2025年4月26日土曜日

Herokuスタック・アップデートの備忘録

Herokuを使ったアプリケーションのサービスを二つ運用している.毎月十数ドルの利用料を払っているが,いずれも多数の皆さんに利用していただいているので,利用料を払っているだけの価値は得られているだろう.

数年前からずっと利用しているサービスなので,以前から,「使っているスタックをアップグレードせいやー」という連絡を受けていた.スタックというのは,アプリケーションを動かすプラットフォームのことである.これまで,heroku-20と名前の付いているスタックを使用していたが,そのスタック利用期限が今月末,4日後の4月30日だというのだ.

もちろん,ほったらかしておいたらすぐに使えなくなってしまうわけではない.利用だけであれば,このままで,まだ使えるとのこと.ただし,セキュリティ対応やさまざまなサービスは打ち切られる.また,致命的なのは,利用期限を超えたスタックを使っている場合,コードの変更やアップデートができなくなる,という制限である.これは,ちと,まずい.

スタックのアップグレード

というわけで,ようやくお尻に火がついた私は,重い腰を上げてスタックのアップグレード作業に着手したのだった.

結論からいうと,終わってみればなんということはなく,あっけなくアップグレードは終了した.ウェブサイトの指示に従い,次の手順でアップグレードすれば,ほぼ,問題なく終了する.

  1. 新しいスタックの環境を作り,スタックを更新してきちんと動作するかどうかのテスト用アプリをデプロイする,
  2. そのアプリが正しく稼働するか,ソースコードをアップロードして起動してみる,
  3. 問題なく動くことを確認できたら,テスト用アプリを削除して,本番環境のスタックをアップグレードする

いくつか説明通りにいかないところがあって試行錯誤しながらではあったが,無事,heroku-22にアップグレードできた.ついでに,というか,勢い余って現在の最新版であるheroku-24にまで上げてしまった.これでしばらくはアップグレード問題に悩まされることはなくなるはずである.

躓いたポイント

ウェブサイトの説明に従ってやったらほぼ問題なくできたが,いくつか躓いた点があるのでそれも紹介しておこう.

まず,説明通りにやったらうまく動かなかった.テストアプリを立ち上げて「ダメでっせ」という画面が出ていたときの,嗚呼,落胆たるや,いかほどばかりであっただろうか.世の中うまくいかんもんよなあと,日頃の行いをしばし反省である.

うまく動かんときはログを見よという指南があったので,ログをみたら「データベースにそんな関係は定義されていない」というエラーが出ていた.なんのことはない,よけいなデータベースを作って参照していただけという問題だった.

説明では,addonsの一覧を表示させて使っているaddonsを調査してそれらををcreateせよとあり,その説明に素直に従ったため,不必要なデータベースを新しくもう一つ作ってしまっていたわけだ.当然ながら新しいデータベースは何のテーブルも定義されていないので,そのままだとエラーになる.

作ったaddonsデータベースをremoveしてから,既存のデータベースをaddons:attachすれば,問題なく現状のデータで動いた.逆に,いま使ってるデータをアップグレードしたスタックのテストアプリからそのまま使えたので,データベースがアプリから切り離されていることのメリットを感じた瞬間でもある.いろいろ更新したアプリから,そのまま,何もなかったかのようにデータを弄れたのには,頭ではわかっていても「おおすごい」と思ったものである.

あともう一つ,コードのデプロイに git push heroku main という呪文を唱えるのだが,これが何度やってもエラーになる.「そんなリポジトリない」というようなエラーである.はて?と思って,ふと,気付いたのは,mainじゃなくてmasterだよ,ということ.最初に作ったのはだいぶ前であり,「masterはPC的にけしからん,mainを使え!」とよくわからないムーブメントが起こる前であった.それをすっかり忘れていた.git push heroku master とやったら,問題なく処理できた.

2025年4月22日火曜日

すごすぎる「ラストメッセージ」

文化放送で放送されている「髭男爵 山田ルイ53世のルネッサンスラジオ」という番組がある.文化放送で放送されている,という言い方は若干,正確ではないかもしれない.文化放送で収録されているPodcast番組である.地方局では地上波に乗せられているところもあるらしいが,肝心の文化放送で「放送」はされていない.

それはともかくとして,この番組,なかなか面白く,放送開始当初からずっと聴いている.Podcastでは最後に「ラストメッセージ」というコーナーがあり,これがときどきべらぼうに面白い内容を紹介するのだ.そして,今週は強烈な内容で,すごい内容にもかかわらず,笑い転げてしまった.4月21日配信回の「ラストメッセージ」は,神回といってもよいかもしれない.いや,神回である(断言する).

内容をここで紹介するのは野暮というものであろう.X(旧Twitter)の反応をいくつか貼っておこう(消えてしまうかもしれないのでリンクではなくスクショを貼っておく)





気になる人は,ぜひ,Podcastで同番組を聞いてみてほしい.オススメである.

2025年4月17日木曜日

グループディスカッションは少人数が望ましい?

日本とタイ,マレーシアの大学生による異文化間交流の様子を分析している.詳細な分析はこれから進める予定だが,少し面白い傾向が見出された.それは,グループの参加人数が多くなると「聞くダケさん」がどうしても出てくるということである.

この異文化間交流のプロジェクトでは,少人数のグループに分けてオンライン会議システムを用いて交流を進めている.しかし,諸事情がありその人数は2名のマンツーマンによる対話から10名を超える大きなグループでの実施まで幅広い.

それらのグループに関し,ターンテイキング(話者交代)の状況や発話回数を可視化してみたら,「どうも,人数が多くなると対話に直接参加せず,聞いているだけという参加者が出てきてしまうなあ」ということにあらためて気付いた.

これは皆さんも日頃感じているのではなかろうか.大勢が参加する会議ほど,参加者の参加意識は希薄になり,発言者は偏る傾向にあることを,日々,感じてはいまいか.とくにオンライン会議では,会議に参加しているフリだけして別のことをしていたり?

まあ,会議はともかく,今回のグループは異文化間交流であるから,本来,参加している全員によって積極的に交流を進めることが望ましく,全ての参加者が均等に発言すべきはずのものである.しかし,やはり人数が多くなると,尻込みしてしまうのか,あまり発言しない参加者がどうしても出てくる.

というわけで,グループの参加者と,発言回数のばらつき加減の関係を調べてみた.次のグラフは,グループの参加者数を横軸に,参加者の発言回数から計算される変動係数を縦軸にして散布図をプロットしたものである.

なお,変動係数とは,標準偏差を平均値で割った無次元数である(nが小さいのでここでは不偏標準偏差を用いている).分散や標準偏差は元データのサイズが大きくなるとどうしても大きくなってしまうので,平均値で割ることで正規化する.規模の異なるデータのばらつき具合を比較するときには,分散や標準偏差ではなく変動係数による比較が望ましい.

さて,図を見てみると,どうだろうか.かなりきれいな相関が出ていることに気付く.グループの参加人数が多くなると,変動係数の値は大きくなる.つまり,発言回数のばらつきが大きくなる……よく喋る人と聞くダケさんに別れてしまう状況が,数値で表されている.また,相関係数は0.76,これはかなり高い相関があると指摘できる.

結論である.グループ内で満遍なく発言を促すには,あまり大きなグループにするのは適さないということをあらためて確認できた.

2025年4月13日日曜日

数学の深イイ問題

高校レベルの数学の問題ではあるが,なかなか面白い問題を教えてもらったので紹介したい.まずは次の図をみてほしい.

「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,どの道を選ぶかの確からしさは一様に等しいものとする」という問題である.

答えを見る前に,少し考えてみていただきたい.どうだろう?(答えを知りたい方は,スクロールしてみてください)

問題の解答

角で曲がりつつ,最短距離を通ってAからBに移動するとき,何パターンの経路があるかを考えてみよう.

AからBに至るまでの最短経路は,どのパターンであっても必ず7個の辺を通る.ここで,上に行く場合を「↑」とし,右に行く場合を「→」で表現する.Aから真上に進んで左上の角を通ってBに至る経路は,A↑↑↑→→→→Bと表現できる.同様に,上に2回進んで,最上段は左から二つ目のパスを通ったとすると,A↑↑→↑→→→Bである.右下の角を通る場合は,A→→→→↑↑↑Bとなる.次の図のケースであれば,A↑→↑→→↑→Bである.

さて,ここまで気付けば,もうゴールは近い.どの経路を選ぶにしても,AからBまで行く7個の経路のうち,3個が「↑」,4個が「→」という性質は変わらない.言い換えれば,7個の選択肢のうち,どの3個を「↑」として選ぶか,その選び方は何通りあるか?である.ようするにこの問題は,7個から3個を選ぶパターンはいくつかあるか?という問題に帰着する(7個から4個の「→」を選ぶ個数でも同じである.なぜならば,3個選ぶと残りの4個は自動的に決まるからである).

ということで,これは組み合わせの数として計算できる.すなわち,7C3 = 7! /(3!・4!) = 35,AからBまでは,35通りの経路があるとわかった.

そのうち,Pを通るものは,AからPへの経路とPからBへの経路の組み合わせで表現できる.この場合は3C1×4C2 = 3×6=18.ということで,Pを経由する確率は,18/35 = 0.514,およそ半分強であると求められた.■

問題の条件が変わると……

ところで,問題が次のようなものであったとしたら,どうだろうか?

「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいものとする

先ほど求めた答えと同じ,Pを経由する確率は18/35?

否,そうではない.

Aから出発し,最短経路を選ぶとき,上図のように上に進むか右に進むかの選択肢がある.このとき,どちらか(赤と青)を選ぶ確率はそれぞれ1/2である.

ということは,Pに到達するまでには,3回の岐路を通っていくことになる.

Aから3回,どちらを通るかを選択した時点で,次の図の赤丸で示した点のどこかに居るはずである.そのなかにはPも含まれるが,Pに至る確率はいかほどだろうか.

二つの選択肢を3回選ぶパターンは,2^3=8通りある.それぞれのパターンを選ぶ確率は,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいとの性質から(1/2)^3,すなわち1/8である.

さて,点Pに至るパターンはいくつあるか.これは,先ほど計算した3C1,つまり,3通りある(次図).

ということは,Pを経由する確率は,8通り中の3通りであって,8通りの確率が同様に等しいことに鑑みれば,3/8ということになる(残りの進み方は,どの経路を辿っても残り3回の交点の通過を経て最終的には最短経路でBに到達するので,考える必要はないことに注意).■

二つの問題の違い

さて,ほとんど同じようにみえる二つの問題だが,微妙な条件の違いで異なる答えとなった.問題を再掲する.

問題1:「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,どの道を選ぶかの確からしさは一様に等しいものとする

問題2:「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいものとする

問題1の答えは18/35、問題2の答えは3/8である.このことから,次のような教訓が得られる.

「問題文は注意深く読み,問われている内容に適切に解答すること」

端的に表されるので数学の問題を例にして説明したが,これはなにも数学の問題に限った話ではなかろう.いずれにしても,本問はまさに,読解力や論理的思考の必要性を感じさせる,良問であると感じた次第.

2025年2月28日金曜日

2024年度インドネシア研修

2月の20日から26日まで,飯尾研有志(2年生4名,3年生2名,4年生4名)でインドネシア研修を実施した.2月22日にYogyakartaのジャガマダ大学で開催されたSPICE2025における発表(4年生)と,24, 25日に実施したYogyakartaの高校訪問において中央大学を紹介するプレゼンテーション(2, 3年生)が主な目的である.

SPICE2025では,以下の内容で発表した(私も,与えられた枠の前半を使い,概要について報告した).

Iio, J., Saito, Y., Iijima, M., Ito, N., Ogaki, R., Morimitsu, I., and Miyamoto, Y., (2025) SMILE Project Report, The Case of KMITL and Chuo iTL in AY 2024, The 5th International Conference on SMILE Project and Intercultural Communication Education (SPICE2025), Yogyakarta, Indonesia.

また,2, 3年生のプレゼンテーションも,時間が足りなくなって少し慌てたところはあったが,それなりにカッコよくできた.素晴らしい(写真は,私が彼らを紹介しているところ).

23日の日曜日には,研修のエクスカーションとして近隣にある世界遺産のボロブドゥールとプランバナン寺院群を視察,インドネシアの文化・歴史も学び,有意義な研修になったことだろう.

2025年2月3日月曜日

さようなら,ネ申パワポ

ネ申エクセル(かみえくせる?)という言葉がある.別名,エクセル方眼紙.正確にいえばエクセル方眼紙の上位概念かな?まあ,いずれにしても,エクセル,いや,スプレッドシート,日本語でいえば表計算ソフトウェアの「本来の使い方『ではない』使い方」をしているもののことを指す.エクセルに代表されているが,MS Excelに罪はない.他の表計算ソフトでも似たような使われ方をしているものは全てネ申エクセルである.

ネ申パワポに物申す

さて,今日わたしが文句を付けようとしているのはネ申エクセルではない.いわばネ申パワポと言うべきであろうか.コンサル業界に蔓延している「パワポ報告書」の類である.コンサル業界と書いたがわたしの古巣である三菱総研にも蔓延っていた(いまはどうでしょう?).私も以前は何度か作ったことがある.今では反省している.ごめんなさい.

そもそもパワポ(MS Powerpoint)はプレゼンテーションソフトなのである.プレゼンテーションの資料を作成するためのツールなのである.報告書はワード(MS Word)もしくは他のワードプロセッサ(ワープロ)で作りなさい.報告書のような「〇〇書」を作成するツールはワープロソフトたるべきである.

プレゼン資料 ≠ 報告書

パワポ報告書はそのままプレゼンに使えるから便利?アホなことを言ってはいけない.読めへんわ!横着せずにプレゼン資料は別に作ってください.後生だから.

下記をみてほしい.上はどうみても「プレゼンしてるふり」にしか見えない.

図版の扱い

図版の扱いがパワポのほうが簡単で,図を多く入れようと思うとパワポのほうが図と親和性が高いから便利?これも勉強不足です.ワープロソフトでも図を扱う機能は充実している.論文や報告書の類であれば,原則「文字として」扱う設定にして中央寄せにし,「キャプションを追加する」機能で図表番号とキャプションを入れるべし.それを正しくやれば,ページを跨いでキャプションの生き別れみたいな情けないミスもなくなる.

そもそもパワポに番号の相互参照機能ってあったっけ?「報告書なら」本文から図表番号を必ず参照するはず.図版の番号を連番で自動的に振ってくれる機能も,あったかな.まさか番号の参照を手作業でやってないよね?図版の順番を入れ替えたときどうしてるの?目視チェック?

共同作業向き?

パワポだとページ単位で担当できるから複数人による共同作業に向いている,という言い訳も聞いたことがある.まあ,直感的ではある.でもイマドキのワープロなら複数文書を束ねる機能だってちゃんとある.本の原稿をワードで書いたことがあり,そのときは章ごとにファイルを分けて,最後にガッチャンコした.やり方,忘れちゃったけど…….

しかし報告書の内容がページ単位で綺麗に分割できるもの?内容によって,大小,あるんじゃないの?図版のサイズで調整する?絵本作ってるんじゃないんだから.あ,オトナの絵本を作ってると理解すればいいですか?

「資料」なら許す

ちょっとググってみたら役所や著名なコンサル企業はパワポ報告書のデザインがすごい!みたいな記事を見つけちゃったわけ.でも,そもそも書籍や雑誌は「いかにして(さまざまなステークホルダの利害を調整しながら)読者に分かりやすい紙面を提供するか」に命かけてるからね.ネ申パワポなんて笑止千万である.ヘソで茶が沸く……は言い過ぎですねごめんなさい.

かつて,私の古巣である三菱総研の某セクションでは報告書をLaTeXで組んでいた.複数担当者で単語表記の揺れが出ないようにマクロを使いまくるという徹底ぶりで,LaTeXマスターNさんのその仕事ぶりは鬼気迫るものがあった.しばらく会ってないけどNさん元気かな.まあ,LaTeXで組むというのはやりすぎかもしれないけれど,報告書に命を吹き込む,書類の品質を上げるって,そういうものだと思うわけですよ.古い考えかもしれないが.

百歩譲って「資料」と称するならまだ許す.報告書作成を舐めないでいただきたいものである.

2025年1月9日木曜日

HCII2025参加およびハワイ大学訪問

1月4〜7日の日程でハワイはホノルルにて開催されたHICE2025という学会に参加すべく,ハワイを訪れた.実は初ハワイである.海外は,とくに東南アジアを中心としてかなり辺鄙なところを訪問したりもしているが,ハワイにはこれまで縁が全くなかった.

私は以下のタイトルで発表した.Q&Aも盛り上がり,それなりにウケていたようで,とにかくいい反応だった.

Iio, J. and Noro, H. (2025) Exploring the Potential of AI-created Questions in Programming Mock Exams, HICE2025, Hawaii International Conference on Education, Hawaii, HI, USA.

そのセッションのチェアも割り振られており,1時間半,気を抜けなかったが,活発な議論がなされたので任務は全うできた.ところどころで笑いも取れた.チェア冥利に尽きる.

1月6日にはハワイ大学マノア校を訪問した.Dorothy教授ほか何名かとお会いして意見交換をした.キャンパスを案内していただき,自然豊かなキャンパスに感嘆した.iTLの都市型キャンパスも悪くないが,広大な土地に広がるキャンパスはそれはそれで大学らしくてよい.

ハワイアン・ゲッコーが迎えてくれた.いかにもトロピカルな柄に癒される.

2025年1月7日火曜日

こんなところでHCD(10)

「こんなところでHCD」のシリーズも気付けば10回目である.もっとHCD的に考えるべきだというデザインは,良いものも悪いものも,日常に溢れているということの現れであろう.

というわけで,今回は,心にグッときた良いデザインをご紹介したい.まずは写真を見てください.

年明け早々に参加したHICE2025という教育系の研究発表を行う国際会議でのひとコマである.例によって受付で「Jun Iio」のバッジがなく(おそらくLioにまちがえられていてLの欄に紛れ込んじゃってるんだろうなあ……と思いつつも,「オーケー,あっちで印刷してもらえるから大丈夫だよ!」と明るく言われたのでそのまま指示に従ったのであった)その場で発行してもらったものである.イマドキはプリンタですぐにちゃちゃっとそれっぽいのが作れちゃうからすごい.

指摘したいのはそんなことではなくて名札ケース(バッジホルダー)のほう.写真を見れば一目瞭然なのだけれども,このバッジ,ひっくり返らないのである.

会議の名札,首から下げるタイプはどうしてもクルクルとひっくり返る傾向があり,マーフィーの法則的にいえば裏面が示されてしまっている確率のほうが高いのではなかろうか?しかし,このデザインであれば右上と左上の2箇所で吊っているので,原理的にひっくり返るはずがなかろうというものであって,シンプルながら素晴らしいデザインである.

クリップの数が2個になるので若干コストが上がるかもしれないが,何万個も使うわけでなし,たいしたコストではあるまい.このタイプの名札ケース,日本では見たことがない.あるのかな.研究会等で名札ケースが必要になるときは,次からこのタイプを探してみようと思っている.

2024年12月28日土曜日

2024年の出来事を振り返る

年の瀬も押し迫ってきた.今年の10大ニュースはなんだろう?

第10位:大きな買い物

1月にビックカメラで大きな買い物をした.リビングのTVが壊れたので65インチの大きなTVを購入,ついでに7年使ったiPhone 7を(当時)最新版だったiPhone 15 Proに更新した.店員さんに「あー,7年もお使いになっていたんですねー.物持ちがよいですね」と褒められたのもよい想い出.

第9位:Duolingo

今年,とうとうDuolingoに手を出してしまった.課金はしていない.でも韓国語をずいぶん勉強できたのでそれはよかったかな.まあしかし,よくできたアプリだと感心した.저는 한국어를 공부하고 있어요. 감사합니다.

第8位:老眼鏡

歳には抗えないもんですなあ.老眼がかなり進行して抗えなくなってきたので,Zoffでちゃんとした老眼鏡を誂えた.これまでメガネには縁のない人生を送ってきたのだけれど,いまや老眼鏡がなければ集中した作業ができなくなってしまった.これもまた人生.

第7位:CW研究会の離島開催

COVID-19になる前に,一度,石垣島でCW研を開催したことがあった.そのときは参加者がいつもより増えて盛況だったので,今年は3月の年度末も押し迫ったタイミングで宮古島で開催し,調子にのって12月の開催も久米島で行った.いずれもとてもよかった.しょっちゅう離島でやるわけにもいかないけれど,たまにはよいよね.

第6位:論文賞(選奨論文)

情報処理学会の英文論文誌JIPに掲載してもらったペーパー「An Evaluation of the Flipped Classroom Approach Toward Programming Education」が選奨論文(Specially Selected Paper)として指定された.いわゆる論文賞に準じる栄誉としてありがたく受け取った.ありがとうございます.

第5位:HCD-Netの研究活動活性化

研究事業担当理事として参画しているHCD-Netが今年は例年にない盛り上がりを見せた.悲願であった日本学術会議協力学術団体としての認定を受け,学会として認められた件が大きいが,それに伴い年に2度開催している研究発表会の発表件数や論文投稿数も右肩上がりの躍進を見せている.よいことだ.

第4位:国際会議SPICEの開催

研究活動も本格的に国際展開が軌道に乗り始め,今年の2月には台湾の高雄師範大学(NKNU)で国際会議SPICE2024を開催した.来年の2月にはインドネシアのジョグジャカルタ,ガジャマダ大学でSPICE2025を開催予定である.他にも懸案だったHCIIのオーガナイズドセッションをなんとか来年は成立させられそうで,いずれにしても皆さんのご協力あってこそ.有り難い限り.

第3位:技術士の試験委員

情報処理技術者の試験委員やってるからコンフリクトするんじゃない?と逃げ回っていた技術士の試験委員が「両方やってるひといますから大丈夫です」の一言で,今年,とうとう担当させられることになった.貴重な経験ではあるけれど,負担は大きい.しばらくご奉仕せよということか.

第2位:多数の研究発表

第2位と第1位はいつもどおりの感じかな.硬軟取り混ぜて今年度も飯尾研から30件以上の論文・学会発表があった(発表決定済みの予定を含む).今年は学部生の国際会議の発表は1件だけだったけれど,学部としては盛り上がりを見せているようでそれはそれで素晴らしいことである.いずれにしても研究活動が活発化してよいことですな.

第1位:海外活動

今年もあちこちに出かけていろいろな活動をした.台湾に4回,ベトナムと韓国,タイにそれぞれ2回ずつ,インドネシアに1回,フランスに1回.ほぼ月イチのペースでどこかに出かけていたことになる.学生たちを引率して出かけたベトナムと台湾でもなかなかよい経験をした.国際情報学部の名のもとで国際的な活動ができているのは素晴らしいことだろう.

2024年12月10日火曜日

例外は必ずある

以前,visit japan webの意義について論じたことがあった.最近はようやく電子化ゲートの運用が軌道にのったのか,紙での申請には行列ができている一方で,電子申請のゲートはスムースに通れるという,あるべき姿になってきているような印象がある.

まあ,場合によってはキオスクに行列ができていて紙のほうが早いという状況も稀にあるようだが.イラチな人は,紙申請と電子申請の両方を用意しておき,早そうだ!と思うほうを利用すればよい.選択肢があることは良いことだ.

ところで,DX時代の現代では,電子化,システム化は必須の流れでありそれに意を唱えるものではない.しかし,システム化には必ず穴があることも,忘れてはならない.穴,すなわち要件定義の漏れである.人間の想像力には限界がある.ゆめゆめ奢ることなかれ.えー?そんなことが?という状況は意外と発生するのである.

こんな例があった

ここで,私が体験した税関申請の電子化に関する仕様のバグを紹介したい.

たしかカタール航空だったと記憶している.23時30分に羽田到着というえらく遅い時間に到着する便で帰国した.ずいぶんと端のほうに停められた飛行機から延々と歩かされ,入国審査こそ自動化されているゲートで速やかに進められたものの,バゲージクレームで預けた荷物が出てくるのを待っているうちに,日付は変わってしまっていた.

さて,到着して荷物が出てくる間にvisit japan webの帰国登録をすればいいやとタカを括っていた私,ポチポチと入力を進めていたが,なんと,入力すべき情報にある「到着日」は過去の日付を選べない仕様になっていたのである.なんてこった.すでに前日になっていた到着日を選べない!

帰国便に乗る前にやっておくべきだった?以前,海外で手続きしようとして電波状況が悪く,どうせならちゃんとネットに繋がる日本でやって問題ないよね,荷物出てくる間の待ち時間にやればいいよね……と気軽に考えていた私を誰が責められようか?

このときは,致し方なく紙の申請書に記載して税関を通った.紙がなかったらどうしたか.日付を1日偽って,虚偽申請でもしただろうか(まあ,それはそれで,たいした問題でもないような気もするが……).

どうすべきか

アナログのシステムを全廃して全て電子化しようなどと,簡単に決めて強引に進めるべきではない.人間の想像力には限界があり,先に示したように例外は必ず生じるのである.そのようなときのために補助的手段は残しておくべきである.ユーザとのインタラクションが介在する現場を上意下達的に改革できると思ったら,それは大間違いである.

デジタル化というとTV放送の地デジ化が思い起こされるが,地上波をデジタル放送にしたケースとは違う(あれはある種のユーザ切り捨てでありそれはそれで問題ではあったが,そこまでユーザ保護を論じると何もできなくなる).いま日本で起こっている事例では,これからいろいろな例外が多数発生して混乱が生じるはずだが,おら知らんもんねー.

下記はいらすとやの「入国審査で言葉が通じない人のイラスト」.いらすとやには何でもある.