2021年2月18日木曜日

くじらベーコン万歳

杉浦日向子の「ごくらくちんみ」を読んだ.本書は,様々な珍味を題材とした短篇集.ていうか,ショートショート.

余談だがショートショートっていうとSFのイメージが強いのは星新一のせいだろうな.本書のような私小説に近い感じの掌編小説をショートショートと呼ぶのには,いささか違和感がないわけでもない.

ま,それはそれとして.

なかでも印象的だったストーリーが「くじらベーコン」と題したお話.短いお話なのでまるっと紹介したいところだが,全文引用すると,それって引用なのか?ってことになるので,後半をちょいとばかり引用しよう.

薄いスライスが五枚.大半を占める脂身に,先細の竹箸で切れ目を入れると,むちむちっとした手応え.胡椒を多めにつけ,醤油へ,ほんのちょびっと浸し,食べる.

「んんー.サカナじゃない,まさしく,ケモノなんだよね.あったかい血と胎生の鼓動を,感じるー」

「大袈裟だなあ.ガツンと度合いの高い原酒もらおうか.マスター,ほんっと,このベーコン,ウマー」

「わたしもおいしいとおもいます.鯨は,日本の食文化の華です」

「だよねー.残さず使い切るもんねえ.なんで鯨捕っちゃダメなん.世界の大勢が,家畜っきゃ喰わないから,鯨の恩恵を知らないんだ」

「わたし,肉の脂けっこう苦手だけど,これはイケるんだ.なんか,ひと噛みで,うわっとコクがひろがって,お口が鯨.鯨まみれのマクを張るのよ.すっごいインパクト.殴られても気持ちいいみたいな」

以上,引用終わり.

まあ杉浦日向子って「お江戸でござる」に出てきてたくらいしか実は知らなかったんだけど,実に素敵な感性の持ち主だったんだなぁと,あらためて感服した次第.享年46歳.惜しい.実に惜しい.

「ごくらくちんみ」ぜひ読んでみてください.





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