2020年4月6日月曜日

オンライン講義開始で何が起こったか

忙しい人のために結論を先に述べておくと,この記事は「大学のLMSに頼りきるのではなく,プランBをちゃんと用意しておこう」という話.以下,顛末を詳しく述べる.

図1 manabaのトレンド
2020年4月6日,いくつかの大学が2020年度の春学期を開始した.ご存知のとおりこの春は新型コロナウイルスがパンデミックの状態となっており,大学はこぞってオンライン講義に切り替えることとなった.各大学が右往左往しているのはここにあらためて記すまでもないくらい.

ところで,我々はTwitterのトレンドを解析するツールであるTWtrendsというシステムを運用しており,Twitterのトレンドをウォッチするのが日課となっている.4月6日,いつものようにトレンドのリストを覗いてみると,「manaba」というキーワードが目を惹いた.「manabaがどうした?」とその状況を調べてみると,図1のようなグラフになっていた.

TWtrendsの詳細については参考文献(Iio 2019)を参照されたい.ざっと説明すると,この図は「manaba」というキーワードに関するツイートを分析した結果を表している.大きな「manaba」は最も出現頻度が高かった言葉であり,それに関連する(同じツイートに含まれていた)単語が線で結ばれている.

「manaba」がトレンドに上がっていた理由は,立命館大学で利用しているmanaba+R(立命館大学ではこう呼んでいるとのこと)が朝の講義開始とともに学生からアクセス集中し,使えなくなったかららしい.それで学生がいっせいに悲鳴をツイートした結果,トレンドに上がることとなったという顛末のようだ.

この図から推測できるのは「『manaba』が『タイムアウト』しちゃって『開』けない.『不要不急』の講義参加は『諦』めて『マリオカート』でもするか,『二度寝』しよ」という図式である(もちろん,全ての学生がこうである,ということではなく,あくまで推測であることには注意されたい).

関連するツイートをいくつか追っかけてみると,印象に残るものとして「登録した学生が一斉にアクセスしたら落ちるシステムってどうなの?」などというコメントもある.まあ,そうねえ,ごもっとも…….ではあるが,最適化を考えると最大負荷をもっと低く見積もっていたとしてもしょうがないところだろう.平時なら,まあ,それでもしょうがないし,長期的な最適化を考えたら頷ける話だ.

さて,私の勤務する大学でもmanabaを使用しており,講義開始は若干遅らせることにしているとはいえ,いずれ講義を始める日はすぐに来る.先陣を切って例示してくださった立命館大学には感謝しつつ,不測の事態に備えねばなるまい.また,ひとつのシステムに頼り切るのではなく,万が一そのシステムがダウンしたときであっても,なんとかなるような「プランB」をきちんと考えておくことも大切だろう.

プランBとしては,以下のようにいろいろと考えられるが,その際に考慮しなければならないこととして,アクセス性(ユーザビリティ),コンテンツへのアクセスコントロール(セキュリティ),学生のプライバシー確保や著作権の配慮など,様々な観点がある.それぞれ一長一短あるので,注意が必要ではある.

  • 学外のLMSサービスを使う.たとえばGoogle classroomなど
  • 動画を使っている場合はYouTubeなど別のサービスに退避しておく
  • LINEやその他のSNSを利用してコミュニケーションのバックアップを用意する

図2 ある学生のツイート
なお同日,東大でも同様の混乱がみられたとのこと.たしかにTWtrendsをみてみると,東大で使用しているシステムの名称がトレンドに出ている.東大でもシステムにアクセス集中してサーバの反応が悪くなるという状況になっていたそうだ.しかし,それに対してきちんとプランBを用意していた某先生,有能ですね(図2のツイートを参照).

参考文献:
Iio, J., 2019, TWtrends ― A Visualization System on Topic Maps Extracted from Twitter Trends, IADIS International Journal on WWW/Internet, 17:2, 104-118

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