皆さんはタイ料理というとどんなイメージを思い浮かべるだろうか.トムヤムクン?カオマンガイ?パッタイやソムタムなんかもある.日本人にはガパオライスも人気がある.私は,タイの東北部,イサーンのソウルフードでもあるラープが好き.鶏肉のラープ・ガイもいいし,豚肉のラープ・ムーもいい,どっちも美味しい.ちなみに,ガイは鶏肉という意味で,ムーは豚肉を意味する.ガイヤーンやカオマンガイのガイは,鶏料理を示している.
ともあれ,いずれにしても,タイ料理はおおむねスパイシーな料理というイメージではなかろうか.
以前,ASEANの仕事をしていたときに,ある会議のランチタイムで各国から参加した代表者とテーブルを囲むことがあった.そのとき,東南アジアで一番辛い料理を食べるのはどこの国?という問いになり,全員一致で「タイだ」という結論になった.周辺各国も認めるタイ料理の辛さ.素晴らしい.
唐辛子大好きな私としては天国のような国で,毎日,タイ料理は旨いなあと感謝しながら生活している.しかし,当然ながら,辛くないタイ料理もある.
そもそも,タイに限らず,赤ん坊の離乳食はどうしてるんだろう?と以前からずっと気になっていた.まさか赤ん坊に唐辛子のバリバリ効いた激辛料理を食べさせるわけにもいくまい.タイに劣らず辛い料理が豊富な韓国ではどうしているのかと韓国の友人に尋ねたことがある.すると,まあ,離乳食は辛いものは食べさせない,だんだん,辛いものに慣れさせていく,とのことだった.当然だろう.
離乳食はともかくとしても,辛い料理が多い国に住む人が全て辛いもの好きというわけでもあるまい.辛い料理が多い国や地域,韓国,四川,インド,メキシコなどでも,辛くない料理はある.
先日,地下鉄のスクンビット駅を降りて地上にあがり,いつものようにBTSのアソークからプロンポンまでひと駅をふらふらと歩いて帰ろうとしたときのことだ.いつもスクンビット通りの北側を歩くので,たまには南側を歩いてみようと反対側の歩道を歩いて帰った.
プロンポンの駅まで来て,いい感じに小汚い雰囲気のローカル食堂の前を通りかかったとき,目を奪われた.そこには,とても美味しそうなカオカームーが,でーんと陳列されていた.
カオカームーという料理,カオはごはん,カーは脚,ムーは豚,すなわち,豚足のトロトロ煮ごはんである(写真).
奪われたのは目だけにあらず.その香りも極上で,なかなか言葉にできない魅力的な匂いが漂ってくる.心をまるごと持っていかれてしまった.
そもそも豚の角煮や東坡肉,太肉麺なんかが大好きな私,ちょうど夕方だったので,ビールのアテに,買って帰ることにした.「ごはん無しで」と伝え,包んでもらう.110バーツ,日本円にして550円.
豚の角煮にしても,煮卵と組み合わせるのはなぜだろう.カオカームーも,たいがい,青菜あるいは高菜漬けみたいな漬物と煮卵が付いてくる.いずれも豚肉と組み合わせて絶妙なハーモニーを奏でる.カオカームーは肉よりもトロトロの皮が命と指摘する人もいるが,この店のカオカームーは,肉もしっかりしていてたいへんおいしかった.豚足といっても,脚,もも肉という感じだろうか.
さて,このカオカームーは,見てのとおり,辛い料理ではない.だから辛いのが苦手な人でも安心して食べられる.
ところが,そこは辛い料理好きのタイ人向けなのか,余計なものが付いてくるのだ.私としては,もちろんウェルカム.その余計なものとはなにかというと,オレンジ色をしている唐辛子ソースと,小さめの生ニンニク,そして,小さい青唐辛子である.
これらはカオカームーを食堂で食べると,テーブルに備えられている連中である.日本のカレー屋で,テーブルに福神漬けが備えられているみたいなもの.正直,このセットでビールのロング缶2本はいける.とくに小さい青唐辛子がヤバい.ぶっ飛ぶよ.

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