だいぶ前に「オンライン講義 vs 対面講義」と題して海外の記事がそれぞれのメリットとデメリットを指摘しているという記事を紹介した.この記事の指摘はしごくもっともだと思うし,今でもオンライン講義はオンライン講義の良さがあり,対面講義には対面講義の良さがあり,どちらに寄せるという議論には意味がないと考えているが,最近,どうにも気になることが出てきた.それは,オンライン講義は成績の下のほうの学生を救いにくいのではないか?という,教育としてはある意味で致命的ですらある懸念である.
具体的には,本人に学習意欲があるのに,理解が及ばず,それが積み重なって落ちこぼれてしまうというケースである.
対面の講義では,残念ながらあまり理解できていないけれども学習意欲は強く持っているというタイプの学生が,講義終了後に居残って,ほぼ毎回,質問に来るという状況がしばしば見られた.他方,今期,オンラインの講義(科目は1年生の数学)が半分近くまで進んだところで,やる気はあるもののどうにも理解が難しくなってきているという学生の悲鳴が目立つようになった.
提出された課題には「全て」フィードバックコメントを返しているので,そのような学生の「どうしたらよいでしょう?」という叫びが痛い.できる範囲でオンラインで詳しく説明を返しているものの,常々,私が指摘しているように,コミュニケーションのバンド幅という意味で,限界がある.
最後は「どうしても分からなかったら,いつでも質問に来なさい」と手を差し伸べている.実際,一昨年までは,研究室にちょいちょい学生が質問に来ていたし,昨年も完全オンラインだった前期はともかくとして,対面が再開した後期は何度か実際に学生が質問に来た.幸にして今は対面講義もまだ一部実施しているので,そのタイミングを合わせて質問に来てもらうぶんには,こちらは全く構わない.
仲のよい学生同士で相談しながら課題に対応している様子も伺うことができる.これも,一部,対面を実施して大学に登校させているからならではであろう.もちろん,完全オンラインだったとして,どこか別の場所に集まってということもあり得るが,頻度と可能性の観点から,やはりキャンパスで集まることの意義は大きい.
一方で,「先生に連絡をとりたくても取れない」という学生の悩みも耳にする(これはあくまで世間一般のケースとお断りしておく).そんな状況ではどうしようもなく,やる気がある学生であってもポロポロと脱落してしまいかねない.勉強のやり方を熟知していて,自分で自律的に学習することができ,自分のペースで学ぶことができる優秀な学生にとって,オンライン学習はやりやすいのかもしれない.しかし,はたしてそれでよいのか?という懸念を払拭することは今の私にはできない.
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