが?

ひょっとして運河の向こう側だと大丈夫なんだろうか.運河の向こう側に並行してラカバン通りが通っている.その近辺にあるスーパーやコンビニでは,ビールを売っているのではなかろうか.

というわけで,早速,偵察に行ってみた.ビンゴ!その仮説は正しかった.橋を渡ったところにあるセブンイレブンではビールが置かれていたのを発見.それ以外にも,ぐるっと回ってみたところ,ラカバン通りに面した店ではどこでも買えるようだった.

直線距離で300m以内のはずで,アルコール販売禁止エリアに入っているはずだが,運河を隔てているので問題なしということなのだろうか.いずれにしても,こちらにとっては,問題なく買えるということで,ありがたい.

しかし,寮からラカバン通りまで出るのはけっこう大変なのである.直線距離だと運河を超えてすぐそこなのに,橋を渡るためにぐるっと回り込まないといけない.もっとも近い店で,道のりで1km強といったところだろうか.

いまは暑季,日中の炎天下を,ビールを抱えて歩いていたら,熱中症になってしまいそう.じゃあGrabの配達サービス使えばいいじゃん?と思いきや,マーケットの配達メニューにアルコールの項目が見当たらない(写真).実は,ここにも法律の壁が聳え立っていた.曰く,アルコールのデリバリーは禁止されているとのこと.うーん,残念.

スコールがザーッと降ると,その後,気温がガクッと下がる.夕方にスコールが降った後の夜は,かなり涼しくなり快適に過ごせることがわかったので,そのタイミングでビールを買いに行けばいいかな.

2026年5月5日火曜日

詐欺師にご注意(お気楽クルンテープ通信 No. 66)

日本はゴールデンウィークということで,東京からムスメとその友達2人がバンコクに遊びにきた.ムスメは学生時代に何回かバンコクを訪れたことがあるらしいが,お友達は初めてとのこと.しかもそのうち1人は初海外だとか.

初めてのバンコク観光ならとりあえずは三大ワット(三大寺院)と王宮かな?と,巨大な涅槃仏のあるワット・ポー,エメラルド寺院として知られるワット・プラケオ,そして暁の寺ワット・アルンを訪れてみようということになった.

これらの寺院と王宮は歩いて回れる距離にある.まあ,ワット・アルンは川を渡る必要があるけれど.最寄のサナムチャイ駅まで地下鉄に乗って行き,さて,どの順番で回るべきかと思案した.暑いので,駅から最も遠いワット・プラケオまで車で行って,散策しながら戻ってこようかと考えた我々は,どうせならトゥクトゥクでも乗ってみようかということにした.

私も実はトゥクトゥクには一度も乗ったことがない.あれは観光客の乗り物だ.少しくらいぼられたってかまやしない.観光料金と思えば安いもの.

そこで,駅の出口に屯しているトゥクトゥクのドライバーに声をかけてみた.すると,そのドライバーは「これ,アプリで予約するやつだから,まずアプリ使って」というじゃないか.驚いた.トゥクトゥクもDXが進んでいるらしい.

「どうしよう,Grab呼べるかな?」などと相談していると,いかにも怪しいひとが地図を片手に声をかけてきた.曰く,「イマ11時30分デショ,オ寺ハ13時マデ昼休ミダカラ」と.寺は昼休みの時間で入れないから我々のトゥクトゥクに乗って水上マーケットに行ったほうがよい.ひとり10バーツで,40バーツだけでいいから……などと調子のよいことを言ってくる.

ワットが昼休み?そんなん聞いたことないぞ?

いかにも胡散臭さすぎて,もう怪しいやつ確定.「じゃあまず最寄りのワット・ポーに行って本当に昼休みかどうか確かめればいいよね」と,連中を振り切って歩き出した.

案の定,昼休みになっているなんてことはなくて,ホイホイ話に乗らなくてよかったねと一安心した.調べてみると,その手の詐欺に要注意とあった.

もしあの怪しげなトゥクトゥクに乗ってしまっていたら,はたしてどうなっていただろうか.私一人だったら走って逃げてどうとでもなったろうが,土地勘もない若い女の子たち3人を引き連れてだと,なかなか困った状況になっていたかもしれない.くわばらくわばら.

だいぶ昔,まだインドはニューデリーには地下鉄が一本も走っておらず,公共交通手段としてはバスしかなかったころ,ニューデリーに出張してかなり困った状況に陥ったことがある.

中心部にあるコンノートプレイスという場所に行ってくれと,オートリクシャー,インド版のトゥクトゥクみたいな乗り物に乗ったところ,「今日は海外の要人が来ていてコンノートプレイスまでの道は全て封鎖されている.だからこちらに行く」と,無茶苦茶なことを言われて全くわからない場所に連れて行かれた.

なんということはない,着いたところは土産屋の裏口である.彼らは口を揃えて言うのだ.「政府公認の土産屋に行こう.運賃はいらないから」と.

おそらくカモを一匹連れていくと多額のキックバックがあるのだろう.そんな店に連れて行かれようものなら,何を買わされるかわからない.噂では10万円の絨毯を買わされた話なども聞いた.いやはや,恐ろしい話である.

車を降りた私は10ルピー札を投げつけて,走って逃げた.当時はスマホもなかったので,見知らぬ街の一角にほっぽり出されて,どうしたものかと途方にくれたものである.

太陽の方角と野生のカンだけを頼りに,こちらのほうかなと歩き出した.しばらく歩いたらなんとなく記憶にある光景が見えてきて,結果としてなんとかホテルに戻ることができたものの,かなり冷や汗をかいた.暑いインドで.

土産屋に連れていかれるといえば,乗っていたリクシャーの運転手が途中で誘ってくることもしばしばあった.赤信号に引っかかって停車するたびに,後ろを振り返って「ところでミスター,政府公認の土産屋に行かないか?」と誘ってくるのだ.その度に,「いや,行かんってさっき言うたがな!」と何度も応える.まるでコントのような光景が繰り返されることになる.

挙げ句,ホテルの前に着いて(リクシャーは敷地内に入れない),「着いたけど,いまから時間ないか?運賃いらないから政府公認の土産屋に行こう」とのご提案.一事が万事,この調子なので,もう,笑ってしまうしかない.

街を歩いていれば「ハローマイフレンド!政府公認の土産屋に……」と呼びかけられ,車に乗ればこのとおり.そこにはよほど美味しい何か,つまり,客にとってはとっても不都合な何かがあるに違いない.要注意である.

写真は翌日訪れたワット・パークナムの巨大な金ピカ大仏.2021年に建立されたものだそうで,まだ,比較的新しく,光り輝いている.電車の窓から何度も見ているのでわざわざ行くこともあるまいとは思っていたが,来たら来たでそれなりに面白かった.

2026年4月30日木曜日

フードコートはリーズナブル(お気楽クルンテープ通信 No. 65)

バンコクは都会なので,食べようと思えば,そしてお金さえケチらなければ,世界各国の料理を楽しめる.和食にしても,立派な寿司屋や鰻屋もあるし,ラーメン,カレー,定食屋,なんでもある.ハンバーガーやフライドチキンといったグローバルチェーン店のみならず,日本のチェーン店も多数,出店している.もっとも,日本で食べるよりは,若干,値段は高めかも.

寿司と鰻はそもそも値段が高いので,バンコクのそれには一度もチャレンジしていない.ネタのクオリティはどうなんだろう?という興味はあるものの,わざわざタイまで来て寿司ってのもなあという気持ちが先に立つ.帰国してから美味しい寿司を食べにいけばいいよねとの思いが強い.

もっとも,こちらにいる間に一度くらいは回転寿司に行ってもいいかもしれないとは考えている.こちらの回転寿司は,昔ながらの「回転」寿司だから.そう,寿司が由緒正しく回っているのである.衛生面を考慮してかカバーが掛けられているところがほとんどだが,流れている寿司を選んで食べる楽しさがまだ残されていてよい.

回転寿司の様子を眺めていたり,あるいは,スーパーマーケットの惣菜売り場,寿司コーナーの様子などをみていたりすると,一番人気のネタはサーモンのようだ.先日,韓国に出張した時にこの話をしたら,同行していた韓国在住のKさんも,韓国でも寿司ネタはサーモンが最も人気があると言っていた.

ショッピングモールの飲食店フロアに行けば,和食に限らず,多様な料理を味わえる.中華料理,フレンチ,イタリアン,よりどりみどりだ.繁華街の大通り沿いなどにも,ステーキハウス,韓国料理,なんでもござれ.ただし,おおむね値段は高めだろう.とくに観光客目当ての店は,比較的値段が高い.

一方で,駅から少し離れたり,ソイを少し入り込んだところにあったりするような「ど」ローカルな食堂は,かなりリーズナブルな価格で食べられる.多くは伝統的なタイ料理,あるいは,地元民が毎日食べるような日常的な料理である.そのような多くの店は,レストランというよりは,まさに,食堂,という感じの佇まいをしている.たとえばこんな感じ(写真).

しかし,どローカルな食堂は,入りにくいという皆さんも多いことだろう.言葉は通じるだろうか,注文できるかな,タイ語のメニューしかなかったらわからないな,支払いはどうするんだろう,など,心配は尽きない.

まあ,言葉なんてわからなくても指差し確認でなんとかなるもんだが,慣れないと心配になるのは致し方ない.なんかテキトーに頷いていたら丸々一羽ぶんの北京ダックが出てきてしまって慌てて断った,なんて話は私にもあって,たしかに多少恥ずかしかったり申し訳なかったり,ときには経済的に失敗したりなどということはあるかもしれないけれど,別に,殺されるわけじゃないし.

というわけで,旅行先でも物おじせずどんどんローカル飯にチャレンジしてみると面白いよとオススメはしておくが,それより手軽に,リーズナブルなローカル飯を楽しめるのはフードコートである.

ショッピングモールや,空港,公共施設などにあるフードコートは,初心者でも比較的簡単かつリーズナブルにローカル飯を楽しめる.タイでも少し大きめの施設にはたいがいフードコートがあるので,手軽に本場のローカル飯を味わってみたいという場合はフードコートに行けばよい.

たとえばスワンナプーム空港に行ったとしよう.2Fにレストランが並んでいるフロアがあり,そこのメニューを観察してみると,たいがい200バーツから500バーツといったところ.さすが空港メシだけあって,それなりの値段をとる.

そこで狙い目は,1F,北の外れ,出口に向かって左端にあるフードコートである.隅っこにひっそりと入り口があり目立たないので,気付かない空港利用客も多いかもしれない.しかし,ここはとてもリーズナブルで,いろいろなタイ料理を楽しめる.どれも100バーツしないので,いくつか頼んでも大丈夫.ここに来ると,物価に敏感そうな皆さんでいつも賑わっている.

ドンムアン空港も同じで,空港ターミナルからSRTレッドラインの駅に向かう途中の,比較的閑散とした場所にフードコートがある.こんなところにフードコート?と訝しげに思うものの,入ってみると,やはりここも,物価に敏感そうな皆さんで賑わっている.

タイでフードコートを利用する際には,一点だけ,ほとんどの場所に共通するルールがあるので,それは覚えておきたい.それは,最初にカードにお金をチャージせよというものである(ただし,まれに,現金でそのままやり取りできるところもある).

フードコートを訪れたら,まずは,カード販売カウンターを探そう.最近は自販機タイプも増えているが,多くのフードコートでは,2人くらいのお姉さんが並んでにこやかに対応してくれる.

そこで,お腹の空き具合に応じて現金をチャージする.なにしろ安いので,それほど多額の金額をチャージする必要はないが,多めにチャージしても大丈夫.食べ終わったら,同じカウンターに行けば,残金は戻してくれる.あとは,個々の店,屋台のような出店ブースで好きなものを注文し,そのカードで支払えばOK.

サイアムやプロンポンあたりの小洒落たショッピングモールのフードコートだと,このカードシステムではなくクレジットカードやQRコード決済で直接店とやり取りできるところも増えているらしいが,いずれにしても現金決済をその場でしないのは衛生的でよいなと思いつつも,そのカードを使い回しているようだから,結局,同じなのかも?

2026年4月29日水曜日

バンコクの音(お気楽クルンテープ通信 No. 64)

中国,韓国と10日間ほど出張していて久しぶりにバンコクに戻ってきたら,セミが鳴きはじめていた.いまは4月末だが,タイは夏本番,夏まっ盛りというところ.

タイの季節は,だいたい11月から2月までが乾季,3月から5月までが暑季,そして,6月から10月までが雨季となっている.昨年の10月にこちらにやってきたときはまだ雨季の終わりでしばしばスコールに振られたが,しばらくするとほとんど雨に降られることはなくなった.乾季は気温も下がり,とても過ごしやすい,よい時期だ.

こちらに来てからしばらくはホテル暮らしをしていたが,さすがにずっとホテルで生活するというわけにもいかない.その後,コンドミニアムを半年間,契約し,簡素な部屋ではあったがミニマリストな生活を気取っていた.なかなかに暮らしやすい,いい部屋だった.半年経過して,その契約が切れてしまったので(出張の兼ね合いで数日だけ延長してもらったけど),引っ越しをした.

タイ滞在の最後の1ヶ月はKMITLのドミトリーに入れてもらう手筈になっているが,数日,間が空いてしまうので,再び,近くのホテルに移った.ホテルというよりはゲストハウスという風情の,極めて経済的なホテルである.

今週末,日本はゴールデンウィークで,ムスメが友達連れてバンコクに遊びにくる予定になっている.彼女らがこのホテルを予約したというので,ひと足先に,泊まってみたというわけだ.せっかく遊びに来るんだからもっといいとこ泊まればと思うが,若いから,気軽なところがよいのだろう.

さて,セミの話だった.こちらのセミは夕方から夜にかけて鳴くらしい.鳴き声は,日本のそれとさほど変わらない.蝉時雨に慣れている日本人なら,あ,セミが鳴いてるな?とすぐ気付くだろう.

余談だが,欧米にはセミがいないので,日本のドラマや映画を輸出した際に,セミの鳴き声が煩いと消してしまうことがあるのだとか.夏の盛りであることを示す記号として使われているセミの音が,背景知識がないゆえに単なるノイズとして捉えられてしまう事例として,たいへん興味深い.

日本のセミと違って,音量が多少,控えめなのもよい.四六時中ずっと鳴いていないところも,好ましい.夜中まで煩いのは勘弁してほしいと思っていたら,きちんと節度をわきまえているようで夜中は静かにしてくれている.

そして,朝.バンコクの朝のよいところは,鳥のさえずりで目がさめる点である.なんという鳥かはわからないが,ピーピー,チチチと軽やかな鳥の鳴き声が明け方から聞こえてきて,いかにも南国にいる気分になる.

しばらくすると,通りを通るバイクの音がひっきりなしに聞こえてくるようになる.一日の始まり感が否応もなく盛り上がる.今日も一日,がんばろう.

もう一つ,バンコクを特徴付ける音といえば,セブンイレブンの入り口,扉が開け閉めされるたびに鳴るピコンピコンという音かもしれない.日本のそれとは違う,特徴的な音.角を曲がればセブンイレブンがあるこのバンコクでしばらく生活していると,自然と耳に残る音である.

また,自転車でチリンチリンとベルを鳴らしながらやってくるアイスクリーム売りの音も,バンコクならではの音だろう.近年は,気取ったメロディの音楽を鳴らしながらやってくるアイスクリーム売りもいて,その音楽も耳につく.

ところで,セブンイレブンやアイスクリーム売りの他に,バンコクの街角のそこかしこで見かける風景がある.それは,くじ売りの人々である(写真).彼らはライセンスを持って,くじを販売しているらしい.

調べてみたら,毎月2回抽選がある政府公認の宝くじとのこと.当選の情報はどこでわかるのかとか,どこで換金できるのかとか,わからないことだらけで手を出す気にはならないが,至る所で見かけるので,みなさん相当に好きなんだろうね.

2026年4月27日月曜日

駅名問題(お気楽クルンテープ通信 No. 63)

駅名はなかなかに難しい.空港とバンコク市内を結ぶAirport Rail Link(ARL)から地下鉄Mass Rapid Transit(MRT)に乗り換えるには,ARLのマッカサン駅で降りて連絡通路を通っていけばよい.ところが,連絡しているMRTの駅には,マッカサン駅ではなくラッチャンブリー駅という名前が付いている.

ARTに並行して,古くからあるタイ国鉄,State Railway of Thailand(SRT)の線路がある.ARTマッカサン駅の隣にも駅があり,その駅はアソーク駅である.ところがSRTにもマッカサン駅があり,SRTのマッカサン駅は,アソークからさらに西にひと駅行ったところにある(図).

アソーク駅といえば,MRTに乗り換えてひと駅南に行ったところのBangkok Mass Transit System(BTS),通称スカイトレイン,スクンビット線の駅がアソークである.

どうしてこうなった?

ことごとく駅名がずれていて,紛らわしいことこのうえない.

ヒントは通りの名にある,MRTが通っている通りは,アソーク通り.対してSRTはその通りに対して直角に走っている.SRTが通っていたところで,アソーク通りにぶつかった.そこに駅を作ろう.アソーク通りに至る駅だから,アソークだな.

BTSのアソーク駅も同じような理由だろう.BTSはスクンビット通りの上を走っている.アソーク通りにぶつかったので,ここはアソーク.理にかなっている.一方,同じ場所にあるMRTの駅はスクンビットである.

MRTはアソーク通りの地下を走っている.駅はアソーク通りとスクンビット通りの交差点.アソーク通り側からしたら,スクンビット通りにぶつかったところなので,駅名として「スクンビット」とするのは理にかなっているだろう.


というような話をS先生としていたら,日本でも同じような話はあるとおっしゃる.それは多摩都市モノレールの「甲州街道」駅.多摩モノレールが甲州街道を超えるところに設置された駅である.甲州街道?大きく出たな!という話.

そういわれてみると,JR東日本の鶴見線には「国道」という駅がある.鶴見線が国道15号を超えるところにある駅である.国道なんて日本全国至る所に走っているが,鶴見線のローカル視点でみると,重要な駅名なんだということだろう.

2026年4月18日土曜日

中国武漢出張記(お気楽クルンテープ通信 No. 62)

バンコクから中国の武漢に出張したのでその顛末を少し記しておきたい.なにしろ,台湾にはちょいちょい出かけているものの,中国本土に上陸するのは20年以上ぶりなのである.中国の各都市にはそれまでに何度も訪問したことはあるが,上海万博の前あたりに最後に北京か上海かを訪れたのが最後で,なんとも久しぶりの中国出張である.

今回の出張は武漢で開催される国際会議に参加して研究成果を発表することだったが,国際会議への参加は後付けの理由で,中国地質大学で教えていらっしゃるK先生を訪問したいというモチベーションで画策した出張だった.実際,国際会議の前日に中国地質大学で同大学の学生向けに講義をした.ちゃんと仕事はしているぞ?と,言い訳もきちんと用意するあたりが我ながら姑息だ.

ともあれ,20年以上ぶりの中国はさぞかし変わっているだろうなあとは予想していて,いろいろ話には聞いていたものの,想像以上の変貌ぶりで,驚いた.

まず,宿泊している宿はどうということのないビジネスホテルだが,いろいろ先進的だった.エレベータはカードキーをかざさないと部屋がある階にいけないのは最近よくある仕様だが,ここのホテルはカードキーをかざすと自動的に部屋の階のランプがついて,わざわざ押す必要がなかった.実に合理的だと感心した.

エレベータといえばお掃除ロボットかルームサービスの配膳ロボットかわからないが,ロボットが乗り込んできたのにも驚いた.お掃除ロボットは最近あちこちの空港で見かけるし,配膳ロボットもファミレスでは当たり前になっている.しかし,エレベータを乗りこなすロボットはあまりみたことがない.

ロボットがエレベータに乗ってくると,目的の階のボタンが自動的に点灯した.ロボットとエレベータが通信してコミュニケーションをとっているんだろう.まさに未来的な光景じゃないか.

機械がコミュニケーションをとっているといえば,驚いたのはカーナビである.今回,地質大で講義をしたあと,少し時間があったので車で市内をいろいろと案内していただいた.そのとき,「カーナビと信号が連動してるじゃん!」ということに気付いた.

ここ武漢の大通りにある信号は,赤信号も青信号もカウントダウンタイマーが付いている.あと何秒というやつである.あれがあると,皆さん安心するのかな.ところがそのカウントダウン表示が,カーナビの信号にも表示されており,その数字が,ほぼ,連動しているのだ.

制御をご専門にされているK先生に訊くと,路車間通信で連動させているのでは?とのことだったが,一時期,未来の技術として語られていた車々間通信や路車間通信という技術がすでに普及して使われているのに驚いた.

もっとも,多少ずれているので,ひょっとしたら通信ではなく時刻で連動させているのか?とか,カメラで撮影して認識しているのか?とか,正確なところはよくわからない.しかしながら,実際の信号とある種のサイバースペースであるカーナビの情報がほぼ同期しているのは,単純に「すごい」と感心した.

車といえば我々を乗せてくれたワゴンは,電気自動車だった.電気自動車については個人的にはドライビングプレジャーの観点から両手を挙げて賛成するつもりはないが,世界的にみても,行きつ戻りつしつつとはいえども今後のEVシフトは避けられないだろう.

緑のナンバーは電気自動車だと教わった.街を歩いているときになんとなしに眺めてみると,だいたい3〜4割くらいだろうか.かなりの数の電気自動車が走っている.自動運転のタクシーは走っているのか?とK先生に尋ねてみたところ,それはまだ特定のエリアだけだとのことだった.しかし,特定のエリアだけでもちゃんと走っているのは,すごい.

学会の会場となった大学の構内は,学生たちが電動スクーターで走り回っている.その光景はバンコクの大学と大差ない.違いといえば電動か否かというところだけで,ノーヘル二人乗り当たり前というあたりは全く同じ.

大学だけでなく街なかでも歩道を我が物顔でちょこまかと走り回るバイクには要注意である.「バンコク名物,歩道を走るスクーター」と思っていたが,ここはそれ以上に,ひどい.ただし,それで社会が回っているので,文化の違いといえばそれに尽きる.郷に入っては郷に従え,When in Rome, do as the Romans doである.

一方で,ネット接続はいろいろと辛い.いわゆるグレートファイアウォールが多くの西側サービスをブロックしているからである.権力者が科学の発展を邪魔するのは国を問わないんだなあと思ったとか思わなかったとか.

写真は,講義の後に案内してくださった黄鶴楼にあった壁画,どうみても水戸黄門にしか見えない(たぶん中国の偉人なんじゃないかと思うんだけど).