この夏,一般社団法人ことばのまなび工房のウェブサイトをリニューアルした.再構築した理由は,前ウェブサイトを担当していた理事が退任してしまったため,私が引き継がねばならなくなったからである.ちょうどよい機会とばかり,ウェブサイトだけでなく,DialogbookやSpiceBoxといった各種のシステムを,一つのサーバに集約して一括管理することにした.
なお,DialogbookはSMILEプロジェクトで使用している自作の学習ポートフォリオシステムであり,SpiceBoxは国際会議SPICEを運営するために用意したプログラム管理&発表評価システムである.こちらもやはり自作のアプリで,HCD研究発表会においてすでに長年の実績がある同システムをもとにSPICE用にカスタマイズして作成したものである.
ウェブサイトの多言語対応
話がズレた.ウェブサイトのリニューアルである.諸所の事情から,ほぼスクラッチから再構築することになった.使い慣れているWordPressを利用し,新しいサーバに構築しなおした.さらに,せっかくだからと多言語対応してみようということにした.
以前から日英の二カ国語には対応させていたのだが,前任者から「いろいろ苦労した」と話を聞いていた.そこで,今回は事前にいろいろ調べて,ありモノで対応できるならそれをうまく活用しようという方針にした.
調べてみると,Bogoというプラグインがよく使われているらしい.ということで,それを導入してみた.現在,https://www.kotoba-kobo.jp/ (英語), https://www.kotoba-kobo.jp/ja/ (日本語), https://www.kotoba-kobo.jp/ko/ (韓国語)の三言語に対応している.
次のスクリーンショットを見てほしい.これは日本語モードのトップページである.右上に,言語切り替えのリンクが置かれている.ここで言語を切り替えると,メニューも自動的にそれぞれの言語に切り替えられ,記事もそれぞれの言語のものになる.
たいへんうまくできている.運用も極めて簡単だ.いずれかの言語で記事を投稿したとする.編集画面に,他言語版の記事を用意するというボタンが現れているので,それらを押すと,記事がまるっとコピーされ,それぞれの言語版の記事が用意される.あとは,それぞれの記事をその言語に翻訳して,公開するだけである.とってもシンプル.
いくつかの難しさ
しかし,やってみてわかったのは,多言語対応をきちんとやるのは,なかなか難しいということである.世界的な多国籍企業で各種の言語リソースが投入されているような組織でもない限りは,きっちりと多言語対応するのは困難が伴うだろう.
まず,用意した言語分の記事が登録されてしまうので,管理が煩雑になる問題がある.リニューアルしたウェブサイトには,固定ページを除くと,いま7本の記事が投稿されている.三言語に対応しているので,内部的にはその3倍の,21本の記事が用意されている.
対応させる言語の数を増やしたら,さらに大変になるだろうということは,火を見るよりも明らかだ.
翻訳の質保証も問題である.いまは,ほぼ機械翻訳に頼りきっている.幸いにして,英語と韓国語は私が読めるので,ざっと見て,おかしな訳出があったら手で修正するようにはしているものの,自然な翻訳になっているかどうかは自信がない.ここは,やはりそれぞれの言語に対して母語話者がチェックして必要があれば修正できるような体制を用意すべきだろう.
さらに,どこかを修正したら,それを他言語に対しても,手動で修正をかけなければならないという問題もある.これは,プログラミングにおける「コピペはあかん,関数にして再利用せよ」という哲学に通じるものがある.
以上のような難しさがあるため,今回の件に関していえば,あともう一言語,中国語版くらいは用意したほうがよいかなと考えているが,どうしたものかといささか考えあぐねている.機械翻訳がそこそこ優秀になってきている今,他言語版を用意する必要は実はそれほどなくて,まるっと自動で機械翻訳させる仕組みを用意するだけで,良いんじゃね?という極論にも至ってしまい,いやはや,どうしたものだろう.
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