2020年7月31日金曜日

教員の顔出しは必要か?

オンライン講義で「学生の顔出しNG問題」がたびたび議論されていた.一方で,教員の顔出しは「当然だろう」という論調がほとんどだったように思う.しかし,データダイエットだかで教員の顔出しも不要なのではないかとの指摘もあり,はたして,教員の顔出しはあったほうがよいのか,実際のところどうなんだろう?

学生に訊いてみた

受講する側の学生はどう感じているのだろうかと,最終課題の提出に合わせ,(これは任意で答えてくれればいいんだけど)と「動画には教員の顔が出ていたほうがよいか,出ていないほうがよいか(理由も含め)」という質問をしてみた.なお,対象とした講義は数学の講義で,1年生が受講生の大半を占める(一部の2年生も受講している).また,意見の収集はDiaLogBookを用いた(図.同システムにご興味のある方は直接ご連絡ください).

最後に学生の(ほぼ)生の声を紹介するとして,サマリーを報告すると,「顔出しアリがよい」派のほうが多かった.入学したての1年生が過半数を占めているという点も影響しているかもしれないが,やはり,講義の内容以外にコミュニケーションの情報量を求める声が目立つ.対面と同じ環境を望む声も多かったが,顔が出ていたほうが集中できるとか,教員の話しぶりからさまざまなシグナルを読み取っているというコメントは学習効果を考えるうえでも無視できないのではなかろうか.

積極的に「顔出しナシがよい」という声は1件だけだった.消極的に「顔出しは必要ない」との声も含めても,ナシ派の数は少なかった.顔出しナシの理由として,教員の負荷(動画の編集だけでなく,「着替えるの大変でしょ」の配慮もw)を心配してくれているのはリップサービスなのかな.まあ,素直に,優しい皆さんの配慮に感謝しておこう.実際にはZoomのひとりミーティングで一発撮りしているので,顔出ししようがしまいが負荷は変わらないんだけどね.舞台裏を知らない彼らなりの配慮ということで,ありがたく感謝.

どっちでもよい,あるいは,場合によるという意見には,今回は特別という意見もちらほら.まあ,教員だけでなく学生も戸惑っているよね……

この講義ではずっと顔出ししていて,動画には右上に私の顔が小さく出ていたのだが,資料の見やすさに言及していた意見がいくつかあったことも見逃せない.mmhmmだとか,新しいツールの提案がちらほらなされているが,資料の上を教員のアバターが飛び回っていたら,逆に見にくくなってしまう恐れだってあるのではなかろうか.教員の自己満足ではなく,学習効果を考慮したコンテンツ作成を心がける必要がありそうだ.


2020年7月27日月曜日

視聴ログは語る

開設して2年めを迎えた中央大学国際情報学部(iTL)では,2年生後期からゼミ活動が始まる.その準備として,6月から2ヶ月かけて,各教員への学生配属の調整が行われた.実際のところ,この状況下で調整の全てをオンラインでやらねばならないのは,かなりたいへんだった.当初予定していたゼミ紹介のイベントも中止になり,そのためいろいろと問題も噴出した.それらは,来年以降への課題として残された.

面白いなと思ったのは,自分のゼミ紹介を動画化してYouTubeに置いた結果として得られたデータである(うちの学生以外にも公開しているので興味がある方は見てください).動画をYouTubeに置いていたことで,視聴ログの統計データも見られるようになっていた.


まずこのグラフ,これは「飯尾ゼミ紹介(その1)」に関する平均視聴率の推移を示している.視聴率というのは,いわゆるTVなどでいう全世帯の何%が観たかというそれではなく,最後まで観たら100%と数えるものらしい.

この時系列データから,応募予定アンケート期間は,様子見派が多数アクセスしてすぐに離脱していった様子を伺うことができる.エントリーシート提出期間の視聴率が高いのは,興味のある学生しかアクセスしてこなかったからという理由が考えられる.

それを裏付けるグラフがもう1つある.

この棒グラフは,同期間に視聴された「飯尾ゼミ紹介(その1)」から「飯尾ゼミ紹介(その6b)」までの平均視聴率比較である.もっとも高い視聴率を上げた動画が「その5(左端の紫)」で,もっとも低いものが「その1(右端の青)」となっている.ただし,もちろん,視聴数でいえば(その1)が圧倒的に多く,残りの数は少ない.

これをみると明らかに,明確な意識を持っている学生はきちんと情報収集に労力をかけているということがわかる.なんとなれば,後半までしっかり観ている学生は,動画を最後までちゃんと観ているということがデータに示されている(「その6b」の視聴率が落ちているのは,最後の動画は春合宿の案内というやや異なる内容の案内だったせいかもしれない).

ところで,面接調整期間に視聴があったのはなぜだろう?人気ゼミから落とされそうだという学生が2番手の候補としてアクセスしてきたのかな(ちょっとよく分からない)

まあ,オンラインだといろいろとこんな分析もできて,悪いことばかりでもないなと思った次第.なお,このゼミ紹介を観て「来年はぜひ先生のゼミを志望したいと思います」と連絡してきた1年生が居たのは嬉しい誤算であった.キャンパスで会えないからなおのこと,この手の情報公開が大切になってくるのだろう.

2020年7月22日水曜日

オンライン講義に対する学生の意見

前回,授業評価アンケートで自由回答に学生の意見が多く寄せられたことについて報告した.皆様のオンライン講義コンテンツ作成の参考になるかもしれないということを期待して,そこで得られた学生の声を紹介したい.

なお,対象のオンライン講義は,動画配信型の講義「プログラミングのための数学」で,1コマのコンテンツは10分前後の動画を7〜9本ぶん用意するというコンテンツである.参考までに,公開講座はこちら.こんな感じのコンテンツが一学期ぶん配信されるというものである.毎回,1〜3問程度の課題を出した.課題のレベルはやや挑戦的なものも含むものの,負荷はさほどではないという程度のものである.ただし,提出された課題に対してはLMSのコメント欄でかなり丁寧なフィードバックを行った(教員の負荷としては,そこそこ高かった).

動画コンテンツに関するコメント

まず,動画に対する意見である.顔が出ているほうがよいのかどうかについては,別途,最終課題で尋ねてみる予定だが,顔が出ていたのがよいという意見が既に出された.また,当初はLMSの制限から小分けにせざるを得なかったという理由で短い動画にしたのだが,瓢箪から駒というか,その形式がわりと評判よいということが分かった.途中で止めながら観ればいいのでは?とも思うが,そういうものでもないらしい.
  • ひとつの動画の時間が短く,少しずつ見ることができてよかった
  • 動画を小分けにしてあるのがすごくいい
  • 動画が細かく分けられていたので,じっくり考えながらビデオを見ることができ,よかった
  • 動画講義の質が高かった
  • 先生の顔が出ているので集中して聞くことができた

フィードバックに対するコメント

これは手をかけただけのことはあった.あとは教員の負荷とのトレードオフをどうするか?か,落としどころはどこにあるだろう?
  • 毎回,自分の挑戦課題の指導をしてくださったので,自分の理解が足りていないところが分かりよかった
  • 毎回丁寧にコメントを返してくださって嬉しかった
  • 質問にも答えていただきよかった
  • 個別指導でしっかりフィードバックしてくださり大変よかった
  • 自由に記述して質問できるシステムも私にはぴったりだった

講義のあり方,コンテンツの内容などに対するコメント

自腹でペンタブを買ったのは無駄ではなかった!(笑)

対面講義であればスライドを提示しつつ白板で式展開して説明するところ,ZoomのホワイトボードやMS OneNoteにペンで落書きして示すなど,白板への板書に代わる説明を加えた点がよかったらしい.そして,ここでも雑談が評価された.まあ,脱線する話題も重要だってことかな?
  • ホワイトボードで詳しく説明してくれた
  • おまけコンテンツなどの話がとても面白かった
  • 数学の内容だけでなくRやエクセルなども活用しながら数学について学ぶことができたのもよかった
  • 実際の活用例を見せてくれたり,単純に面白いというものもあったり,難解な部分もあったが楽しかった
なお,ここで紹介した意見は,ポジティブなものだけの抜粋であることをお断りしておく(一部,ネガティブなものもあったが,一般的な指摘ではないため皆様の参考になるかどうか怪しいものであり,なにより私の心が痛くなるのでそれらは紹介しない.ごめんね)


2020年7月20日月曜日

静かに声をあげる学生たち

急遽オンラインで実施することになった2020年度前期の講義も,なんとか走りきった感がある.はやく対面の講義に戻りたいところだが,オンライン講義の準備で得たもの(たとえば講義動画など)もあり,今回の経験を次に活かしていきたいところだ.

授業評価アンケートに異変あり

ところで,講義が終盤にさしかかるといつも「学生による授業評価アンケート」なるものが実施される.今年も同様にアンケートを実施しており,学生に入力をお願いしているところである.

私が担当しているいくつかの科目をみていると,自由記述にいろいろと書き込んでくる学生が例年と比べて明らかに多い,という現象を確認できる(次図.右半分に示されているT列q1.14が自由回答).


この状況である.例年,この自由回答はせいぜい1割程度の学生が記入してくるだけだったが,今年は半数以上の学生が記入してきている(この科目は,なかでも多いほうではあるが……).これをどう解釈するか.

オンライン講義であったがゆえに,これらの記述にも抵抗がなくなっているという点はあるだろう.この科目はLMSを用いた課題提出のコメント欄で私が丁寧にフィードバックしていたので,なんとなく「書き込まねば」と感じたのかもしれない.しかし,他の科目でもここまでではないにせよ,例年よりは書き込みが増えている印象がある.

以下オマケ

(ここからは私の憶測かつ不穏当な表現が含まれるので,そういうの嫌な人はここで読むのをやめてください)

やはり,学生たちも密なコミュニケーションを求めていることの現れなのではなかろうか.オンラインで便利になったとはいえ,対面のコミュニケーションには情報量のバンド幅では全くかなわない.人はコミュニケーションする生き物なのだ.このアンケートに現れた自由回答の多さが「3密とか,馬鹿なこと言ってんじゃないよ」という悲鳴にみえてしょうがない.

2020年7月19日日曜日

1年生のフォローをどうする問題

「春から〇〇大学!」と意気揚々と新生活への期待で胸を膨らませていたはいいものの,なんと遠隔講義でキャンパスは入構禁止,友達も作れない…… そんな大学の新入生たちが不憫でならない(大学教員として,他人事みたいな言い方ですみません.これでも,都内の大学でありながら後期は少しでも対面授業を実現させるべく,現在,奮闘中なのです).

話題になっているらしいツイート,この気持ち,とても良くわかる.
我が家にもこの春から高校に進学して高1生となった子がいるが,高校もしばらく前から登校を開始して,高校生活をエンジョイしているようだ.新しい友だちもできたかな?このツイートで指摘されているように,大学生だけが,なぜ,困難を強いられなければならないのだろうか(もちろん,マンモス大学としての問題もあるし,「感染させた = 悪」という偏見とどう闘うかという問題もあるし,いろいろと解決しなければならないことがあるのは百も承知.話題が散逸するのを防ぐため,本稿では,抜本的な解決策の検討については,とりあえず,横に置いておく).
新聞でもこんな報道があったらしい.「大学通えず 新入生孤立」「『友達0人』35%」 なんともショッキングなキーワードが踊っている.この状況,大学の上層部はどう見てるのか.もう片っ端から直撃インタビューでもやって確かめてみたい気分(しないけど).

というわけで,手を拱いているだけでも仕方がないので,ウチでどのような取り組みをしたか紹介したい.少しでも友達作りに寄与できていたらと願うばかりである.



詳しくは毎日新聞の記事を参照いただきたい.一部を引用する.

 国際情報学部(iTL)では,学生主催による新入生との交流イベント「iTL(国際情報学部)新入生オンライン交流会」を5月2日から6月20日までに計4回開催している.

 同学部の「国際交流サークル」が運営主体となり,自発的に始まった活動だが,学部も後援し,これまで延べ60人以上の新入生が参加している.交流会では,まずは簡単なゲームで新入生の緊張を和らげた後,5,6名のグループに分かれて,在学生が各グループをコーディネートしながら新入生同士の交流をはかる時間や,在学生への質問など,新入生がこれからの学生生活を送る上での疑問や不安を解消しつつ,通学後のイメージをつかめるようなプログラムを用意している.交流会に参加した新入生の多くは「次回も参加したい」との声を寄せており,高い満足度がうかがえる結果となっている. 

私も少しだけ参加した.もっとも,開始してすぐグループに分かれてしまったので,簡単な挨拶だけして,すぐに退散したが……(学生同士のほうが交流しやすかろうという配慮).

ともあれ,1年生のフォローは,これ,喫緊の課題であろう.後期も遠隔でということを決めた大学も多いのではないか(ウチも原則はそうなるらしい).1年生だけは,少し,手厚めにフォローしてあげることが大切だろう.

2020年7月17日金曜日

大学に行けない大学生

後期も遠隔にするとかしないとか,議論が喧しいなか,とうとう本学でも合宿所でクラスタが発生したというニュース.石橋を叩いて渡らない本学のことなので,これで後期も完全遠隔とか困ったことを言い出さないとよいのだが……

遠隔教育にすると学費減免請求の動きが加速するだとか,施設設備費は返さねばならんだろうとか,そんな世知辛い話題(といってもまあ,重要な話題ではあるけれど)が議論されているなかで,わりと議論のテーブルに乗っていないんじゃないかという懸念があるのが,学生生活についてである.華のキャンパスライフ,てなわけでもないけれど,大学生活って,教室で講義受けてる,ゼミで議論してる,その他研究活動してる…… だけじゃなかろう.サークル活動やら友達と無意味に過ごす時間なんかも,大学生活の重要な要素に違いない.

可哀想なのが1年生で,入学してまだ一度も登校していないので,学友すらバーチャルでしか得られていない.こりゃなんとかしてあげんとイカンのではないか?

なにか参考になる情報源はないだろうか,といろいろ考えていて,そういえば1970年前後の大学紛争のころはどうだったんだろう?キャンパスをロックアウトする状態,原因こそ違うけれど,それと似たようなものではないかと思いついた.

残念ながら私はそのころよちよち歩き……すらしていない時代(私は1970年生まれ.ちょうど私が生まれたころに相当)なので,当時の記憶というものはない.ここは諸先輩方にお知恵を拝借するしかないのだが,いかがだろうか.



2020年7月16日木曜日

アクセス数の推移(続報)

昨日の続報.アクセス数が徐々に減っていることを心配した件,教員間でオンライン講義を円滑に進めるための学内情報交換用BBSで相談してみた.何名かの先生から「うちはこんな感じ」という情報提供をいただき,比較してみたのが下のグラフである(科目Aが私の「数学」).履修人数が異なるので,第1回目のアクセス数で正規化して比較した.

科目Bの第8回と第10回にアクセスが多くなっているのは,ゲスト講師を迎えて双方向授業を実施した回だそうで,その影響が出ているとのこと.

これを見る限り,どの科目でも順当(?)にアクセス数が減っている.これは私の問題というよりは,オンライン講義全体の課題なのかなあ.

オンライン講義に限らない?対面講義のとき,出席ってどうだったっけ…… と疑問に思い,そういえば「昔,出席管理システムの研究してたときに出席数の推移なんかを記録してたなあ」ということを思い出した.

このグラフをみると,出席数はそう変わっていない.うーむ…… これをどう読めばよいだろう?


2020年7月15日水曜日

学習モチベーションを保つには?

諸般の事情からオンライン講義を余儀なくされた2020年度の春学期も終わりに差し掛かっている.そろそろ振り返りをして次への備えをする段階かな.というわけで,講義コンテンツのアクセス状況を調べてみた.

講義は1年生の数学,水曜1限という時間設定ではあるが,講義動画を収録して非同期で閲覧できるタイプなので,その週のうちのどこかで受講すればよい,ということにした.多くの学生は律儀に水曜日に学習しているようだが,数学に前のめりになっている一部の学生が,日曜深夜にコンテンツをアップロードした瞬間に,視聴するということも確認した.

そう,LMSには「閲覧確認」という機能があり,誰がいつコンテンツにアクセスしたかチェックできるわけだ.この機能は,学生たちの学習をモニタリングする意味で,ある程度,役に立つ.「ある程度」というのは,動画をきちんと最後まで,2倍速とかせずに,視聴したかどうかまではわからない(動画の視聴状況は動画配信プラットフォームとして使っているYouTubeでもそれなりにわかるが,個々のユーザとの紐付けが曖昧なので,やはり「ある程度」になってしまう)ということだが,それでも,それなりに参考になる.

さて,この数学の講義,1本10分前後の動画を7〜10本用意して,1コマぶんの動画を視聴するというスタイルである.平時の対面講義から演習の時間を差っ引いて「雑談そのまま収録」だと,そんなもんになる(この点については別記事を参照ください).平時の対面講義だといつもなんとなく時間が足りなくなるので,少し,密度は濃いかも.

各動画はだいたい1ページに1本(まれに,内容の関係で,1ページに2本の動画を載せることもある)という体裁でコンテンツを作っているので,やはり,コンテンツのページ数は7〜9ページということになる.

そこで,7月初旬までのアクセス状況を分析してみた.ページ数の差があるので,1ページあたりのアクセス数で比較している.すなわち,総アクセス数をA,ページ数をBとしたとき,A/Bの数での比較である.

予想通りというか残念だというべきか,やはり,全体的に右肩下がりの折れ線になってしまった.数値はあまりにも生々しいので割愛したが,次の図をご覧いただきたい.


これを,進捗につれて(残念だけど)一部が離脱してしまう自然な傾向とみるか,それとも,初回から復習している真面目な学生が多数いるとみるか.初回がずば抜けて多いのは,この科目は選択科目なので履修するか否かを見定めるためにアクセスした学生が多かったのであろうということで説明がつく.しかし,3〜4回め以降から,緩やかではあるがアクセス数が減っているのは,気になる.理由を確認して対策を打つべきかもしれない.

2020年7月13日月曜日

LMSの閲覧確認データと動画視聴状況に齟齬発生?

ある非同期型オンライン講義では,動画を配信し,その動画のなかで毎回,課題を出している.毎回,複数のページでいくつかの動画を提示するという構成になっていて,最後だけでなく途中でも必要に応じて課題の問題を示している.

問題の発覚

LMSの利点として,アクセス状況を確認できる点がある.そして,そもそも本件に関して「おかしいな?」と気付く前に,全体としてコンテンツのアクセス状況が減ってきていることが,若干,気になっていた.毎回,ページ数が微妙に異なるので,1ページあたりのアクセス数で比較しなければならないが,それにしてもここへきてアクセス数が減っている.皆,課題を出すので課題地獄になっている影響なのか?ということも心配のタネではある.

そして今回の問題だが,ある学生が,最初の1ページしか閲覧していないというデータが浮かび上がった.最初の1ページは,前回の課題を解説する動画を上げているだけなので,そもそも講義資料にもアクセスできていないはず(全体の講義資料は2ページめに置いている).

しかし,当該の学生,課題はきちんと提出しており,それはきちんとできているのが不思議なのだ.はたして彼/彼女はどうやって課題の情報を入手したのだろう?

真相はまだ不明

LMSの記録が間違っているという可能性はある?あるいは,YouTubeに置いてある動画がそのまま続いて再生される?(動画は全て限定公開にしているので,そんなことあるのかな?再生リストのせい?)

とりあえず状況が分からないので,本人に聞いてみているところだが,不思議な現象が起こっている.YouTubeの再生リストでそのまま動画が流れ続けるというのであれば,それはそれで構わないが,そうすると今度はLMSの閲覧確認機能の抜け道ができてしまっていることになるので別の対応が必要になりそう.それも面倒だ.

しかしまあ,次から次へと,いろいろ問題が出てくるなあ.それを含めての試行錯誤なので,それもまたいとをかし,と楽しむべきなんだろうな.

2020年7月12日日曜日

YouTube動画・字幕の編集方法

オンライン講義動画をYouTubeで配信する利点の1つに,字幕が自動生成される機能を利用できることがあります.音声認識で自動的に作成されるので,手間いらず.とはいえ,やはりいろいろ誤変換が目立つので,それを修正する方法を紹介します.

準備

まず「自分の動画」にアクセス,編集対象の動画を選びます.

動画画面の右下にある「…」メニューで,「翻訳を追加」を選択.

動画の言語を設定,という画面が出てきたら「日本語」を選びましょう.

「字幕の管理」画面では,公開済み 日本語(自動)をクリックします.

「公開済み字幕の表示:日本語(自動)」という画面が出るはずです.

右上の「編集」ボタンをクリックしましょう.

編集

編集画面になるので,ひとつひとつ編集します.
この例だと「論理集合希望という11回の話題に入ったいと思います」というスクリプトが編集対象になっています.少し間違っているので書き換えます.
「論理集合希望」を「論理・集合・記号」に「入ったい」を「入りたい」に書き換えました.あとは,全て編集したら,最後に右上の青い「変更を保存」ボタンをクリックして保存すればOKです.

このようにブラウザ上のエディタで編集することもできるし,データをいったんダウンロードして,自分がいつも使っている使い慣れたテキストエディタで編集,修正したものをアップロードして直すという方法もあります.お好きなほうをどうぞ.


2020年7月10日金曜日

講義と雑談

皆さんわりと「オンライン講義動画を収録すると対面の講義より短くなる」と仰るのだが,私の講義動画はさほど短くなっていない.なぜだろうと振り返ってみたところ,雑談やら脱線話,与太話まで律儀に収録しているからだということに気付いた.

昨日,あるオンライン講義(これはZoomを用いたリアルタイム講義)で全体の感想を求めたところ,「雑談が楽しかった」だの「雑談を聞きにくるために参加してました」だの,ちょっとそれは教育のあり方としてどうなんだろう?という感想ばかりで困ってしまった.まあ「私はこの分野は得意なので教科書を読めば分かるような内容が中心でしたが,先生の雑談や体験談は目新しい話もあり知識の定着に役にたっていると思います」というような感想もあったので,少しは救われたかもしれない.

まあ,いちおう,教科書の内容だけだと平凡な話一辺倒になってしまうので,体験談や雑談を踏まえて話に幅を持たせた,ということにしておこう.雑談だけしてたわけじゃないしな!

なお,話をし始めると脱線しまくりでなかなか最後まで到達せず,いつも,用意した資料の最後のほうは「時間が足りなくなりました.あとは読んどいてね」となってしまった点は猛省すべき点ではあるので,自分に反省と来期での改善を促したい.

で,翻って,こちらの意見.これは少し考えさせられた.

これってどうなんだろう?この授業のやり方について詳細が分からないので,判断がつきかねるところもあるが「Zoom録画で事足りる授業なんだろうか?たぶんそうじゃないのではないかな」と好意的に読み,これは学生の指摘が浅はかなんじゃないかと感じたわけだが,もしZoom録画だけで完結するような授業だったら,その学生の指摘にも一理ある.

そういえば昔は延々と教科書を読み上げるだけの先生っていたな…… などということを思い出し,その時代に逆行してしまうのだろうか,まさかね,なんてことに思いを馳せたのであった.

2020年7月9日木曜日

オンライン試験実施のためのヒント

前期のオンライン講義もそろそろ終いに差し掛かり,成績評価をどうするべきかという議論が行われている.私はもう真っ先に白旗を上げてしまい情けない限りで,オンラインでの試験に挑戦されようとしている先生方には頭が下がるばかりである.

ところで,オンラインでの試験実施は,これまでの対面による試験実施と異なりいろいろと考慮しなければならないことがある.主に不正受験をどうするかという観点なのが後ろ向きではあるが,公正な成績評価を担保するためには致し方ない.私個人としては,今後,オンラインで試験をしなければならなくなったときに備えて今から準備をしていこうと考えているが,以前,Stanford大のMOOCを受けたときに「よく考えられているなあ」と感心した事項があったので,紹介してみたい.

オンライン試験の課題

ところで,オンライン試験で問題になる不正行為には何があるだろうか.まずはそれを整理してみよう.

  1. 替え玉受験.カメラで監視しながらという解決策が考えられているが,少人数ならいざしらず,大人数の試験ではなかなかたいへんだろう
  2. 持ち込み不可の試験での情報源の参照(アナログ版).カメラで監視したとしても,画角の外に参考書など置かれては対応できない.試験環境そのものを監視するという対策が考えられている
  3. 同,情報源の参照(デジタル版).マルチウィンドウ,マルチ画面で他の情報を参照するケース.これも画面共有で対応することが考えられる.しかし,サブウィンドウなどいくらでも抜け道はありそう
  4. 受験生同士による相談.他のコミュニケーションツールを用いて解答を相談しながら作成するというパターン.試験環境そのものの監視で対応できるが,やはり,監視はなかなかたいへんに違いない

かように,課題は山積している.

課題への対策

上記で述べた対策以外にも,たとえば 2.〜4. に対しては,短い時間に多数の問題を出すという方法により他の情報源を参照している余裕を与えない,あるいは,受験生同士が相談している時間を与えない,といいう対策も聞いた.

さらには,多数の問題を用意しておき,その問題プールからランダムに選択して個別の問題を出すという方法も有効そうではある.しかし,これに関しては多数の問題を作成して準備しておく手間をどうするかという切実な問題もある.

さあ,どうしたものか.

よくできたMOOCからのヒント

以前,学生が「機械学習のMOOCを受けたいのですが自分ひとりでは完遂する自信がないので皆でやりたい」というので,院生も巻き込んで一緒に体験したことがある.そのとき,よくできてるなあといくつか感心したことがあった.もっとも,かのMOOCはそうとう金をかけて作られているそうで,そのまま真似でき(そうに)ない点はあらかじめお断りしておく.

本人確認の方法

まず,本人確認について.本人確認は重要なポイントで,そのMOOCでは,達成度テストの直前に必ず本人認証を行っていた.その方法は,タイピングのクセを使ったもの.30〜50words程度の文章をタイピングさせて,そのタイピングのタイミングで本人を認証するというものであった.もちろん,最初の登録時にタイピングのクセを登録する手順が用意されている.

なお,コースが進むとタイピングは省略され,パスワード入力だけになった.ある程度まで進んだところで,より簡便な方法にするというのは,参加者に対するコストや信頼関係を考慮すると妥当な方法であろう.途中まで本人が頑張って学習して,そこから先は替え玉が受講するということも考えにくい.合理的な判断といえる.

理解度確認の方法

理解度の確認は,単元の終わりに小テストを行うというやり方で行っていた.4択の問題が5問提示され,そのうち4問(80%)に正解すればパスするというもの.その問題は,ランダムに出題される.とはいえ必ず違う問題が出てくるというものでもなく,問題プールの大きさはそれほど大きくないように感じた.まあ,そのあたりは理論的なバックグラウンドがあるのかもしれない.1問,2問くらいなら同じ問題が出てきてもよいのだろう.かえってそのほうが理解を促進するのかも?

さらにそのMOOCがユニークだったのは,ソースコードの穴埋め問題が提示されていたことだ.プログラムの一部(数行)が空欄になっており,その部分をコーディングして埋めよというタイプの問題である.

プログラミングの穴埋めを終えると,その問題自身をサーバに提出,テストデータを用いて検算が行われ,正解かどうかが判断される.ロジックが正しいかどうかが判断されるので,コーディングの質は問われない(といっても,単純な穴埋めなので,ほぼ同じようなコードになるはずである).Octaveにライブラリが追加され,サーバへ提出して検算するところまで,自動化されていた.この工夫は,ITの科目ならではだなあとずいぶん感心したことを憶えている.

オンライン試験実施に向けて

本稿,結論はとくにないが,ここで紹介した情報が,多少は皆様の参考になれば幸である.



2020年7月7日火曜日

オンラインと対面の併用は難しい?

後期の授業をどうするか.多くの大学で,まさにいま議論がなされているところだろう.オンラインはオンラインの良さがあり,対面授業は対面授業の良さがある.混在させると,通学時間や通信環境をどうする?などの問題もあり,これはという解決策が見つからない状況で,皆さん,頭を悩ましているのだろう.

苦肉の策としてオンラインと対面の併用を認めるかどうかという議論もあると聞いているが,これまでの私の経験からすると,オンラインと対面の併用は状況次第で大きく異るのでいささか注意が必要だ.

大人数の講義をオンライン・対面併用するケース

まず,大人数が受講するような講義をオンラインと対面で併用するケース.これは,少し難しい.2012年から,広島市立大学と広島修道大学の合同講義に参加している.その際の経験をご紹介したい.

それぞれ数十人が参加している講義のため(多い年は,片方が100人を超えることもある),2つの教室を遠隔通信装置で結んでの講義を実施した.どちらを生講義としてどちらから配信するかは,不公平がないように,回ごとに,市大から配信したり,修大から配信したりと混在させた.それはまあ,そうだろう.

問題は,2つある.ひとつはテクニカルな問題.この講義はオムニバスで実施し,配信に慣れていない先生もいるため,技術スタッフが付いた.具体的には,両大学で担当される先生とTAが複数配置し,配信に関するいろいろな対応は全て担当してもらった.撮影もTAにお願いした.この問題は,昨今のオンライン配信の普及で,多少は改善されたかもしれない.皆さんもいろいろとノウハウが溜まったことでしょう?

ところが,もう一つの問題が少しやっかいで,それは何かというと,話者の意識が,どうしても対面の学生に集中してしまい,遠隔の配信で聞いている学生たちに向かないということだ.私も慣れるまでは,ついつい遠隔の学生を置いてきぼりにしてしまった.これは併用するがゆえの問題だろう.遠隔だけであれば,カメラに意識を集中させていればよいのだから.

この問題は意外と知られていないので,これから,遠隔と対面を併用しようとする先生方に対しては「ご注意あれ」と指摘しておきたい.目の前にいる学生たちと遠隔の学生たちに同時に気を配るのは,なかなか難しい.やってみると分かりますよw

ゼミなど少人数のケース

こちらは比較的簡単かもしれない.オフラインの会議にどうしても参加できないので部分的にオンライン参加する,などというケースは,このコロナ禍以前から行われていた.そのような会議の運営方法をそのまま援用すればよさそうだ.

実際に少人数教育で併用して実施した経験がないのでこれ以上はなんとも言えないが,まあ,できることなら併用とせずに,オンラインならオンライン,対面なら対面としたほうが,いろいろとトラブルも少なく安全だろうということは容易に想像はつく.それでも併用しなければならないという判断を強いられたときには,本稿で述べたことを多少なりとも参考にされれば幸である.


2020年7月6日月曜日

オンライン講義の実施で得たもの

前期のオンライン講義もそろそろゴールが見えてきた.いくつかの科目では非同期型で提供している教材用オンライン講義動画の収録が完了した(記事末尾の図参照).

オンライン講義実施でよかったこと

なんにせよオンライン講義用に収録した動画が財産になったことが大きい.これまで,やれ反転授業だのアクティブラーニングだのいろいろ言われていたが,予習用の動画を撮るというところがネックになっていた.そもそも対面で話すやり方とカメラに向かって喋るのでは話者の心構えからして違うし,私の講義スタイルは教室での講義は学生の間をウロウロと歩きながら一体感を醸成しつつ議論を進めるタイプだったので,「教室で話しをしているのをそのまま動画に撮ったって,見にくいだけだろうがよ」と二の足を踏んでいた.

しかし,今回,このような状況になったために「カメラに向かって全講義を収録しなければならない」という事態に直面した.嫌でも講義スタイルを変えねばならない.転んでも只では起きないぞとばかり,今回の収録は,今回の非同期型オンライン講義のみならず,アクティブラーニング用の予習素材作成を兼ねることにした.

毎回の講義動画収録は,なかなかたいへんではあった.初回,2回めくらいは,1コマの収録に半日かかってしまった.細かな編集作業なしにしてそれである.しかし,だんだん慣れてきて,最後のほうでは,実際の講義時間プラスアルファ程度の時間で収録からLMSへのアップロードまで,できるようになった.やればできるもんだな.そして,今,やりきった後に残った動画が大きな財産になったのではと,少し喜ばしく感じている自分がいる.

今後どうしようかな

というわけで,かねてより懸案であったアクティブラーニングへの足がかりが(はからずも)できてしまった.もとより演習科目などではアクティブラーニングっぽいことをしてきてはいるが,通常の講義科目での反転授業の経験はまだない.

今回得られた一連の動画を無駄にしたくはないので,来年からまた試行錯誤を積み重ねていくことになるだろう.ひとつ確実に言えることは,出張や傷病で休講,ということが無くなったかな?とりあえず「留守でも動画みておいてね」でよく,補講も今までよりやりやすくなったはず.

いずれにしても,ひとつ楽しみなのは,いつも学生の授業評価アンケートで「予習・復習しましたか?」という項目の点数だけ極端に悪いところが,今回は改善しているのではないかということ,そして,この講義動画を今後活用していけば,その点も補強できるのではないかということが期待できるということだ.大学の講義のあり方も,新しい様式になっていくんだろうね.