2025年6月19日木曜日

オンデマンド講座の(思わぬ)落とし穴

中央大学には「クレセント・アカデミー」という市民講座がある.私は運営委員の一人でもあり,もう長いこと,いろいろな講座を担当してきた.

最近のチャレンジとして,講義を録画して「オンデマンド講座」として提供する試みが始まっている.といっても,まだ,提供コンテンツはそれほど多くない.現在は,瀧澤先生のゲーム理論講座と,私のプロジェクトマネジメント入門が提供されているだけである.

このオンデマンド講座の試みは数年前から試行されており,事務局から,オンデマンド講座として提供してよいですか?と問われ,そのときは深く考えることなくOKした.とくに断る理由も思いつかなかったからだ.そして,それで問題ないと思っていた.

ところが,ここへきて,少し困った問題が発生した.それは,オンデマンド講座用に講義内容を提供してしまうと,翌年から同じ内容の講座を開けないという問題である.

以前なら,同じ内容で数年は講座を維持できた.しかし,現在,全てオンデマンド用に提供していいですよと快諾してしまったため,毎年,新しいテーマの講座を捻り出さねばならなくなっている.これは困った.

今年実施している「はじめての生成AI」講座は,私が担当する講座としては例年になく人気が高く,キャンセル待ちが出たとのことだが,これもオンデマンド用に録画しているので,来年は実施できない.

1回90分,それを3回実施するクレセントの講座である.新たな内容を毎年考えなければならないのは,なかなかしんどい.オンデマンド講座用に何本も講座を提供したのだから,来年は休ませてもらう交渉でもしようかしらん.

2025年5月14日水曜日

画竜点睛を欠くとはまさにこのこと?

昨日,某所で「ディリクレ関数がいたるところで不連続であること」についての議論になり,ChatGPTに聞いてみたらどうなるだろうかとの話になった.

以下は,ChatGPTとの対話の記録である.まず,私が「ディリクレ関数が不連続であることを証明してください」と尋ねた.

すばらしい!ワンダフル!ここまでは申し分のない説明である.記号の使い方も全て正しく,ε-δ論法で証明せよという方法論もバッチリだ.

わざわざ稠密なんてキーワードを太字にしたりして,なかなかやるやんけ,と,イイ感じで証明が進み,最後の「どんな小さなδを選んでもD(x)とD(a)の差分が1になってしまうから連続ではない,ってところまではバッチリ.

ところが,最後の「ε=0.5」でガックシ.0.5って,どこから出てきちゃったのよ?

希望があれば図でも示せるで?って調子に乗っちゃってるChatGPT,じゃあやってもらおうとお願いしてみたら……

ありゃりゃりゃ,うーん(x = λって,λってどこから出てきたの orz)

まあ,たぶんこれらのミスは,まるっとわけもわからずそのまま引き写してレポート書いちゃう学生を検出するためのリトマス試験紙として,ChatGPTが「わざと」出してきてくれているのだろう,なんて,好意的に解釈してみたり.そんなわけないかw

2025年4月26日土曜日

Herokuスタック・アップデートの備忘録

Herokuを使ったアプリケーションのサービスを二つ運用している.毎月十数ドルの利用料を払っているが,いずれも多数の皆さんに利用していただいているので,利用料を払っているだけの価値は得られているだろう.

数年前からずっと利用しているサービスなので,以前から,「使っているスタックをアップグレードせいやー」という連絡を受けていた.スタックというのは,アプリケーションを動かすプラットフォームのことである.これまで,heroku-20と名前の付いているスタックを使用していたが,そのスタック利用期限が今月末,4日後の4月30日だというのだ.

もちろん,ほったらかしておいたらすぐに使えなくなってしまうわけではない.利用だけであれば,このままで,まだ使えるとのこと.ただし,セキュリティ対応やさまざまなサービスは打ち切られる.また,致命的なのは,利用期限を超えたスタックを使っている場合,コードの変更やアップデートができなくなる,という制限である.これは,ちと,まずい.

スタックのアップグレード

というわけで,ようやくお尻に火がついた私は,重い腰を上げてスタックのアップグレード作業に着手したのだった.

結論からいうと,終わってみればなんということはなく,あっけなくアップグレードは終了した.ウェブサイトの指示に従い,次の手順でアップグレードすれば,ほぼ,問題なく終了する.

  1. 新しいスタックの環境を作り,スタックを更新してきちんと動作するかどうかのテスト用アプリをデプロイする,
  2. そのアプリが正しく稼働するか,ソースコードをアップロードして起動してみる,
  3. 問題なく動くことを確認できたら,テスト用アプリを削除して,本番環境のスタックをアップグレードする

いくつか説明通りにいかないところがあって試行錯誤しながらではあったが,無事,heroku-22にアップグレードできた.ついでに,というか,勢い余って現在の最新版であるheroku-24にまで上げてしまった.これでしばらくはアップグレード問題に悩まされることはなくなるはずである.

躓いたポイント

ウェブサイトの説明に従ってやったらほぼ問題なくできたが,いくつか躓いた点があるのでそれも紹介しておこう.

まず,説明通りにやったらうまく動かなかった.テストアプリを立ち上げて「ダメでっせ」という画面が出ていたときの,嗚呼,落胆たるや,いかほどばかりであっただろうか.世の中うまくいかんもんよなあと,日頃の行いをしばし反省である.

うまく動かんときはログを見よという指南があったので,ログをみたら「データベースにそんな関係は定義されていない」というエラーが出ていた.なんのことはない,よけいなデータベースを作って参照していただけという問題だった.

説明では,addonsの一覧を表示させて使っているaddonsを調査してそれらををcreateせよとあり,その説明に素直に従ったため,不必要なデータベースを新しくもう一つ作ってしまっていたわけだ.当然ながら新しいデータベースは何のテーブルも定義されていないので,そのままだとエラーになる.

作ったaddonsデータベースをremoveしてから,既存のデータベースをaddons:attachすれば,問題なく現状のデータで動いた.逆に,いま使ってるデータをアップグレードしたスタックのテストアプリからそのまま使えたので,データベースがアプリから切り離されていることのメリットを感じた瞬間でもある.いろいろ更新したアプリから,そのまま,何もなかったかのようにデータを弄れたのには,頭ではわかっていても「おおすごい」と思ったものである.

あともう一つ,コードのデプロイに git push heroku main という呪文を唱えるのだが,これが何度やってもエラーになる.「そんなリポジトリない」というようなエラーである.はて?と思って,ふと,気付いたのは,mainじゃなくてmasterだよ,ということ.最初に作ったのはだいぶ前であり,「masterはPC的にけしからん,mainを使え!」とよくわからないムーブメントが起こる前であった.それをすっかり忘れていた.git push heroku master とやったら,問題なく処理できた.

2025年4月22日火曜日

すごすぎる「ラストメッセージ」

文化放送で放送されている「髭男爵 山田ルイ53世のルネッサンスラジオ」という番組がある.文化放送で放送されている,という言い方は若干,正確ではないかもしれない.文化放送で収録されているPodcast番組である.地方局では地上波に乗せられているところもあるらしいが,肝心の文化放送で「放送」はされていない.

それはともかくとして,この番組,なかなか面白く,放送開始当初からずっと聴いている.Podcastでは最後に「ラストメッセージ」というコーナーがあり,これがときどきべらぼうに面白い内容を紹介するのだ.そして,今週は強烈な内容で,すごい内容にもかかわらず,笑い転げてしまった.4月21日配信回の「ラストメッセージ」は,神回といってもよいかもしれない.いや,神回である(断言する).

内容をここで紹介するのは野暮というものであろう.X(旧Twitter)の反応をいくつか貼っておこう(消えてしまうかもしれないのでリンクではなくスクショを貼っておく)





気になる人は,ぜひ,Podcastで同番組を聞いてみてほしい.オススメである.

2025年4月17日木曜日

グループディスカッションは少人数が望ましい?

日本とタイ,マレーシアの大学生による異文化間交流の様子を分析している.詳細な分析はこれから進める予定だが,少し面白い傾向が見出された.それは,グループの参加人数が多くなると「聞くダケさん」がどうしても出てくるということである.

この異文化間交流のプロジェクトでは,少人数のグループに分けてオンライン会議システムを用いて交流を進めている.しかし,諸事情がありその人数は2名のマンツーマンによる対話から10名を超える大きなグループでの実施まで幅広い.

それらのグループに関し,ターンテイキング(話者交代)の状況や発話回数を可視化してみたら,「どうも,人数が多くなると対話に直接参加せず,聞いているだけという参加者が出てきてしまうなあ」ということにあらためて気付いた.

これは皆さんも日頃感じているのではなかろうか.大勢が参加する会議ほど,参加者の参加意識は希薄になり,発言者は偏る傾向にあることを,日々,感じてはいまいか.とくにオンライン会議では,会議に参加しているフリだけして別のことをしていたり?

まあ,会議はともかく,今回のグループは異文化間交流であるから,本来,参加している全員によって積極的に交流を進めることが望ましく,全ての参加者が均等に発言すべきはずのものである.しかし,やはり人数が多くなると,尻込みしてしまうのか,あまり発言しない参加者がどうしても出てくる.

というわけで,グループの参加者と,発言回数のばらつき加減の関係を調べてみた.次のグラフは,グループの参加者数を横軸に,参加者の発言回数から計算される変動係数を縦軸にして散布図をプロットしたものである.

なお,変動係数とは,標準偏差を平均値で割った無次元数である(nが小さいのでここでは不偏標準偏差を用いている).分散や標準偏差は元データのサイズが大きくなるとどうしても大きくなってしまうので,平均値で割ることで正規化する.規模の異なるデータのばらつき具合を比較するときには,分散や標準偏差ではなく変動係数による比較が望ましい.

さて,図を見てみると,どうだろうか.かなりきれいな相関が出ていることに気付く.グループの参加人数が多くなると,変動係数の値は大きくなる.つまり,発言回数のばらつきが大きくなる……よく喋る人と聞くダケさんに別れてしまう状況が,数値で表されている.また,相関係数は0.76,これはかなり高い相関があると指摘できる.

結論である.グループ内で満遍なく発言を促すには,あまり大きなグループにするのは適さないということをあらためて確認できた.

2025年4月13日日曜日

数学の深イイ問題

高校レベルの数学の問題ではあるが,なかなか面白い問題を教えてもらったので紹介したい.まずは次の図をみてほしい.

「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,どの道を選ぶかの確からしさは一様に等しいものとする」という問題である.

答えを見る前に,少し考えてみていただきたい.どうだろう?(答えを知りたい方は,スクロールしてみてください)

問題の解答

角で曲がりつつ,最短距離を通ってAからBに移動するとき,何パターンの経路があるかを考えてみよう.

AからBに至るまでの最短経路は,どのパターンであっても必ず7個の辺を通る.ここで,上に行く場合を「↑」とし,右に行く場合を「→」で表現する.Aから真上に進んで左上の角を通ってBに至る経路は,A↑↑↑→→→→Bと表現できる.同様に,上に2回進んで,最上段は左から二つ目のパスを通ったとすると,A↑↑→↑→→→Bである.右下の角を通る場合は,A→→→→↑↑↑Bとなる.次の図のケースであれば,A↑→↑→→↑→Bである.

さて,ここまで気付けば,もうゴールは近い.どの経路を選ぶにしても,AからBまで行く7個の経路のうち,3個が「↑」,4個が「→」という性質は変わらない.言い換えれば,7個の選択肢のうち,どの3個を「↑」として選ぶか,その選び方は何通りあるか?である.ようするにこの問題は,7個から3個を選ぶパターンはいくつかあるか?という問題に帰着する(7個から4個の「→」を選ぶ個数でも同じである.なぜならば,3個選ぶと残りの4個は自動的に決まるからである).

ということで,これは組み合わせの数として計算できる.すなわち,7C3 = 7! /(3!・4!) = 35,AからBまでは,35通りの経路があるとわかった.

そのうち,Pを通るものは,AからPへの経路とPからBへの経路の組み合わせで表現できる.この場合は3C1×4C2 = 3×6=18.ということで,Pを経由する確率は,18/35 = 0.514,およそ半分強であると求められた.■

問題の条件が変わると……

ところで,問題が次のようなものであったとしたら,どうだろうか?

「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいものとする

先ほど求めた答えと同じ,Pを経由する確率は18/35?

否,そうではない.

Aから出発し,最短経路を選ぶとき,上図のように上に進むか右に進むかの選択肢がある.このとき,どちらか(赤と青)を選ぶ確率はそれぞれ1/2である.

ということは,Pに到達するまでには,3回の岐路を通っていくことになる.

Aから3回,どちらを通るかを選択した時点で,次の図の赤丸で示した点のどこかに居るはずである.そのなかにはPも含まれるが,Pに至る確率はいかほどだろうか.

二つの選択肢を3回選ぶパターンは,2^3=8通りある.それぞれのパターンを選ぶ確率は,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいとの性質から(1/2)^3,すなわち1/8である.

さて,点Pに至るパターンはいくつあるか.これは,先ほど計算した3C1,つまり,3通りある(次図).

ということは,Pを経由する確率は,8通り中の3通りであって,8通りの確率が同様に等しいことに鑑みれば,3/8ということになる(残りの進み方は,どの経路を辿っても残り3回の交点の通過を経て最終的には最短経路でBに到達するので,考える必要はないことに注意).■

二つの問題の違い

さて,ほとんど同じようにみえる二つの問題だが,微妙な条件の違いで異なる答えとなった.問題を再掲する.

問題1:「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,どの道を選ぶかの確からしさは一様に等しいものとする

問題2:「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいものとする

問題1の答えは18/35、問題2の答えは3/8である.このことから,次のような教訓が得られる.

「問題文は注意深く読み,問われている内容に適切に解答すること」

端的に表されるので数学の問題を例にして説明したが,これはなにも数学の問題に限った話ではなかろう.いずれにしても,本問はまさに,読解力や論理的思考の必要性を感じさせる,良問であると感じた次第.

2025年2月28日金曜日

2024年度インドネシア研修

2月の20日から26日まで,飯尾研有志(2年生4名,3年生2名,4年生4名)でインドネシア研修を実施した.2月22日にYogyakartaのジャガマダ大学で開催されたSPICE2025における発表(4年生)と,24, 25日に実施したYogyakartaの高校訪問において中央大学を紹介するプレゼンテーション(2, 3年生)が主な目的である.

SPICE2025では,以下の内容で発表した(私も,与えられた枠の前半を使い,概要について報告した).

Iio, J., Saito, Y., Iijima, M., Ito, N., Ogaki, R., Morimitsu, I., and Miyamoto, Y., (2025) SMILE Project Report, The Case of KMITL and Chuo iTL in AY 2024, The 5th International Conference on SMILE Project and Intercultural Communication Education (SPICE2025), Yogyakarta, Indonesia.

また,2, 3年生のプレゼンテーションも,時間が足りなくなって少し慌てたところはあったが,それなりにカッコよくできた.素晴らしい(写真は,私が彼らを紹介しているところ).

23日の日曜日には,研修のエクスカーションとして近隣にある世界遺産のボロブドゥールとプランバナン寺院群を視察,インドネシアの文化・歴史も学び,有意義な研修になったことだろう.

2025年2月3日月曜日

さようなら,ネ申パワポ

ネ申エクセル(かみえくせる?)という言葉がある.別名,エクセル方眼紙.正確にいえばエクセル方眼紙の上位概念かな?まあ,いずれにしても,エクセル,いや,スプレッドシート,日本語でいえば表計算ソフトウェアの「本来の使い方『ではない』使い方」をしているもののことを指す.エクセルに代表されているが,MS Excelに罪はない.他の表計算ソフトでも似たような使われ方をしているものは全てネ申エクセルである.

ネ申パワポに物申す

さて,今日わたしが文句を付けようとしているのはネ申エクセルではない.いわばネ申パワポと言うべきであろうか.コンサル業界に蔓延している「パワポ報告書」の類である.コンサル業界と書いたがわたしの古巣である三菱総研にも蔓延っていた(いまはどうでしょう?).私も以前は何度か作ったことがある.今では反省している.ごめんなさい.

そもそもパワポ(MS Powerpoint)はプレゼンテーションソフトなのである.プレゼンテーションの資料を作成するためのツールなのである.報告書はワード(MS Word)もしくは他のワードプロセッサ(ワープロ)で作りなさい.報告書のような「〇〇書」を作成するツールはワープロソフトたるべきである.

プレゼン資料 ≠ 報告書

パワポ報告書はそのままプレゼンに使えるから便利?アホなことを言ってはいけない.読めへんわ!横着せずにプレゼン資料は別に作ってください.後生だから.

下記をみてほしい.上はどうみても「プレゼンしてるふり」にしか見えない.

図版の扱い

図版の扱いがパワポのほうが簡単で,図を多く入れようと思うとパワポのほうが図と親和性が高いから便利?これも勉強不足です.ワープロソフトでも図を扱う機能は充実している.論文や報告書の類であれば,原則「文字として」扱う設定にして中央寄せにし,「キャプションを追加する」機能で図表番号とキャプションを入れるべし.それを正しくやれば,ページを跨いでキャプションの生き別れみたいな情けないミスもなくなる.

そもそもパワポに番号の相互参照機能ってあったっけ?「報告書なら」本文から図表番号を必ず参照するはず.図版の番号を連番で自動的に振ってくれる機能も,あったかな.まさか番号の参照を手作業でやってないよね?図版の順番を入れ替えたときどうしてるの?目視チェック?

共同作業向き?

パワポだとページ単位で担当できるから複数人による共同作業に向いている,という言い訳も聞いたことがある.まあ,直感的ではある.でもイマドキのワープロなら複数文書を束ねる機能だってちゃんとある.本の原稿をワードで書いたことがあり,そのときは章ごとにファイルを分けて,最後にガッチャンコした.やり方,忘れちゃったけど…….

しかし報告書の内容がページ単位で綺麗に分割できるもの?内容によって,大小,あるんじゃないの?図版のサイズで調整する?絵本作ってるんじゃないんだから.あ,オトナの絵本を作ってると理解すればいいですか?

「資料」なら許す

ちょっとググってみたら役所や著名なコンサル企業はパワポ報告書のデザインがすごい!みたいな記事を見つけちゃったわけ.でも,そもそも書籍や雑誌は「いかにして(さまざまなステークホルダの利害を調整しながら)読者に分かりやすい紙面を提供するか」に命かけてるからね.ネ申パワポなんて笑止千万である.ヘソで茶が沸く……は言い過ぎですねごめんなさい.

かつて,私の古巣である三菱総研の某セクションでは報告書をLaTeXで組んでいた.複数担当者で単語表記の揺れが出ないようにマクロを使いまくるという徹底ぶりで,LaTeXマスターNさんのその仕事ぶりは鬼気迫るものがあった.しばらく会ってないけどNさん元気かな.まあ,LaTeXで組むというのはやりすぎかもしれないけれど,報告書に命を吹き込む,書類の品質を上げるって,そういうものだと思うわけですよ.古い考えかもしれないが.

百歩譲って「資料」と称するならまだ許す.報告書作成を舐めないでいただきたいものである.

2025年1月9日木曜日

HCII2025参加およびハワイ大学訪問

1月4〜7日の日程でハワイはホノルルにて開催されたHICE2025という学会に参加すべく,ハワイを訪れた.実は初ハワイである.海外は,とくに東南アジアを中心としてかなり辺鄙なところを訪問したりもしているが,ハワイにはこれまで縁が全くなかった.

私は以下のタイトルで発表した.Q&Aも盛り上がり,それなりにウケていたようで,とにかくいい反応だった.

Iio, J. and Noro, H. (2025) Exploring the Potential of AI-created Questions in Programming Mock Exams, HICE2025, Hawaii International Conference on Education, Hawaii, HI, USA.

そのセッションのチェアも割り振られており,1時間半,気を抜けなかったが,活発な議論がなされたので任務は全うできた.ところどころで笑いも取れた.チェア冥利に尽きる.

1月6日にはハワイ大学マノア校を訪問した.Dorothy教授ほか何名かとお会いして意見交換をした.キャンパスを案内していただき,自然豊かなキャンパスに感嘆した.iTLの都市型キャンパスも悪くないが,広大な土地に広がるキャンパスはそれはそれで大学らしくてよい.

ハワイアン・ゲッコーが迎えてくれた.いかにもトロピカルな柄に癒される.

2025年1月7日火曜日

こんなところでHCD(10)

「こんなところでHCD」のシリーズも気付けば10回目である.もっとHCD的に考えるべきだというデザインは,良いものも悪いものも,日常に溢れているということの現れであろう.

というわけで,今回は,心にグッときた良いデザインをご紹介したい.まずは写真を見てください.

年明け早々に参加したHICE2025という教育系の研究発表を行う国際会議でのひとコマである.例によって受付で「Jun Iio」のバッジがなく(おそらくLioにまちがえられていてLの欄に紛れ込んじゃってるんだろうなあ……と思いつつも,「オーケー,あっちで印刷してもらえるから大丈夫だよ!」と明るく言われたのでそのまま指示に従ったのであった)その場で発行してもらったものである.イマドキはプリンタですぐにちゃちゃっとそれっぽいのが作れちゃうからすごい.

指摘したいのはそんなことではなくて名札ケース(バッジホルダー)のほう.写真を見れば一目瞭然なのだけれども,このバッジ,ひっくり返らないのである.

会議の名札,首から下げるタイプはどうしてもクルクルとひっくり返る傾向があり,マーフィーの法則的にいえば裏面が示されてしまっている確率のほうが高いのではなかろうか?しかし,このデザインであれば右上と左上の2箇所で吊っているので,原理的にひっくり返るはずがなかろうというものであって,シンプルながら素晴らしいデザインである.

クリップの数が2個になるので若干コストが上がるかもしれないが,何万個も使うわけでなし,たいしたコストではあるまい.このタイプの名札ケース,日本では見たことがない.あるのかな.研究会等で名札ケースが必要になるときは,次からこのタイプを探してみようと思っている.