2024年10月15日火曜日

タイポグリセミアで遊ぶ

皆さん「タイポグリセミア」という概念をご存知だろうか.まずは,次の文章を読んでみてほしい.

みさなん こにんちは こんのぶうしょは タポイグセリミアと よばれる げしょんうの デモスントーレションを しめしてまいす.

どうだろうか,何が書かれているか,すんなり読めたかな?

タイポグリセミアとは

もとは英語を対象とした現象であり,日本語で分かりやすく示すためにひらがな・カタカナで示している点の読みにくさは割り引いて考えていただきたい.タイポグリセミアとは,単語の始まりと終わりの文字さえ固定しておけば,中間の文字がある程度入れ替わってもすんなりと読めてしまうという現象を表す用語である.

先の文例では「皆さんこんにちは,この文章はタイポグリセミアと呼ばれる現象のデモンストレーションを示しています」をひらがな・カタカナで表記し,何箇所か文字の順序を入れ替えた.

さて,この現象をテーマに卒論を書きたいという学生が現れ,タイポグリセミアの軽重で読み方がどう変わるかを調べたいと言い出した.なかなか面白い着眼点である.さすがうちの学生だ.

タイポグリセミア度の定義

ところでその軽重の度合いをどう定義するんだ?というところで議論になり,次の定式化を提案した.

簡単にいえば,タイポグリセミア文とオリジナル文のレーベンシュタイン距離(編集距離)を測り,それを文の長さで正規化したものを軽重のレベルを示す値とする,というものである.

レーベンシュタイン距離(編集距離)とは,文Aと文Bがあったときに,文Bに何回の編集操作を加えれば文Aに一致するかという回数で距離を定義するというものである.たとえば,「はんばいき」と「まんばけん」という言葉があったとすると,「まんばけん」ー(1.「ま」を「は」に入れ替え)→「はんばけん」ー(2.「け」を「い」に入れ替え)→「はんばいん」ー(3. 最後の「ん」を「き」に入れ替え)→「はんばいき」となるので,それらのレーベンシュタイン距離LDの値は3,すなわち,LD(はんばいき,まんばけん)=3,となる.

タイポグリセミア文を作るサービスはいくつか提案されている.たとえばこれ.「タイポグリセミア変換ジェネレーター」.ただし,その度合いは調整できない.まずは,元の文章とタイポグリセミア度を入力して相応のタイポグリセミア文を作るところから始めよう.これを作るのはそう難しくないぞ.

追記:

実際にプログラムを作って試してみたら,編集距離ではなくもう少し違う定義でやったほうがよいということに気づいた.次の定義でやるべきかな?

2024年10月13日日曜日

今度のHCD研究発表会は面白そうな発表が盛りだくさん

2024年11月30日と12月1日に,芝浦工業大学豊洲キャンパスにおいてHCDフォーラム併設で開催される2024年度冬季HCD研究発表会は,これまでにない盛り上がりを見せそうで今からとても楽しみである.

次回開催の概要

先日,発表申込みを締め切り,プログラムを策定した.現在,発表者に確認をとっている段階であり,12月15日までに修正の申出がなければ,このプログラムで確定する.

年々,発表件数が増えているのは喜ばしいことであり,今回は口頭発表が22件,ポスター発表が26件と,合計48件もの発表が予定されている.

春の研究発表会では37件の発表があり,マルチトラックでの開催となった.マルチトラックでの開催を余儀なくされるほどの発表件数増加は,開催側として目標の一つではあったのだが,「聴きたい発表が重なって両方に参加できなかったのが残念」などと不満も出ていた.前回の反省点である.

今回はHCDフォーラムと併催という事情もあり,2日間開催,シングルトラック(ただしポスター発表は別会場)という,比較的余裕のある予定を組めた.来年の春開催をどうするかは悩ましいところではあるが,それはまた来年考えよう.

セッション紹介・初日

プログラムの変更はあるかもしれないが,各セッションを簡単に紹介する.

まずは【企業・組織とデザイン】 セッションである.座長は私が担当する.このセッションは,組織運営にHCDの観点を導入したケースやそれに関する研究発表を集めた.トップバッターは東京情報大学の河野先生で,研究室に漫画ドラゴンボール全巻を置いたら学生がどういう行動を示したかというものである.いきなりの変化球.

続いて【AI活用】セッションはその河野先生が座長をご担当してくださる.生成AIを用いていろいろやってみたという研究発表はHCD研究発表会以外でも最近よく見かけるテーマである.今回も3件ほどそのような発表申し込みがあったので,このセッションにまとめた.

昼休憩を挟んで,午後の最初のセッションは【実践報告(1)】,実践報告のセッションその1である.今回も多様な実践報告が予定されており,8件の実践報告があった.そのうちの4件が【実践報告(1)】で報告される.個人的には,本セッション最後に発表が予定されている「鶏中心的プロセス」がたいへん興味深く,注目である.

初日の最後は【文化と社会】 セッション.組織とデザインのセッションに入れるべきだとか,AI活用のセッションに入れるべきだというような発表もあるが,時間配分の問題もあり,文化的側面に着目してこのセッションに並べたことはご容赦いただきたい.

ポスターセッションは二日目を予定しているが,ポスターセッション会場には初日からポスターを掲示できるようにしておく予定である.ポスター発表者はできれば初日からポスターを掲示しておいてくださると,議論が深まるのではないだろうか.

セッション紹介・第2日

二日目の午前中は 【デザイン手法・他】 セッションである.うちの研究室にダークパターンをテーマに修論をまとめようとしている院生がいるので,「ダークパターンのユーザーへのインパクト ~ユーザー特性による違い~」という吉武研の学生による発表には注目している.

午後イチで,ポスター発表のセッションが2時間予定されている.先に述べたように今回はポスター発表が26件予定されているので,はたして2時間で全てをみて回ることができるだろうか.嬉しい悲鳴である.そのためにも,前日からポスターの掲示がなされていることを期待したい.

ポスター発表のあと,最後のセッションが【実践報告(2)】である.「人に依存するHCDからの脱却 〜AI技術の進展を見据えて〜」というご発表,人に注目するHCDからあえての脱却を図ろうとするそのご提案は興味深い.

他にも面白そうな発表が目白押しである.ポスター発表にはピクトグラムに関する発表も4件ある.3件は青学ピクトグラム研究所所長の伊藤先生が関与しているものだが,もう1件は芝浦工大吉武研からの発表である.人型デザインということで,ピクトグラムとHCDは親和性が高そうだ.

そんなわけで,皆様のご来場をお待ちしております.11月30日,12月1日は豊洲でお会いしましょう.