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2025年9月7日日曜日

このIT化,要?不要?

台湾は台中で市バスに乗った.日本と同様,台湾でも交通系のカードが進化していて,悠々カードという東京でいえばSuicaのようなカードがとても便利に使える.電車だけでなく,バスでも利用できるので,Google Mapsなどの位置情報サービスと連動させれば,たいがいどこへでも公共交通機関で手軽に行ける.便利な時代になったものだ.

台湾のバスは,乗ったときにカードを車内の端末にかざし,降りるときに再びカードをかざすという手順で運賃精算が行われる.台北,台中,高雄のそれぞれの都市で同様だった.いずれの都市でも共通の仕組みが整備されているのは,旅行者にとって本当にありがたい.

ところで,次の写真は台中市内のあるバス停で見つけたボタンである.このボタン,意味はお分かりだろうか.


このバス停には,5番,11番,30番,そして56番のバスが停車する.ところが,台湾のバスは面白いことに,乗降客がいなければそのバスは止まらずに素通りしてしまう.したがって,バスを待つ客は,乗りたいバスの番号が付いたボタンをあらかじめ押しておき,乗車の意思を運転手に知らせる必要があるのである.

ボタンが押されると,バス停の,到着するバスから見やすいところに配置されているLEDにその番号が表示されるので,当該のバスが停車するという仕組みになっている(上の写真,LEDの点滅感覚とシャッタースピードの関係で,うまく撮影できていない点はご容赦いただきたい)

「へー,なかなか,考えられた仕組みだなあ」と,皆さんは感心するだろうか.

しかし,ちょっと考えれてみると,これはあまり意味のある投資とは思えない.なぜならば,こんな大袈裟な装置は必要ないと考えられるからだ.

このような仕組みのないバス停で,台中市民は,乗りたいバスが近づいたら手を振ってバスを止めていた.それで十分ではないだろうか?

(追記)

これについて皆様の意見を問うたところ,「ボタン押して待っていればよいから楽」という意見をいただいた.たしかにそうかも.私はイラチなんで「まだかなまだかな」とずっとバスが来るのを探してしまうので,その発想はなかった.また,「夜は人が手を振っても気付きにくいかも,LEDであれば確実」という意見も頂戴した.それもそうだ.道路に出て手を振るより安全だろう,ということは私も少し考えた.

システム構築には想像力が欠かせないという原則をあらためて考えさせられることになった.HCDの根本的な原理でもある.まだまだ,私も修行が足りないな.

2025年8月10日日曜日

日本語版タイポグリセミア?

昨日,COSCUP 2025で「Typoglycemia: An Experimental Study between Complexities and Cognitive Levels」というタイトルの講演をした.なぜCOSCUPでこんなテーマのお話を?というのはさておき,講演後のQ&Aでは「中国語でも似たようなものがある」と現地の参加者から意見を頂けたのは大きな収穫であった.

ところで,中国語は分かち書きをしないし,表意文字だとタイポグリセミアはそもそも成立しないのではなかろうかと疑問を持っていたが,どうもそうではないのかもしれない.この3月に卒業したOさんが実施した実験は,ひらがな文に限定し,かつ,日本語でありながら分かち書きをした「ひらがな版タイポグリセミア」を用いて行っていた.

というわけで,はたして分かち書きのない言語ではどうなんだろう?と気になって眠れなくなったので,急遽,普通の日本語で作ってみたタイポグリセミア文が次の例である.

皆さんは,読めますか?

2025年7月13日日曜日

変なおじさんの話

先日,電車に乗っていたときの話である.車内は比較的混んでいたが始発駅から乗車したので座れて,私はちんまりと座席に座っていた.

ところで,私には軽い鼻炎の持病がある.何かのきっかけでくしゃみが止まらなくなり,十数回はくしゃみを頻発することがある.そのときも,鼻がむず痒くなり,くしゃみが止まらなくなった.

もちろん電車のなかなので,できるだけ手で口を押さえて,周りに迷惑にならないように心がけたつもりではあったが,隣に座っていたオジさんに「飛んでくるんだよ!」と叱られてしまった.

私は配慮が不十分だったと素直に詫びた.まあ,人に不快感をきちんと伝えられることはいいことだ.不要な我慢はせず,非が自分にないならば苦情は伝えるべきだよなあ.Noと言えない日本人は,グローバル社会で舐められちゃうだけだもんな,などと,そのオジに対して,その時点ではとくに嫌悪感を感じることもなく,申し訳ねえな,とすら思っていたくらいである.

ところが,次に思いもよらぬ出来事が発生した.

私の前に,スッと新品の不織布マスクが差し出されたのである.差出人は隣のオジ.くしゃみするならマスクをきちんとしろよ,ということらしい.無言の圧力.

驚いた私は「あ,すみません」と素直に受け取り,パッケージから取り出してマスクをした(させられた).隣のオジは,自分自身もマスクをかけ始めた.

(どんだけ潔癖症かよ!)とびっくりした私は,素直にマスクをかけたものの,だんだん腹が立ってきた.なんで見知らぬオジにマスクをさせられなきゃならんのだ.感染症ならいざしらず,たんなるいつもの鼻炎なんだぞ.「あ,これ,ウィルス性のそれじゃなくて,たんなる鼻炎ですからご安心ください」って言ってやろうか?と思ったけれどもそれも邪魔くさい.勝手に勘違いして不安に思ってるならそうしといてやろうかい,なんて意地悪な気持ちもむくむくと湧き上がってきた.

結局,途中の駅で私が先に降りることになったので,無視し続けて電車を降り,ホームですかさずマスクを殴り捨てた.というか,マスクを取って,くしゃくしゃに丸めてポッケに入れた(あとでゴミ箱に捨てた).

降り際に「どうもありがとうございました」とお礼を言うふりをしてオジにマスクをつっ返してやろうかとも思ったが,大人ゲないのでやめた.

以上が,先日出会った変なおじさんの顛末である.

(いらすとやにあったオッサンのイラストが,当該オジに本当にそっくりだったんだよ)


2025年7月12日土曜日

異文化のちょっとした発見は面白い

日本の近隣諸国であっても,ちょっとした文化の違いがあって,面白い.異文化を受け入れ,異文化を理解することで自国の文化を再発見する,なんてこともあったりして,だから異文化間交流は興味が尽きない.

これは昨夜の会食でのひとコマである.席に着いたら箸が二膳,置かれていた.各自の席に,それぞれ二膳である.はて,これはなぜだろう?

疑問に思ったことはすぐ聞いてみるべきである.「なんでこれ二つ置いてあるの?」

すると,返ってきた答えは「片方はpublic, 大皿から取り分けるときに使ってね.もう片方はprivate,自分で食べるときに使ってください」とのこと.なるほど.理には適っている.

しかし,杯を重ねていくうちに,どちらがどちらだかわからなくなってきた.色別に分けられているにもかかわらず!酔っ払いは本当にどうしようもない.

2025年7月11日金曜日

ChatGPTがいつも正しいとは限らない

久しぶりにRailsでアプリを作っている.しばらく遠ざかっていたら,いつの間にかRailsのバージョンも8に上がっていてびっくりである.RailsでWebアプリを作ることをゴールにしているオンライン授業があるが,そろそろ動画コンテンツを作り直さないとマズいなあ.

それはそれとして,いろいろと改良されていて戸惑いも多い.やはり,常日頃から最新の状況をキャッチアップしていないとあかんなあ,というところだろうか.

今回,ブラウザのタブに表示されるアイコン,いわゆるfaviconを設定しようとして少し右往左往してしまった.ChatGPTにでも聞けばよかったのかもしれないが,いつものようにググって新しめの記述を探すと,適切なディレクトリにfaviconをおいてfavicon_link_tagをapplication.html.erbのヘッダ部分に設定すればよい,とある.

しかし,何度やってもfaviconがうまく表示されない.faviconを置く場所が悪いのか,タグのオプション指定をしなければならないのか,いろいろと試行錯誤してみても,一向に表示されないのでへこたれる.どうやっても赤丸のアイコンしか表示されない……赤丸?

赤い丸がなぜ表示されるんだろう?faviconの設定がないページは,Chromeだと地球のマークが表示されるはず.はてさて?ふと思い立ってpublicフォルダを見てみると,そのなかにicon.pngとicon.svgというファイルがあり,それらは赤い丸の画像イメージであった.こいつらか?

それらを入れ替えてみたのが次の図である.なんということはない,これだけでfaviconが表示された.試してはいないが,iPadやiPhoneでWebサイトをアイコン化したときにもこれらのアイコンが使われるようである.

今回のこの顛末,終わってみればなんとも拍子抜けな展開であった.それで,ついでにChatGPTに聞いてみたわけだが,彼もまた古い情報をしたり顔で(?)教えてくれたのであった(次図).皆さんAIがなんでも正しい情報を教えてくれると思ったら大間違いですぞ?

2025年6月27日金曜日

夜を飛び越えて

東京羽田0:20発,ロンドン・ヒースロー6:25着という飛行機に乗った.発着時刻だけから計算すると6時間強のフライトにみえるが,時差が(いまはサマータイムなので)8時間あり,14時間を超えるロングフライトである.いつものように睡眠薬(注:お酒のこと)をたっぷりとキメてから搭乗したので,乗り込んですぐに眠ってしまった.

数時間後,意識が戻り,気付いたら窓の外が明るい.いや,正確にいえば,「明るそうにみえる」という状況だった.私は右(南向き)窓側の席に座っていて,上空には太陽が透けてみえていた.乗っていた飛行機は787なので,窓には物理的な日よけがなく,窓自体が液晶シャッターで電子的に暗くなっている.しかし,液晶シャッターでは直射日光を完全に遮られず,日差しが眩しかったというわけである.

「はて,深夜便で早朝着なのに,なんで太陽が燦々と輝っているんだろう?」と,寝覚めのぼーっとした頭でしばらく考えた.整理してみるとどうということもないのだが,1. 東行きの深夜便,2. サマーシーズンで白夜の北極圏という二つの条件が重なり,なんとも奇妙な体験になった.当該便で何が起こっていたのか,以下のとおり整理してみたい.

ことの顛末

飛行機の進み具合に合わせて順番に状況を説明する.まずは出発の状況を考えよう.0時台の出発であり,日付は新しくなったばかりである(図).

飛行機は順調に東北の方向に進む.地球の自転により夜は西に移動し,急速に朝を迎えた.当該便は微妙にロシア上空を避けながら,アラスカ方面に向かっている.この時点で,飛行機は24日の午前中を飛んでいることになる(図).

さて,ここで当該便は日付変更線を超える.日付変更線を超えてからは,23日,前日の世界である.次の図で「前日」と書かれたエリアを飛んでいることに注意しよう.北米上空を飛んでいるとき,飛行機は23日の一日を急速に過ごしていくことになる.

しばらくすると,再び24日になる.23日を駆け抜けるからである.ところが,ここで,サマーシーズンの北極圏は白夜であることが災いする.それが私に混乱をもたらした理由の一つとなった.すなわち,白夜であるがゆえに暗くならずに24日を迎えてしまうのである(図).

かくして,飛行機は周囲が明るいまま早朝のロンドンまで巡航し,無事,24日早朝のロンドンに着陸したというわけ(図).

頭のなかで考えていたときには「どうしてこんなことが?」と不思議だったが,このように図解で考えてみるとスッキリした.また,時刻表上は「深夜便」なのに「ほとんど明るい中を飛んでいた」というギャップも,混乱に拍車をかけていた理由の一つなのだろう.

以上が今回体験した不思議な出来事の顛末である.

2025年6月23日月曜日

カッコと句読点

学生の論文指導をしていると,学生がよく間違える書き振りにはパターンがあることに気づく.今回指摘したい事項は,文末のカッコの取り扱いである.

そもそも,文末の参考文献リストに挙げている文献を本文中で参照していなかったり,挿入した図版の参照を本文中でしていないなど,論文のルールを逸脱した文章を平気で書いてくる.いかに論文を読んでいないかが明白なのだが,そこは,何度も根気よく指導していくしかなかろう.

そのような草稿を書いてくるので,「挿入した図版は本文で参照して説明しないといけないんだよ?一番イージーな参照方法は,カッコ書きで(図x)って入れればいいから」と指導した結果が,先に示した状況である.参考文献の引用記号の挿入でも多くの学生が同じミスをする.

本来,文Aで参照しなければならない「(図x)」を,句点の後に書いてしまうと,どうなるだろうか.「文A.(図x)文B」となるはずである.これでは,文Bにくっついてしまうではないか.とても気持ち悪いのだが,そう思わないのかな?

そんなことをSNSでぼやいていたら,Y先生が,「ここは『なぜこれが直感に反すると感じられるのか』という研究を始めていただいて……」と指摘してくださった.さすがにこのような研究をされているひとはすでにいるのではないか?と探してみたら,「日本語における句読点使用の定量的研究」というタイトルで,似たような研究をして学位を取ったかたがいらっしゃるではないか(いろいろな研究があるもんだなあ).

当該論文は要約しか読めていないが,博士論文の要約によると,第7章で,句点とカッコの関係性を論じている.そのままズバリではないが,こんな感じ(要約の該当部分を引用する)である.

句点と閉じパーレンの組み合わせでは,「パーレンのみ」は Yahoo!知恵袋とYahoo!ブログ,書籍,雑誌において半数以上を占め,最もよく使われる組み合わせであることがわかった.また,次に多く使用されていた「パーレン-句点」は書籍と新聞,教科書で多く使われる組み合わせであった.「句点-パーレン」は白書において多く使用されていた組み合わせであったが,文末というよりは,資料の引用を示すために文中で使用される例がほとんどであった.

カッコ閉じるで句点を使わず終わりにするパターンが一番多かったというのはやや意外ではあったが,電子的なテキストなどでは,そのようなケースも日常的に使われるだろう(たしかに,そのような指摘がなされている).書籍では「).」という組合せが多いというのは,私の感覚と合致する.そしてその逆は,文中のケースが多かったとのこと,さもありなんである.

ということで,正解は確認できたものの,なぜ学生たちは「文A.(図x)」としてしまうのか問題は未解決のままである.誰か解明してみませんか?

2025年6月19日木曜日

オンデマンド講座の(思わぬ)落とし穴

中央大学には「クレセント・アカデミー」という市民講座がある.私は運営委員の一人でもあり,もう長いこと,いろいろな講座を担当してきた.

最近のチャレンジとして,講義を録画して「オンデマンド講座」として提供する試みが始まっている.といっても,まだ,提供コンテンツはそれほど多くない.現在は,瀧澤先生のゲーム理論講座と,私のプロジェクトマネジメント入門が提供されているだけである.

このオンデマンド講座の試みは数年前から試行されており,事務局から,オンデマンド講座として提供してよいですか?と問われ,そのときは深く考えることなくOKした.とくに断る理由も思いつかなかったからだ.そして,それで問題ないと思っていた.

ところが,ここへきて,少し困った問題が発生した.それは,オンデマンド講座用に講義内容を提供してしまうと,翌年から同じ内容の講座を開けないという問題である.

以前なら,同じ内容で数年は講座を維持できた.しかし,現在,全てオンデマンド用に提供していいですよと快諾してしまったため,毎年,新しいテーマの講座を捻り出さねばならなくなっている.これは困った.

今年実施している「はじめての生成AI」講座は,私が担当する講座としては例年になく人気が高く,キャンセル待ちが出たとのことだが,これもオンデマンド用に録画しているので,来年は実施できない.

1回90分,それを3回実施するクレセントの講座である.新たな内容を毎年考えなければならないのは,なかなかしんどい.オンデマンド講座用に何本も講座を提供したのだから,来年は休ませてもらう交渉でもしようかしらん.

2025年5月14日水曜日

画竜点睛を欠くとはまさにこのこと?

昨日,某所で「ディリクレ関数がいたるところで不連続であること」についての議論になり,ChatGPTに聞いてみたらどうなるだろうかとの話になった.

以下は,ChatGPTとの対話の記録である.まず,私が「ディリクレ関数が不連続であることを証明してください」と尋ねた.

すばらしい!ワンダフル!ここまでは申し分のない説明である.記号の使い方も全て正しく,ε-δ論法で証明せよという方法論もバッチリだ.

わざわざ稠密なんてキーワードを太字にしたりして,なかなかやるやんけ,と,イイ感じで証明が進み,最後の「どんな小さなδを選んでもD(x)とD(a)の差分が1になってしまうから連続ではない,ってところまではバッチリ.

ところが,最後の「ε=0.5」でガックシ.0.5って,どこから出てきちゃったのよ?

希望があれば図でも示せるで?って調子に乗っちゃってるChatGPT,じゃあやってもらおうとお願いしてみたら……

ありゃりゃりゃ,うーん(x = λって,λってどこから出てきたの orz)

まあ,たぶんこれらのミスは,まるっとわけもわからずそのまま引き写してレポート書いちゃう学生を検出するためのリトマス試験紙として,ChatGPTが「わざと」出してきてくれているのだろう,なんて,好意的に解釈してみたり.そんなわけないかw

2025年4月26日土曜日

Herokuスタック・アップデートの備忘録

Herokuを使ったアプリケーションのサービスを二つ運用している.毎月十数ドルの利用料を払っているが,いずれも多数の皆さんに利用していただいているので,利用料を払っているだけの価値は得られているだろう.

数年前からずっと利用しているサービスなので,以前から,「使っているスタックをアップグレードせいやー」という連絡を受けていた.スタックというのは,アプリケーションを動かすプラットフォームのことである.これまで,heroku-20と名前の付いているスタックを使用していたが,そのスタック利用期限が今月末,4日後の4月30日だというのだ.

もちろん,ほったらかしておいたらすぐに使えなくなってしまうわけではない.利用だけであれば,このままで,まだ使えるとのこと.ただし,セキュリティ対応やさまざまなサービスは打ち切られる.また,致命的なのは,利用期限を超えたスタックを使っている場合,コードの変更やアップデートができなくなる,という制限である.これは,ちと,まずい.

スタックのアップグレード

というわけで,ようやくお尻に火がついた私は,重い腰を上げてスタックのアップグレード作業に着手したのだった.

結論からいうと,終わってみればなんということはなく,あっけなくアップグレードは終了した.ウェブサイトの指示に従い,次の手順でアップグレードすれば,ほぼ,問題なく終了する.

  1. 新しいスタックの環境を作り,スタックを更新してきちんと動作するかどうかのテスト用アプリをデプロイする,
  2. そのアプリが正しく稼働するか,ソースコードをアップロードして起動してみる,
  3. 問題なく動くことを確認できたら,テスト用アプリを削除して,本番環境のスタックをアップグレードする

いくつか説明通りにいかないところがあって試行錯誤しながらではあったが,無事,heroku-22にアップグレードできた.ついでに,というか,勢い余って現在の最新版であるheroku-24にまで上げてしまった.これでしばらくはアップグレード問題に悩まされることはなくなるはずである.

躓いたポイント

ウェブサイトの説明に従ってやったらほぼ問題なくできたが,いくつか躓いた点があるのでそれも紹介しておこう.

まず,説明通りにやったらうまく動かなかった.テストアプリを立ち上げて「ダメでっせ」という画面が出ていたときの,嗚呼,落胆たるや,いかほどばかりであっただろうか.世の中うまくいかんもんよなあと,日頃の行いをしばし反省である.

うまく動かんときはログを見よという指南があったので,ログをみたら「データベースにそんな関係は定義されていない」というエラーが出ていた.なんのことはない,よけいなデータベースを作って参照していただけという問題だった.

説明では,addonsの一覧を表示させて使っているaddonsを調査してそれらををcreateせよとあり,その説明に素直に従ったため,不必要なデータベースを新しくもう一つ作ってしまっていたわけだ.当然ながら新しいデータベースは何のテーブルも定義されていないので,そのままだとエラーになる.

作ったaddonsデータベースをremoveしてから,既存のデータベースをaddons:attachすれば,問題なく現状のデータで動いた.逆に,いま使ってるデータをアップグレードしたスタックのテストアプリからそのまま使えたので,データベースがアプリから切り離されていることのメリットを感じた瞬間でもある.いろいろ更新したアプリから,そのまま,何もなかったかのようにデータを弄れたのには,頭ではわかっていても「おおすごい」と思ったものである.

あともう一つ,コードのデプロイに git push heroku main という呪文を唱えるのだが,これが何度やってもエラーになる.「そんなリポジトリない」というようなエラーである.はて?と思って,ふと,気付いたのは,mainじゃなくてmasterだよ,ということ.最初に作ったのはだいぶ前であり,「masterはPC的にけしからん,mainを使え!」とよくわからないムーブメントが起こる前であった.それをすっかり忘れていた.git push heroku master とやったら,問題なく処理できた.

2025年4月22日火曜日

すごすぎる「ラストメッセージ」

文化放送で放送されている「髭男爵 山田ルイ53世のルネッサンスラジオ」という番組がある.文化放送で放送されている,という言い方は若干,正確ではないかもしれない.文化放送で収録されているPodcast番組である.地方局では地上波に乗せられているところもあるらしいが,肝心の文化放送で「放送」はされていない.

それはともかくとして,この番組,なかなか面白く,放送開始当初からずっと聴いている.Podcastでは最後に「ラストメッセージ」というコーナーがあり,これがときどきべらぼうに面白い内容を紹介するのだ.そして,今週は強烈な内容で,すごい内容にもかかわらず,笑い転げてしまった.4月21日配信回の「ラストメッセージ」は,神回といってもよいかもしれない.いや,神回である(断言する).

内容をここで紹介するのは野暮というものであろう.X(旧Twitter)の反応をいくつか貼っておこう(消えてしまうかもしれないのでリンクではなくスクショを貼っておく)





気になる人は,ぜひ,Podcastで同番組を聞いてみてほしい.オススメである.

2025年4月13日日曜日

数学の深イイ問題

高校レベルの数学の問題ではあるが,なかなか面白い問題を教えてもらったので紹介したい.まずは次の図をみてほしい.

「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,どの道を選ぶかの確からしさは一様に等しいものとする」という問題である.

答えを見る前に,少し考えてみていただきたい.どうだろう?(答えを知りたい方は,スクロールしてみてください)

問題の解答

角で曲がりつつ,最短距離を通ってAからBに移動するとき,何パターンの経路があるかを考えてみよう.

AからBに至るまでの最短経路は,どのパターンであっても必ず7個の辺を通る.ここで,上に行く場合を「↑」とし,右に行く場合を「→」で表現する.Aから真上に進んで左上の角を通ってBに至る経路は,A↑↑↑→→→→Bと表現できる.同様に,上に2回進んで,最上段は左から二つ目のパスを通ったとすると,A↑↑→↑→→→Bである.右下の角を通る場合は,A→→→→↑↑↑Bとなる.次の図のケースであれば,A↑→↑→→↑→Bである.

さて,ここまで気付けば,もうゴールは近い.どの経路を選ぶにしても,AからBまで行く7個の経路のうち,3個が「↑」,4個が「→」という性質は変わらない.言い換えれば,7個の選択肢のうち,どの3個を「↑」として選ぶか,その選び方は何通りあるか?である.ようするにこの問題は,7個から3個を選ぶパターンはいくつかあるか?という問題に帰着する(7個から4個の「→」を選ぶ個数でも同じである.なぜならば,3個選ぶと残りの4個は自動的に決まるからである).

ということで,これは組み合わせの数として計算できる.すなわち,7C3 = 7! /(3!・4!) = 35,AからBまでは,35通りの経路があるとわかった.

そのうち,Pを通るものは,AからPへの経路とPからBへの経路の組み合わせで表現できる.この場合は3C1×4C2 = 3×6=18.ということで,Pを経由する確率は,18/35 = 0.514,およそ半分強であると求められた.■

問題の条件が変わると……

ところで,問題が次のようなものであったとしたら,どうだろうか?

「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいものとする

先ほど求めた答えと同じ,Pを経由する確率は18/35?

否,そうではない.

Aから出発し,最短経路を選ぶとき,上図のように上に進むか右に進むかの選択肢がある.このとき,どちらか(赤と青)を選ぶ確率はそれぞれ1/2である.

ということは,Pに到達するまでには,3回の岐路を通っていくことになる.

Aから3回,どちらを通るかを選択した時点で,次の図の赤丸で示した点のどこかに居るはずである.そのなかにはPも含まれるが,Pに至る確率はいかほどだろうか.

二つの選択肢を3回選ぶパターンは,2^3=8通りある.それぞれのパターンを選ぶ確率は,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいとの性質から(1/2)^3,すなわち1/8である.

さて,点Pに至るパターンはいくつあるか.これは,先ほど計算した3C1,つまり,3通りある(次図).

ということは,Pを経由する確率は,8通り中の3通りであって,8通りの確率が同様に等しいことに鑑みれば,3/8ということになる(残りの進み方は,どの経路を辿っても残り3回の交点の通過を経て最終的には最短経路でBに到達するので,考える必要はないことに注意).■

二つの問題の違い

さて,ほとんど同じようにみえる二つの問題だが,微妙な条件の違いで異なる答えとなった.問題を再掲する.

問題1:「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,どの道を選ぶかの確からしさは一様に等しいものとする

問題2:「左下の点Aから,右上の点Bに,最短距離となるように線上を移動するとする.このとき,点Pを通る確率はいかほどか?ただし,2方向に進めるときにどちらの道を選ぶかの確からしさは等しいものとする

問題1の答えは18/35、問題2の答えは3/8である.このことから,次のような教訓が得られる.

「問題文は注意深く読み,問われている内容に適切に解答すること」

端的に表されるので数学の問題を例にして説明したが,これはなにも数学の問題に限った話ではなかろう.いずれにしても,本問はまさに,読解力や論理的思考の必要性を感じさせる,良問であると感じた次第.

2025年2月28日金曜日

2024年度インドネシア研修

2月の20日から26日まで,飯尾研有志(2年生4名,3年生2名,4年生4名)でインドネシア研修を実施した.2月22日にYogyakartaのジャガマダ大学で開催されたSPICE2025における発表(4年生)と,24, 25日に実施したYogyakartaの高校訪問において中央大学を紹介するプレゼンテーション(2, 3年生)が主な目的である.

SPICE2025では,以下の内容で発表した(私も,与えられた枠の前半を使い,概要について報告した).

Iio, J., Saito, Y., Iijima, M., Ito, N., Ogaki, R., Morimitsu, I., and Miyamoto, Y., (2025) SMILE Project Report, The Case of KMITL and Chuo iTL in AY 2024, The 5th International Conference on SMILE Project and Intercultural Communication Education (SPICE2025), Yogyakarta, Indonesia.

また,2, 3年生のプレゼンテーションも,時間が足りなくなって少し慌てたところはあったが,それなりにカッコよくできた.素晴らしい(写真は,私が彼らを紹介しているところ).

23日の日曜日には,研修のエクスカーションとして近隣にある世界遺産のボロブドゥールとプランバナン寺院群を視察,インドネシアの文化・歴史も学び,有意義な研修になったことだろう.

2025年2月3日月曜日

さようなら,ネ申パワポ

ネ申エクセル(かみえくせる?)という言葉がある.別名,エクセル方眼紙.正確にいえばエクセル方眼紙の上位概念かな?まあ,いずれにしても,エクセル,いや,スプレッドシート,日本語でいえば表計算ソフトウェアの「本来の使い方『ではない』使い方」をしているもののことを指す.エクセルに代表されているが,MS Excelに罪はない.他の表計算ソフトでも似たような使われ方をしているものは全てネ申エクセルである.

ネ申パワポに物申す

さて,今日わたしが文句を付けようとしているのはネ申エクセルではない.いわばネ申パワポと言うべきであろうか.コンサル業界に蔓延している「パワポ報告書」の類である.コンサル業界と書いたがわたしの古巣である三菱総研にも蔓延っていた(いまはどうでしょう?).私も以前は何度か作ったことがある.今では反省している.ごめんなさい.

そもそもパワポ(MS Powerpoint)はプレゼンテーションソフトなのである.プレゼンテーションの資料を作成するためのツールなのである.報告書はワード(MS Word)もしくは他のワードプロセッサ(ワープロ)で作りなさい.報告書のような「〇〇書」を作成するツールはワープロソフトたるべきである.

プレゼン資料 ≠ 報告書

パワポ報告書はそのままプレゼンに使えるから便利?アホなことを言ってはいけない.読めへんわ!横着せずにプレゼン資料は別に作ってください.後生だから.

下記をみてほしい.上はどうみても「プレゼンしてるふり」にしか見えない.

図版の扱い

図版の扱いがパワポのほうが簡単で,図を多く入れようと思うとパワポのほうが図と親和性が高いから便利?これも勉強不足です.ワープロソフトでも図を扱う機能は充実している.論文や報告書の類であれば,原則「文字として」扱う設定にして中央寄せにし,「キャプションを追加する」機能で図表番号とキャプションを入れるべし.それを正しくやれば,ページを跨いでキャプションの生き別れみたいな情けないミスもなくなる.

そもそもパワポに番号の相互参照機能ってあったっけ?「報告書なら」本文から図表番号を必ず参照するはず.図版の番号を連番で自動的に振ってくれる機能も,あったかな.まさか番号の参照を手作業でやってないよね?図版の順番を入れ替えたときどうしてるの?目視チェック?

共同作業向き?

パワポだとページ単位で担当できるから複数人による共同作業に向いている,という言い訳も聞いたことがある.まあ,直感的ではある.でもイマドキのワープロなら複数文書を束ねる機能だってちゃんとある.本の原稿をワードで書いたことがあり,そのときは章ごとにファイルを分けて,最後にガッチャンコした.やり方,忘れちゃったけど…….

しかし報告書の内容がページ単位で綺麗に分割できるもの?内容によって,大小,あるんじゃないの?図版のサイズで調整する?絵本作ってるんじゃないんだから.あ,オトナの絵本を作ってると理解すればいいですか?

「資料」なら許す

ちょっとググってみたら役所や著名なコンサル企業はパワポ報告書のデザインがすごい!みたいな記事を見つけちゃったわけ.でも,そもそも書籍や雑誌は「いかにして(さまざまなステークホルダの利害を調整しながら)読者に分かりやすい紙面を提供するか」に命かけてるからね.ネ申パワポなんて笑止千万である.ヘソで茶が沸く……は言い過ぎですねごめんなさい.

かつて,私の古巣である三菱総研の某セクションでは報告書をLaTeXで組んでいた.複数担当者で単語表記の揺れが出ないようにマクロを使いまくるという徹底ぶりで,LaTeXマスターNさんのその仕事ぶりは鬼気迫るものがあった.しばらく会ってないけどNさん元気かな.まあ,LaTeXで組むというのはやりすぎかもしれないけれど,報告書に命を吹き込む,書類の品質を上げるって,そういうものだと思うわけですよ.古い考えかもしれないが.

百歩譲って「資料」と称するならまだ許す.報告書作成を舐めないでいただきたいものである.

2025年1月7日火曜日

こんなところでHCD(10)

「こんなところでHCD」のシリーズも気付けば10回目である.もっとHCD的に考えるべきだというデザインは,良いものも悪いものも,日常に溢れているということの現れであろう.

というわけで,今回は,心にグッときた良いデザインをご紹介したい.まずは写真を見てください.

年明け早々に参加したHICE2025という教育系の研究発表を行う国際会議でのひとコマである.例によって受付で「Jun Iio」のバッジがなく(おそらくLioにまちがえられていてLの欄に紛れ込んじゃってるんだろうなあ……と思いつつも,「オーケー,あっちで印刷してもらえるから大丈夫だよ!」と明るく言われたのでそのまま指示に従ったのであった)その場で発行してもらったものである.イマドキはプリンタですぐにちゃちゃっとそれっぽいのが作れちゃうからすごい.

指摘したいのはそんなことではなくて名札ケース(バッジホルダー)のほう.写真を見れば一目瞭然なのだけれども,このバッジ,ひっくり返らないのである.

会議の名札,首から下げるタイプはどうしてもクルクルとひっくり返る傾向があり,マーフィーの法則的にいえば裏面が示されてしまっている確率のほうが高いのではなかろうか?しかし,このデザインであれば右上と左上の2箇所で吊っているので,原理的にひっくり返るはずがなかろうというものであって,シンプルながら素晴らしいデザインである.

クリップの数が2個になるので若干コストが上がるかもしれないが,何万個も使うわけでなし,たいしたコストではあるまい.このタイプの名札ケース,日本では見たことがない.あるのかな.研究会等で名札ケースが必要になるときは,次からこのタイプを探してみようと思っている.

2024年12月28日土曜日

2024年の出来事を振り返る

年の瀬も押し迫ってきた.今年の10大ニュースはなんだろう?

第10位:大きな買い物

1月にビックカメラで大きな買い物をした.リビングのTVが壊れたので65インチの大きなTVを購入,ついでに7年使ったiPhone 7を(当時)最新版だったiPhone 15 Proに更新した.店員さんに「あー,7年もお使いになっていたんですねー.物持ちがよいですね」と褒められたのもよい想い出.

第9位:Duolingo

今年,とうとうDuolingoに手を出してしまった.課金はしていない.でも韓国語をずいぶん勉強できたのでそれはよかったかな.まあしかし,よくできたアプリだと感心した.저는 한국어를 공부하고 있어요. 감사합니다.

第8位:老眼鏡

歳には抗えないもんですなあ.老眼がかなり進行して抗えなくなってきたので,Zoffでちゃんとした老眼鏡を誂えた.これまでメガネには縁のない人生を送ってきたのだけれど,いまや老眼鏡がなければ集中した作業ができなくなってしまった.これもまた人生.

第7位:CW研究会の離島開催

COVID-19になる前に,一度,石垣島でCW研を開催したことがあった.そのときは参加者がいつもより増えて盛況だったので,今年は3月の年度末も押し迫ったタイミングで宮古島で開催し,調子にのって12月の開催も久米島で行った.いずれもとてもよかった.しょっちゅう離島でやるわけにもいかないけれど,たまにはよいよね.

第6位:論文賞(選奨論文)

情報処理学会の英文論文誌JIPに掲載してもらったペーパー「An Evaluation of the Flipped Classroom Approach Toward Programming Education」が選奨論文(Specially Selected Paper)として指定された.いわゆる論文賞に準じる栄誉としてありがたく受け取った.ありがとうございます.

第5位:HCD-Netの研究活動活性化

研究事業担当理事として参画しているHCD-Netが今年は例年にない盛り上がりを見せた.悲願であった日本学術会議協力学術団体としての認定を受け,学会として認められた件が大きいが,それに伴い年に2度開催している研究発表会の発表件数や論文投稿数も右肩上がりの躍進を見せている.よいことだ.

第4位:国際会議SPICEの開催

研究活動も本格的に国際展開が軌道に乗り始め,今年の2月には台湾の高雄師範大学(NKNU)で国際会議SPICE2024を開催した.来年の2月にはインドネシアのジョグジャカルタ,ガジャマダ大学でSPICE2025を開催予定である.他にも懸案だったHCIIのオーガナイズドセッションをなんとか来年は成立させられそうで,いずれにしても皆さんのご協力あってこそ.有り難い限り.

第3位:技術士の試験委員

情報処理技術者の試験委員やってるからコンフリクトするんじゃない?と逃げ回っていた技術士の試験委員が「両方やってるひといますから大丈夫です」の一言で,今年,とうとう担当させられることになった.貴重な経験ではあるけれど,負担は大きい.しばらくご奉仕せよということか.

第2位:多数の研究発表

第2位と第1位はいつもどおりの感じかな.硬軟取り混ぜて今年度も飯尾研から30件以上の論文・学会発表があった(発表決定済みの予定を含む).今年は学部生の国際会議の発表は1件だけだったけれど,学部としては盛り上がりを見せているようでそれはそれで素晴らしいことである.いずれにしても研究活動が活発化してよいことですな.

第1位:海外活動

今年もあちこちに出かけていろいろな活動をした.台湾に4回,ベトナムと韓国,タイにそれぞれ2回ずつ,インドネシアに1回,フランスに1回.ほぼ月イチのペースでどこかに出かけていたことになる.学生たちを引率して出かけたベトナムと台湾でもなかなかよい経験をした.国際情報学部の名のもとで国際的な活動ができているのは素晴らしいことだろう.

2024年12月10日火曜日

例外は必ずある

以前,visit japan webの意義について論じたことがあった.最近はようやく電子化ゲートの運用が軌道にのったのか,紙での申請には行列ができている一方で,電子申請のゲートはスムースに通れるという,あるべき姿になってきているような印象がある.

まあ,場合によってはキオスクに行列ができていて紙のほうが早いという状況も稀にあるようだが.イラチな人は,紙申請と電子申請の両方を用意しておき,早そうだ!と思うほうを利用すればよい.選択肢があることは良いことだ.

ところで,DX時代の現代では,電子化,システム化は必須の流れでありそれに意を唱えるものではない.しかし,システム化には必ず穴があることも,忘れてはならない.穴,すなわち要件定義の漏れである.人間の想像力には限界がある.ゆめゆめ奢ることなかれ.えー?そんなことが?という状況は意外と発生するのである.

こんな例があった

ここで,私が体験した税関申請の電子化に関する仕様のバグを紹介したい.

たしかカタール航空だったと記憶している.23時30分に羽田到着というえらく遅い時間に到着する便で帰国した.ずいぶんと端のほうに停められた飛行機から延々と歩かされ,入国審査こそ自動化されているゲートで速やかに進められたものの,バゲージクレームで預けた荷物が出てくるのを待っているうちに,日付は変わってしまっていた.

さて,到着して荷物が出てくる間にvisit japan webの帰国登録をすればいいやとタカを括っていた私,ポチポチと入力を進めていたが,なんと,入力すべき情報にある「到着日」は過去の日付を選べない仕様になっていたのである.なんてこった.すでに前日になっていた到着日を選べない!

帰国便に乗る前にやっておくべきだった?以前,海外で手続きしようとして電波状況が悪く,どうせならちゃんとネットに繋がる日本でやって問題ないよね,荷物出てくる間の待ち時間にやればいいよね……と気軽に考えていた私を誰が責められようか?

このときは,致し方なく紙の申請書に記載して税関を通った.紙がなかったらどうしたか.日付を1日偽って,虚偽申請でもしただろうか(まあ,それはそれで,たいした問題でもないような気もするが……).

どうすべきか

アナログのシステムを全廃して全て電子化しようなどと,簡単に決めて強引に進めるべきではない.人間の想像力には限界があり,先に示したように例外は必ず生じるのである.そのようなときのために補助的手段は残しておくべきである.ユーザとのインタラクションが介在する現場を上意下達的に改革できると思ったら,それは大間違いである.

デジタル化というとTV放送の地デジ化が思い起こされるが,地上波をデジタル放送にしたケースとは違う(あれはある種のユーザ切り捨てでありそれはそれで問題ではあったが,そこまでユーザ保護を論じると何もできなくなる).いま日本で起こっている事例では,これからいろいろな例外が多数発生して混乱が生じるはずだが,おら知らんもんねー.

下記はいらすとやの「入国審査で言葉が通じない人のイラスト」.いらすとやには何でもある.



2024年11月25日月曜日

2024CBNUスタートアップコンペ

11月25日に開催された,韓国の忠北大学(Chung Buk National University)が開催する 2024 Chung Buk Startup Competition に参加した.縁あってお声掛けいただいたこのイベント,飯尾研からは院生1名,学部学生4名が参加,私を含めて6人での訪問である.

初日のコンペ,午前中は大学院生の部だったが,院生の竹村くんがスーパーバイザーとして参加したテイで,実際には学部4年生の飯島くん,2年生の山片さんのチームによるプレゼンテーションが行われた.15分のプレゼンテーションに引き続き,10分のQ&Aタイムを無事にこなした二人は,しっかりと対応できて素晴らしかった.韓国やドイツから参加していた大学院生に混じってよく頑張った.

結果として3位の忠北プロメーカー・センター長賞,賞金100,000ウォンをゲット,上出来である.

午後は学部学生の部で,こちらは私をスーパーバイザーとして,3年生の渡辺くんと2年生の本間さんが参加.こちらも二人はしっかりと発表できた.質疑応答も厳しい質問に苦しみながらもなんとかこなし,やはり3位の忠北プロメーカー・センター長賞,賞品ギフトカード100,000ウォン分をゲットした.素晴らしい.

2024年11月17日日曜日

データ分析は楽しい

AI・データサイエンス演習というゼミ(通称iDSゼミ)を担当している.学生たちはいろいろなテーマに取り組んでいてなかなか楽しいゼミなのだが,今年はあるチームが楽天トラベルのレビューデータを対象に,いろいろと分析を進めている.

今回ちょっと面白い着眼点かなと思ったのは,どのレビュー項目が総合判定に寄与しているのか?という問題設定であった.

楽天トラベルのレビューは,立地,部屋,食事,風呂,サービス,設備という6項目と,総合,合わせて7項目の評価項目がある.その評価のうち,総合評価に最も影響の与えている評価結果は何?という問題である.

単純に考えると,それぞれの項目と総合評価の相関係数を求めればよさそうではある.ただし,この評価データは1〜5の離散値なので,散布図を書いてもよくわからない.実際,52万件からある2019年のデータを用いると,5段階×5段階の組み合わせは全ての組み合わせがあり,散布図は単純な格子点となって全く面白くない.

そこで,重回帰分析の事例として考えてみたら?とアドバイスした.すなわち,6項目を説明変数,総合を目的変数としたとき,影響度の大きな項目は何になるのか?という分析方法である.

StatsModelsを用いて計算した結果は次に示す図のようになった.t値の欄をみると,サービス,部屋,食事の順に影響度が高い.一方,風呂や設備はあまり影響していない.皆さんはこの結果をみてどう考えますか?

2024年10月15日火曜日

タイポグリセミアで遊ぶ

皆さん「タイポグリセミア」という概念をご存知だろうか.まずは,次の文章を読んでみてほしい.

みさなん こにんちは こんのぶうしょは タポイグセリミアと よばれる げしょんうの デモスントーレションを しめしてまいす.

どうだろうか,何が書かれているか,すんなり読めたかな?

タイポグリセミアとは

もとは英語を対象とした現象であり,日本語で分かりやすく示すためにひらがな・カタカナで示している点の読みにくさは割り引いて考えていただきたい.タイポグリセミアとは,単語の始まりと終わりの文字さえ固定しておけば,中間の文字がある程度入れ替わってもすんなりと読めてしまうという現象を表す用語である.

先の文例では「皆さんこんにちは,この文章はタイポグリセミアと呼ばれる現象のデモンストレーションを示しています」をひらがな・カタカナで表記し,何箇所か文字の順序を入れ替えた.

さて,この現象をテーマに卒論を書きたいという学生が現れ,タイポグリセミアの軽重で読み方がどう変わるかを調べたいと言い出した.なかなか面白い着眼点である.さすがうちの学生だ.

タイポグリセミア度の定義

ところでその軽重の度合いをどう定義するんだ?というところで議論になり,次の定式化を提案した.

簡単にいえば,タイポグリセミア文とオリジナル文のレーベンシュタイン距離(編集距離)を測り,それを文の長さで正規化したものを軽重のレベルを示す値とする,というものである.

レーベンシュタイン距離(編集距離)とは,文Aと文Bがあったときに,文Bに何回の編集操作を加えれば文Aに一致するかという回数で距離を定義するというものである.たとえば,「はんばいき」と「まんばけん」という言葉があったとすると,「まんばけん」ー(1.「ま」を「は」に入れ替え)→「はんばけん」ー(2.「け」を「い」に入れ替え)→「はんばいん」ー(3. 最後の「ん」を「き」に入れ替え)→「はんばいき」となるので,それらのレーベンシュタイン距離LDの値は3,すなわち,LD(はんばいき,まんばけん)=3,となる.

タイポグリセミア文を作るサービスはいくつか提案されている.たとえばこれ.「タイポグリセミア変換ジェネレーター」.ただし,その度合いは調整できない.まずは,元の文章とタイポグリセミア度を入力して相応のタイポグリセミア文を作るところから始めよう.これを作るのはそう難しくないぞ.

追記:

実際にプログラムを作って試してみたら,編集距離ではなくもう少し違う定義でやったほうがよいということに気づいた.次の定義でやるべきかな?