COVID-19パンデミックで世の中のイベントがおしなべてオンライン化したことを受けて,オンラインイベント支援ツールOLiVESを作成し,いくつかのイベントで活用した.今回は,HCD-Netが開催しているHCD研究発表会において,発表の評価を円滑に進めるツールとして効果的な活用ができたことを確認したので,それについて報告したい.
OLiVESの活用
OLiVESは,オンラインイベントだといろいろ制約があるのでそれらの課題を解決するために考えられたシステムである.その詳細に関しては(飯尾2021)で詳細に報告予定であるので,ここでは割愛する.今回は,(飯尾・辛島2020)で論じた「発表の評価を効率よく行うツール」としての機能に焦点を当てる.
まずは次の図をみていただきたい.OLiVESが通常提供するユーザ向け機能に加え,OLiVESにちょっとした仕掛けを入れて,評価者権限を持つアカウントでログインすると評価シートにアクセスできるリンクが現れるようにした.
評価シートはGoogle Formsで用意されているので,集計は自動的に行われる.これまで,オフラインの研究会では紙に印刷された評価シートに手書きで記入するという方法をとっていたため,すべての発表が終わった時点でスプレッドシートに急いで入力して集計するという作業が発生していた.そのため「特別講話」などよく分からないセッションを設け,集計のための時間稼ぎをしていたという苦労話がある.
OLiVESを使えば,その点はほぼ自動化されているので集計も瞬時で終わる.行わねばならない作業は,せいぜい,誤った入力がなされていないかをチェックするくらいなので,それほど時間がかかるものではない.もう,特別講話を用意する必要は,なくなった.
入力の手間も軽減
さらに,評価者が評価結果を入力する手間も軽減するための工夫が入れられている.
この図の左側はOLiVESのセッション情報画面である.右が評価シートのGoogle Forms画面.評価者氏名と評価対象の発表タイトルは,OLiVES側からそのまま情報が伝わるため,間違いも起こりにくくなっている.さらに,評価者は選択肢を選ぶだけなので,評価も簡単に終わる.なお,必要に応じて,コメントも書けるようになっている.このコメントは発表者に伝えてあげたほうがよいと思われるが,その部分の議論はまた別のお話.
評価状況の評価
すべてオンライン化されているので,当然ながら誰がどう評価したかのデータも残る.それを分析してみると,評価の状況がどうだったか,今後どういうことに気をつけるべきかという議論もできそうだ.
実際に分析してみるとこんな感じになる(数値部分は生々しいのでボカシを入れた).発表✕評価者の集計表(Excelのピボットテーブルにちょっとだけ細工したもの),数字は発表開始時刻から評価結果の登録までの時間間隔である.下に表示しているグラフは時間間隔に関するヒストグラムである.冬季研究発表会は午後だけ,春季研究発表会は終日という違いがあり,よく見てみるとその影響も数字に表れていることがわかる.
このようにちょいちょいと分析するだけで,いろいろなことがわかる.こういうオンライン化はどんどん進めるとよいだろうね.なお,ここで論じた機能はオンラインイベントに限った話ではなく通常の研究会等でも活用できるので,今後は毎回これを使おうということになっている.もし「使ってみたい」という方がいらっしゃったら,飯尾までご相談ください.
参考文献
- 飯尾(2021)OLiVES:オンライン・バーチャルイベント支援システムの開発と運用, 中央大学国際情報学部紀要, No. 1 (印刷中)
- 飯尾,辛島(2020)オンライン研究会のあり方について, 人間中心設計推進機構 2020年冬季HCD研究発表会, pp. 49-52.
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