2024年8月31日土曜日

国家による情報統制は意外と身近な出来事

中国のグレートファイアウォールは有名で,よく知られている.中国共産党に都合の悪いメディアには触れさせないようにと,海外のSNSなどには接続できないようにして国レベルで特定の通信をシャットアウトするものである.その是非はともかく,誰が言い始めたか知らねどグレートファイアウォールとはよく名付けたものだ.万里の長城(Great wall)にちなんで付けられたあだ名である.

ところで,特定のサイトを国レベルでブロックするというのはよくある話.今まで私が経験したのは,韓国,ミャンマー,インドネシア.他にもあったかな.

また,国家による情報統制とはやや事情が異なるが,欧州経済領域(EEA)およびイギリスからはYahoo! JAPANのサービスにアクセスできない(ここにその説明がある).日本から欧州に出張する人はたくさんいらっしゃるだろうから,Yahoo!ニュースが見られない!などという経験をした方も多かろう.

具体例

実例を示そう.次の画面はインドネシアの例である.この例で接続しようとした先は,どことは言わないがさほど問題のありそうなサイトではなかった.しかし,ブロックされていた.ちなみに,httpsでアクセスすると「信頼のおける接続ができない」旨のエラー画面になる.ハテ?と思い,同じサイトにhttpで再接続すると,次の画面が出てきた.

どこの国でも,アダルトサイトはブロックされがちである(重ねて指摘しておくが,上記はアダルトサイトに接続しようとしたわけではない.シークレットモードでアクセスしているのは,話題がちょいとセンシティブな話題だけに,用心したというだけだ).韓国では儒教的な配慮なのだろうか.インドネシアも同様な事情で,ムスリムの教義に沿わないからだろう.文化的背景や宗教との関係は国家レベルの情報アクセスコントロールに大きな影響を与えていることがわかる.

迂回方法など

蛇の道は蛇といったもので,このようなアクセス制限は仮想プライベートネットワーク(VPN)を張ればすり抜けられる.実際,どうしても必要な場合はVPNを利用して回避することもある.しかし,「研究用途のみに使うこと」というルールがあるため,濫用は避けなければならない.というわけで,あくまで,理論上は可能,ということにしておこう.なお,「VPN使えばOKよ」ということを「検証」するのも我々の研究の一環である.ああ,情報学者って便利だなあ(おいおい).

ところで,中国のグレートファイアウォールを体験したときの話である.久しく中国には行っていないので,かなり昔,2000年代なかばのことである.Linux上で動作しているFirefoxからアクセスしたのに,Internet Explorerの「DNS解決ができません」とかいうエラー画面が出てきて,稚拙すぎる……と思ったものだ(実話である).今はどうなっているだろうか.

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