2020年7月9日木曜日

オンライン試験実施のためのヒント

前期のオンライン講義もそろそろ終いに差し掛かり,成績評価をどうするべきかという議論が行われている.私はもう真っ先に白旗を上げてしまい情けない限りで,オンラインでの試験に挑戦されようとしている先生方には頭が下がるばかりである.

ところで,オンラインでの試験実施は,これまでの対面による試験実施と異なりいろいろと考慮しなければならないことがある.主に不正受験をどうするかという観点なのが後ろ向きではあるが,公正な成績評価を担保するためには致し方ない.私個人としては,今後,オンラインで試験をしなければならなくなったときに備えて今から準備をしていこうと考えているが,以前,Stanford大のMOOCを受けたときに「よく考えられているなあ」と感心した事項があったので,紹介してみたい.

オンライン試験の課題

ところで,オンライン試験で問題になる不正行為には何があるだろうか.まずはそれを整理してみよう.

  1. 替え玉受験.カメラで監視しながらという解決策が考えられているが,少人数ならいざしらず,大人数の試験ではなかなかたいへんだろう
  2. 持ち込み不可の試験での情報源の参照(アナログ版).カメラで監視したとしても,画角の外に参考書など置かれては対応できない.試験環境そのものを監視するという対策が考えられている
  3. 同,情報源の参照(デジタル版).マルチウィンドウ,マルチ画面で他の情報を参照するケース.これも画面共有で対応することが考えられる.しかし,サブウィンドウなどいくらでも抜け道はありそう
  4. 受験生同士による相談.他のコミュニケーションツールを用いて解答を相談しながら作成するというパターン.試験環境そのものの監視で対応できるが,やはり,監視はなかなかたいへんに違いない

かように,課題は山積している.

課題への対策

上記で述べた対策以外にも,たとえば 2.〜4. に対しては,短い時間に多数の問題を出すという方法により他の情報源を参照している余裕を与えない,あるいは,受験生同士が相談している時間を与えない,といいう対策も聞いた.

さらには,多数の問題を用意しておき,その問題プールからランダムに選択して個別の問題を出すという方法も有効そうではある.しかし,これに関しては多数の問題を作成して準備しておく手間をどうするかという切実な問題もある.

さあ,どうしたものか.

よくできたMOOCからのヒント

以前,学生が「機械学習のMOOCを受けたいのですが自分ひとりでは完遂する自信がないので皆でやりたい」というので,院生も巻き込んで一緒に体験したことがある.そのとき,よくできてるなあといくつか感心したことがあった.もっとも,かのMOOCはそうとう金をかけて作られているそうで,そのまま真似でき(そうに)ない点はあらかじめお断りしておく.

本人確認の方法

まず,本人確認について.本人確認は重要なポイントで,そのMOOCでは,達成度テストの直前に必ず本人認証を行っていた.その方法は,タイピングのクセを使ったもの.30〜50words程度の文章をタイピングさせて,そのタイピングのタイミングで本人を認証するというものであった.もちろん,最初の登録時にタイピングのクセを登録する手順が用意されている.

なお,コースが進むとタイピングは省略され,パスワード入力だけになった.ある程度まで進んだところで,より簡便な方法にするというのは,参加者に対するコストや信頼関係を考慮すると妥当な方法であろう.途中まで本人が頑張って学習して,そこから先は替え玉が受講するということも考えにくい.合理的な判断といえる.

理解度確認の方法

理解度の確認は,単元の終わりに小テストを行うというやり方で行っていた.4択の問題が5問提示され,そのうち4問(80%)に正解すればパスするというもの.その問題は,ランダムに出題される.とはいえ必ず違う問題が出てくるというものでもなく,問題プールの大きさはそれほど大きくないように感じた.まあ,そのあたりは理論的なバックグラウンドがあるのかもしれない.1問,2問くらいなら同じ問題が出てきてもよいのだろう.かえってそのほうが理解を促進するのかも?

さらにそのMOOCがユニークだったのは,ソースコードの穴埋め問題が提示されていたことだ.プログラムの一部(数行)が空欄になっており,その部分をコーディングして埋めよというタイプの問題である.

プログラミングの穴埋めを終えると,その問題自身をサーバに提出,テストデータを用いて検算が行われ,正解かどうかが判断される.ロジックが正しいかどうかが判断されるので,コーディングの質は問われない(といっても,単純な穴埋めなので,ほぼ同じようなコードになるはずである).Octaveにライブラリが追加され,サーバへ提出して検算するところまで,自動化されていた.この工夫は,ITの科目ならではだなあとずいぶん感心したことを憶えている.

オンライン試験実施に向けて

本稿,結論はとくにないが,ここで紹介した情報が,多少は皆様の参考になれば幸である.



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