2025年10月27日月曜日

PMアワード受賞

一般社団法人ことばのまなび工房が実施している「日本語を話さない人とのコミュニケーション&コラボレーションプロジェクト」がPMI日本支部から2025年PMアワード奨励賞を受けた.実にめでたい話だ.写真は(本人いわく)「高く評価されて鼻高々」な代表理事の若林先生である.

この表彰式とその後のレセプションパーティ,私も行きたかったが,いかんせん遠くバンコクに落ち着いたばかりで東京に舞い戻るわけにもいかず,欠席することとなった.私の代わりに参加した,プロジェクト参加経験のある学生のKくん,楽しんでもらえたかな?

ともあれ,ありがたい賞をいただいたわけで,しかも,奨励賞である.もっと励みなさい,というメッセージとして受け取った.本プロジェクトはまだ道半ば,今後,いっそう精進していく所存である.皆様も応援してください.どうぞよろしくお願いいたします.

2025年10月25日土曜日

新居に引っ越し(お気楽クルンテープ生活 No. 1)

こちらでの生活拠点はプロンポン駅から歩いて5分ほどのマンションである.迂闊にも日本人街のど真ん中に居を構えてしまったので,異国感はあまりない.まあ,それも良し悪しではある.すぐそばにセブンイレブンと24時間営業のスーパーマーケットがあり,しごく便利な場所ではある.

ところで,バンコクには来たものの,来た時点ではマンションの契約をしていなかったので,最初の3日間はホテル暮らしだった.いつまでもホテル暮らしというわけにもいかず,昨日,いろいろな手続きを済ませ,入居した.デポジットと最初の家賃合わせて2ヶ月分が必要ということで,けっこうな金額を支払う必要があったが,少し多めに現金を持ってきていたので問題なかった.

昨日は,鍵を受け取り,契約書にサインし,玄関の顔認証装置のための顔写真撮影をした.インターネットの業者が来てネットを開設してもらい,これで通信環境も万全である.家賃の支払いのために銀行口座を開きたいところだが,観光ビザでは銀行口座を作れない.ただ銀行講座の開設に関しては,KMITLのスタッフが尽力してくれているらしいのでそれを待つことにする.

いろいろな手続きは中大タイオフィスのスタッフであるTさんが面倒をみてくれてとても助かった.彼女が居なかったら何もできなかったに違いない.今回,電話は持たず,屋外での通信は15日ごとに1,000円強というklookの激安e-simで凌ごうと考えているのだが,銀行のATMを操作するにも電話番号の認証が必要だという状況を知り,どうしたもんかと少々悩んでいる.1年以上滞在するなら,こっちの電話を買ってしまうんだけどな.

ひと通り事務処理を済ませ,あとは家財道具の買い出しをした.水,トイレットペーパー,シャンプー,ベッドリネン一式,ハンガー,洗剤,ビールなど.最後のが重要,命を紡ぐマテリアルである.まあ,それはともかくとして,買い出しにはKMITLでもらったショッピングバッグが実に役に立った.何が幸いするか,本当にわからない.

2025年10月24日金曜日

タイ語でタイポグリセミアは成立するのか?

今週からバンコクでの生活が始まった.バンコクでいったい何をするのさ?という質問をされると,実は具体的に,何月何日にこれをやる,という詳細なスケジュールががっつり決まっているというわけでもないのでなかなか回答に困ってしまうのだが,いちおうは在外研究費としてそれなりの研究費をいただいているのでちゃんとした計画はあり,SMILEプロジェクトのタイ側のサポートというか現地を訪問してフィールドワークをすることになっている.

ただし,それ以外にもKMITLの先生方と共同研究をすることは決まっていて,問題は何をするかなのだが,まあ,その相談も込みでこれから考えていこうという,いかにもマイペンライな状態ではある.

タイポグリセミア各国語版

ということで,いま,一つ気になっているのが,タイ語でタイポグリセミアが成立するのか?ということである.とりあえずは英語とその他の欧米諸国のいくつかの言語,マレー語,日本語(ひらがな分かち書き版)で成立することは,関連研究の調査と我々の経験で分かっている.また,先日のCOSCUPで講演したときに「中国語でも成立しますよ」という情報をいただいた.中国語で成立するということは分かち書きなしでも成り立つということで,現在,日本語でも分かち書きなしの通常版タイポグリセミアを実験すべく,学生とあーだこーだとやっている.

で,せっかくタイの先生方と共同研究する機会を得たので,タイ語ではどうだろうかということを試してみたいのだ.

しかし,タイ語はそんなに甘くないのであった.かねてより,タイ語の自然言語処理は難しいとタイ人の自然言語処理研究者から聞いていたが,外国人の私から見ると,より難しそうに感じる.

タイ語の難しさ

まずはこれを見てほしい.いま宿泊しているホテルの最寄駅,パヤータイ駅で撮った写真である.

「ทางออก」と書いてある.私のタイ語レベルはまだ初級も初級だが,タンゴーク(ターン・オォーク)と発音するということは知っている(カタカナ読みだけど……).一つ一つ,文字をざっくり解説すると,ทがt,าがa,งがng,อがoで,กがkに相当する.

ここで,「ทはt」ということ覚えておいてほしい.

では,次の写真を見ていただきたい.駅名の表示である.「พญาไท」である.

個々の文字についての解説は控えるが,最後の文字,皆さんは読めますね?先ほど「覚えておけ」と強調しておいたtに相当する文字である.しかし,これはパヤータイ.パヤーアイトではない.はて?

じつは,「ไท」でthaiになる.ไがaiなのだが,子音が右に付くのである.通常,子音+母音で音を表すところ,このパターンでは母音+子音で音を表すという組み合わせになっている.さらに細かいことをいうと,ญの下にはみ出ている部分はaに相当するので,母音が下にはみ出ていることになる.

このように,タイ語では,左から右に素直に読んでいくのではなく,上に行ったり下に行ったり,ときには飛ばして読んでから左に一度戻ったり,という読み方をする.

はてさて,こんな言語で,タイポグリセミアって,成り立つんだろうか?

2025年10月23日木曜日

南国生活スタート(お気楽クルンテープ通信 No. 0)

一昨日,10月21日に東京からバンコクにやってきた.これから7ヶ月あまり,モンクット王工科大学ラートクラバン校(KMITL,King Mongkut's Institute of Technology Ladkrabang)に客員研究員としてお世話になる予定である.

昨日はKMITLで私を受け入れてくださるIoT情報工学科(Dept. of IoT and Information Engineering)の学科長やいろいろとご尽力くださった国際課(OIA, Office of International Affairs)の先生方にご挨拶に行き,これからのことについていろいろと相談をした.思いがけずKMITLの学長にもお会いでき,ご挨拶して記念写真まで撮ったのはちょっとしたハプニングというかなんというか.

それにしても,今回の件,COVID-19パンデミックがなかったら当時その関連するテーマで行われたオンラインセミナーに講師として話題を提供することもなかったし,そこにKMITLのM先生がオンラインで参加してさらに質問だったか何かでメールで問合せを受けなかったら知り合いになることもなかった.

さらには,我々がSMILEプロジェクトをやっていなければKMITLとChuo iTLで交流活動をすることもなかったし,M先生の提案がなければKMITLと中大で大学間協定を締結することもなかった.そして,その協定がなかったら私が客員研究員としてKMITLにやってくることもなかった.こうやって振り返ってみると,激流のなかを流されている小舟のような気持ちになってきた.運命というかなんというか,生きているって素晴らしい.

さて,いろいろ出張で自宅を留守にすることが多い生活を続けてきたが,半年という長い期間,自宅を離れて一人で暮らすのは四半世紀ぶりである.しかも異国の地で.まあ,いろいろ事情があって期間中にちょいちょい東京に帰ることもあるんだけど.このIT時代なのでいろいろとしがらみは自動的に付いてきてしまうのが難儀ではあるが,まあそれは致し方なし.

それはともかくとして,これから半年,何が起こるかとても楽しみで,わくわくしている.本当に人生は面白い.

2025年10月14日火曜日

多言語対応の難しさ

この夏,一般社団法人ことばのまなび工房のウェブサイトをリニューアルした.再構築した理由は,前ウェブサイトを担当していた理事が退任してしまったため,私が引き継がねばならなくなったからである.ちょうどよい機会とばかり,ウェブサイトだけでなく,DialogbookやSpiceBoxといった各種のシステムを,一つのサーバに集約して一括管理することにした.

なお,DialogbookはSMILEプロジェクトで使用している自作の学習ポートフォリオシステムであり,SpiceBoxは国際会議SPICEを運営するために用意したプログラム管理&発表評価システムである.こちらもやはり自作のアプリで,HCD研究発表会においてすでに長年の実績がある同システムをもとにSPICE用にカスタマイズして作成したものである.

ウェブサイトの多言語対応

話がズレた.ウェブサイトのリニューアルである.諸所の事情から,ほぼスクラッチから再構築することになった.使い慣れているWordPressを利用し,新しいサーバに構築しなおした.さらに,せっかくだからと多言語対応してみようということにした.

以前から日英の二カ国語には対応させていたのだが,前任者から「いろいろ苦労した」と話を聞いていた.そこで,今回は事前にいろいろ調べて,ありモノで対応できるならそれをうまく活用しようという方針にした.

調べてみると,Bogoというプラグインがよく使われているらしい.ということで,それを導入してみた.現在,https://www.kotoba-kobo.jp/ (英語), https://www.kotoba-kobo.jp/ja/ (日本語), https://www.kotoba-kobo.jp/ko/ (韓国語)の三言語に対応している.

次のスクリーンショットを見てほしい.これは日本語モードのトップページである.右上に,言語切り替えのリンクが置かれている.ここで言語を切り替えると,メニューも自動的にそれぞれの言語に切り替えられ,記事もそれぞれの言語のものになる.

たいへんうまくできている.運用も極めて簡単だ.いずれかの言語で記事を投稿したとする.編集画面に,他言語版の記事を用意するというボタンが現れているので,それらを押すと,記事がまるっとコピーされ,それぞれの言語版の記事が用意される.あとは,それぞれの記事をその言語に翻訳して,公開するだけである.とってもシンプル.

いくつかの難しさ

しかし,やってみてわかったのは,多言語対応をきちんとやるのは,なかなか難しいということである.世界的な多国籍企業で各種の言語リソースが投入されているような組織でもない限りは,きっちりと多言語対応するのは困難が伴うだろう.

まず,用意した言語分の記事が登録されてしまうので,管理が煩雑になる問題がある.リニューアルしたウェブサイトには,固定ページを除くと,いま7本の記事が投稿されている.三言語に対応しているので,内部的にはその3倍の,21本の記事が用意されている.

対応させる言語の数を増やしたら,さらに大変になるだろうということは,火を見るよりも明らかだ.

翻訳の質保証も問題である.いまは,ほぼ機械翻訳に頼りきっている.幸いにして,英語と韓国語は私が読めるので,ざっと見て,おかしな訳出があったら手で修正するようにはしているものの,自然な翻訳になっているかどうかは自信がない.ここは,やはりそれぞれの言語に対して母語話者がチェックして必要があれば修正できるような体制を用意すべきだろう.

さらに,どこかを修正したら,それを他言語に対しても,手動で修正をかけなければならないという問題もある.これは,プログラミングにおける「コピペはあかん,関数にして再利用せよ」という哲学に通じるものがある.

以上のような難しさがあるため,今回の件に関していえば,あともう一言語,中国語版くらいは用意したほうがよいかなと考えているが,どうしたものかといささか考えあぐねている.機械翻訳がそこそこ優秀になってきている今,他言語版を用意する必要は実はそれほどなくて,まるっと自動で機械翻訳させる仕組みを用意するだけで良いんじゃね?という極論にも至ってしまい,いやはや,どうしたものだろう.

2025年10月9日木曜日

剽窃ダメ!絶対!

某大物漫画家によるパクリ騒動が炎上している.このテの話題,数年に一度,思い出したように炎上しますなあ。著作権の侵害だ,いや,肖像権の問題だ,など,いろいろな意見で盛り上がっていて,やはり大物漫画家だけあって,熱心なファンがアクロバティックに擁護する意見なんかも出していて微笑ましい(いや,ダメだろ)ものの,やはり,剽窃はいけない.

トレパク,パクリ,模写,いろいろな言い方があるが,ここははっきりと「剽窃」と指摘すべきである.万引きは窃盗です.パパ活は売春です.

剽窃はなぜいけないか

さて,では剽窃は何がいけないか.いろいろと問題点は指摘できるが,ここでは,私の経験と照らし合わせて次の問題点を紹介しておきたい.

はい出ました.この意見である.「これだけ見ても,イラストから真似たのもあるんじゃ?」♪───O(≧∇≦)O────♪

はいはい,こういう意見が必ず出てくるわけですよ.こんな意見(綾辻, 2025)もあったぞ?

でも、放っておいたら世間的には天才漫画家として崇められている江口寿史の方がオリジナルということになり、自分の方がニセモノ扱いされてしまうかもしれず、これほど悲しいことはない。

蛇足だが,これは「引用」なのでなんの問題もなく,かつ,無断でやってよい.というか,本来,引用は断り無しにやるものだ(文章を引用する場合.図版の引用はまたちょっと事情が異なる).昨今,無断引用などという珍奇な用語が流布しているが,書いた文章を公開しようという者であるならば,引用のルールくらいきちんと学んでいただきたいものである.

私の経験

もう昔話だし,時効でもあるけれど,私がかつて,こんなことをされたという剽窃事例を紹介したい.ネットもまだ黎明期といってよい頃,21世紀に入ってすぐ,くらいの出来事である.

何が行われたかというと,私の書籍に掲載されていたプログラムのソースコードが,「まるっと」ウェブサイトに掲示されていたという事例である.しかも,ご丁寧に,書籍では日本語で入れていたプログラム内のコメント文を,全て,英語に翻訳して.

まだS先生はご存命のようなのでイニシャルで示すが,それをやらかしたのは,O大学,S先生の研究室に所属していた博士後期課程の学生で,S研究室のウェブサイトに,ご丁寧にもソースコード一式が勝手に載せられていたのである.

2000年あたり,ということでググればすぐにわかってしまうが,画像処理関係のプログラムを指南する書籍である.当時はGitHubはまだなかったかな.ソースコードを共有するとすればSourceForgeなどを使っていた時代である.本の内容をフォローアップする出版社のウェブサイトなどもなく,書籍に掲載していたプログラムをCD-ROMなどで提供することもしていなかった.

ということは,彼は,全て,手打ちで入力し,さらにコメントも英訳したということである!けっこうな量があったので,努力賞はあげてもよいかもしれないけれど.

さて,問題は,彼のウェブサイトに,出典もなにも書かれておらず,全て,自前でプログラムを用意したというような記述があったことである.これは由々しき問題だ.彼のソースコードが元ネタであり,私が剽窃したと捉えられてしまうではないか.

向こうは画像処理では大御所のS先生である.いや,S先生のところの学生である.私もまだ駆け出しに毛の生えた程度の年齢だったので,いかにも分が悪い.

今であれば断固としてクレームを入れ,毅然とした態度をとるところだが,当時は私も日和っていて,どうしたものかと悩んだだけで終わってしまった.幸にして,こちらが剽窃したという話は出ず,当該ウェブサイトも学生くんが卒業してしまったか,いつの間にか消えていた.

こういうことがあるので,剽窃は,ダメですよ.ほんと,ダメだからね.

参考文献

綾辻つづみ(2025)【ショートショート】江口寿史にトレパクされて (2,709文字),note,https://note.com/nabewata_lit/n/n4884be5d7d89

2025年9月18日木曜日

こんなところでHCD(11)

久しぶりの「こんなところでHCD」のシリーズである.ふらっと入った牛丼屋,吉野家のタッチパネルをご覧いただきたい(次の写真).

インバウンドで賑わう東京である.吉野家も多国語対応が進んでいる.日本語だけでなく,英語,中国語(簡体),韓国語に対応している.写真は韓国語表記にしてみたところ,上から,「注文追加」「新規注文」「注文内容」と読める(私の韓国語スキルが正しければ……だが).

すばらしい.しかし,残念なのは,左側の情報までは言語が切り替わらない点である.左側には各種のキャンペーン情報や有用な情報が表示される.全ての情報は画像データとして用意されているようである.ここ重要!

すなわち,画像データであるがゆえに,多国語対応に手間がかかるわけである.単純な多国語対応フレームワークでは対応できない問題である.

タッチパネルを多国語化してインバウンド観光客にもサービスを提供しやすくしようというその挑戦は素晴らしい.しかし,なんとなく中途半端で終わっている点がいささか残念であった.

外国人を対象としてHCDのプロセスを走らせるにはコストがかかる点も無視できない.HCDを推進する立場としては,HCDのグローバライゼーションも今後ますます検討していかねばない課題として認識しておきたいものである.

2025年9月17日水曜日

SAJ AI/UX Tech研究会

昨日,一般社団法人ソフトウェア協会のAI/UX Tech研究会が主催するセミナーで,飯尾と橋本(葵)が以下の講演をした.

  • 飯尾淳, 教育および研究における生成AI・LLMの利用
  • 橋本葵, 「対人間と対AIのインターフェース設計の交差点:AI時代のHTML再設計」について

前半は飯尾から,生成AIやLLMの利用を教育や研究の文脈でどう考えるべきかという話と飯尾研究室における生成AIを利用した研究事例を紹介した.後半は,HTMLで書かれたフォームにAIが自動でアクセスして値を埋めるようなケースにおいて,従来型のHTMLと改善提案するHTMLの比較をした結果の紹介である.後半の話は,橋本(葵)くんが実施した研究の成果である.

研究会の皆様には,その後の懇親会でも,いろいろお世話になりました.ありがとうございます.

2025年9月11日木曜日

SICHI2025に参加(学生が)

ヒューマンインタフェースシンポジウム2025に併設されたSICHI(Student Innovation Contest at Human Interface symposium)2025に,4年生の青木裕美さんが参加した.彼女が作成したHealing Petsは,生体センサからのデータに基づきストレス状態を検知,ストレスがかかっていない状態ではキャラクターが成長する一方で,ストレスを検知すると生育が止まるという,キャラクター育成ゲームである.

青木裕美, 飯尾淳(2025)生体情報に基づきストレスを可視化するヒーリングアプリの開発, Student Innovation Contest at Human Interface Symposium(SICHI2025), 1S-18, 石川 野々市

9月10日の午後にデモセッションが行われた.最初は1分間のショートプレゼンテーションである.

実際のデモ会場では,たくさんの方が体験してくださった.ありがたい限りである.

このアプリは,さらなる改良を加えて11月の学祭でデモンストレーションを再度実施する予定である.体験してみたい方は,市ヶ谷iTLまでお越しください(彼女の卒業研究のためのユーザー評価にも,ぜひご協力ください)

2025年9月7日日曜日

このIT化,要?不要?

台湾は台中で市バスに乗った.日本と同様,台湾でも交通系のカードが進化していて,悠々カードという東京でいえばSuicaのようなカードがとても便利に使える.電車だけでなく,バスでも利用できるので,Google Mapsなどの位置情報サービスと連動させれば,たいがいどこへでも公共交通機関で手軽に行ける.便利な時代になったものだ.

台湾のバスは,乗ったときにカードを車内の端末にかざし,降りるときに再びカードをかざすという手順で運賃精算が行われる.台北,台中,高雄のそれぞれの都市で同様だった.いずれの都市でも共通の仕組みが整備されているのは,旅行者にとって本当にありがたい.

ところで,次の写真は台中市内のあるバス停で見つけたボタンである.このボタン,意味はお分かりだろうか.


このバス停には,5番,11番,30番,そして56番のバスが停車する.ところが,台湾のバスは面白いことに,乗降客がいなければそのバスは止まらずに素通りしてしまう.したがって,バスを待つ客は,乗りたいバスの番号が付いたボタンをあらかじめ押しておき,乗車の意思を運転手に知らせる必要があるのである.

ボタンが押されると,バス停の,到着するバスから見やすいところに配置されているLEDにその番号が表示されるので,当該のバスが停車するという仕組みになっている(上の写真,LEDの点滅感覚とシャッタースピードの関係で,うまく撮影できていない点はご容赦いただきたい)

「へー,なかなか,考えられた仕組みだなあ」と,皆さんは感心するだろうか.

しかし,ちょっと考えれてみると,これはあまり意味のある投資とは思えない.なぜならば,こんな大袈裟な装置は必要ないと考えられるからだ.

このような仕組みのないバス停で,台中市民は,乗りたいバスが近づいたら手を振ってバスを止めていた.それで十分ではないだろうか?

(追記)

これについて皆様の意見を問うたところ,「ボタン押して待っていればよいから楽」という意見をいただいた.たしかにそうかも.私はイラチなんで「まだかなまだかな」とずっとバスが来るのを探してしまうので,その発想はなかった.また,「夜は人が手を振っても気付きにくいかも,LEDであれば確実」という意見も頂戴した.それもそうだ.道路に出て手を振るより安全だろう,ということは私も少し考えた.

システム構築には想像力が欠かせないという原則をあらためて考えさせられることになった.HCDの根本的な原理でもある.まだまだ,私も修行が足りないな.