2023年11月7日火曜日

貴重な経験をした

エレベータの中に閉じ込められるという経験をした.人生で初めての経験である.ちょっとドキドキした.

それは,お昼休みに会議が予定されていて,早めの昼食に出た帰りのこと.自室に戻ろうと,エレベータに乗り13Fのボタンを押した.カゴに乗っていたのは自分ひとり.いつもどおり順調に階の表示が上がっていき,13になったところで,ガコンッと大きく揺れて停止した.

(ん?地震?)

最初に考えたのは,地震が来たかな?というものである.地震を検知して止まったのかな,と考えた.しかし,揺れは来ない.地震ではないらしい.

非常停止を検知したらしいエレベータから,「非常通話ボタンを押して,オペレータとお話ください」と音声案内が流れた.非常ボタンを押すなんて,これも初めての経験である.

ボタンを押す.すると,かなり大きな音でプーとブザー音が鳴り響く……ちょっと躊躇するレベル.まあでも,どうせ自分ひとりしかいないし,押し続けないとなあ.

頑張ってずっと押し続けていると,オペレータ氏と話が通じた.

オペレータ(以下「オ」):「聞こえますかー」「聞こえますかー」

私:「聞こえてますけど,こっちの声,聞こえますかー?」

向こうの声は聞こえるが,こちらの声が届きづらいらしい.非常ボタンをプッププップと押してみたり,あれやこれや試してみたりしてなんとか意思疎通を試みたところ,大きな声で喋れば会話も通じることが分かった.

オ:「いまどうなってますかー」

私:「13Fに向かってたんですけど,13Fになったところで,ガコンッって大きな音がして,止まっちゃいました」

オ:「開くボタン押してみてください」

私:「押しましたー.開きませーん」

オ:「そちら,どういう状況ですかー」

私:「わたしひとりです」

オ:「現場に連絡しますので,落ち着いて,お待ちくださいー」

落ち着いてと言われても,(このまま落っこちたりしないだろうな?)って,やっぱり心配になる.けっこう大きな音で,ガッコンッっていってたし.

そして,やはり気になったのはこの後の会議のことだ.ワーカホリックな私.幸にして電波が届くようだったので,事務室に電話する.「あ,飯尾ですけど……,エレベータに閉じ込められちゃいまして」間抜けなメッセージに,電話の向こうもびっくりしたのではなかろうか.

ひと通り経緯と状況を電話で説明し,はてさてどうしたもんかなと考えあぐねていたら,再びインターホンからオペレータ氏の声が.

オ:「いまから15分くらいで係員が向かいますのでー」

え?15分も待たされるの?さっきからもう10分は経ってるよ?

しばらくしたら,外から声がする.「おーい」ダメもとで声をかけてみると「大丈夫ですかー?」と呑気な呼びかけが扉越しに響いてきた.

「閉じ込められちゃいましたー」

こちらも負けずに間抜けな声で応答する.「もう少し待っててくださいねー」「待ちまーす」みたいな牧歌的なやり取り.しかし客観的にみたら,閉じ込められてる私,これってけっこうピンチでは?

閉じ込められてから20分くらい経っただろうか.「いま開けますね!」と,ようやく明るい希望の声が聞こえた.そして開けられるエレベータの扉から,パァアアア…… と広がる明るい光.いや,冗談じゃなくて.助けに来てくださった作業員の方には,たしかに後光が差していた.

次の写真を見ていただきたい.扉が開いたときの状況である.惜しい.あと1メートル.

助けに来てくれた方が「よじ登れますか?」と私に問う.何を仰いますやら,よじ登ってみますとも.まあ,1メートルくらいの段差,造作もない.よじ登ったときの衝撃でガコンとカゴが落ちて,胴体から真っ二つ……なんてことになったらヤダなあ,みたいな縁起でもないことは,考えないようにして,とにかく脱出成功.助かった.

以上が本日の顛末である.振り返ってみれば貴重な経験をしたといえるが,も一度体験したい?と問われればそれはもちろんNoだ.

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