2025年4月22日火曜日

すごすぎる「ラストメッセージ」

文化放送で放送されている「髭男爵 山田ルイ53世のルネッサンスラジオ」という番組がある.文化放送で放送されている,という言い方は若干,正確ではないかもしれない.文化放送で収録されているPodcast番組である.地方局では地上波に乗せられているところもあるらしいが,肝心の文化放送で「放送」はされていない.

それはともかくとして,この番組,なかなか面白く,放送開始当初からずっと聴いている.Podcastでは最後に「ラストメッセージ」というコーナーがあり,これがときどきべらぼうに面白い内容を紹介するのだ.そして,今週は強烈な内容で,すごい内容にもかかわらず,笑い転げてしまった.4月21日配信回の「ラストメッセージ」は,神回といってもよいかもしれない.いや,神回である(断言する).

内容をここで紹介するのは野暮というものであろう.X(旧Twitter)の反応をいくつか貼っておこう(消えてしまうかもしれないのでリンクではなくスクショを貼っておく)





気になる人は,ぜひ,Podcastで同番組を聞いてみてほしい.オススメである.

2025年4月17日木曜日

グループディスカッションは少人数が望ましい?

日本とタイ,マレーシアの大学生による異文化間交流の様子を分析している.詳細な分析はこれから進める予定だが,少し面白い傾向が見出された.それは,グループの参加人数が多くなると「聞くダケさん」がどうしても出てくるということである.

この異文化間交流のプロジェクトでは,少人数のグループに分けてオンライン会議システムを用いて交流を進めている.しかし,諸事情がありその人数は2名のマンツーマンによる対話から10名を超える大きなグループでの実施まで幅広い.

それらのグループに関し,ターンテイキング(話者交代)の状況や発話回数を可視化してみたら,「どうも,人数が多くなると対話に直接参加せず,聞いているだけという参加者が出てきてしまうなあ」ということにあらためて気付いた.

これは皆さんも日頃感じているのではなかろうか.大勢が参加する会議ほど,参加者の参加意識は希薄になり,発言者は偏る傾向にあることを,日々,感じてはいまいか.とくにオンライン会議では,会議に参加しているフリだけして別のことをしていたり?

まあ,会議はともかく,今回のグループは異文化間交流であるから,本来,参加している全員によって積極的に交流を進めることが望ましく,全ての参加者が均等に発言すべきはずのものである.しかし,やはり人数が多くなると,尻込みしてしまうのか,あまり発言しない参加者がどうしても出てくる.

というわけで,グループの参加者と,発言回数のばらつき加減の関係を調べてみた.次のグラフは,グループの参加者数を横軸に,参加者の発言回数から計算される変動係数を縦軸にして散布図をプロットしたものである.

なお,変動係数とは,標準偏差を平均値で割った無次元数である(nが小さいのでここでは不偏標準偏差を用いている).分散や標準偏差は元データのサイズが大きくなるとどうしても大きくなってしまうので,平均値で割ることで正規化する.規模の異なるデータのばらつき具合を比較するときには,分散や標準偏差ではなく変動係数による比較が望ましい.

さて,図を見てみると,どうだろうか.かなりきれいな相関が出ていることに気付く.グループの参加人数が多くなると,変動係数の値は大きくなる.つまり,発言回数のばらつきが大きくなる……よく喋る人と聞くダケさんに別れてしまう状況が,数値で表されている.また,相関係数は0.76,これはかなり高い相関があると指摘できる.

結論である.グループ内で満遍なく発言を促すには,あまり大きなグループにするのは適さないということをあらためて確認できた.

2025年4月13日日曜日

数学の深イイ問題

高校レベルの数学の問題ではあるが,なかなか面白い問題を教えてもらったので紹介したい.まずは次の図をみてほしい.

「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,どの道を選ぶかの確からしさは一様に等しいものとする」という問題である.

答えを見る前に,少し考えてみていただきたい.どうだろう?(答えを知りたい方は,スクロールしてみてください)

問題の解答

角で曲がりつつ,最短距離を通ってAからBに移動するとき,何パターンの経路があるかを考えてみよう.

AからBに至るまでの最短経路は,どのパターンであっても必ず7個の辺を通る.ここで,上に行く場合を「↑」とし,右に行く場合を「→」で表現する.Aから真上に進んで左上の角を通ってBに至る経路は,A↑↑↑→→→→Bと表現できる.同様に,上に2回進んで,最上段は左から二つ目のパスを通ったとすると,A↑↑→↑→→→Bである.右下の角を通る場合は,A→→→→↑↑↑Bとなる.次の図のケースであれば,A↑→↑→→↑→Bである.

さて,ここまで気付けば,もうゴールは近い.どの経路を選ぶにしても,AからBまで行く7個の経路のうち,3個が「↑」,4個が「→」という性質は変わらない.言い換えれば,7個の選択肢のうち,どの3個を「↑」として選ぶか,その選び方は何通りあるか?である.ようするにこの問題は,7個から3個を選ぶパターンはいくつかあるか?という問題に帰着する(7個から4個の「→」を選ぶ個数でも同じである.なぜならば,3個選ぶと残りの4個は自動的に決まるからである).

ということで,これは組み合わせの数として計算できる.すなわち,7C3 = 7! /(3!・4!) = 35,AからBまでは,35通りの経路があるとわかった.

そのうち,Pを通るものは,AからPへの経路とPからBへの経路の組み合わせで表現できる.この場合は3C1×4C2 = 3×6=18.ということで,Pを経由する確率は,18/35 = 0.514,およそ半分強であると求められた.■

問題の条件が変わると……

ところで,問題が次のようなものであったとしたら,どうだろうか?

「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいものとする

先ほど求めた答えと同じ,Pを経由する確率は18/35?

否,そうではない.

Aから出発し,最短経路を選ぶとき,上図のように上に進むか右に進むかの選択肢がある.このとき,どちらか(赤と青)を選ぶ確率はそれぞれ1/2である.

ということは,Pに到達するまでには,3回の岐路を通っていくことになる.

Aから3回,どちらを通るかを選択した時点で,次の図の赤丸で示した点のどこかに居るはずである.そのなかにはPも含まれるが,Pに至る確率はいかほどだろうか.

二つの選択肢を3回選ぶパターンは,2^3=8通りある.それぞれのパターンを選ぶ確率は,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいとの性質から(1/2)^3,すなわち1/8である.

さて,点Pに至るパターンはいくつあるか.これは,先ほど計算した3C1,つまり,3通りある(次図).

ということは,Pを経由する確率は,8通り中の3通りであって,8通りの確率が同様に等しいことに鑑みれば,3/8ということになる(残りの進み方は,どの経路を辿っても残り3回の交点の通過を経て最終的には最短経路でBに到達するので,考える必要はないことに注意).■

二つの問題の違い

さて,ほとんど同じようにみえる二つの問題だが,微妙な条件の違いで異なる答えとなった.問題を再掲する.

問題1:「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,どの道を選ぶかの確からしさは一様に等しいものとする

問題2:「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいものとする

問題1の答えは18/35、問題2の答えは3/8である.このことから,次のような教訓が得られる.

「問題文は注意深く読み,問われている内容に適切に解答すること」

端的に表されるので数学の問題を例にして説明したが,これはなにも数学の問題に限った話ではなかろう.いずれにしても,本問はまさに,読解力や論理的思考の必要性を感じさせる,良問であると感じた次第.