2023年3月10日金曜日

続々・こんなところでHCD

今日の指摘はHCDというより個別の最適化が必ずしも全体最適化にならない事例の紹介という感じだが,やはり,利用者視点になっていないという点でHCDではない事例ともいえるだろう.

さて,次の写真を見ていただきたい.これは半蔵門線・東急田園都市線の渋谷駅である.まず,ベンチがホームに対して平行になっておらず,垂直の関係になっている点に着目してほしい.

なぜベンチがこのような向きになっているのか.このベンチをホームに対して垂直にするというデザインは,何年か前から流行しているやり方である.その理由は,酔っぱらいがベンチから立ち上がってそのまま線路まで転がっていかないように,ということらしい.よくみると,ベンチのあるあたりの床には,以前あったベンチを撤去した跡が見受けられる.以前は,ホームと平行にベンチが設えてあった.それを,わざわざ向きを変えて設置しなおした,というわけだ.

しかし,この写真をさらによく見てみよう.手前は画角の関係で写っていないが,奥のホーム端に注目されたい.そう,ホームドアである.この駅はホームドアが設置されているので,電車到着時に開いたゲートから隙間に挟まれることこそあれども,よほどのことでもなければホームから線路に転がり落ちることはない.

すなわち,酔っぱらいがベンチから立ち上がって線路に転がり落ちようとしても,ホームドアで堰き止められるため,線路への落下事故は起きようがないのである.

横向きのベンチも,ホームドアも,どちらも事故防止には有効なのは間違いない.しかし,両者が同時に存在するのは過剰投資ではなかろうか.我々としては,この例を反面教師として,全体最適化を考えたいものである.

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