2020年12月13日日曜日

顔出しのない発表に受ける違和感

関東甲信越英語教育学会(KATE)第44回研究大会という学会に参加した.ITをバックグラウンドにここまで過ごしてきた私としては,かなりアウェイ感のある学会ではある.しかし,現在,共同で進めている研究プロジェクトの中間報告ということで,その実施状況を発表(若林,飯尾,他 2020)するために,今年から英語教育学会の会員になり参加したという次第.

ところで,学会に参加したといっても,オンライン開催のため登録された資料を観た(見た),というだけである.いくつかの発表にはコメントして意見交換「らしきもの」もできたので,それなりに参加した感は,まあ,ないこともないというところか.

顔出しはほとんどなかった

オンライン発表,とくにビデオ発表のやり方については,先日のHCD研究発表会でも議論した(飯尾,辛島 2020).この問題に関しては,定番の手法が定まっているようでまだ定まっておらず,皆,試行錯誤しているところであろう.どのようなあり方が良いのか,暗中模索というところか.そして,今回,KATEの発表をみていたら,発表者の顔が出ているビデオがほとんど無かったことに気付いた.

今回の発表件数は全部で40件,うち,YouTubeのビデオ投稿で動画発表している発表はちょうど半数の20件であった.残りはSlideShareのスライド共有である.スライドだけ見せられても……という気もしないでもないが,致し方ない.しかし,YouTubeビデオのなかで,無言もしくはテキストのサンプル音声のみ,というビデオが2件あった(※1).発表者の肉声は入っていないので,スライドの自動プレゼンテーションとほぼ大差ないビデオである.

残りの18件のビデオのうち,顔出ししていたビデオは,我々の発表を含む,3件のみだった(※2).

なぜそうなるのか

発表者の顔が映らないビデオが多数派となっているのはなぜだろうか.ひとつには,技術的な問題が考えられる.私は研究発表用ビデオを作成するときも,オンデマンド講義用のビデオを収録するときも,Zoomの「ひとりミーティング」を行いそれを録画するという方法でビデオを作成している.この方法だと顔を写し込むことができる.Webexや他のオンラインミーティングツールを利用しても同様だろう.また,この「ひとりミーティング法」だと他にもいろいろと工夫の余地が残されている.

一方,パワーポイント等,プレゼンツールを使って「ひとりプレゼンテーション」をすることでビデオを作成する方法もある.プレゼンツールの機能をつかって「音声を」追加で収録する方法である.この方法だと,音声で説明しながら画面が切り替わるビデオを作成することはできるが,プレゼンをしている発表者の顔をビデオに写し込むことができない.

ここからは推測でしかないが,顔出しなしビデオを提出した発表者の多くが,後者の「ひとりプレゼン法」でビデオを作成したのではなかろうか.

顔出し問題はどうあるべきか

技術的な問題はともかく,やはり発表者の顔がみえないと観ているほうはなんとなく白けてしまう(※3).過去にこの問題を議論したとき,ある先生が「TVショッピングで『商品だけ』見せて宣伝しているようなものですよね」とコメントされていたのが印象的であった.

某TVショッピングのようにプレゼンテーションする人の印象が強すぎて,肝心の商品が霞んでしまうのは本末転倒ではあるが,やはり,短い時間のプレゼンビデオだけでは不十分であり,顔や話し方でも印象付けて,今後の議論につなげていくほうが生産的だと思うがいかがだろうか.

ところで,顔が出ていた3件の発表のうち,1件は,共著者が全員顔出ししていて,画面共有しているスライド資料の横に3人の共著者が並んで写り込んでいた.ひとりミーティングではなく,共著者による内輪ミーティングで発表用ビデオを作成したというものである.オフラインでの発表では,共著者が全員登壇することはめったにない(※4)が,オンラインならではの工夫かなあと感心した.その手があったか!という気分.

参考文献

  • 若林, 飯尾, 櫻井, 石川, 木嶋 (2020) インターネットを用いた海外の高校との協同授業 ―準備・実践・評価の実際―, 関東甲信越英語教育学会 第44回オンライン研究大会
  • 飯尾, 辛島 (2020) オンライン研究会のあり方について, 人間中心設計推進機構 2020年冬季HCD研究発表会, pp. 49-52, オンライン
脚注
  1. 音声なしのビデオの1つについては「作成に失敗した」とのコメントがあった.提出前に自分で確認しなかったのかなあ?
  2. 最初にご本人と思しき顔が瞬間的にチラッとだけ出たものが1件あったが処理上のミスと思われるためカウントしない.
  3. 顔が出ていないほうが内容に集中できる,という意見もあるかもしれないが……
  4. たまに,途中で交代するケースはある.

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