2021年11月12日金曜日

異文化交流教育の難しさ

この写真をみて,皆さんはすぐに「おや?」と気付くでしょう.そう,これは日本の電車ではありません.

サインの下に書かれている言語をみてもわかるでしょうが,これは,タイの地下鉄で撮影したProiority Seat,優先席の掲示です.子供連れ,妊婦,高齢者,怪我をしている人,左から四つめまでは,日本のそれと同じです.しかし,タイのそれは,もう一つ,ピクトグラムが追加されています.

オレンジ色のピクトグラムは南アジア〜東南アジアの宗教事情に詳しくないと,ピンとこないかもしれません.これは,仏教の僧侶を表しています.あちらのお坊さんは,オレンジ色の袈裟を着ていらっしゃるんですね.タイは敬虔な仏教国です.お坊さんは大切にされています.なので,優先席に座る対象とされています.

余談ですが,女性はお坊さんに触れてはいけないことになっているのだそうで,お坊さんが女性に触れられてしまうと,それまで積んだ徳が失われてしまうのだとか.タイ在住の先生から,こんな話を聞きました.

この席(注:優先席)の隣に座っていた女性から「席を代わってくれ」と頼まれたことがあります.初めは何か分からなかったのですが,どうやら僧侶の隣に座ると電車の揺れなどで触れる可能性があるので,男性の私と代わらなけばならないとのことでした.

そんな話も,日本にいる私たちにはなかなか知る由もありません.タイと日本の学生をオンラインで交流させる異文化交流教育を実施するうえで,そういう「日本ではなかなか知ることができない話題」を紹介してもらえればなあと,当初,我々は期待していました.もちろん,日本側も同様で,タイの学生がなかなか知り得ないことを教えてあげてほしいと,そういう期待もありました.

しかし,よく考えてみると,これはなかなか難しい注文です.なぜならば,タイにいる学生たちは,優先席にお坊さんが座っているのは当たり前であり,そうではない世界を知らないからです.日本にいる我々も,日本の当たり前が世界の非常識という事例は何かと問われても,すぐに答えることは難しいでしょう.

オンライン異文化交流の限界がこんなところにも垣間みえました.やはり,現地に行って体験する,外国から地元に招いて交流する,24時間異文化に触れることの大切さ,セレンディピティの重要さを改めて感じた次第です(下の写真はバンコク繁華街のマクドナルド.ドナルドが手を合わせています).

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