2020年10月15日木曜日

課題のフィードバックとCSCW

SNSでの議論をみていたら,ある先生から,英語教育において,英作文の添削の有無が学生の英語力伸長に寄与するかという著名な研究があること,そして,その研究では添削の有無は英語力の強化には関係ないと結論付けているということを教えていただいた.さらに,議論が進むなかで別の先生から,そもそもフィードバック研究という研究領域があることも教えていただいた.世の中,なんでも研究対象になるのだなあという小並感のみならず,学生の課題提出にどう答えていくかに悩んでいる身としては,いろいろ考えさせられる話題ではある.

学生の声にどう応えるか

2020年度のこのオンライン講義化が加速した状況において,「オンラインで講義を行うことはよいが,課題を与えてきちんと対応すること」という文科省の指導に右往左往した先生方は多いことであろう.私もその一人である.根がマジメなものだから(?),100人の履修生がいる講義で学生に課した課題に逐一フィードバックを返していたので,もう,疲労困憊といった状況になってしまった.来年も同様の状況になるとしたら,少し,やり方を考えねばならないなと思った次第.

そもそもその論文を読んでいないので,冒頭の,フィードバックは関係ない,という指摘がどういう状況なのか,分からない.おそらく「英作文の添削」と「英語力」という文脈にかなり依存するのではないか?と推測するしかないが,あらゆる状況においてフィードバックが無駄,というわけではなかろう.その他の先生方の指摘から考えても,それぞれ状況や学生のレベル,あるいは,積極性や講義内容への興味度合いなど,全てを十把一絡げにして論じるのはいささか乱暴である.文脈を踏まえて論ずるべきだ.

とはいえ,いずれにしても,課題をどう与えるか,それに対してどう応えるか,現状,我々大学教員に突きつけられている問題の1つである.

CSCWという見方

ところで,今回のオンライン化で疲労困憊した原因のひとつに,丁寧に課題提出にフィードバックしていたら何度も何度もやり取りが続いてキリがなかったという学生が何名かいた点も含まれる.もちろん,これは学生にとっては意義があるはずだろうし(だって問題解決まで丁寧に付き合っているのだから,フィードバックの効果が無いはずがない),教員側のリソースとして対応可能なレベルであれば,丁寧な対応を心がけるのは吝かではない.

一方で,オンライン化の問題点として「学生同士の交流が少ない」という点も指摘されている.私の反省点もそこにある.学生←→教員というチャネルは履修学生の数ぶん存在したが,学生間のチャネルがなかったために,結節点である教員に負担が集中したという図式である.

その反省を活かして,後期は,LMSの使い方として掲示板の活用を積極的に行うこととした.課題のフィードバックも,あえて掲示板に向けることで,学生同士の解決を促したわけだ.

CSCWという概念がある.Computer Supported Collaborative Work(コンピュータ支援協調作業)である.この分野も歴史は古く,これまでさまざまなアイデアが提案されてきた.オンラインでの学修はこのCSCWの多様な成果を応用できないだろうか.個々の学生と教員という構図だけでなく,学生同士のインタラクションも巻き込んだCSCWの環境を上手に作ることができれば,教員の負担を軽減しつつ,学修効果を挙げるということも可能なのではないかと期待するところである.




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