ちょいとフィリピンに出張してたりして間があいた.今回はちょっとしたネタである.尾籠な話でもあるので食事中には読まないほうがよいかも.
次の写真を見ていただきたい.男性用トイレの入り口である.ハンドタオル用のペーパータオルと,一巻きのトイレットペーパーが正面に設られており,右下に屑籠がある.トイレの構造はどうなっているか.左手前に洗面台があり,奥には小便器が二つ.タオルやトイレットペーパーが設られている壁の向こうは個室のブースが三つ並んでいる.
この写真をみて,なにか違和感を覚えないだろうか?違和感なくそのまま個室に向かったあなたは,おそらく後悔することになるだろう.
日本だったらまず有り得ないが,個室のなかに,トイレットペーパーは用意されていないのである.ここにある一巻きから必要な分を先んじて確保しておいてから,ブースに向かえ,ということらしい.
緊急事態が発生した際にトイレに慌てて向かうと,つい,忘れてしまいがちになる.アラーム発生,トイレに急行,ブースをチェック,ラッキー,開いていた.鍵閉めて,パンツを下ろして,ああ,間に合った,ひと安心.その後が問題だ.
先んじてのペーパー確保を怠ると,人間の尊厳を失うインシデントが発生することになる.
今年の春にタマサート大でとある式典に参加したときのことである.式典は2部構成になっていて,前半は偉い先生方の挨拶とセレモニー,写真撮影と休憩を挟んで後半は講演会というスケジュールになっていた.私は後半に講演を担当することになっており,前半はおとなしくちんまりと座ってセレモニーを眺めていた.
緊張していたというわけでもないのだが,前半の途中でお腹が痛くなってきた.これはやばい.いちおう貴賓席に座っていたので,ちょっと抜け出して,というわけにもいかない.なんとか頑張って,写真撮影まで,私は耐えた.
グループでのにこやかな写真撮影を終えて,私はダッシュでトイレに向かった.そのあとの顛末は,賢明な皆さんならもうお分かりだろう.まさに,先の「ひと安心」以降の展開が発生,トイレットペーパーがないことに気付き,絶望の底に沈んだのである.
スマホで同行の先生に連絡して紙を上から投げてもらおうかと考えた.オーマイガー!ポケットの中にスマホはなく,どうやら席に置いてきたもよう.残念.その手は使えず.どうしよう.
そこでふと気付いた.東南アジアでトイレに行ったことがある皆さんならご存知かもしれない.こちらのトイレには,たいがい,水道のホースが付いている.要するに手動のウォシュレットである.これでなんとかならないか.
今まで使ったことがなかったので,おそるおそるノズルを尻に向け,引き金を引くと水が勢いよく出てくる.だいぶ冷たくてヒャッとなる.お尻がビシャビシャになってしまったが,水で汚れを流してなんとか問題は解決した.その後,しばらく空冷で乾燥させ,濡れないようにと注意しながらズボンを穿いた.外でペーパーを入手し,ブースに戻る.濡れているお尻を紙で拭いて,一件落着となった.
後日,その話を学生に披露したら,インドネシアにルーツを持つMくんが「先生,それ使い方が違います」という.「あれは,水を流しながら,手で尻を洗うんです」だそうだ.なるほど文化の違いというものは,たいへん面白い.




























