2022年6月4日,中央大学iTL(市ヶ谷田町キャンパス)の教室で開催された「2022年度春季HCD研究発表会」は,久しぶりにオンサイト開催で実施された.「やはり人が集まってワイワイと意見交換しながら議論するのは楽しい」との声もちらほら.何でもかんでも全てオンライン!は無理があったということを実感する研究会であった.
とはいえ,COVID-19の感染状況は収束したというわけではなく,オンライン参加を希望する参加者もおり,また,地方在住のためオンラインを希望するという会員もそれなりに多い.次の図は,HCD研究会のオンライン化について論じた拙文(飯尾・辛島2022)からの引用である.アンケートの結果から,ハイブリッド方式が強く望まれていることがわかる.
そこで,今回はオンラインと対面のハイブリッド方式とし,その実施方法は「ハイブリッド会議の最適解(続・ハイブリッド開催の経験から)」で紹介したやり方で実施してみた.
やってみてどうだったか
さて,当日の様子である.事前の登録上は,オンライン参加が99名,オンサイト参加が43名という状況であった.オンライン参加のほうが多かったのは,個人的にはやや意外であった.また,予想外だったのは,オンライン登壇者が何名かいたことである.これは盲点だった.私は,登壇者は皆,現地会場に来るものだと(勝手に)思っていた.しかし,考えてみれば地方から参加する発表者は,上京せずとも発表できるのだから,オンライン参加が望ましいだろう.
そんなわけで,些細なトラブルがなかったかといえばそうでもなかったが,おおむね,円滑に進行できて,無事,終了できた.現地の責任者としては,ほっと一息というところである.
以下,得られたノウハウを順不同で紹介しよう.
中継用PCのカメラはミラーリングさせない
中継用PCのカメラは,ミラーリング設定にせず,登壇者が発表している様子の全体像を写すようにした.もう少し発表者の近くに寄せて置いたほうがよかったかもしれないが,登壇者の近くにスタッフが常駐するのもどうかというところで,兼ね合いが難しい.
オンライン側から,「登壇者の表情を映してほしい」というリクエストもあった.それに応えるには,別途,Webカメラなどを用意して,登壇者を撮影する工夫が要りそうである.ここは,次回への課題として残された点である.
配信用PCのオーディオ設定を適切に
HDMI経由でのオーディオ出力設定がよくわからず,午前中は,苦肉の策で「中継用PCのスピーカから出ている音をマイクで拾う」という設定にした.会場からは文句は出なかったが,若干,音が小さくて聞き取りにくかったかもしれない.昼休みにHDMI経由で音声をPAに流せるように変更したが,Zoomのデフォルトではそうならないので,注意が必要である.
また,オーディオ設定で「背景雑音を抑制」を「低」にすると教室のマイクでやりとりされている音声を拾いやすいのでは?という指摘があり,午後からそのように変更した(次図).「午後から音が聞き取りやすくなった」というオンライン参加者の声があった一方で,会場の声が聞こえなくなったという報告もあり,今後の調査が待たれるところである.
配信用PCは「ホスト」にしない
「配信用PCは最初から終いまでずっと繋ぎっぱなしにしているから」というだけの理由で,配信用PCで使っているZoomアカウントをホストにしていたが,これは失敗だった.ホストは別のPCにすべきである.というのも,配信用PCの画面を映し出しているので,誰かが入室すると,都度,上にポップアップが出てしまった.これは鬱陶しい.
マイクのバッテリー確保をしっかり
これは本校独自の事情ではあるが,マイクのバッテリーがだいぶへたっていて,ノイズが乗ったり音が途切れたりするトラブルが若干発生した.マイクの品質が一つの肝となっているので,マイクに雑音が乗るといろいろ不都合が生じる.バッテリーはしっかり確保し,また,赤外線マイクなので,赤外線通信部分を握って隠さないようにするという指示を,マイク利用者には周知する必要がある.
とにかく無事に終えられてなにより
るる述べてきたが,まずは,100名超級の規模のハイブリッドイベントをなんとか無事に終えることができたのでほっと一息である.
ただし,会場から参加していると,オンライン登壇者の発表を聞いているのはなんとなく寂しかった.COVID-19パンデミック以前にも,国際会議等で「参加できないからSkypeでね!」という状況がたまにあったが,そのときに感じた寂寥感のようなものを,改めて感じた.なんというか,「パブリックビューイングですか?」みたいな違和感を感じるのだ.やはり,発表者は,現場に来てほしいなあ.
参考文献
飯尾淳, 辛島光彦 (2022) 研究会のオンライン化とその対策, 人間中心設計, Vol. 18, No. 1, pp. 5-13.
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