オンライン対応の副産物として反転授業をやりやすくなったということについては,以前,何回か紹介したし,拙書「オンライン化する大学」でも論じた.実際に学生がどのような予習活動をしているのか,LMSのアクセスログを仔細に調べてみたら,興味深い事実が見えてきた.
反転授業として実施し,アクセスログを調査した科目は「プログラミング基礎」,1年生の必修科目で,受講学生は20名である.初回は事前学習させる術がないため,初回のオリエンテーションと最終回の力試しテストを除き,第2回から第13回までを反転授業の対象とした.
教室で,その回の授業が終わった直後に次回の講義資料と講義動画を公開する.学生は次回までにその資料をダウンロードし講義動画を視聴する.教室ではそれに基づいて少し高度な内容を補足するという手順で,反転授業を実施した.なお,1回の講義コンテンツは5〜7ページほどに分割されており,それぞれアクセスの記録が残る.基本的に,各ページに一つの動画が埋め込まれており,簡単な説明が動画に付随という作りになっている.
manabaの資料へのアクセスログは,最終アクセス時刻が記録される.したがって,復習のために再度ページへアクセスすると,アクセス時刻が更新されてしまう.正確な予習時間を計算するために,manabaからアクセスログの全てを取得し,各資料にアクセスした初回のタイムスタンプを取得した.
予習状況を確認するためには,予習が終了した時刻を測定する必要がある.しかし,終了したことはLMSのアクセス状況から察知することはできない.したがって,各回に出した課題の他に,プレ課題と題するレポート課題を各回,学生に提出されることにした.プレ課題では,動画を見終わって質問やコメントがあればそれを提出せよとし,とくにない場合は「動画を見ました」だけでよい,とした.
このグラフは,プレ課題提出のタイムスタンプから初回アクセスのタイムスタンプを引いた結果のヒストグラムである.横軸の単位は「日」,縦軸は件数である.
グラフから,次の事象が読み解かれるだろう.
- 多くの学生が,1日(12時間以内)で予習を片付けている.6〜7日のところにあるピークを無視すれば,予習期間の長さは指数分布に従っているようにみえる.これは待ち行列理論おけるイベント発生期間の分布が指数分布に従うこととも合致する.
- 5.5〜7.0のところに小さなピークがある.これは,とりあえず予習コンテンツが公開された時点でアクセスした後に放置し,次回の授業直前になって思い出したように報告する,あるいは,実際には予習を終えていたにもかかわらず,報告を忘れていて慌てて報告した状況も少なからぬ割合で発生したことによるものと推定される.
- 期間がマイナスになっているケースがいくつか発生した.本来はあり得ない状況である.「動画見ました」の報告よりも初回アクセス記録が後になっているケースで,学生による虚偽の報告によるものかどうかは現在調査中である.
なお,この期間イコール予習時間,ではないことには注意しておきたい.あくまで,初回アクセスから予習終了までの時間を計測したものにすぎないため,実際の予習時間は,より短いものとなっているはずである.
追記:予習期間がマイナスになっているケースは,調査の結果,学生による虚偽の報告が原因であるということが判明した.本人が正直に告げてきたので「嘘はいかん」と説諭して本件は終了.
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