タイ語の発音は難しい.まず,有気音と無気音という違いがある.息を出しながら発生する音と息を出さずに発生する音の違いということだそうだが,慣れていないので,なかなかピンとこない.
また,子音の発生にも中子音,高子音,低子音という三種類があり,さらに声調の違いが加わる.中国語の四声は有名で,それを端的に表す「妈(mā)麻(má)马(mǎ)骂(mà)」,まーまーまーまー,「ママが馬を叱りましたか?」という文はご存知の方もおおいことだろう.タイ語にも似たような声調がある.
同じ発音でも声調が異なると全く意味が変わってくる.日本語にもアクセントの違いで言葉の意味が変わるものがあることはあるが,あまり声調を意識する言語ではないので,慣れない言語文化ではある.
日本語との違いについては,母音の多様さも難しさの一つとなっている.基本的に日本語の母音は「あいうえお」の5個なので,どちらかというと簡素なほうである.これが他言語をうまく発音できない原因の一つでもある.口の明け方や喉の震わせかたなど,いままで経験したことのない使い方をしなければならないからだ.
かつて,韓国からの留学生が,韓国語を学んでいる私に対して「先生,韓国語は日本語と違って母音が7個あるので,たくさん練習しても日本人が韓国語をネイティブっぽく喋るのは難しいでしゅ」と説明してくれたことがある.「ええい,伝わればええんじゃ.うるさいなー,お前だって『さしすせそ』をうまく喋れないくせに!」と思ったものだ(さすがに声に出してはいわなかった).
いずれにしても,母語話者以外が他言語をきれいに発音するのはなかなか難しいので,伝わればいいと開き直ることも重要だろう.ネイティブのように発声できればカッコはいいが,それがコミュニケーションに必要かどうかはまた別の話である.
英語にしても,インド人の巻き舌英語や,シンガポールのシングリッシュにタイのティングリッシュ,日本人のベタな日本語英語など,地域によって,かなりクセがある.ネイティブっぽくないとそれらを排除するよりは,それぞれの特徴に慣れて,許容するほうがはるかに建設的だと考えるが,いかがだろうか.そもそもが英語にしても,英語と米語でだいぶ違うし,スコティッシュの訛りが強い人が喋る英語を聞き取るのはかなりハードだ.
ただし,発音が悪くて言葉の意味が変わってしまうと,それはいささか問題である.コミュニケーションが成り立たないのでは意味がない.私は独学でタイ語を学んでいて,残念ながらDuolingoにタイ語のコースがないものだから,本当に徒手空拳で勉強を進めている.そして,発音のチェックには,スマホの翻訳機能を使っている.彼(彼女?)がちゃんと聞き取ってくれるかどうかで,正しく発音できているかどうかを確認するというやり方である.
「私は日本人です」.タイ語では,「ฉันเป็นคนญี่ปุ่น」(C̄hạn pĕn khn ỵī̀pùn)……カタカナで書くと「チャンペンコンイープン」だが,そのまま日本式に読み上げても,絶対に,伝わらない.気になる人は,タイ語部分を翻訳ソフトにコピペして,発声させてみるとよいだろう.アクセントの強弱を,日本人からしたら大袈裟かと思うくらいに抑揚させるのがコツだ.
それにしても,正確な発音はなかなか難しく,とくに「コン」の部分が難しい.私は〜の「チャンペン」の部分も,チャンピオンになったりシャンパンになったり,ちゃんと聞き取ってくれないことも多くて辛い.
それはそれとして,発声の微妙さから微笑ましい聞き取りが出てくるのは,いろいろと興味深い.以下は,何度も練習していた過程で出てきた珍解釈の例である.全て,私が「私は日本人です」とタイ語で発声したつもりの音声を,機械が認識した結果として示されたものだ.
「私は日本製の機械です」…… 惜しい.日本人は機械のように正確だから?
「私は日本のエビです」…… エビ,タイ語で「กุ้ง(Kûng)」は,トムヤムクンのクンなので,日本人にも馴染みがある.「ン」と「ング」の違いも日本人には難しいのかも.韓国語では「ㄴ」と「ㅇ」の違いということになるが,日本語だとその表記上の違いはない.
「いかにも日本的だね!」…… そうだね.うん,惜しい
「私は日本国民です」…… 本当に惜しい.日本人と日本国民,ほぼほぼ同義.とか言い切っちゃうと,とある方面からクレームが来るかもしれない?
「私は日本人女性です」…… いや,生物学的にもジェンダー論的にも,違うと自認しているんだけれど.
「私はおそらく日本人です」…… うん,たぶん,そう.
実際の会話では,多少,こちらの発音が悪くとも文脈から意味をある程度は察してくれるはずなので,ここまでわからずやということもないはずだが,それにしてもちょっとズレた解釈が出てくるのは哀しくも面白い.
しかし,何度も練習しているうちに,だいぶ,正しく聞き取ってくれるようになった.繰り返しの練習はやはり効果的で,語学は慣れが大切なんだなあと実感した.
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