2021年6月5日土曜日

オンライン研究会で感じたCSCW感

CSCW……これは,Computer Supported Collaborative Workの略で,直訳すればコンピュータが支援する協調作業,つまり,コンピュータを利用して皆でわいわいなんか生産的なことをしようや(超訳)という概念のことである.

ものの本によればCSCWが提唱されたのは1984年だそうで,ドッグイヤー,いや,マウスイヤーとも言われるIT業界においては,もはやずいぶん昔からある概念といってよい.しかし,翻ってみれば,COVID-19パンデミックで余儀なくされているオンライン講義なんて,まさにCSCWの最たるものではなかろうか(と思ったら,CSCWから派生したCSCL……Computer Support  for Collaborative Learningという概念もあるらしい).

CSCWをしみじみ感じた出来事

そんなCSCWだが,先日開催された2021年度春季HCD研究発表会で,うーん,まさにこれはCSCWなんだよなぁとしみじみ感じてしまったので,このしみじみ感を皆様にもお伝えしたい.

HCD研究発表会では,オンライン化した昨年春の回から,拙作の,OLiVES(On-Line Virtual Event Support System)(飯尾, 2021)というイベントオーガナイザーを活用(飯尾, 辛島, 2020)している.このシステムには,評価者権限を持つアカウントでログインして操作すると,各発表に点数を付けたりコメントを送ったりできるような仕組みが用意されている.これを導入したことにより,次のような利点が得られた.

  • 発表の評価がリアルタイムで記録・集計されるので,最後の発表者の発表が終わった直後に,優秀発表賞を決めることができるようになった
  • 評価票に手書きで書き込まれたコメントを転記する作業が省略された(というか,実はそれまであまり活用されていなかった評価コメントを活用できるようになった)
  • コメントを発表者にフィードバックできるようになったので,発表者も,質疑応答だけでなくたくさんのコメントを得ることができるようになり,発表すると嬉しい効果が得られるようになった
  • 評価者も手軽にコメントできるようになったため,以前に増してコメントをしてもらえるようになった

即時に発表賞を決められるようになったため,最後の発表が終わってから閉会式までの間に,評価票を集計する時間を稼ぐために用意していた「特別講和」なる謎のセッションを省くことができるようになったし(まあ,それはそれで面白いものではあったが),評価コメントを気軽に書けるようになったことで,発表者にとっても発表する意義が深くなった.これもすごく良いことなのではないだろうか.

身近になったものだと実感

これらの成果は後日またどこかで発表する予定ではあるが,いずれにしても,オンライン研究会ということは参加者は日本全国に散らばっているわけで……実際,分かっている範囲で,北は札幌から,西は福岡からの参加があった……,昔は夢物語のようなものだった地球規模のCSCWが,実に身近な存在になったものだとしみじみした次第である.

参考文献

  • 飯尾淳, (2021) オンライン・バーチャルイベント支援システムの開発と運用, 国際情報学研究, No. 1, pp. 1-20
  • 飯尾淳, 辛島光彦 (2020) オンライン研究会のあり方について, 人間中心設計推進機構 2020年冬季HCD研究発表会, pp. 49-52

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