2021年10月16日土曜日

工作大好き

皆さんこの画像,何だと思う?

これは私が10数年前に作った装置の一部.その装置とは,三次元マウス,つまり,空間中の場所を特定するデバイスである.当時,すでにいくつか三次元マウスのようなものは市販品があった.しかしいずれも相当に高価で,数十万から百万円程度はしただろうか.

一方,この装置は市販のレーザーポインタに自作のアタッチメントを付けただけのもので,ボタンを押すと4点が光るような工作が施されている.アタッチメントはアルミパイプと特殊なシート(後述する),それをアルミテープで貼り付けただけで,原価は数百円もしない.レーザーポインタやビデオカメラ(USB接続の安いものでよい),カメラのスタンドなど全て合わせてもせいぜい数千円といったところだろう(このレーザーポインタはちょっとイイやつを選んだので,100USDと少しお高めのそれではあった).

あらかじめキャリブレーションしておいたカメラで4点が光っている状況を撮影すれば,画像認識により4点の位置が計測され,そのデータからレーザーポインタの先端部分が空間中のどこにあるかが計算される.

しくみはいたって単純なものだ.レーザーポインタから広がる4本の直線は,レーザーポインタの先端部分(正確にいえばアタッチメントの内部の1点)を頂点として,四角錐を形成する.したがって,机の上に輝く4つの点による四角形は,その四角錐を机上の平面でスパッと切ったときの,切片に相当する.その情報から逆算すれば,レーザーポインタの先端部分は解析的に求められる(次図).

ところで,このデバイスは実は3号機である.1号機は鏡を使って光を4点に分岐させる方式のもの,2号機はプリズムを使ったもの,3号機は回折格子を利用したもので,それらの裏には,着々と精度を向上させていったプロジェクトX的発展の物語がある.

1号機の鏡方式は,工作機械も利用できず素人の手作業で作ったもののため,かなりラフな作りであった.プロトタイプ的なものといってもよいかもしれない.しかし,1号機によりこの方法で3次元ポインティングデバイスを実現できると確証を得たので,エポックメイキングではあった.

プリズムの利用を経て,回折格子のシートと出会ったときには小躍りしたものだ.まさにユーレカ!な気分だった.自分でいうのもなんだが,3号機の完成度は高い.しかし,原理はいたって単純である.回折格子のシートをレーザーポインタの先端に貼り付けると,レーザー光の輝点が格子状に並ぶ.したがって,そのうちの4点を取り出すだけでよい(次図).

スリットの工作も手作りだが,そこに対しての工作精度は求められないので問題ない.かくして,4本のレーザー光を確実に放射する3号機が出来上がった.

一連の研究は博士論文にまとめられている.興味がある人(いる?)がいたらご連絡ください.そのなかの一部はヒューマンインタフェース学会の論文賞をいただいた論文が元になっている.賞などあまり縁のない私だが,本件に関してはそこそこ評価してもらったのが今でもちょっとした自慢に思っている.

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