先日,2年生と話をしていて,「1年生のときのプログラミングの授業,先生が反転授業形式にしてくださったのがとても助かりました.あれがなければ今の僕はありません」との言葉にハッとさせられた.まあ,それは大袈裟だろうとも感じたが,いま彼は機械学習のプログラミングに挑戦しようとしていて,とても「入学時にはプログラミングのプの字もわからなかった」(本人談)とは思えないほどに成長しており,反転授業はそれなりに効果があるのだなと感じた次第.
私自身,オンライン化がなければ,なかなか反転授業に踏み切る勇気もなかったので,禍福は糾える縄の如しだなあともしみじみ思う.
反転授業の推進に感じていた疑問
以前から,反転授業の推進者がいう,以下の3点には疑問を感じていた.
- 予習用の動画は,普段の授業を動画に撮るだけでいいから余計な手間は不要です!
- 教室で恥ずかしい思いをするから,できない子ほど頑張って予習するようになります!
- 教室ではディスカッションや発表に力を入れて知識定着を高めます!
まず1番.そもそも,普段の授業を動画に撮っただけのものを,誰がすき好んで観るだろうか.欠席したとき用に,教室の後ろに設えたビデオカメラで撮影した動画を視聴,それによって出席に代えることができる,というシステムを採用している某大学を知っているが,それはあくまで緊急避難的措置であろう.教室で話すときの話し方と,カメラに向かって話すやり方は違うという当たり前のことが,考えられていない.
ついで2番.いまどきの学生はそんなにナイーブではない.「教室で答えられないからといって恥ずかしがるやつなんていませんよ」と当の学生たちも言っている.やらないやつはやらん!というのが正直な現場の声だろう.社会人学生のように,学習モチベーションの高い学生なら効果的かもしれないが,そうではない学生の場合は,そんな簡単な話にはならないのではなかろうか.
3番め.グループディスカッションや発表をやれといっても,毎回,できるわけもなし,はたして教室で何をやったらいいのやら.その指針もなく「グループディスカッションや発表」とだけ旗を振るのはどんなものだろうか.
はからずも反転授業へ
ところが,オンライン授業化で否が応でも講義動画を作成しなければならなくなった.これで1番の問題点は自然とクリアである.せっかく苦労して作成した講義動画である,対面授業に戻ったとして再利用しない手はなかろう.オンライン化の資産として有効に活用したいところである.
2番めの課題は,これはもう致し方ないところ.幸いにして,本学はそれなりに向学心に溢れた学生が入学してきてくれている.反転学習がこの観点から効果的か否かは問わないことにしよう.この疑問点については,少し脇に置いて目を瞑っておくことにする.なお,少数のサンプルゆえ一般論としては断定しがたいが,1年生の必修科目であるプログラミングの科目では,ほぼ全員がきちんと出席する.対して,3年生の選択科目であるプロジェクトマネジメントは,出席者が徐々に減りつつある.課題の提出内容をみると,やはり教室にきちんと来ている学生のほうが,しっかり理解している気がするのだが…… これは当方の力不足で教室に来るほどの魅力がないということなのか,大きな課題である.
3つめの疑問,これはいま試行錯誤しているところで,ここをどうするかの答えはもう少し後になりそうだ.プログラミングの科目では,動画を見たことを前提として説明はさらっと飛ばすことにして,資料には書いていないような,より発展的な話題をつとめて紹介することにしている.さらに,毎回出している課題について,ライブコーディングでデモンストレーションしながら示している.教えるほうもヒリヒリしながらやっているが,臨場感があって学生の興味を惹きやすい手法と考えている.
他の科目でも反転授業を取り入れつつあり,それぞれの科目ごとに,試行錯誤しているのが現状というところで,これがベスト!というものはまだない.1年生向け選択科目として担当している数学も来年からは反転方式を取り入れる予定で,教科書の例題を白板でバシバシ解かせるなんてことも考えているが,はたしてうまくいくだろうか.
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