2020年から「日(に)本語を話さない人たちとのコ(こ)ミュニケーション&コラボレーション・プ(P)ロジェクト」,通称「にこP」(英語ではSMILE project ※)という活動を行なっている.日本と海外の生徒・学生をテレビ会議システムで結び,国際交流させようというプログラムである.
初年度は日本と台湾の高校それぞれ2校でペアを組み実施した.その後,順調に参加校が増え,今年度,2022年度は大学6校,高校15校,小学校2校,ペアの数としては14組まで拡大した(14組2校ペアとすると28校の参加という計算になるが,1校が他の2校とペアを組んでいるようなケースもあるため,参加校の数は28より少なくなっている).参加する児童・生徒・学生の数は数百名に上る.参加校を地図上にプロットしたものが,次の地図である.
にこPの特徴
にこPの特徴は,以下のようなものである.
- 英語を母語としない国を対象とし,お互いが第二言語(あるいはリンガ・フランカ)としての英語により意思疎通を行うこと
- 時差の影響を極力排除するために,日本の交流相手として東アジア〜東南アジア諸国を基本としていること
- 英会話そのものを目的とせず,あくまで異文化間交流を目的としていること.そのため,最低3回は交流の機会を用意していること
- 2対2あるいは2対3程度の,グループによる交流であること,さらには,あらゆる手段を用いての意思疎通を許していること
前者の2つは,日本発のプロジェクトとして重要なポイントである.日本語をはじめとして東アジア〜東南アジア各国の言語は英語とは程遠い言語である.その点で,欧州各国で英語を用いたコミュニケーションを行おうというケースとは大きく異なる.しかし,現在はグローバル言語として英語でのコミュニケーションが求められる状況は多く,国際交流のためのツールとして英語を使用するためのトレーニングが求められる.
また,リアルタイムでの交流を主眼においているため,時間調整のやり易さを考えると,時差は少ないに越したことはない.それぞれの学校におけるスケジュールは年初に決められていることが多く,その合間を縫って交流の時間を設けようとするのは思うほど簡単ではない.そのため,時差のない近隣諸国であることが望ましい.
真の目的は異文化間交流
本活動は,英会話の能力を向上させようというものでは決してない.もっとも,英語で会話する以上は英会話能力の活用は求められるが.しかし,英語だけ上手に話せればよいというものでもない.
異文化間交流を行い,文化的にも社会的にも背景を異にする人々と,円滑なコミュニケーションを行うためには,言葉で表現する以上に相手へのリスペクトが必要である.すなわち,事前にある程度は相手国や相手の文化に対する学習を行う必要があるし,また,自分達の文化や自国についても向き合っておく必要があるだろう.
日本の学生・生徒たちにとっても,異文化圏に属する同世代の人間と接する機会はさほど多くないのではないか.そのような機会を提供し,これまで話したことのない人々と交流する体験は,貴重なものとなろう.その後,さらに交流を深めるような発展をするもよし,さらに見聞を拡めるべく学習意欲を高めるもよし.あるいは,インバウンドで日本にやってくる外国人に対する理解の一助にもなるかもしれない.
さらには,指導する教員の力もグンと伸びるであろうことが期待されている.なにしろ相手校と事前の準備をし,活動のまとめをし,生徒,学生たちを指導していかねばならないのである.このような異文化間交流教育を指導したことのある先生方は,まだそれほど多くないのではないだろうか.
本プログラムへの参加を希望する先生方がいらっしゃったら,ぜひ,私たちにご連絡ください.
連絡先:一般社団法人ことばのまなび工房,お問合せ窓口( https://kotoba-kobo.jp/info )
※ SMILE stands for Students Meets Internationally through Language Education
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