2021年8月25日水曜日

「オンライン化する大学」内容紹介(まえがきより抜粋)

本書は10の章に分かれている。厳密な時系列にはなっていないので、どの章から読み進めても構わないが、最初の章は新学期のドタバタぶりから紹介した。とにかく混乱した現場の様子を報告したつもりである。

続く2章と3章では、実際にどのようなオンライン講義が行われたのか、オンライン講義を実施して何が分かったのかについて、紹介する。オンラインのメリットのひとつに、学生の学修状況を教員がある程度は把握できることがある。2020年はそのデータを活用するところまで踏み込んで教育を提供できた先生方はそれほど多くはないのではないかと推測するが、今後、この特徴は大きく活用されていくべきポイントとなるだろう。

4章では、オンライン講義実施にあたって工夫をした点をいくつか解説した。オンライン教育に今後携わる先生方、あるいは、教員ではなくとも新入社員教育などなんらかのオンライン教育に携わることになる方々にとって、参考になる情報が記載されている。続く5章も同様の情報を提供しているが、今後、解決すべき課題という側面から論じた。それらを踏まえて、6章ではオンライン講義が対面講義の代替物になり得るか否かについて述べている。私は「完全な代替物にはなり得ない」という立場を取るが、それはなぜか、鍵と考えられる身体性の問題についても触れる。

7章は、少し話題を変えて、大学生活全般について考察する。大学とは学問を修めるだけの場ではない。多感な学生時代を過ごし、人間として大きく成長する場である。そのような観点から何が問題だったか、どうあるべきかについて、考えてみたい。

一方、8章は教員側の課題について触れる。多くの大学では、教員は研究と教育に携わることになっている。研究の状況がオンライン化でどのようになったか、問題はなかったのかについて、いくつかのトピックを紹介する。地球規模の移動が制限されているため、国際会議は大きな影響を受けた。その影響は、一部の教員にとってはメリットとして、そして別の一部の教員にとってはデメリットとして受け取られている。何故そのようなことが起きているかについても説明する。

オンライン講義に終始した2020年の前期ではあったが、後期には揺り戻しで対面授業が、一部、再開された。そのような状況でオンライン講義を振り返るとどうだったのか、あるいは対面で改めて試してみた新たな教育法はあったのか、そのようなトピックを9章で紹介する。なお、対面授業を再開したことによって、オンラインによる人間関係の希薄化が浮き彫りになったことも印象的であった。

最終章では、9章までの議論を踏まえて、今後、大学がどうなっていくのか、どうあるべきなのかを考えてみたい。少子化という時代の流れでただでさえ危機に瀕している大学業界が見舞われた突然の災厄ではあったが、あらためて将来の大学像を考えるよい機会になったのではないか。せめて前向きに考えることが、大学教員のとるべき真摯たる態度なのかもしれない。

樹村房のページへ

Amazonのページへ

0 件のコメント:

コメントを投稿