2022年3月3日木曜日

日常の疑問はHCDで正すべし

皆さんファーストフードチェーンの松屋は利用しますか?先日訪れた某所の松屋では,券売機が新しくなっていました.縦長の大きな画面で,彩りよい写真とともに,メニューを選ぶことができます.その日,私はハンバーグ定食を注文しました.ハンバーグ定食を選択すると,その下に「お得なセットはいかがですか」とセットメニューのオプションが並んでいます.さらにその下には「もう一品いかがですか」とサイドメニューの選択肢が並びます(写真).

松屋の定食は,野菜サラダ(メニュー名は「生野菜」)が付いてきます.したがって,お得なセットの選択肢に,既に適用されているはずの生野菜セットが並ぶのは奇妙です.もう一品いかがですかの欄にも,野菜サラダは不要のはず.しかし,ご丁寧にこれらの欄に,これでもかという具合に「生野菜」メニューが並びます.ごくまれに,野菜をたっぷり食べたいという変わった人もいるかもしれませんが,私の感想は「それほどまでに私に野菜を食べさせたいのか?」というものでした.単品の牛丼などであれば,生野菜セットをおすすめするのは理に適っています.しかし,セットが適用されている定食にさらにセットをおすすめするのは,いわば,屋上屋を重ねる,というものです.

なぜこのような状況が起きてしまったか,それはおそらく,十分なユーザーテストをしていないのでしょう.メインの内容がなんであっても,とにかくセットのメニューを「お得なセットはいかがですか」に並べ,サイドメニューを「もう一品いかがですか」に並べよ,という仕様を,ひたすら守って作られたシステムなのかもしれません.組み合わせにおかしなものが発生するという仕様の不具合は,ユーザーテストをすれば一発で分かりそうなものです.致命的なバグではありませんが,HCDの大切さを実感した出来事でした.

蛇足ながら,利用者の身になって考えていないといえば,松屋のような牛丼チェーン店もそうですがラーメン屋などでもみられるカウンター席のアクリル板によるパーティションです.COVID-19の感染防止策として導入されているもので,このような施設を入れないと感染対策協力による売上減少の支援金をもらえないとかなんとか,そのような理由で入れているのでしょう.

しかし,これもおかしな話です.牛丼屋やラーメン屋で,ペチャクチャお喋りしながら食べるひと,いますか?(いや,まあ,全くいないとは言い切れないけど……)

「高性能スーパーコンピュータを使って,飛沫の飛散状況をシミュレーションしました.パーティションの有り無しでこんなに違います!」とTVでは盛んに報道されていました.それはそうでしょう.スパコン関係者は,計算能力を示す絶好のチャンスです.TV屋は,人々の不安を煽って視聴率を稼ぐチャンスです.

でも現実は,そもそもシミュレーションで飛んでいるはずの飛沫がもとより飛ばないのです.皆,黙々と食べています.黙食というそうです.このテの店ではCOVID-19以前から黙食があたりまえだったはず.これも,現場を見ずに一律に決めた愚かさと,それを無批判に受け入れる現場の問題です.後者は,受け入れざるを得なかったのかもしれませんが…….そもそも黙食も奨励されていたのではありませんでしたっけ?矛盾もいいところです.というわけで,賢明なる皆さんは,HCDで,合理的な解を見つけるようにしましょう.

0 件のコメント:

コメントを投稿