2021年12月9日木曜日

オンライン講義と出席,反転授業その後

オンライン講義(オンデマンド型)で講義動画を撮影する必要に迫られることになり,その後の対面授業では反転授業として活用しているという話は何度か紹介した.先般に出版した拙書「オンライン化する大学」でもそのエピソードは述べている.

その後の顛末がどうなったか.

このスタイルを始めたのは昨年度後期,1年次必修科目の「プログラミング基礎」が最初である.これに関しては,学生はほぼ出席していた.さらに「先生が反転授業方式にしてくれたので力をつけることができた」と,ある学生から嬉しい報告があったことは,既報「反転授業の効果」でも述べた.

今年度,同じく1年次必修科目「プログラミング基礎」では昨年度と同様の状況が続いていて,学生も教室で楽しそうに手を動かしながら演習を実施している.この科目に関しては,しばらくこのスタイルでやっていこうと好感触を得た.先日,授業動画を公開準備こそしていたものの,うっかり,公開の手続きを忘れていたというミスをやらかした.すると,学生から「今週の動画が公開されていないようですが……」と指摘されたのだが,そんな指摘を学生からもらって嬉しくなってしまった.これこそ,反転授業のスタイルが定着している証だからだ.

一方,3年次選択科目の「プロジェクト・マネジメント」,こちらは受講生の半数ほどしか教室に来ていない.教室に来ない学生は,オンデマンド講義ビデオを視聴するだけで満足してしまっている模様である.

反転授業であるか否かにかかわらず,オンラインと対面併用で授業を実施している先生方の話を聞くと,多くの教室で,ほとんどがオンライン受講で教室では数名だけ,というような状況が起こっているらしく,半数も教室に来ているというのはそれでも多いのかと驚く.

ただし,手前味噌ではあるが,「プロジェクト・マネジメント」では,教室に来ている学生の満足度が高いように感じる.ビデオでは話せない「ここだけの話」も教室では話せるし(「いまからナイショの話をするけれど,泉田議員みたいにこっそり録音してないよね!」と言ってから話し始めても,この振りにポカンとしている学生が多いのが残念),グループワークなど教室でやるからこそ効果が出る時間も取れる.

この科目では毎回,課題を課していて,その提出内容も,教室組のほうがしっかりしている傾向がみえる.これは,まあ,教室で念を押して丁寧にやっているからだろう.オンライン組もLMSの掲示板などで質疑は受け付けるといっているが,あまり活用されていない.LMSの掲示板活用は,昨年度の「プログラミング基礎」ではだいぶ活発に行われていたが,そのLMSの掲示板での議論も,教室組とオンライン組と区別なく行われていたような気がする.

今でこそ出席が当たり前という風潮になっているが,昔は,大学の講義なんて「出席?なにそれ美味しいの?」みたいなところがあった.私はたまたま風邪をひいて寝込んでしまい,ある授業を欠席したら,誰一人として出席者がいなかったらしく,先生が激怒,あとで全員が呼び出されて説教をくらった,という牧歌的なエピソードも覚えている.強調しておきたい点は,私はたまたま風邪をひいて寝込んでしまったためにやむなく欠席したということである.

まあ,最後の話はほぼ冗談だが,反転授業方式は,積極的な学生には有効である(が,そうではない学生・生徒には疑問が残る)という信念がさらに確実になった.そして「やる気のない子のほうが反転授業は効果があります」が嘘であるとの確信は強化された.格差はますます広がりそうで,大学なんだものそれでいいんじゃないかという気もするが,議論の余地は残るだろう.

(このイラストは「反転授業」ではなく「ちゃぶ台返し」)

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