各大学で先生方が工夫をこらした結果,2020年度前期はオンライン講義でなんとか凌ぐことができた.この実績は,「工夫次第でオンライン授業でも最低限の教育効果は維持できる」ということを示せたともいえる.もちろん,長期的にみてどうなのかはまだ未知数ではあるし,講義以外の教育ではどうなのか,本来のあるべき教育に合致しているのかどうか,など,さらなる議論や試行錯誤を重ねなければならない点は多々ある.さすがに「オンラインでなんとかなったのだから,もう,これでヨシ」というわけにはいかないだろう.
オンラインだからこそできること
さて,本稿では「オンラインだからこそ可能な授業」というものを紹介したい.大学ではなく高校での取組みではあるが,現在,我々がサポートしている日台オンライン英語学習交流プログラムである.
このプログラムは,日本や台湾の高校生が外国語としての英語を用いたコミュニケーションを学ぶことを支援するものである.WebexやZoomなどのオンライン・ミーティングツールを使って生徒同士のリアルな英会話,グローバル・コミュニケーションを体験させる.
類似の試みは,数年前から「グローバル・スタディーズ」として大学の演習科目として実施していた.その科目では,夏季休暇中に1週間ほど学生をベトナムのホーチミンに連れていき,現地の学生と合同で実施しているワークショップに参加させる.数日間,朝から夕方までみっちりとグループディスカッションを行うため,英語によるコミュニケーション能力が身につくだけでなく,異文化交流体験としてはたいへんに有意義なプログラムであった.実際,そのときの日越交流が帰国後も続き,OB・OGとなってからも,未だに交流している例がいくつもある.
オンラインだからこそのメリット
「グローバル・スタディーズ」はたいへん有意義な試みであったと思っているが(自画自賛でスミマセン),難点は,それなりに費用がかさむというところであった.ベトナムは比較的安く渡航・滞在できるとはいえ,1週間で数万円の費用がかかる.
さて,翻って,現在,我々が挑戦している高校生向けオンライン・コミュニケーションのプログラムである.オンラインシステムの利用料は無料もしくはせいぜい月額千円程度,格安で異文化交流を体験できる.実際に現地に行って五感で異文化を体験するという楽しみがないのは残念ではあるが,ITの恩恵を受けて,誰もが気軽に異文化交流を体験できる点は,大きなメリットといえるだろう.
今回,COVID-19によるステイホーム生活で,この種のオンラインツールが学生や生徒にとって身近なものになった.そのため,新しいこれらのコミュニケーション・ツールが世界中の誰でも簡単に使えるような存在と認知された点はたいへんありがたいことである.その点は,我々のこの挑戦を後押ししてくれるものと信じている.
異文化コミュニケーション教育のアーキテクチャ |
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