2020年8月13日木曜日

課外活動と対面講義に関する二重構造

 ここのところずっと議論が続いている「各大学で後期は対面講義をやるべきなのかどうか」問題.私自身は「オンライン講義の意義は認めるものの,オンライン講義だけでは不十分であり対面講義も積極的にやるべき」という立場を一貫して維持しているが,ここではその是非に関する詳細には踏み込まない.それはそれとして,大学全体を取り巻く状況と,課外活動をめぐる動きに共通点があるなあと感じたので,その構造を整理してみたい.

きっかけは東大の通達

そもそも「おやまあ」と感じたのは東大の通達である.東京大学は積極的に警戒レベルを下げるなど,対面の活動実施に舵を切っているようにみえる.オンライン化の決定も速かった一方で,その反省点も迅速に取り入れたのではないかと個人的には好ましくみているが,まあ,それは上記の立場を私が取っているので若干贔屓目かもしれない(とりあえず置いておこう).

さて,注目すべきは,東大教養学部長から発せられた「課外活動の再開にあたっての注意」である.同文書によれば,東大では「8月6日以降,駒場キャンパスにおける『課外活動施設の利用制限の緩和』を行」ったらしい.これは,学生にとっては朗報といえよう.これまで基本的には「課外活動するな」と封じ込められてきたところの制限緩和なのだから,学生にとっては望ましい大学側の対応であろう.

しかし,本文書のほとんどを占める内容は,要約すると「課外活動は許すがクラスタは発生させるな」というものである.さて,この構図,なんか既視感があるぞ?

文科省の対応

ここで,我々が置かれている状況を振り返ってみよう.小中高は対面授業を再開しているのになぜ大学生だけがオンライン講義で我慢させられているのだ?という声がSNSで学生から発せられたり,保護者が「授業料返してもらわないといけないのでは?」と疑問を呈しはじめたり,はては政治家がつまらぬ意見※を垂れ流してみたり,いろいろと外圧が高まっている状況にある.

さて,このような状況に対して,本学のT先生が,文科省の対応は「感染者を出さないように対面講義を再開しなさい.後方支援はないので自分で知恵を出して.感染者が出た場合の責任は大学でおってください」というものであろう,と簡潔に表現してくださった.まあ,塩対応だなあ,とは感じるものの,現時点で,それ以外にないだろうなあ,とも思う.

ところで,これ,「文科省」を「東大」に,「大学」を「課外活動(の主体)」と置き換えたら,先の通達とほぼ同じじゃないの!

我々はどうすべきか?

ではどうすべきかという答えを私は残念ながら持っていない.ただただ,ああ,同じ構造だなあ,いざというときは責任の押し付け合いになるのかなあ,と考えただけである.皆さんはどう考えますか?

東大の通達,結びの段落がなかなかシャレているのでその一部を紹介して,本稿におけるまとめの代わりとしたい.

課外活動をコロナ禍の中で安定して実施できている大学など,世界のどこを探してもないと思います.そのような世界の先端を開拓する覚悟で,課外活動を行って頂きたいと思います.私たちは,新型コロナウイルスが打撃を加えている「人と人との交流・リアルなネットワークの形成」を,なんとしても守っていかなければなりません.是非東大生の皆さんが率先して,その新しいモデルを作ってほしいと願っています.

先の二重構造に当てはめれば,我々は「世界の先端を開拓する覚悟で対面講義を行う」ことに挑戦しなければならないのかなあ,ってことになるけどねえ.

脚注:
※ 「授業料をもらっている以上,大学は対面事業をきちっとやるべき」だそうだ.まあ,対面「授業」をしっかりやるべきという意見は同意するが,大学が自助努力してないという決めつけはいかがなものか.それにしてもタイトルの誤字は酷い(本文にも「ネット事業」という表記がある.なにこれ?口述筆記でもさせたのかな.そんでもって滑舌悪かった?)

0 件のコメント:

コメントを投稿