Google classroomをお使いの先生方から「テストを一斉配信したら,一部が違う科目の受講生のところに送信されてしまった」とか「あまつさえ回答済みの答案が別の学生のところに送られてしまった」との報告があった.あってはならない事故に聞こえるが,同様の事例は他の大学でもあったらしい.これは少し,いや,かなりの問題ではなかろうか.
はたして,何が原因でこのようなことが起きてしまったのか?
システム内部のバグ説
システムにバグ(不具合)があり,正しく設定しているにも関わらず,この事故が起こってしまった.利用者側には何の問題もない,という可能性.さすがにこれはなさそうだけれど,もしそうだとしたら由々しき事態だ.ちょっと怖くてGoogle classroomなんて使えない.
しかし,Googleでは2週間のドッグフーディング期間(自分たちで使ってみる期間)を置かないと自社サービスをリリースしないというルールだと聞いたことがある.それに,まがりなりにも大企業が世界的にサービスを展開しようというプロダクトで,こんな初歩的なバグが入り込むようなテスト体制をとっているだろうか?
このような理由から,システム内部のバグ説は(多少IT業界への贔屓目が入っているかもしれないが)考えにくいところではある.
設定あるいは登録ミス説
システム的に問題がないとすれば,次に考えられるのは,設定や登録にミスがあったということだ.経験上,これは十分にありえそうな原因と考えられる.
だからといって,設定した教員や職員,あるいは,自己登録した学生を責めるのも間違い.間違って設定したり,間違って登録したりしてしまうことは,これも本来あってはいけないことで,そのようなミスを誘発する登録手順やユーザインタフェースに問題があると考えるべきである.
ドッグフーディングには,ユーザ層にズレが生じることがあるという課題がある.すなわち,ITリテラシの高いIT企業社員と,ITリテラシに幅のある教員あるいは学生といった実ユーザには,そもそもシステムに対する心構えや背景知識が異なるという点である.ドッグフーディングで十分うまく使えたからといって,実ユーザがきちんと使えるとは限らない.
Google classroomに限らず,学習支援システム(Learning Management System, LMS)は,どのシステムも「あれもできる,これもできる」を狙いすぎて複雑怪奇なインタフェースになりがちという問題を抱えている.ITリテラシの高い人であれば十分に対応できるが,そうでない人にとっては目眩がするようなインタフェースである.ミスが入り込む余地は多い(実際,私が使っているLMSでも,間違えることがときどきある).
どうすべきか?
設定ミスや登録ミスを誘発しないようなシステムを設計するには,実ユーザに近いグループを用意してユーザテストを念入りにやればよいのだが,このようなシステムで十分なユーザテストをやるのはかなりコストがかかりそうという問題がある.
この議論をしていたら,Googleのヘルプには不具合や追加機能要求の報告方法についての記述があるので,まずはサービスの提供をして,万一問題があれば,ユーザーの報告に応じて対応しているのではないか?との指摘をいただいた.昨今のITサービス提供に関しては,ありがちな対応ではある.しかし,万一の問題だったとしても,今回問題になっているような問題はいささか看過できないレベルのものであり,これを「起きてから対応」と考えるようなサービス提供方針は,それはそれで批判されるべきではなかろうか?
いずれにしても,とにかく今回の事故に関しては原因の究明が待たれるところではある.その後の報告に注目したい.
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