2025年1月9日木曜日

HCII2025参加およびハワイ大学訪問

1月4〜7日の日程でハワイはホノルルにて開催されたHICE2025という学会に参加すべく,ハワイを訪れた.実は初ハワイである.海外は,とくに東南アジアを中心としてかなり辺鄙なところを訪問したりもしているが,ハワイにはこれまで縁が全くなかった.

私は以下のタイトルで発表した.Q&Aも盛り上がり,それなりにウケていたようで,とにかくいい反応だった.

Iio, J. and Noro, H. (2025) Exploring the Potential of AI-created Questions in Programming Mock Exams, HICE2025, Hawaii International Conference on Education, Hawaii, HI, USA.

そのセッションのチェアも割り振られており,1時間半,気を抜けなかったが,活発な議論がなされたので任務は全うできた.ところどころで笑いも取れた.チェア冥利に尽きる.

1月6日にはハワイ大学マノア校を訪問した.Dorothy教授ほか何名かとお会いして意見交換をした.キャンパスを案内していただき,自然豊かなキャンパスに感嘆した.iTLの都市型キャンパスも悪くないが,広大な土地に広がるキャンパスはそれはそれで大学らしくてよい.

ハワイアン・ゲッコーが迎えてくれた.いかにもトロピカルな柄に癒される.

2025年1月7日火曜日

こんなところでHCD(10)

「こんなところでHCD」のシリーズも気付けば10回目である.もっとHCD的に考えるべきだというデザインは,良いものも悪いものも,日常に溢れているということの現れであろう.

というわけで,今回は,心にグッときた良いデザインをご紹介したい.まずは写真を見てください.

年明け早々に参加したHICE2025という教育系の研究発表を行う国際会議でのひとコマである.例によって受付で「Jun Iio」のバッジがなく(おそらくLioにまちがえられていてLの欄に紛れ込んじゃってるんだろうなあ……と思いつつも,「オーケー,あっちで印刷してもらえるから大丈夫だよ!」と明るく言われたのでそのまま指示に従ったのであった)その場で発行してもらったものである.イマドキはプリンタですぐにちゃちゃっとそれっぽいのが作れちゃうからすごい.

指摘したいのはそんなことではなくて名札ケース(バッジホルダー)のほう.写真を見れば一目瞭然なのだけれども,このバッジ,ひっくり返らないのである.

会議の名札,首から下げるタイプはどうしてもクルクルとひっくり返る傾向があり,マーフィーの法則的にいえば裏面が示されてしまっている確率のほうが高いのではなかろうか?しかし,このデザインであれば右上と左上の2箇所で吊っているので,原理的にひっくり返るはずがなかろうというものであって,シンプルながら素晴らしいデザインである.

クリップの数が2個になるので若干コストが上がるかもしれないが,何万個も使うわけでなし,たいしたコストではあるまい.このタイプの名札ケース,日本では見たことがない.あるのかな.研究会等で名札ケースが必要になるときは,次からこのタイプを探してみようと思っている.

2024年12月28日土曜日

2024年の出来事を振り返る

年の瀬も押し迫ってきた.今年の10大ニュースはなんだろう?

第10位:大きな買い物

1月にビックカメラで大きな買い物をした.リビングのTVが壊れたので65インチの大きなTVを購入,ついでに7年使ったiPhone 7を(当時)最新版だったiPhone 15 Proに更新した.店員さんに「あー,7年もお使いになっていたんですねー.物持ちがよいですね」と褒められたのもよい想い出.

第9位:Duolingo

今年,とうとうDuolingoに手を出してしまった.課金はしていない.でも韓国語をずいぶん勉強できたのでそれはよかったかな.まあしかし,よくできたアプリだと感心した.저는 한국어를 공부하고 있어요. 감사합니다.

第8位:老眼鏡

歳には抗えないもんですなあ.老眼がかなり進行して抗えなくなってきたので,Zoffでちゃんとした老眼鏡を誂えた.これまでメガネには縁のない人生を送ってきたのだけれど,いまや老眼鏡がなければ集中した作業ができなくなってしまった.これもまた人生.

第7位:CW研究会の離島開催

COVID-19になる前に,一度,石垣島でCW研を開催したことがあった.そのときは参加者がいつもより増えて盛況だったので,今年は3月の年度末も押し迫ったタイミングで宮古島で開催し,調子にのって12月の開催も久米島で行った.いずれもとてもよかった.しょっちゅう離島でやるわけにもいかないけれど,たまにはよいよね.

第6位:論文賞(選奨論文)

情報処理学会の英文論文誌JIPに掲載してもらったペーパー「An Evaluation of the Flipped Classroom Approach Toward Programming Education」が選奨論文(Specially Selected Paper)として指定された.いわゆる論文賞に準じる栄誉としてありがたく受け取った.ありがとうございます.

第5位:HCD-Netの研究活動活性化

研究事業担当理事として参画しているHCD-Netが今年は例年にない盛り上がりを見せた.悲願であった日本学術会議協力学術団体としての認定を受け,学会として認められた件が大きいが,それに伴い年に2度開催している研究発表会の発表件数や論文投稿数も右肩上がりの躍進を見せている.よいことだ.

第4位:国際会議SPICEの開催

研究活動も本格的に国際展開が軌道に乗り始め,今年の2月には台湾の高雄師範大学(NKNU)で国際会議SPICE2024を開催した.来年の2月にはインドネシアのジョグジャカルタ,ガジャマダ大学でSPICE2025を開催予定である.他にも懸案だったHCIIのオーガナイズドセッションをなんとか来年は成立させられそうで,いずれにしても皆さんのご協力あってこそ.有り難い限り.

第3位:技術士の試験委員

情報処理技術者の試験委員やってるからコンフリクトするんじゃない?と逃げ回っていた技術士の試験委員が「両方やってるひといますから大丈夫です」の一言で,今年,とうとう担当させられることになった.貴重な経験ではあるけれど,負担は大きい.しばらくご奉仕せよということか.

第2位:多数の研究発表

第2位と第1位はいつもどおりの感じかな.硬軟取り混ぜて今年度も飯尾研から30件以上の論文・学会発表があった(発表決定済みの予定を含む).今年は学部生の国際会議の発表は1件だけだったけれど,学部としては盛り上がりを見せているようでそれはそれで素晴らしいことである.いずれにしても研究活動が活発化してよいことですな.

第1位:海外活動

今年もあちこちに出かけていろいろな活動をした.台湾に4回,ベトナムと韓国,タイにそれぞれ2回ずつ,インドネシアに1回,フランスに1回.ほぼ月イチのペースでどこかに出かけていたことになる.学生たちを引率して出かけたベトナムと台湾でもなかなかよい経験をした.国際情報学部の名のもとで国際的な活動ができているのは素晴らしいことだろう.

2024年12月10日火曜日

例外は必ずある

以前,visit japan webの意義について論じたことがあった.最近はようやく電子化ゲートの運用が軌道にのったのか,紙での申請には行列ができている一方で,電子申請のゲートはスムースに通れるという,あるべき姿になってきているような印象がある.

まあ,場合によってはキオスクに行列ができていて紙のほうが早いという状況も稀にあるようだが.イラチな人は,紙申請と電子申請の両方を用意しておき,早そうだ!と思うほうを利用すればよい.選択肢があることは良いことだ.

ところで,DX時代の現代では,電子化,システム化は必須の流れでありそれに意を唱えるものではない.しかし,システム化には必ず穴があることも,忘れてはならない.穴,すなわち要件定義の漏れである.人間の想像力には限界がある.ゆめゆめ奢ることなかれ.えー?そんなことが?という状況は意外と発生するのである.

こんな例があった

ここで,私が体験した税関申請の電子化に関する仕様のバグを紹介したい.

たしかカタール航空だったと記憶している.23時30分に羽田到着というえらく遅い時間に到着する便で帰国した.ずいぶんと端のほうに停められた飛行機から延々と歩かされ,入国審査こそ自動化されているゲートで速やかに進められたものの,バゲージクレームで預けた荷物が出てくるのを待っているうちに,日付は変わってしまっていた.

さて,到着して荷物が出てくる間にvisit japan webの帰国登録をすればいいやとタカを括っていた私,ポチポチと入力を進めていたが,なんと,入力すべき情報にある「到着日」は過去の日付を選べない仕様になっていたのである.なんてこった.すでに前日になっていた到着日を選べない!

帰国便に乗る前にやっておくべきだった?以前,海外で手続きしようとして電波状況が悪く,どうせならちゃんとネットに繋がる日本でやって問題ないよね,荷物出てくる間の待ち時間にやればいいよね……と気軽に考えていた私を誰が責められようか?

このときは,致し方なく紙の申請書に記載して税関を通った.紙がなかったらどうしたか.日付を1日偽って,虚偽申請でもしただろうか(まあ,それはそれで,たいした問題でもないような気もするが……).

どうすべきか

アナログのシステムを全廃して全て電子化しようなどと,簡単に決めて強引に進めるべきではない.人間の想像力には限界があり,先に示したように例外は必ず生じるのである.そのようなときのために補助的手段は残しておくべきである.ユーザとのインタラクションが介在する現場を上意下達的に改革できると思ったら,それは大間違いである.

デジタル化というとTV放送の地デジ化が思い起こされるが,地上波をデジタル放送にしたケースとは違う(あれはある種のユーザ切り捨てでありそれはそれで問題ではあったが,そこまでユーザ保護を論じると何もできなくなる).いま日本で起こっている事例では,これからいろいろな例外が多数発生して混乱が生じるはずだが,おら知らんもんねー.

下記はいらすとやの「入国審査で言葉が通じない人のイラスト」.いらすとやには何でもある.



2024年11月25日月曜日

2024CBNUスタートアップコンペ

11月25日に開催された,韓国の忠北大学(Chung Buk National University)が開催する 2024 Chung Buk Startup Competition に参加した.縁あってお声掛けいただいたこのイベント,飯尾研からは院生1名,学部学生4名が参加,私を含めて6人での訪問である.

初日のコンペ,午前中は大学院生の部だったが,院生の竹村くんがスーパーバイザーとして参加したテイで,実際には学部4年生の飯島くん,2年生の山片さんのチームによるプレゼンテーションが行われた.15分のプレゼンテーションに引き続き,10分のQ&Aタイムを無事にこなした二人は,しっかりと対応できて素晴らしかった.韓国やドイツから参加していた大学院生に混じってよく頑張った.

結果として3位の忠北プロメーカー・センター長賞,賞金100,000ウォンをゲット,上出来である.

午後は学部学生の部で,こちらは私をスーパーバイザーとして,3年生の渡辺くんと2年生の本間さんが参加.こちらも二人はしっかりと発表できた.質疑応答も厳しい質問に苦しみながらもなんとかこなし,やはり3位の忠北プロメーカー・センター長賞,賞品ギフトカード100,000ウォン分をゲットした.素晴らしい.

2024年11月17日日曜日

データ分析は楽しい

AI・データサイエンス演習というゼミ(通称iDSゼミ)を担当している.学生たちはいろいろなテーマに取り組んでいてなかなか楽しいゼミなのだが,今年はあるチームが楽天トラベルのレビューデータを対象に,いろいろと分析を進めている.

今回ちょっと面白い着眼点かなと思ったのは,どのレビュー項目が総合判定に寄与しているのか?という問題設定であった.

楽天トラベルのレビューは,立地,部屋,食事,風呂,サービス,設備という6項目と,総合,合わせて7項目の評価項目がある.その評価のうち,総合評価に最も影響の与えている評価結果は何?という問題である.

単純に考えると,それぞれの項目と総合評価の相関係数を求めればよさそうではある.ただし,この評価データは1〜5の離散値なので,散布図を書いてもよくわからない.実際,52万件からある2019年のデータを用いると,5段階×5段階の組み合わせは全ての組み合わせがあり,散布図は単純な格子点となって全く面白くない.

そこで,重回帰分析の事例として考えてみたら?とアドバイスした.すなわち,6項目を説明変数,総合を目的変数としたとき,影響度の大きな項目は何になるのか?という分析方法である.

StatsModelsを用いて計算した結果は次に示す図のようになった.t値の欄をみると,サービス,部屋,食事の順に影響度が高い.一方,風呂や設備はあまり影響していない.皆さんはこの結果をみてどう考えますか?

2024年10月20日日曜日

ゲーム・プログラミングの妙

プログラミングは楽しい.少なくとも,自分のために実施するプログラミングはいくら時間があっても足りないくらい.というわけで,今回はゲーム・プログラミングである.

題材はThe Chain Triangle Chess Gameというゲームである. Triggle Gameという名前でも流通しているらしい.Amazonで販売されていたゲーム盤のページから商品画像を引用する.

みてのとおり,ルールはとてもシンプルである.6角形の盤面に,37本の柱が立っている.プレイヤーは,交代でその柱を使って区切りを指定する.区切りの指定方法は,輪ゴムを4本の柱に引っ掛けて直線の区切りを設定するというものである.三角形の小さな区画の3辺が全て区切られたら,区切った人の領土になる(それを示すコマを置ける).

YouTubeのショート動画で楽しそうに遊んでいるのをみて,プログラミングの題材に選んだという次第.

環境の選択

最近であればPythonで書くべき?ゲームならUnityだろうか.まあ,慣れているからということと将来的に分散オンラインゲーム化することを見込んで,シンプルにHTMLとJavaScriptを用いて書くことにした.

GUIはHTMLのCanvasを利用する,Canvas要素に直に描いていく方法である.最も単純なパターンである.余計なライブラリに依存しないぶん,安定してメンテナンスできそうという目論見もある.

プログラミング

というわけで,1日くらいかけて実装した.ソースコードはGitHubに置いておいたので,興味がある人は参照してみてほしい.アプリは下記に置いてある.URLのパラメータを指定して2人〜4人の対戦に対応できるようにしてある.

プログラムを大まかに解説すると,GUI部品としてはWidgetクラスを継承したPole, Wall, Patchというクラスがそれぞれ,柱,壁,三角形の領域を表す.さらに,Containerクラスを継承したPoles,Walls,Patchesというクラスが,柱,壁,三角領域をまとめて管理するという構成になっている.

さらに,それぞれのインスタンスの関係を配列の配列で定義して,適切な参照関係を事前に用意してからゲームを始めている点も重要な点であろう.

遊び方

遊び方は,説明するまでもないのではなかろうか.まずは,どこでもよいから柱をクリックしてみよう.クリックした柱は黄色くなり,そこから直線上に3つ離れた場所にある柱が水色で表示される(次図).

水色で表示された柱以外は選択できない.なお,黄色の柱を再度クリックすると,選択を取り消せる.水色のどれかをクリックすると,最初に選択した黄色の柱と次にクリックした柱の間に区画が作られる.

3個の辺に区画ができた三角形は,その回を担当したプレイヤーの持ち物となる.色で示されるので分かりやすいだろう.全ての区画が誰かのものと定まった時点でゲームは終了,ページの最下部に得点状況が表示される(次図).

今後の課題

一通り実装できたので,今日のところはいったん完成としよう.しかし,まだいろいろと考えるべきところはある.細かな話をするとすでに壁ができているところに同じ壁を作るのを許容するかどうか.いまの実装では,その操作は許されているが,三角領域の獲得には何の寄与もしない.いわば「パス」を許していることになるが,ゲームとしてそれはよいのかどうか.検討が必要であろう.

オンライン対戦化させるのも興味深い.旧来の中央集権的サーバを用意して管理するもよし,WebRTCのような分散型の通信方法を利用するもよし,いろいろと工夫の余地はあろう.卒研生の題材にするってのも面白いかもしれないな.

2024年10月15日火曜日

タイポグリセミアで遊ぶ

皆さん「タイポグリセミア」という概念をご存知だろうか.まずは,次の文章を読んでみてほしい.

みさなん こにんちは こんのぶうしょは タポイグセリミアと よばれる げしょんうの デモスントーレションを しめしてまいす.

どうだろうか,何が書かれているか,すんなり読めたかな?

タイポグリセミアとは

もとは英語を対象とした現象であり,日本語で分かりやすく示すためにひらがな・カタカナで示している点の読みにくさは割り引いて考えていただきたい.タイポグリセミアとは,単語の始まりと終わりの文字さえ固定しておけば,中間の文字がある程度入れ替わってもすんなりと読めてしまうという現象を表す用語である.

先の文例では「皆さんこんにちは,この文章はタイポグリセミアと呼ばれる現象のデモンストレーションを示しています」をひらがな・カタカナで表記し,何箇所か文字の順序を入れ替えた.

さて,この現象をテーマに卒論を書きたいという学生が現れ,タイポグリセミアの軽重で読み方がどう変わるかを調べたいと言い出した.なかなか面白い着眼点である.さすがうちの学生だ.

タイポグリセミア度の定義

ところでその軽重の度合いをどう定義するんだ?というところで議論になり,次の定式化を提案した.

簡単にいえば,タイポグリセミア文とオリジナル文のレーベンシュタイン距離(編集距離)を測り,それを文の長さで正規化したものを軽重のレベルを示す値とする,というものである.

レーベンシュタイン距離(編集距離)とは,文Aと文Bがあったときに,文Bに何回の編集操作を加えれば文Aに一致するかという回数で距離を定義するというものである.たとえば,「はんばいき」と「まんばけん」という言葉があったとすると,「まんばけん」ー(1.「ま」を「は」に入れ替え)→「はんばけん」ー(2.「け」を「い」に入れ替え)→「はんばいん」ー(3. 最後の「ん」を「き」に入れ替え)→「はんばいき」となるので,それらのレーベンシュタイン距離LDの値は3,すなわち,LD(はんばいき,まんばけん)=3,となる.

タイポグリセミア文を作るサービスはいくつか提案されている.たとえばこれ.「タイポグリセミア変換ジェネレーター」.ただし,その度合いは調整できない.まずは,元の文章とタイポグリセミア度を入力して相応のタイポグリセミア文を作るところから始めよう.これを作るのはそう難しくないぞ.

追記:

実際にプログラムを作って試してみたら,編集距離ではなくもう少し違う定義でやったほうがよいということに気づいた.次の定義でやるべきかな?

2024年10月13日日曜日

今度のHCD研究発表会は面白そうな発表が盛りだくさん

2024年11月30日と12月1日に,芝浦工業大学豊洲キャンパスにおいてHCDフォーラム併設で開催される2024年度冬季HCD研究発表会は,これまでにない盛り上がりを見せそうで今からとても楽しみである.

次回開催の概要

先日,発表申込みを締め切り,プログラムを策定した.現在,発表者に確認をとっている段階であり,12月15日までに修正の申出がなければ,このプログラムで確定する.

年々,発表件数が増えているのは喜ばしいことであり,今回は口頭発表が22件,ポスター発表が26件と,合計48件もの発表が予定されている.

春の研究発表会では37件の発表があり,マルチトラックでの開催となった.マルチトラックでの開催を余儀なくされるほどの発表件数増加は,開催側として目標の一つではあったのだが,「聴きたい発表が重なって両方に参加できなかったのが残念」などと不満も出ていた.前回の反省点である.

今回はHCDフォーラムと併催という事情もあり,2日間開催,シングルトラック(ただしポスター発表は別会場)という,比較的余裕のある予定を組めた.来年の春開催をどうするかは悩ましいところではあるが,それはまた来年考えよう.

セッション紹介・初日

プログラムの変更はあるかもしれないが,各セッションを簡単に紹介する.

まずは【企業・組織とデザイン】 セッションである.座長は私が担当する.このセッションは,組織運営にHCDの観点を導入したケースやそれに関する研究発表を集めた.トップバッターは東京情報大学の河野先生で,研究室に漫画ドラゴンボール全巻を置いたら学生がどういう行動を示したかというものである.いきなりの変化球.

続いて【AI活用】セッションはその河野先生が座長をご担当してくださる.生成AIを用いていろいろやってみたという研究発表はHCD研究発表会以外でも最近よく見かけるテーマである.今回も3件ほどそのような発表申し込みがあったので,このセッションにまとめた.

昼休憩を挟んで,午後の最初のセッションは【実践報告(1)】,実践報告のセッションその1である.今回も多様な実践報告が予定されており,8件の実践報告があった.そのうちの4件が【実践報告(1)】で報告される.個人的には,本セッション最後に発表が予定されている「鶏中心的プロセス」がたいへん興味深く,注目である.

初日の最後は【文化と社会】 セッション.組織とデザインのセッションに入れるべきだとか,AI活用のセッションに入れるべきだというような発表もあるが,時間配分の問題もあり,文化的側面に着目してこのセッションに並べたことはご容赦いただきたい.

ポスターセッションは二日目を予定しているが,ポスターセッション会場には初日からポスターを掲示できるようにしておく予定である.ポスター発表者はできれば初日からポスターを掲示しておいてくださると,議論が深まるのではないだろうか.

セッション紹介・第2日

二日目の午前中は 【デザイン手法・他】 セッションである.うちの研究室にダークパターンをテーマに修論をまとめようとしている院生がいるので,「ダークパターンのユーザーへのインパクト ~ユーザー特性による違い~」という吉武研の学生による発表には注目している.

午後イチで,ポスター発表のセッションが2時間予定されている.先に述べたように今回はポスター発表が26件予定されているので,はたして2時間で全てをみて回ることができるだろうか.嬉しい悲鳴である.そのためにも,前日からポスターの掲示がなされていることを期待したい.

ポスター発表のあと,最後のセッションが【実践報告(2)】である.「人に依存するHCDからの脱却 〜AI技術の進展を見据えて〜」というご発表,人に注目するHCDからあえての脱却を図ろうとするそのご提案は興味深い.

他にも面白そうな発表が目白押しである.ポスター発表にはピクトグラムに関する発表も4件ある.3件は青学ピクトグラム研究所所長の伊藤先生が関与しているものだが,もう1件は芝浦工大吉武研からの発表である.人型デザインということで,ピクトグラムとHCDは親和性が高そうだ.

そんなわけで,皆様のご来場をお待ちしております.11月30日,12月1日は豊洲でお会いしましょう.

2024年9月21日土曜日

よくできた自動注文機

仁川空港の第2ターミナルにあるフードコートの自動注文機でユッケジャンクッパをオーダーしていただいたのだが,そのUXが「なかなかよく出来ているな」と感心した.フードコートにおいて,タッチパネルで注文するシステムや,注文が来たら呼び出しするベルのシステムは,最近は世界中どこでもある.しかし,それらを組み合わせたシステムを,私は,これまで見たことがなかった.

写真の右側になにやら数字が並んでいる以外は,最近ではきわめて一般的になった自動注文機である.クレジットカードのみ利用可能でキャッシュ不可というのもイマドキらしい.インストラクションに従い,注文と支払いを確定する.そこまでは通常のものと何ら変わらない.

面白いのはその後である.決済が終わると,右側の呼び出しベルがひとつ,ポップアップして飛び出てくるのだ.いやあ,びっくりした.右側に並んでいる数字は,呼び出しベルのID番号なのだった.

9314番の呼び出しベルがポップアップしたので,それを取り出し,席で待つ.小さな液晶画面まで付いていてそこにメッセージも表示される.至れり尽くせりである.

あとは,日本のフードコートでもよくある手順が進む.料理が出来上がると呼び出しベルが光り,ブーブー鳴りながら振動する.さあ,カウンターに受け取りに行こう.注文した料理が待っている.

最後の写真は注文のユッケジャンクッパ.たいへん美味しゅうございました.