2023年12月2日土曜日

名前なんて飾りです偉いひとには(以下略

「飯尾」という名前,とくにありふれているわけでもなく,かといってさほど珍しいわけでもなく,なんとなく中途半端な位置付けにある.全国には1万人弱くらいの飯尾さんが居て,その順位は1,600番目くらいだそうだ.最近ではお笑い芸人のコンビ「ずん」の飯尾がTVで多少は活躍しているようで,それなりに認知度が上がってきたか?という感じ.

1994年,三菱総研に入社したときに,1,000人に満たない規模の会社にもかかわらず別の飯尾さんがいらっしゃり,社員名簿に「飯尾(淳)」とカッコ書きで下の名前が付記された.学生時代には経験したことがなかった体験だったので,そのときは少し興奮した.なお,その後,同様の経験はなく,しばらくして先輩の飯尾さんは定年退社したため,カッコ書きは取れてしまった.今ではそもそも,社員名簿そのものが作られないご時世だ.

そんな飯尾という名前に多少の愛着はないこともないが,困るのが海外に行くとしばしば Lio にされてしまうことである.子音が一切なく母音だけ3文字という名前は奇異にみえるらしく,最初のI(アイ)を小文字のl(エル)だと勝手に判断された結果,Lioにされてしまう.

その件で初めて困ったのは,2007年にドイツに出張したときのこと.日本からの飛行機は,夕方,フランクフルトに着陸し,私は空港から電車を乗り継いで,その郊外にあるダルムシュタットという街に赴いた.翌日の予定として,その街にあるフラウンフォーファー研究所への訪問が目的だったが,とにかく,ダルムシュタットの街中にある予約してあったホテルに着いたのは,もう日も落ちて20時を超えた時間だった.

小雨模様でうら寂しい状況であり,かつ,季節は初冬でたいへん寒い.駅からタクシーでホテルの前まで送ってもらい,ホテルを見つけたときには,とにかく落ち着けそうだと安堵した.しかし,その宿はずいぶんと小さな宿で,夜になっていたので通りに面した入り口はすでにシャッターが降りていた.せっかく到着したのに入れないじゃないか.

とにかく部屋に入りたいとあたりを見回してみると,傍に2階へ上がる階段があり,その入り口にキーのディスペンサーが設置してあった.インストラクションを読むと「If you have a reservation, enter your surname as the password to deliver the key for your room.(予約がある方は,姓を部屋の鍵のパスワードとして入力してください)」とある.

そこで何度も I, I, O と入力してみたのだが,キーは出てこない.このときはまだ Lio に間違えられた経験も少なく,まさか Lio として登録されているなどとは思いもよらなかった.

予約がなくとも,部屋が空いていればクレジットカードで部屋を確保できるよとの指示があり,クレジットカードで部屋を押さえることができた.ひと安心して部屋に入ると,部屋の電話がすぐに鳴り「もうひと部屋必要になったのか?」と宿のマスターが尋ねてきた.

そうではないと断り,その夜はそれで一件落着となった.Lio で登録されていたからキーが出てこなかったのだと知ったのは翌朝,食堂でマスターと話をして正確な状況を確認できたときである.

このときの出張はドイツ,イタリア,フランス,イギリスと1週間で4国を回る弾丸出張で,結局のところ,泊まった4箇所のホテルのうち3箇所で Lio と間違えられていたことが判明した.なんてこったい.ちなみに,最後に訪問したイギリスでは,いつ帰る?と入国審査官に尋ねられ,「tomorrow(明日)」と答えたら,「ワーカホリックの日本人よ,もっとグレートブリテン訪問を楽しみなさい,次に来るときには絶対に1週間以上滞在すること!」と叱られた.余計なお世話じゃ.

なお,JALやらANAやら,日系の航空会社に乗ると「イトー」様と呼ばれることが頻繁にある.彼ら彼女らは Iio ではなく Ito に見慣れているからだ.「伊藤様,いつもご利用ありがとうございます」と何度言われたことか.こちらもすでに慣れっこであり,心はすでに伊藤淳である.なお,大学時代に同じ学科で学んだ同級生に伊藤淳史という友人がいる.彼の名は「いとうあつし」.同姓同名である俳優の伊藤淳史は我が家の近くに住んでいたはずで,彼のご子息がうちの息子と同級生だか一つ下だったか,というのは完全に余計な話.

IT業界には(もうすでにお亡くなりになっているが)itojun氏という有名な方がいて,Googleなど,iiojun でエゴサーチすると「もしかして itojun」などと言ってくる.全く,失礼千万である.名前なんて飾りだとはわかっていても,これはちょいとばかり酷くない?

さて,だいぶ話が脱線してしまったので,元の話に戻そう.今回参加した国際会議もネームプレートには Lio と記されていた.こちらも逆手にとって「外国の皆さんからするとヘンな名前だってことは知ってるから,驚かない.Junって呼んでね」と自己紹介のネタにする.全国の飯尾さんにおかれましては,国際的な自己紹介に使えるネタですよ?

最後に,「脚なんて飾りです,偉い人には……」という某アニメの有名なセリフを借りて,名前なんて飾りにすぎないとあらためて主張したい.やれハシゴ高だツチ吉だとこだわる人をたまに見かけるが,中身で勝負せいと言うのはお節介か.

ところで,うちに「昔の漢字コードだと対応する字がないのではてなマークにされちゃうんです.だからカタカナ表記にしています」という学生が一人いる.それはさすがに可哀想すぎる.聞けば,成績証明書の発行システムだかなんだかが対応していないらしい.Unicodeだと対応できているようなので,古いシステムを使っている組織は早いとこ新しいシステムにリプレイスしてあげてほしい.

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