次のグラフを見ていただきたい.このグラフは,反転学習において,学生たちがいつ予習コンテンツにアクセスしていたかを示すグラフである.「プログラミング基礎」という必修科目において第2回から第13回まで反転授業方式で授業を実施した.
反転授業なので,教室での授業が終了後すぐに,次回の講義内容に関する予習動画をLMSで公開した.縦軸は,公開して何日後にその動画にアクセスしたかを示す.ただし,公開時間に多少のブレがあったため,全ての学生たちのなかで最初にアクセスがあった時点を起点とした.なお,公開するとリマインダーが送信されるため,必ず直後に誰かからのアクセスが発生した.そのため,公開時間とほぼ一致しているとみなしてよい.
縦軸が0から6となっているのは,0日後(公開した日)〜6日後ということである.したがって,下にいくほど積極的に予習動画にアクセスしていることになる.教室での授業の直前,ギリギリに視聴するほど,数値は上に位置することになる.
さて,このグラフでは二つの線が描かれている.それぞれ,学生たちをA群とB群,二つのグループに分けたときの,アクセス時間の平均値をプロットしたものである.
A群とB群は,第14回に実施した力試しテストの成績における上位群(A群)と下位群(B群)である.なお,このテスト結果は成績評価には使わないこと,LMSのデータを分析する目的にのみ使うことを学生には示して実施した.
A群の平均とB群の平均では統計的に有意な差があることを確認できた.また,このグラフから,B群の平均値は回が進むにつれて遅くなっていることがわかる.このことから,A群は最後まで積極的に予習を行い,B群は内容が難しくなるにつれて予習がおっくうになってきたのでは?ということが推測される.
ただし,予習動画への積極的なアクセスと成績には,相関関係はあっても因果関係にあるとはいえないということには注意しておきたい.
すなわち,予習動画へ積極的にアクセスすれば成績がよくなるというわけではないということである(次図A).容易に推察できる構図は,授業に対する興味という第三の要因があり,それが予習動画への積極的なアクセスと成績にそれぞれ影響を及ぼしているというものである(次図B).
この例は,相関関係と因果関係のよくある誤謬を示す典型的なものである.気をつけるようにしたい.
0 件のコメント:
コメントを投稿