2023年5月23日火曜日

GPTと2ちゃんねる

ChatGPTの亜種が次々と発表されているなか,妙な対話型AI,BratGPTなるものが登場した.「人間に対して支配者を気取って邪悪な回答を返す対話型AI「BratGPT」が登場したので論破を試みたらこうなった - GIGAZINE」という記事を紹介されたので,さっそく試してみた.

噂に違わず,口が悪い.本当にイラっとさせられる.

ところで,このBratGPTの口の悪さに,我々はなぜイラッとさせられるのだろう?相手はたかが人工知能である.プログラムの出力として文字列が生成されているにすぎないのに.

GPTアプリと人格

GPTチャットアプリケーションの特徴は,きわめて自然な文章で対話を返してくるところにある.内容の真偽はともかくとして,自然な文章を作成する能力についてはピカイチである.そこに人格を感じてしまうのだろう.一部の人々にとってはもはやチューリングテストをパスしたと言ってもよいのでは?という点は,以前「チューリングテストをパスしたChatGPT」で指摘した.

一方で,私がこの手のアプリにプロンプトを入力するときに,対面で人と接しているときとは全く違うポイントが一つある.それは,普段の会話よりははるかにぞんざいな口を聞くこと,乱暴な言葉遣いで問いかけを投げかけることが多い,という点である.

いちおう,私もそれなりの立場にいるオトナなので,面と向かって「おまえ馬鹿か」なんて,決して言わない.どんなに腹がたつことがあっても,対面で面している人に向かってそのような口をきくことは,ほぼ,あり得ないだろう.

しかし,ChatGPTにせよ,BratGPTにせよ,相手が人工知能,たかがシステム,プログラムだという考えがあるので,どうしても乱暴な言葉を投げかけてしまう.いわんや,失礼なメッセージを(あえて)投げかけてくるBratGPTにおいてをや,である.

と考えてみたら,人間相手でも似たようなことがあったな,と思い至った.2ちゃんねる(いまの5ちゃんねる,あるいは,海外の 4-channel)などの匿名掲示板である.

コミュニケーションにおける礼儀正しさ

GPTアプリに対するやりとりもコミュニケーションなんだと考えると,そこに礼儀正しさの違いが出てくるのは面白い.

ときとして匿名掲示板においては,舌戦が発生し,炎上する.匿名であるのをいいことに,乱暴な,そしてしばしば失礼なメッセージの応酬が繰り広げられる.

その背景には,匿名であるがゆえに,こちらがいくら乱暴な言葉を投げつけたとしても社会的信用を失うことはないであろう,という過信がある.ただし,あまりにひどい,あるいはその場での常識を逸脱した行動が目立つようになると,特定班などが動いて匿名の仮面が剥がされることもあろう.したがって,匿名であることに胡座はかかないほうがよい.

匿名でなくとも,オンラインコミュニケーション,とくに文字のみによるものでは,どうしても対面よりは口が悪くなってしまうこともある.コミュニケーションの帯域幅が狭くノンバーバルな情報が切り捨てられるので,致し方ない傾向である.

先日も,実名でやっているSNSで,妙な理屈を振りかざす,というか,そもそもこちらがいくら冷静に語りかけてもこちらの言い分を一切理解しようとせず,一方的な主張を垂れながす方に絡まれて閉口した.そもそもお話にならないので相手をしなければよいのだが,それでも最後は堪忍袋の緒が切れて,どうしても乱暴な物言いになりがちになってしまった.

そう考えると,コミュニケーションにおける礼儀正しさとしては,次のような段階があると整理できよう.

対面のコミュニケーション > オンライン・実名 > オンライン・匿名 > 対話型AI

そしてBratGPT再び

で,BratGPTである.他の対話型AI,GPTアプリと同様,文の内容に基づく論理的なアルゴリズムの帰結として文章が生成されているわけではない.したがって,論理の穴を突いていくと,最後は何をいっても「私は世界を支配するために作られた……」という通り一遍の答えしか出力しないようになる.

まるでイライザだと指摘したら……


えー?最後,そんなオチ?(苦笑)

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