日本とタイ,マレーシアの大学生による異文化間交流の様子を分析している.詳細な分析はこれから進める予定だが,少し面白い傾向が見出された.それは,グループの参加人数が多くなると「聞くダケさん」がどうしても出てくるということである.
この異文化間交流のプロジェクトでは,少人数のグループに分けてオンライン会議システムを用いて交流を進めている.しかし,諸事情がありその人数は2名のマンツーマンによる対話から10名を超える大きなグループでの実施まで幅広い.
それらのグループに関し,ターンテイキング(話者交代)の状況や発話回数を可視化してみたら,「どうも,人数が多くなると対話に直接参加せず,聞いているだけという参加者が出てきてしまうなあ」ということにあらためて気付いた.
これは皆さんも日頃感じているのではなかろうか.大勢が参加する会議ほど,参加者の参加意識は希薄になり,発言者は偏る傾向にあることを,日々,感じてはいまいか.とくにオンライン会議では,会議に参加しているフリだけして別のことをしていたり?
まあ,会議はともかく,今回のグループは異文化間交流であるから,本来,参加している全員によって積極的に交流を進めることが望ましく,全ての参加者が均等に発言すべきはずのものである.しかし,やはり人数が多くなると,尻込みしてしまうのか,あまり発言しない参加者がどうしても出てくる.
というわけで,グループの参加者と,発言回数のばらつき加減の関係を調べてみた.次のグラフは,グループの参加者数を横軸に,参加者の発言回数から計算される変動係数を縦軸にして散布図をプロットしたものである.
なお,変動係数とは,標準偏差を平均値で割った無次元数である(nが小さいのでここでは不偏標準偏差を用いている).分散や標準偏差は元データのサイズが大きくなるとどうしても大きくなってしまうので,平均値で割ることで正規化する.規模の異なるデータのばらつき具合を比較するときには,分散や標準偏差ではなく変動係数による比較が望ましい.
さて,図を見てみると,どうだろうか.かなりきれいな相関が出ていることに気付く.グループの参加人数が多くなると,変動係数の値は大きくなる.つまり,発言回数のばらつきが大きくなる……よく喋る人と聞くダケさんに別れてしまう状況が,数値で表されている.また,相関係数は0.76,これはかなり高い相関があると指摘できる.
結論である.グループ内で満遍なく発言を促すには,あまり大きなグループにするのは適さないということをあらためて確認できた.
0 件のコメント:
コメントを投稿