2023年4月7日金曜日

チューリングテストをパスしたChatGPT

人工知能に関するトピックの一つに「チューリングテスト」というものがある.ITmediaのAI・機械学習の用語辞典からその解説を引用する.

チューリングテスト(Turing test)とは,機械(=人工知能)の能力が,人間が行う「知的活動」と同等,もしくはそれと区別がつかないほどであるかを確かめるためのテストである.もっと簡単にいうと,機械(=人工知能)が人間の模倣をして,それに人間が気付かないかどうかをテストすることだ.

具体的には,壁の向こう側に置かれた応答機械もしくは人間に対して質問を投げかけ,それが人間なのか機械なのか区別つかないような返答が戻ってきたとき,それが機械による反応であればそれを人工知能と認めよう,というものである.

揶揄ってゴメン

ところで,ChatGPTは大規模言語モデル(LLM)を用いた文章生成マシンであり,確率的に最も「それっぽい」文章を作成する機械である.したがって,意味的に正しくない回答を出力する可能性はある,と,本家からも断り書きが出ている.

しかし,人工知能と銘打って世間に広まっているため「なんでも正しく答えてくれる機械」と誤解が浸透している.そこに警鐘をならすべく(という建前で)私は彼(彼女?)の珍回答をいくつか紹介している.いや,まあ,本音をいえば,たんに面白がっているだけだけど.

たとえばこれ.

中大兄皇子の隠し子が平家の源流になっているなんて話は聞いたことがない.私が,思いつきで勝手にでっち上げたフレーズである.しかし,ChatGPTはしれっと,息を吐くようにデタラメを並べる.

意地悪な私は,さらに畳み掛けてみた.

もはや支離滅裂である.いったん嘘をつき始めるともう退けなくなっちゃって,ニッチもサッチもいかなくなるという人間のありがちなサガを超えた,これもひとつのシンギュラリティ?なんて思っちゃうくらいだもの.

まあ,それにしてもうまいこと文章を作るものだと,その点は感心する.

怒る人がいる

ところがである.こういうことをして遊んでいると,それに対して怒る人が現れた.こういう遊びはけしからんだとか,新技術を否定するのはよくないだとか,まあ,そんな感じ.「ChatGPTから期待通りの回答が返ってこないことによってChatGPTは馬鹿だっていうのはどうなのか?」というご批判もいただいた.

私も「馬鹿」という言葉遣いはあまりよくないかなと反省するところではあるが,機械であることを認識しているからこそ,多少,乱暴な言葉を使うのである.そもそも,ChatGPTを開発している皆さんは素晴らしいとリスペクトしているし,彼らが馬鹿であろうはずがない.

それゆえに,こういう上手な使い方もあるよという紹介もしている.

人格をうっすら認めているのでは?

新技術を否定するのはよくない(別に全否定しているわけじゃないんだけど……)というご批判はともかく,馬鹿といっちゃイカンだの,揶揄ったらイカンだの,なぜそのようなご批判を受けるのだろう?と考えていたら,どうも皆さん,無意識のうちにChatGPTに人格を認めているのではなかろうか,という結論に至った.

そう考えると,けしからんというのも納得がいくのである.かくいう私も,機械だと分かってはいながらも,いくつかの記事で「誤り上手」だの「頑固者」だの,人格を想定しているような表現で扱っていた(次図).

すなわち,はからずもChatGPTはチューリングテストを既にパスしているのではと考えられるのである.

ちょっとググってみたら,「音声検索とマーケティング|SiriやAlexaは家族の一員になれるか」なんて記事も見つけた.家族の一員ですよ!チューリングテストなんて,もう,はるか昔の考え方なのかと思ってしまうほどである.いやはや,たいへんな時代になったものだ.

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