2022年5月31日火曜日

断定する勇気を持て

とある記事に寄せられていたコメントが,どうにも気持ち悪い文章だったので,添削した.何が気持ち悪いかって,この文章,全ての文が「〜と思う」で終わっているのである.

学生,とくにまだ文章を書くトレーニングが不足している1年生が書いてくるレポートにも,このような文章がみられることがある.そのような学生には「君の書いてきた文章は,君が思ったこと,考えたことを書いたものだろう?だとしたら,〜と思うという情報に新たな意味はあるかい?蛇足以外のナニモノでもなかろう.全て削除すべし.つまらぬ語尾を付けずに,断定せよ」と指導する.

「〜と思う」と書きたくなる気持ちはわからぬでもない.書いている内容に自信がないからである.あるいは,そのように責任をぼやかす表現がクセになってしまっているか.しかし,「〜と思う」と書いてふわっとさせれば許される,というものでもない.

断定する勇気を持っていただきたい.そのために方法は二つある.一つは,自信を持って断定するための根拠を揃えることである.これには努力が必要である.作業はしんどいかもしれないが,しっかり作業すれば,きっとその努力は報われる.頑張っていただきたい.

もう一つは,とにかくエイや!で断定してしまうことである.これは,内容がおかしいだろ!とツッコまれるリスクを伴う.しかし,若気の至りという言葉もある.歳を無駄に重ねた私のような者が根拠のない断定を行うといろいろと差し障りがあることもあるが,学生であれば許される.ぜひ,断定する経験を積んで自信を持っていただきたい.突っ込まれて窮地に立たされることがあったとしても,それも経験である.なに,命まで取られるというものでもない.気軽に考えよう.

学生諸君には,経験を積んで,断定する勇気を備えた,カッコいい大人になってほしいものである.

英語では

この話題,日本語だけでなく,英語でも同様である.おそらく他の言語でもほぼ同じことがいえよう.たまたまこんな記事をみかけた.ディビッド・セイン氏による「英語は『○○』を使えば『I think』連発がやめられる」という記事である.何を使えば I think の連発がやめられるかは,リンク先の記事を読んでいただくとして,その記事でも次のように述べられている.

英語を話すとき、やたらと「I think」(私は~だと思う)を連発してしまう日本人と会うことがあります。「I think」と言わなければ、断定的に見えてしまうのではないかという懸念があるからだと思うのですが、ネイティブからすると、同じフレーズを連発している人はどうしても稚拙にうつってしまいます。

やっぱりカッコ悪いんだ.

レポートや論文を英語で書くときは,三人称を使って客観的に書く.たとえば,「I confirmed the phenomenon through a series of experiments.」という文は,「The author confirmed 〜」と書く.なお,日本語の場合は「私は一連の実験でその現象を確認した」と書くのではなく主語を省いて「一連の実験でその現象を確認した」と書く技が使える.ただし,先日,ある原稿をproofreadingに出したら「The author 〜 という表現は old fashoned である」と直された.基本,三人称を使って,要所要所で I だの we だのを使え,ということだろう.

study, research, investigationやexperiment, resultなどを主語にするパターンもよく使う.先の例文であれば,「The series of experiments revealed the phenomenon.」である.日本語に訳せば「一連の実験でその現象が明らかにされた」となるか.モノやコトを主語にする表現は日本語ではあまり馴染みがないのではと感じる方もいるかもしれないが,そんなこともない(「モノやコトを主語にする表現は日本語ではあまり馴染みがない」という文の主語はなにか,考えてみよう).

モノやコトを主語にする表現を自由に使えるようになると,英作文の幅が広がり,より英語らしい英作文を書けるようになる.少なくとも私はそう信じている(←「〜と思う」を少しカッコつけて表現すると,こうなる).

おまけ:英会話のコツ(ヤー・ヤー・ノゥの法則)

ところで,先のディビッド・セイン氏の記事は本の紹介記事のようだが,その記事では「6つのカテゴリー」でどんな会話も続いてしまう!と説いている.しかし,私が若いころに先輩から教わった英会話のコツは,もっと簡単,単純なものだった.

曰く,「いいか?英会話は『ヤー・ヤー・ノゥの法則』で乗り切れる」とか.

とにかく「ヤー(Yeah)」と相槌を打っておき,3回に1回のタイミングで大げさに「ノォウ!(No!)」と言えばいいんだとか.なんだそれテキトーすぎるだろ.「いや,とにかく喋らせるだけ喋らせて,本当に確認したいことは,こちらから改めて確認しろ」だそうである.

「ヤー・ヤー・ノゥの法則」,それなりに使い勝手が悪くないと感じているが,いかがだろうか.信じるも信じないもあなた次第.なお,なにか問題が生じても私は責任をとれないので悪しからず.

1 件のコメント:

  1. 先日,ヤーヤーノウの法則を教わった先輩氏と飲む機会がありこの話をしたら「私が教えたのはヤー・ヤー・ノゥではなくヤー・ヤー・ホゥァットである」との訂正を受けた.訂正するとともに,この場を借りてお詫び申し上げます.て,たいして変わらんやん

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