2020年8月6日木曜日

オンライン化する国際会議の明日はどっちだ

COVID-19流行のせいでオンライン化したのは講義だけではない.世界的に人の行き来が制限された結果,国際会議も片端からバーチャル会議化し,オンラインでの開催になった.私は,今年6月にクロアチアでの開催が予定されていた学会と,7月にデンマークで開催が予定されていた学会に参加したが,いずれもバーチャル会議でオンライン,自宅からの参加とあいなった.

両学会ともに,自分の発表とその後の質疑応答はつつがなくこなしたが,それだけ.なんとも寂寥感が残る学会参加であった.以下,オンライン化のメリットとデメリットを挙げるが,結論は「オンライン国際会議ってやはりメリット少ないから当面は致し方ないにしても早く元に戻す方法を考えるべき」である.

オンライン化のメリット

費用の面で気軽に参加できる点は,利点と考える人も多いだろう.なにしろ旅費と滞在費がかからない.欧州あるいは米国往復4日間滞在のパターンで20万円前後のコストがタダ.前後の移動時間もまるまる削減できる.

……他にメリットあるかな?(ちょっと意地悪なもの言いをすると,下記に述べるようにディスカッションもあまり盛り上がらないので「とにかく『国際会議で発表した』という既成事実を積み上げたい」人にはコストパフォーマンスがよいかも)

オンライン化のデメリット

人的ネットワーキングに関する活動が皆無であった.せいぜい自分が発表したセッションのチェアパーソンに挨拶した程度.バーチャル会議は人的ネットワーキング構築にほとんど寄与しない.これが最大のデメリットといえる.

セッション間のコーヒーブレーク,ランチタイム,レセプションパーティ,あるいはオプション参加のエクスカーションなど,そのような活動がいかに重要であったかが思い起こされた.「いやー,話題が多岐にわたるから英語で会話を繋ぐのが難しくてさー」なんてボヤキがとても贅沢なものであったということに気付かされた.

まあ,もっとも国内でも今年度は新たな人的交流なんてほとんどないから,当たり前といえば当たり前の話ではある.そんなんでいいのか?という疑問に対しては,よくない,と即答する.どうすればよいのか,新たな課題であろう.考えなくては.

オンライン化のデメリット(私が反省すべきもの)

以下に述べるデメリットは,私の意識の低さによるものなので「ちゃんとせえ」で片付く話ではある.しかし,まあ,いちおう課題として挙げておこう.

とにかく参加が希薄であった.参加意識もバーチャルであった(バーチャル会議だからね).具体的には,自分が発表したセッションこそきちんと参加したものの,他のセッションはほとんど参加しなかった(できなかった).もったいない.でも時差のせいで夜中とかなんだもんなあ(自分が参加した両学会は,いずれも朝イチのセッションに割当ててもらえたので,日本時間で夕方〜夜という,まあ,なんとか普通に参加できる時間帯であり助かった).

現地に行ってしまえば,参加するしかないから面白そうなセッションには参加してみることになる(まあ,抱えていった仕事をせざるを得ないときは別).せっかく参加費を払っているのだから,情報収集も兼ねて,他のセッションにも参加しないのはもったいない.ここで新たな人的ネットワークが拡大することだってあるし.

そもそも,自分が参加したセッションですら,議論が盛り上がったかというとかなり疑問が残る.見知らぬ人と,いきなりオンラインで議論しろってかなりハードルが高い.発表して,それに対してディスカッションして,アイデアを高めていくという学会の理想的状況には,やや距離があるのではないかという印象は拭えなかった.

オンライン化で参加者数は増えるらしいが……

オンライン化すると参加者数は増える,という話を聞く.私が運営に関わった国内のイベントでも,確かに参加者の総数は増えた.しかし,その数の多くは「幻(まぼろし)」のようなものなのではなかろうかという気がしてならない.

オフライン開催でも自分のセッション「しか」参加しない人は居ただろう.毎年,なんだかんだで理由を探してスイスで開催される学会に「出張」し,自分の発表するセッションだけ参加,残りの日は山に行ってしまうことを公言して憚らなかった某先生を知っている.まあ,その某先生は極端なケースにしても,オンライン化によって参加意識が希薄になるのは私だけではあるまい.そうなったときに,そもそも参加する意義って何だろう?

薄く広くで本当によいのか?少し立ち止まって考える必要があるのではないだろうか.

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