「教育IT『GIGAスクール』の“実質勝者”Googleの衝撃データ……『対象自治体の半数を獲得』はなぜできた?」という記事を読んだ.今からもう20年ちかく前の昔話になるが,Windows一辺倒だった初等教育現場にLinuxの楔を打ち込もうとしたプロジェクトに参加していたことを思い出し,いろいろと感慨深く感じている.
日本のITベンダーにしてみれば,あるいは実際の教育現場で小中学生の教育に携わっている先生方にしてみれば,MicrosoftがGoogleに代わっただけではないか,という見方もできよう.その是非については本稿では触れない.しかし,私にとって朗報なのは,ChromeOSがLinuxベースであるということだ.
「Chromebookがlinux対応!ChromeOSのターミナルを動かしてみた!」というタイトルに若干の違和感を覚えないこともないが(なぜならば,そもそもLinuxを改造して作られたものがChromeOSだから),使おうと思えばLinuxマシン,あるいはUnixマシンとして利用できるという点はありがたい(正確にはUnixクローンであるが,細かいことは気にしない).ちょっと情報処理に興味を持った児童や生徒,学生が,自然とUnixに触れることができる,そんな環境が増えるのは大歓迎.
なぜUnixであるべきなのか
2004年に出版した拙書「リブレソフトウェアの利用と開発―IT技術者のためのオープンソース活用ガイド」の77〜78ページで,あるBBSでたまたま目にした名前も知らぬ人のコメントを紹介した.目からウロコというか,私自身が感じていたことをよくぞ言語化してくださったと感心したものだ.その本は残念ながらあまり売れなかったが,そのコメントをここでも紹介しておきたい(言葉遣いや漢字の使い方などいろいろ添削したい文章だが句読点以外は「ママ」で引用する).
UNIXには愛されて然るべき理由が有ります.UNIX程「計算機はいかにあるべきか」が議論されるシステムは無い.そもそも生まれたのが「コンピュータ分野への進出を禁じられていたAT&T」だったことにも由来していると言える.そういう状況で作っているなら,売れるかどうかを考える必要は一切無い.コンピュータシステムとはどう有るのが正しい姿なのか.それを開発者は真剣に悩み,悟りに近いものを得た.その答えがUNIXの前身……Unicsだと言って良い.そして,大学ではUNIXに触れた事もない情報系学生などいないだろう.多感な時期に人間の悟りのたまものをいじるのである.自分でも「計算機はどうあるべきなのか」を真剣に考えるはずだ.このように,UNIXを使う者にとって「計算機はいかに有るべきか」は一度は考えるものだ.その結果,そこには思想なり,文化が生まれる.そして,ユーザーインターフェイスも統一され,分かりやすくなる.UNIXのユーザーインターフェイスを学ぶと言う事は,その思想,文化を追体験し,理解していくことでもある.UNIXを作った人間の思想は「OSを使うと言う事は,結局プログラミングをする事に他ならない」というものである.OSはAPIセットであるのだから,プログラミングをする以外にOSを使う術などあるわけはない.そう,これらは真理なのだ.この真理にしたがってUNIXはプログラミングをしやすい様に作られている.それしか考えていない(だから最初はunicsだった)と言っても良い.そして,その構成は直感的ではないが秩序と論理に導かれている.使えば使う程,システムに対し理解が深まり,楽しくなるのだ.優れたシステムとは直観的に動かなくてはならないが,コンピュータの豊富な機能をCRTの中の限られた面積,マウスの登場以前の当時の貧弱な入力機器で直観的に扱える訳が無い.次善の策としては論理的に動作する事である.UNIXのコマンドライン環境はそれを体現していると言えるだろう.
いずれにしても,ITに興味を持つ優秀な次世代が育つきっかけになってくれると嬉しいな.
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